訂正四半期報告書-第14期第3四半期(平成27年10月1日-平成27年12月31日)

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2016/06/17 12:21
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
なお、第1四半期連結累計期間より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「四半期純損失」を「親会社株主に帰属する四半期純損失」としております。
(1) 業績の状況
当第3四半期連結累計期間におけるわが国の経済は企業の良好な収益環境が持続しており、新規求人数が増加する等、景気は緩やかながらも回復基調を維持しました。しかし、中国経済を始めとする新興国の景気減速や世界的な原油安、不安定な欧州諸国情勢等、海外経済の動向による国内景気への影響が懸念されております。
このような経済状況のもと、iPS細胞及び再生医療は政府の成長戦略の一つとして掲げられており、iPS細胞に関連した基礎及び臨床の研究者が増加しております。さらに、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が平成26年11月25日に施行されたことにより、大手製薬企業を含めた企業サイドによる再生医療の事業化に向けた取り組みが始まるなかで、当社グループも本格的な当該事業分野への進出に向け、事業化の準備を本格的に進めております。
当第3四半期末において、Biopta Limited(英国)とその子会社Biopta Inc.(米国)の2社が新たにグループ企業として加わる事となりました。現在、急速に拡大する創薬支援サービス事業は大きなポテンシャルを有しており、Biopta社は当該領域で、細胞の調達から検査・治験業務を一貫して行う創薬支援サービス(CRO サービス)を先駆的に展開しております。同社のサービスは高い技術力に裏打ちされた確固たる競争優位性と実績を有しており、当社グループ企業の販売チャネルを生かしたグローバルな事業展開を推し進めていく予定です。上記より、当社の主なグループ企業は、当社、Stemgent, Inc.(米国)、BioServe Biotechnologies, Limited(米国)、Reinnervate Limited(英国)、Biopta Limited(英国)、Biopta Inc.(米国)の6社で構成される事となりました。当社グループはこれまでにヒトiPS細胞/ヒト細胞に係る研究試薬製品及び細胞製品を展開してまいりましたが、Biopta社の創薬支援サービスがラインナップに加わることで、製薬メーカーを対象とするメインビジネスの製品提供と研究受託の両面をカバーできるようになります。
当社グループは世界各所にグループ企業を有しておりますが、各グループ企業が連携することにより、当社グループは3つの優位性を有しております。第1の優位性は、各グループ企業の得意分野を活かし、iPS細胞の元となるヒト細胞の供給からiPS細胞の樹立、さらにはiPS細胞を各種の機能性細胞への分化誘導サービスまでワンストップで提供できることであります。グループ企業内でのシナジー効果により競合との差別化と顧客利便性の向上を追求しております。第2に、東京大学や京都大学をはじめ、米国のハーバード大学・マサチューセッツ工科大学・英国のダーラム大学等との世界的な研究ネットワークを構築し、世界最先端の技術シーズを継続的に吸収して競争力の高い新製品を開発しています。第3として、日米欧にまたがる世界規模の販売チャネルと高効率のネット販売を活かし、各グループ会社社製品の相互販売によるグローバル展開を推し進めております。
既述の通り、当社グループでは世界的な研究ネットワークを活かし新製品の開発を積極的に推進しており、当第3四半期連結累計期間においては10製品以上の新製品を発売致しました。直近の新製品と致しまして、ヒトから採取した肝臓細胞を培養する培養液「ReproHP Medium」を12月に発売致しました。当製品においては当社グループの世界的な販売チャネルを生かし、既存製品からの全面的な置き換えを目指してまいります。
さらには、取扱い製品のラインナップが一層充実することによる当社グループの顧客利便性の向上を見込み、味の素株式会社やAGCテクノグラス株式会社など、さまざまな企業と提携を結んでおります。
また、今後本格的な事業化が期待される再生医療領域への参入へ向けた取り組みも活発化しております。当第3四半期連結累計期間には当社と日産化学工業株式会社が共同出願していた造血幹細胞の増幅方法に関する特許出願の米国での審査通過や、ヒトiPS細胞用凍結保存液ReproCryo DMSO Freeの臨床応用へ向けた開発も進んでおります。今後はさらに再生医療領域への参入へ向けた動きを加速化させ、当該領域における世界的なプラットフォームを早期に構築してまいります。
一方、臨床検査事業では、主力検査である抗HLA抗体検査の検査数を順調に伸ばすとともに、当第3四半期連結累計期間においては一般社団法人 日本血液製剤機構が実施する臨床試験に係わる臨床検査測定の受託業務にも取り組んでおります。
この結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は790,553千円(前年同四半期比456,432千円の増加)、営業損失は710,467千円(前年同四半期411,997千円の損失)、経常損失は679,510千円(前年同四半期324,687千円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は667,795千円(前年同四半期327,834千円の損失)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
① iPS細胞事業
iPS細胞事業は、研究試薬・創薬支援・再生医療の3つの分野に分類されます。
研究試薬については、iPS細胞に関わる様々な研究試薬を大学や公的研究機関、製薬企業等に製造・販売しています。iPS細胞の研究に必要な、培養液・剥離液・凍結保存液・コーティング剤・抗体等のiPS細胞に最適化された各種研究試薬をはじめ、ヒトiPS細胞をより受精卵に近い理想的な状態にリプログラミングできる高品質iPS細胞用培養液「ReproNaïve」や、国立がん研究センターと共同で、ヒトから採取した肝臓細胞を体外においても高い機能を維持したままでの培養を可能とする培養液「ReproHP Medium」等を主力製品としてラインナップしております。大学及び公的研究機関を中心に継続的に販売実績を積み重ね、さらに新規顧客も増加傾向にあり、売上は堅調に推移しております。
