半期報告書-第23期(2026/01/01-2026/12/31)
文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 業績の状況
当中間会計期間(2026年1月1日~2026年6月30日)における日本経済は、2026年イラン戦争に伴うエネルギー資源の高騰や円安による輸入物価の上昇などがあったものの、AI(人工知能)や半導体関連需要の強い追い風により、日本経済の底堅さが確認されました。また、海外経済においても、中東情勢の不安定化を受けた原油価格上昇や供給混乱による物価上昇が生じたものの、地政学リスクの低下や好調な株式市場を背景に、世界経済の拡大は今後も継続する見通しです。
このような状況下、当社は「未来のがん治療に新たな選択肢を与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンとし、特に、がんのウイルス療法OBP-301を中心に研究・開発・ビジネス活動を推進させ、2026年6月8日に食道がん治療再生医療等製品として製造販売承認を得ました。本製造販売承認に伴い、当社は販売提携先の富士フイルム富山化学株式会社(以下、「富士フイルム富山化学」)から2026年7月にマイルストーン収入などを受け取りました。2026年8月5日には中央社会保険医療協議会総会が開催され、OBP-301の薬価案は1瓶310万2489円(患者1人当たり930万7467円)で了承され、8月13日に薬価収載・保険適用の予定です。当社は、2026年8月21日にテロメライシン注の販売を開始する予定です。また、LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)は、Transposon Therapeutics, Inc.(以下「トランスポゾン社」)とのライセンス契約の下、同社の全額費用負担により臨床試験が実施され、トランスポゾン社のビジネス活動も進んでいます。
当社活動の詳細に関しては、「2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (7) 研究開発活動」をご確認ください。
当中間会計期間の業績は、売上高503,090千円(前年同期は売上高28,546千円)、営業損失767,606千円(前年同期は営業損失1,267,127千円)となりました。また、営業外収益として、受取利息3,240千円、為替差益17,373千円等を、営業外費用として支払利息8,837千円、譲渡制限付株式報酬償却2,571千円、株式交付費2,248千円等を計上した結果、経常損失760,604千円(前年同期は経常損失1,311,654千円)になり、中間純損失762,153千円(前年同期は中間純損失1,313,230千円)となりました。
(2) 財政状態の分析
当中間会計期間末における資産は、現金及び預金の減少等により4,510,606千円(前事業年度末比1%減)となりました。負債は、短期借入金の増加等により1,253,229千円(前事業年度末比125.4%増)となりました。純資産は、中間純損失等により3,257,377千円(前事業年度末比18.6%減)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当中間会計期間における現金及び現金同等物は、前事業年度の3,429,561千円から2,941,682千円へと487,879千円減少しました。当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは1,017,309千円の支出(前年同期は1,037,289千円の支出)となりました。これは主として、税引前中間純損失760,604千円、売上債権の増加551,172千円、前払金の減少164,514千円、未払費用の増加155,111千円、未収入金の増加143,369千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは31,525千円の収入(前年同期は5,040千円の支出)となりました。これは主として、貸付金の回収による収入31,742千円、有形固定資産の取得による支出1,241千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは496,622千円の収入(前年同期は42,153千円の収入)となりました。これは主として、短期借入金の純増440,000千円、長期借入による収入100,000千円、長期借入金の返済による支出55,552千円、株式の発行による収入17,616千円、リース債務の返済による支出5,138千円等によるものであります。
(4) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当中間会計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について、重要な変更はありません。
(5) 経営方針・経営戦略等
当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間会計期間において、新たな事業上及び財務上の対処すべき課題の発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更はありません。
(7) 研究開発活動
当社の当中間会計期間における創薬事業の研究開発費は、766,164千円となりました。なお、当中間会計期間における研究開発活動の状況は以下のとおりです。
1) 研究開発体制について
2026年6月30日現在、研究開発部門は27名在籍しており、これは総従業員数の60.0%に当たります。
2) 研究開発並びにビジネス活動について
当社は、食道がん治療再生医療等製品として2026年6月8日に製造販売承認を得たOBP-301の国内ビジネスを製薬会社モデルで展開させ、従来のライセンス依存の単一の事業モデルから、製薬会社型とライセンス型の『ハイブリッド型事業モデル』へ移行させています。当社は同方針の下に、研究開発並びにビジネス活動を進めました。
①腫瘍溶解ウイルスOBP-301に関する活動
当社は、厚生労働省から2026年6月8日に食道がん治療再生医療等製品として製造販売承認を得ました。同承認は、条件及び期限付き承認ではなく『通常承認』であり、市販後臨床試験は不要となります。2026年8月5日には中央社会保険医療協議会総会が開催され、OBP-301の薬価案は1瓶310万2489円(患者1人当たり930万7467円)で了承され、8月13日に薬価収載・保険適用の予定です。当社は、2026年8月21日にテロメライシン注の販売を開始する予定です。
この適応に続くOBP-301の国内での効能拡大試験として、当社は2026年6月に放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験の治験届を提出しました。同試験は、2026年12月期に投与を開始する見通しです。
一方、海外での開発は、OBP-301とペムブロリズマブの共同開発体制を構築するために、当社とコーネル大学、並びにコーネル大学とMSD社の間で、2023年12月にそれぞれ医師主導治験契約を締結しました。同契約に基づき、当社とMSD社は、胃がんの2次治療患者を対象としたPhase2医師主導治験の研究開発費を折半して、本臨床試験を進めています。
また、米国のがん研究組織NRGオンコロジーグループにより進められた放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験は、2025年1月のASCO- GI(米国臨床腫瘍学会 消化器がんシンポジウム)で中間結果が発表され、同試験の中間結果が海外医学誌に掲載されました。
国内ビジネス面では、製造販売承認に伴い、販売提携先の富士フイルム富山化学から2026年7月にマイルストーン収入と前受金を受け取りました。また、製造元のヘノジェン社から国内でOBP-301の保管・包装などの物流を担う三井倉庫ホールディングス株式会社(以下、「三井倉庫HD」)を経て、販売提携先の富士フイルム富山化学を通じて医療機関に至るサプライチェーンを整備しました。OBP-301の有効期間を延長させ、在庫管理の柔軟性を高めるなど販売開始の準備を進めています。
海外でのビジネス展開に関しては、2024年12月には台湾のMedigen社と台湾での販売権に関するライセンス契約を締結しました。Medigen 社により台湾で上市された後には、当社は Medigen 社へ OBP-301 の最終製品を有償で供給し、併せて Medigen 社から販売額に応じたロイヤリティ収入を得ることになります。今後も、海外でのビジネス展開を進め、OBP-301の国内外に向けたマーケット拡大を行ってゆく方針です。
知的財産面では、日本で既に成立していた腫瘍溶解アデノウイルスの内視鏡投与に関する特許に関して、2026年5月に保護範囲を拡大しました。また、同月には欧州での内視鏡投与の特許付与予定通知の発行を受けています。これらの特許は、OBP-301に限らずOBP-702や他社の腫瘍溶解アデノウイルスも対象であり、2040年5月まで特許が存続します。
OBP-301は、製造販売承認を得た臨床試験や組入れが終了した臨床試験も含めて、以下の4つの臨床試験が国内外で進んでいます。
i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)
ii) 抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
iii) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験
iv) 放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験
i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)