一方、創薬支援については、ヒトiPS細胞由来の心筋・神経・肝臓の細胞製品が主力製品となっており、製薬企業等による創薬を支援する製品として製造・販売をしております。これらの製品は製薬企業等において新薬候補化合物の薬効試験や毒性試験の実験材料として使用されます。当第3四半期連結累計期間においては、新たにアルツハイマー病患者から集めた生体試料をもとに作成した疾患型iPS細胞由来の神経細胞製品「ReproNeuro AD-patient」の開発に成功し、製造・販売を開始致しました。これらの細胞製品は製薬企業や大学の研究機関からの引き合いも増加傾向にあります。加えて、当社グループは、健常者や特定の疾患患者のDNA・組織・血清サンプルといったヒト生体試料等を取り扱っております。これらの生体試料は、販売だけでなく、一部はiPS細胞を樹立するための材料として提供することも可能です。また、カスタマイズした疾患モデル細胞製品の作製受託等、顧客の要望にきめ細かく対応するための様々な差別化されたサービスラインナップを提供しております。iPS細胞培養の受託サービスやDNA等の抽出・遺伝子型判定等を行う前臨床分子解析サービスを提供している他、iPS細胞の技術プロセスの上流から下流までを当社グループでカバーすることで豊富な品揃えを実現し、顧客利便性が大きく向上しています。さらには、既述のとおり、Biopta社が新たにグループ企業として加わり、既存の受託サービスにBiopta社が手掛ける創薬支援サービスが新たに加わりました。当該領域における業容拡大を図るとともに、当社の有する競争優位性を相乗的に生かすことで、再生医療参入に向けた強固な事業ポートフォリオを構築してまいります。
また、再生医療については、今後の本格的な事業立ち上げのための準備を進めております。
既述の通り、当社と日産化学工業株式会社が共同出願していた造血幹細胞の増幅方法に関する特許出願の米国での審査通過や、ヒトiPS細胞用凍結保存液ReproCryo DMSO Freeの臨床応用へ向けた開発も進んでおります。さらには、iPS細胞作製の高い効率性(従来比で100~1,000倍)と安全性に加えて、作業の容易性を格段に高めた新型「RNAリプログラミングキット」はウイルスを使わずにiPS細胞を作成できる方法として、今後の臨床応用に向けた開発を行っていく予定です。
以上のように、グループ全体としてiPS細胞技術のプロセスの全てをカバーした他に類を見ないワンストップサービスの幅の広さと、世界最先端の技術を結集した機能・品質の高さを兼ね備えた創薬支援ツール・サービス群としての評価をいただき、製薬企業を中心に顧客層が着実に広がっております。
この結果、売上高は737,410千円、セグメント損失は155,466千円となりました。
② 臨床検査事業
肝臓移植や造血幹細胞移植の分野への適用の広がりを見せている抗HLA抗体検査(スクリーニング及びシング
ル抗原同定検査)を主力として、日本全国の100施設以上の病院から検査を受注しております。また、近年は、HLA抗体と移植成績や移植後のグラフト生着成績の関連性が注目されており、移植の際にHLA関連検査を行う施設が増加傾向にあります。こうした検査業務を通じ同一患者様の全ての検査をまとめて行うことにより、整合性のとれた確度の高いデータを提供することで顧客ニーズに応えることができました。当第3四半期連結累計期間においては一般社団法人 日本血液製剤機構が実施する臨床試験に係わる臨床検査測定の受託業務にも取り組んでおります。以上の内容により、売上は堅調に推移しております。
この結果、売上高は53,143千円、セグメント利益は19,718千円となりました。
なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が543,762千円あります。
(2) 財政状態の分析
(資産の部)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は前連結会計年度末に比べて789,001千円増加し、6,148,510千円となりました。主な内訳は、現金及び預金の増加705,655千円、仕掛品の増加62,812千円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて854,551千円増加し、3,089,258千円となりました。主な内訳は、無形固定資産の増加747,286千円であります。
(負債の部)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は前連結会計年度末に比べて202,841千円増加し、502,077千円となりました。主な内訳は、買掛金の増加32,807千円、前受金の増加162,803千円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて5,795千円減少し、204,016千円となりました。
(純資産の部)
当第3四半期連結会計期間末における株主資本は前連結会計年度末に比べて1,442,351千円増加し、8,484,732千円となりました。主な内訳は、資本金の増加1,097,429千円、資本剰余金の増加1,097,429千円、利益剰余金の減少752,507千円であります。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の金額は、207,062千円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 重要事象及び当該事象を解消しまたは改善するための対応策
当連結会計年度については、世界的な販売網の確立に向けた先行投資をし、iPS細胞及び再生医療等の研究開発費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しております。
しかしながら、当社グループの当第3四半期連結会計期間末の現金及び預金残高は3,623,616千円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999,697千円あり、財務基盤については安定しており、当該状況の解消を図るべく、グローバル展開に向けた販売基盤の整備を行っています。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指して当該状況の解消を図っていきます。