放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)は、2019年4月の「先駆け審査制度」の指定に基づき全国17ヶ所で治験を行い、2026年6月8日に食道がん治療再生医療等製品として製造販売承認を得ました。製造販売承認に伴い、販売提携先の富士フイルム富山化学から2026年7月にマイルストーン収入及び前受金を受け取りました。2026年8月5日には中央社会保険医療協議会総会が開催され、OBP-301の薬価案は1瓶310万2489円(患者1人当たり930万7467円)で了承され、8月13日に薬価収載・保険適用の予定です。当社は、2026年8月21日にテロメライシン注の販売を開始する予定です。
当社はOBP-301を円滑に供給するために、国内製造所である三井倉庫HDで商用1ロット目製剤の個装箱への封入を行いました。有効期間18ヶ月で商用1ロット目の出荷を開始する計画です。当社から出荷されたOBP-301は、2024年2月に販売提携契約を締結した富士フイルム富山化学を通じて、医薬品卸会社から医療現場に提供されます。
また、商用2ロット目製剤は、ヘノジェン社で製剤製造を完了し、日本国内へ輸入できる状況です。当社は、2026年下半期には24ヶ月間の安定性データを確認する計画です。今後も、有効期間を延長させ、OBP-301の在庫管理の柔軟性を高め、安定供給に努めていきます。
ii) 抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
「抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、米国コーネル大学が当社の事前合意を得た上で、MSD社へ新たな治験の実施や治験費用の負担を提案し、2023年12月に当社とコーネル大学の契約、コーネル大学とMSD社の契約が締結され、共同開発体制を構築しました。
本治験は、抗PD-1/PD-L1抗体を含む1次治療に抵抗性のある胃がん・胃食道接合部がん患者を対象に、2次治療としてOBP-301と抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用します。現在、当社とMSD社で費用を折半して組入れが進んでいます。2026年4月にアイスランドで開催された国際腫瘍溶解ウイルス学会で、本治験に先立って組入れが完了したペムブロリズマブ併用の3次治療胃がんPhase2試験の長期生存率に関する結果が、報告されました。
iii) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験
「放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験」は、米国国立がん研究所が支援する世界最大級の権威ある臨床試験グループであるNRG Oncologyにより、OBP-301と放射線化学療法を併用した際の安全性と有効性の検討を目的として2021年12月から開始され、15例の患者を登録しました。本試験の中間結果は、International Journal of Radiation Oncology・Biology・Physicsに掲載されました。
OBP-301は米国において食道がんのオーファンドラッグ指定を受けており、同指定の下、本治験は実施されました。そのため、補助金の支給や臨床研究費用の税額控除の優遇を受けることができ、さらに、米国においてOBP-301承認後の先発権保護が与えられ、その期間中は市場独占権が得られることになっています。
iv) 放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験
「放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験」は、2026年6月にPMDAへ治験届を提出しました。本試験は、術前化学放射線療法にOBP-301 を併用投与し、有効性と安全性を評価するパイロット試験です。当社は、本試験の第1例目の投与開始を2026年12月期に計画しています。
②LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)に関する活動
OBP-601は、2010年から2014年にかけてBristol-Myers Squibb Co.(以下「BMS社」)へライセンスし、抗HIV薬としてBMS社によりPhase2b臨床試験が実施され、OBP-601の既存薬との非劣性が示されました。また、BMS社によって、OBP-601の長期毒性試験、がん原性試験や多くの臨床データが得られましたが、BMS社が戦略変更によりHIV領域から撤退したため、ライセンス契約は終了しました。その後、ブラウン大学(米国)の研究成果から、HIVの核酸系逆転写酵素阻害剤(以下「NRTI」)がレトロトランスポゾンの異所性発現を抑制することが示唆されました。その後の研究により、同作用を持つOBP-601が他のNRTIと比べて脳内移行性が高く、またLINE-1という逆転写酵素を強力に阻害してレトロトランスポゾンの産生を強力に抑制するという特長が確認されました。
このメカニズムに着目してOBP-601を神経難病治療薬へ応用しようと計画していたTransposon社との間で、当社は2020年6月に全世界を対象とした総額3億ドル超のライセンス契約を締結し、同年11月にTransposon社は第1回マイルストーンを達成しています。
Transposon社は、「進行性核上性麻痺(PSP: Progressive Supranuclear Palsy)」とC9 ORFという酵素の異常発現を伴った「筋萎縮性側索硬化症(ALS: Amyotrophic Lateral Sclerosis)及び前頭側頭型認知症(FTD: Frontotemporal Degeneration)」を対象としたプラセボを用いた二重盲検法による2つのPhase2臨床試験を完了し、次相の臨床試験の準備を進めています。また、Transposon社は、OBP-601が炎症性神経損傷を抑制したバイオマーカーの結果などから、アルツハイマー病を対象とした新たな臨床試験を開始する準備を進めています。さらに、米国の医療先端研究計画局(Advanced Research Projects Agency for Health:以下「ARPA-H」)のPROSPR(Proactive Solutions for Prolonging Resilience)プログラムの下で、OBP-601を用いた抗加齢を目的とする研究開発に対し、最大22百万ドルの研究開発支援(以下「アワード」)を受けることが公表されました。本アワードに基づく資金は、研究の進捗及び費用発生に応じて、Transposon社並びに参画する研究機関へARPA-Hから支払われる予定です。なお、アイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS: Aicardi-Goutieres Syndrome)を対象にした欧州での単群のPhase2臨床試験の優先順位を引き下げました。
これらのOBP-601に関する臨床試験は、ライセンス契約に基づき全額Transposon社の費用負担で進められています。また、同ライセンス契約に基づき、Transposon社はビジネス活動を行い、第三者である製薬会社などにOBP-601のライセンスを再許諾(サブライセンス)することが可能となっています。サブライセンスが成功した場合には、Transposon社がサブライセンス先から得た収入の一定割合が当社へ支払われます。
i) PSP Phase3臨床試験
PSPを対象としたPhase2臨床試験は2021年11月に1例目への投与が開始され、2022年8月に目標症例数の組入れが完了しました。
現在Transposon社は、第三者へのライセンスなどのビジネス活動と並行してPSPのPhase3臨床試験の開始に向けたEnd of Phase2 meetingを実施するなど、米国食品医薬品局(FDA)とPSPを対象にしたPhase3臨床試験の準備を具体的に進めています。Transposon社は、資金調達完了後に、PSPを対象としたPhase3臨床試験を2026年に開始する計画です。なお、FDAはPSPに対して、2024年5月にOBP-601を迅速承認審査制度であるファストトラック品目に指定しています。
ii) ALS Phase2/3臨床試験
C9ALS/FTDを対象としたPhase2臨床試験は2022年1月に投与が開始されました。2023年3月に目標症例数の組入れが完了し、本試験を終了しました。Transposon社は、2025年1月にFDAとALSに関するEnd of Phase2 meetingを実施しました。また、OBP-601はヒーリーALSプラットフォームに採択されました。Transposon社は、ヒーリーALSプラットフォームを活用して、ALSを対象としたPhase2/3臨床試験を2026年に開始する計画です。
iii) アルツハイマー病Phase2臨床試験
現在Transposon社は、PSPとALSのPhase2臨床試験の結果に基づいた以下の理由により、OBP-601をアルツハイマー病で展開するためにPhase2臨床試験の準備を進めています。OBP-601は、Alzheimer's Drug Discovery Foundation(アルツハイマー病創薬財団、以下「ADDF」)によりアルツハイマー病治療に対して有望であると判断され、Transposon社はADDFから約5百万ドルの投資を受けることになりました。Transposon社は、同資金を活用してアルツハイマー病に対するPhase2試験を2026年に開始する計画です。
iv) AGS Phase2臨床試験
Transposon社は、AGSという小頭症や高度な精神発達遅滞等を呈する遺伝性疾患を対象に、2023年7月にPhase2臨床試験の投与を欧州で開始しました。現在までに、本試験の中止を要するような安全性上の問題は報告されていませんが、Transposon社はOBP-601の開発戦略を見直し、PSPやALSの許可取り試験やアルツハイマー病のPhase2試験の開始を優先するため、AGSの優先順位を引き下げています。
v) 抗加齢
加齢に伴う炎症の増加とLINE-1活性化との関連性が注目され、OBP-601はARPA-Hのアワードに採択されました。健康寿命の延伸を目的に、OBP-601で健やかな加齢を実現できる可能性を活かした研究開発に関して、Transposon社と参画する研究機関へ最大22百万ドルのアワードが支払われます。Transposon社及び研究機関は、今後研究を進めて、将来の臨床応用を目指します。
③次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702に関する活動
OBP-702は、強力な生体内がん抑制遺伝子p53をベクター内に搭載する新規腫瘍溶解ウイルスで、「がん遺伝子治療」と、OBP-301の持つ「腫瘍溶解作用」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つ第二世代のウイルス療法です。2025年3月に採択された国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成金事業を活用して、岡山大学消化器腫瘍外科学の研究グループにより、すい臓がんを対象とした医師主導治験の準備を進めています。既に、ゲムシタビン耐性すい臓癌細胞株のマウスモデルを用いた実験においては、PD-L1抗体を併用することでより強い抗腫瘍効果が確認されています。また、がん治療で問題となっているがん組織の間質系細胞(CAF : Cancer Associated Fibroblast)に対しても殺傷効果を示すことが示されており、今後、間質系細胞によって治療が困難と考えられているすい臓がんなどの難治性がんに対する新しい治療法として開発していくことが期待されます。当社は、岡山大学がすい臓がんを対象としたOBP-702の医師主導治験を2026年に開始することを予定しています。
OBP-301の食道がんでの開発の経緯と同様に、岡山大学がOBP-702の臨床における安全性や用法を検討した後に、当社が臨床開発を引き継ぎ、OBP-301との棲み分けを考慮しながら開発を進めていく方針です。
④ウイルス感染症治療薬OBP-2011に関する活動
OBP-2011は、これまでの実験結果によりヌクレオカプシド形成を阻害する新規メカニズムを有する化合物であることが推定されていますが、現段階ではその詳細なメカニズムは解明されていません。OBP-2011はすでに承認されているコロナ治療薬の主なメカニズムであるポリメラーゼ阻害やプロテアーゼ阻害とは異なるメカニズムであることが推察されており、コロナウイルスの様々な変異株に対して効果が左右されないというデータが得られています。しかし、新型コロナ治療薬の承認ハードルが上昇していること、並びに新型コロナ治療薬の複数上市による緊急性の低下などの外部環境の変化や、OBP-301へ経営リソースを集中させるために、開発方針を見直す必要性が生じました。今後は、鹿児島大学と詳細なメカニズム解明を行った上でコロナウイルス以外のRNAウイルスに対する新規適応を検討していく考えです。
⑤がん検査薬OBP-401に関する活動
検査自動化プラットフォームの確立を目的に、OBP-401によって蛍光発光させた血液中で生きているがん細胞の画像学習を進め、AIによる自動判定を目指しています。しかし、画像学習に必要な多くの画像を取得することに、当初計画と比較して時間を要したため開発進捗は遅延しています。なお、OBP-301へ経営リソースを集中させるため、優先順位を引き下げています。
⑥HDAC阻害剤OBP-801に関する活動
2009年にアステラス製薬株式会社から導入したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるOBP-801は、各種固形がんを対象とした米国でのPhase1臨床試験で用量制限毒性(DLT:Dose Limiting Toxicity)が発生し、推定有効量までの投与量の増量が不可能となったため、がん領域の開発を中断しました。
一方、新規適応領域である眼科領域では、京都府立医科大学眼科学教室の実験において、緑内障手術を行った際に形成される濾過胞の線維化抑制作用が認められ、2023年4月の日本眼科学会やARVO(視覚と眼科学研究協会学会)で研究結果が発表されました。また、2024年に日本国内で成立した眼科領域に対するOBP-801の用途特許について、2025年10月に同特許の保護範囲を拡張する旨の査定を受けました。なお、OBP-301へ経営リソースを集中させるため、優先順位を引き下げています。
主なパイプラインの開発状況は、以下のとおりです。
(1) 業績の状況
当中間会計期間(2026年1月1日~2026年6月30日)における日本経済は、2026年イラン戦争に伴うエネルギー資源の高騰や円安による輸入物価の上昇などがあったものの、AI(人工知能)や半導体関連需要の強い追い風により、日本経済の底堅さが確認されました。また、海外経済においても、中東情勢の不安定化を受けた原油価格上昇や供給混乱による物価上昇が生じたものの、地政学リスクの低下や好調な株式市場を背景に、世界経済の拡大は今後も継続する見通しです。
このような状況下、当社は「未来のがん治療に新たな選択肢を与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンとし、特に、がんのウイルス療法OBP-301を中心に研究・開発・ビジネス活動を推進させ、2026年6月8日に食道がん治療再生医療等製品として製造販売承認を得ました。本製造販売承認に伴い、当社は販売提携先の富士フイルム富山化学株式会社(以下、「富士フイルム富山化学」)から2026年7月にマイルストーン収入などを受け取りました。2026年8月5日には中央社会保険医療協議会総会が開催され、OBP-301の薬価案は1瓶310万2489円(患者1人当たり930万7467円)で了承され、8月13日に薬価収載・保険適用の予定です。当社は、2026年8月21日にテロメライシン注の販売を開始する予定です。また、LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)は、Transposon Therapeutics, Inc.(以下「トランスポゾン社」)とのライセンス契約の下、同社の全額費用負担により臨床試験が実施され、トランスポゾン社のビジネス活動も進んでいます。
当社活動の詳細に関しては、「2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (7) 研究開発活動」をご確認ください。
当中間会計期間の業績は、売上高503,090千円(前年同期は売上高28,546千円)、営業損失767,606千円(前年同期は営業損失1,267,127千円)となりました。また、営業外収益として、受取利息3,240千円、為替差益17,373千円等を、営業外費用として支払利息8,837千円、譲渡制限付株式報酬償却2,571千円、株式交付費2,248千円等を計上した結果、経常損失760,604千円(前年同期は経常損失1,311,654千円)になり、中間純損失762,153千円(前年同期は中間純損失1,313,230千円)となりました。
(2) 財政状態の分析
当中間会計期間末における資産は、現金及び預金の減少等により4,510,606千円(前事業年度末比1%減)となりました。負債は、短期借入金の増加等により1,253,229千円(前事業年度末比125.4%増)となりました。純資産は、中間純損失等により3,257,377千円(前事業年度末比18.6%減)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当中間会計期間における現金及び現金同等物は、前事業年度の3,429,561千円から2,941,682千円へと487,879千円減少しました。当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは1,017,309千円の支出(前年同期は1,037,289千円の支出)となりました。これは主として、税引前中間純損失760,604千円、売上債権の増加551,172千円、前払金の減少164,514千円、未払費用の増加155,111千円、未収入金の増加143,369千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは31,525千円の収入(前年同期は5,040千円の支出)となりました。これは主として、貸付金の回収による収入31,742千円、有形固定資産の取得による支出1,241千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは496,622千円の収入(前年同期は42,153千円の収入)となりました。これは主として、短期借入金の純増440,000千円、長期借入による収入100,000千円、長期借入金の返済による支出55,552千円、株式の発行による収入17,616千円、リース債務の返済による支出5,138千円等によるものであります。
(4) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当中間会計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について、重要な変更はありません。
(5) 経営方針・経営戦略等
当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間会計期間において、新たな事業上及び財務上の対処すべき課題の発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更はありません。
(7) 研究開発活動
当社の当中間会計期間における創薬事業の研究開発費は、766,164千円となりました。なお、当中間会計期間における研究開発活動の状況は以下のとおりです。
1) 研究開発体制について
2026年6月30日現在、研究開発部門は27名在籍しており、これは総従業員数の60.0%に当たります。
2) 研究開発並びにビジネス活動について
当社は、食道がん治療再生医療等製品として2026年6月8日に製造販売承認を得たOBP-301の国内ビジネスを製薬会社モデルで展開させ、従来のライセンス依存の単一の事業モデルから、製薬会社型とライセンス型の『ハイブリッド型事業モデル』へ移行させています。当社は同方針の下に、研究開発並びにビジネス活動を進めました。
①腫瘍溶解ウイルスOBP-301に関する活動
当社は、厚生労働省から2026年6月8日に食道がん治療再生医療等製品として製造販売承認を得ました。同承認は、条件及び期限付き承認ではなく『通常承認』であり、市販後臨床試験は不要となります。2026年8月5日には中央社会保険医療協議会総会が開催され、OBP-301の薬価案は1瓶310万2489円(患者1人当たり930万7467円)で了承され、8月13日に薬価収載・保険適用の予定です。当社は、2026年8月21日にテロメライシン注の販売を開始する予定です。
この適応に続くOBP-301の国内での効能拡大試験として、当社は2026年6月に放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験の治験届を提出しました。同試験は、2026年12月期に投与を開始する見通しです。
一方、海外での開発は、OBP-301とペムブロリズマブの共同開発体制を構築するために、当社とコーネル大学、並びにコーネル大学とMSD社の間で、2023年12月にそれぞれ医師主導治験契約を締結しました。同契約に基づき、当社とMSD社は、胃がんの2次治療患者を対象としたPhase2医師主導治験の研究開発費を折半して、本臨床試験を進めています。
また、米国のがん研究組織NRGオンコロジーグループにより進められた放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験は、2025年1月のASCO- GI(米国臨床腫瘍学会 消化器がんシンポジウム)で中間結果が発表され、同試験の中間結果が海外医学誌に掲載されました。
国内ビジネス面では、製造販売承認に伴い、販売提携先の富士フイルム富山化学から2026年7月にマイルストーン収入と前受金を受け取りました。また、製造元のヘノジェン社から国内でOBP-301の保管・包装などの物流を担う三井倉庫ホールディングス株式会社(以下、「三井倉庫HD」)を経て、販売提携先の富士フイルム富山化学を通じて医療機関に至るサプライチェーンを整備しました。OBP-301の有効期間を延長させ、在庫管理の柔軟性を高めるなど販売開始の準備を進めています。
海外でのビジネス展開に関しては、2024年12月には台湾のMedigen社と台湾での販売権に関するライセンス契約を締結しました。Medigen 社により台湾で上市された後には、当社は Medigen 社へ OBP-301 の最終製品を有償で供給し、併せて Medigen 社から販売額に応じたロイヤリティ収入を得ることになります。今後も、海外でのビジネス展開を進め、OBP-301の国内外に向けたマーケット拡大を行ってゆく方針です。
知的財産面では、日本で既に成立していた腫瘍溶解アデノウイルスの内視鏡投与に関する特許に関して、2026年5月に保護範囲を拡大しました。また、同月には欧州での内視鏡投与の特許付与予定通知の発行を受けています。これらの特許は、OBP-301に限らずOBP-702や他社の腫瘍溶解アデノウイルスも対象であり、2040年5月まで特許が存続します。
OBP-301は、製造販売承認を得た臨床試験や組入れが終了した臨床試験も含めて、以下の4つの臨床試験が国内外で進んでいます。
i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)
ii) 抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
iii) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験
iv) 放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験
i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)
放射線併用食道がんPhase2臨床試験(OBP101JP試験)は、2019年4月の「先駆け審査制度」の指定に基づき全国17ヶ所で治験を行い、2026年6月8日に食道がん治療再生医療等製品として製造販売承認を得ました。製造販売承認に伴い、販売提携先の富士フイルム富山化学から2026年7月にマイルストーン収入及び前受金を受け取りました。2026年8月5日には中央社会保険医療協議会総会が開催され、OBP-301の薬価案は1瓶310万2489円(患者1人当たり930万7467円)で了承され、8月13日に薬価収載・保険適用の予定です。当社は、2026年8月21日にテロメライシン注の販売を開始する予定です。
当社はOBP-301を円滑に供給するために、国内製造所である三井倉庫HDで商用1ロット目製剤の個装箱への封入を行いました。有効期間18ヶ月で商用1ロット目の出荷を開始する計画です。当社から出荷されたOBP-301は、2024年2月に販売提携契約を締結した富士フイルム富山化学を通じて、医薬品卸会社から医療現場に提供されます。
また、商用2ロット目製剤は、ヘノジェン社で製剤製造を完了し、日本国内へ輸入できる状況です。当社は、2026年下半期には24ヶ月間の安定性データを確認する計画です。今後も、有効期間を延長させ、OBP-301の在庫管理の柔軟性を高め、安定供給に努めていきます。
ii) 抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
「抗PD-1抗体併用2次治療胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、米国コーネル大学が当社の事前合意を得た上で、MSD社へ新たな治験の実施や治験費用の負担を提案し、2023年12月に当社とコーネル大学の契約、コーネル大学とMSD社の契約が締結され、共同開発体制を構築しました。
本治験は、抗PD-1/PD-L1抗体を含む1次治療に抵抗性のある胃がん・胃食道接合部がん患者を対象に、2次治療としてOBP-301と抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用します。現在、当社とMSD社で費用を折半して組入れが進んでいます。2026年4月にアイスランドで開催された国際腫瘍溶解ウイルス学会で、本治験に先立って組入れが完了したペムブロリズマブ併用の3次治療胃がんPhase2試験の長期生存率に関する結果が、報告されました。
iii) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験
「放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験」は、米国国立がん研究所が支援する世界最大級の権威ある臨床試験グループであるNRG Oncologyにより、OBP-301と放射線化学療法を併用した際の安全性と有効性の検討を目的として2021年12月から開始され、15例の患者を登録しました。本試験の中間結果は、International Journal of Radiation Oncology・Biology・Physicsに掲載されました。
OBP-301は米国において食道がんのオーファンドラッグ指定を受けており、同指定の下、本治験は実施されました。そのため、補助金の支給や臨床研究費用の税額控除の優遇を受けることができ、さらに、米国においてOBP-301承認後の先発権保護が与えられ、その期間中は市場独占権が得られることになっています。
iv) 放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験
「放射線化学療法併用下部直腸・肛門がんPhase1b/2a 臨床試験」は、2026年6月にPMDAへ治験届を提出しました。本試験は、術前化学放射線療法にOBP-301 を併用投与し、有効性と安全性を評価するパイロット試験です。当社は、本試験の第1例目の投与開始を2026年12月期に計画しています。
②LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)に関する活動
OBP-601は、2010年から2014年にかけてBristol-Myers Squibb Co.(以下「BMS社」)へライセンスし、抗HIV薬としてBMS社によりPhase2b臨床試験が実施され、OBP-601の既存薬との非劣性が示されました。また、BMS社によって、OBP-601の長期毒性試験、がん原性試験や多くの臨床データが得られましたが、BMS社が戦略変更によりHIV領域から撤退したため、ライセンス契約は終了しました。その後、ブラウン大学(米国)の研究成果から、HIVの核酸系逆転写酵素阻害剤(以下「NRTI」)がレトロトランスポゾンの異所性発現を抑制することが示唆されました。その後の研究により、同作用を持つOBP-601が他のNRTIと比べて脳内移行性が高く、またLINE-1という逆転写酵素を強力に阻害してレトロトランスポゾンの産生を強力に抑制するという特長が確認されました。
このメカニズムに着目してOBP-601を神経難病治療薬へ応用しようと計画していたTransposon社との間で、当社は2020年6月に全世界を対象とした総額3億ドル超のライセンス契約を締結し、同年11月にTransposon社は第1回マイルストーンを達成しています。
Transposon社は、「進行性核上性麻痺(PSP: Progressive Supranuclear Palsy)」とC9 ORFという酵素の異常発現を伴った「筋萎縮性側索硬化症(ALS: Amyotrophic Lateral Sclerosis)及び前頭側頭型認知症(FTD: Frontotemporal Degeneration)」を対象としたプラセボを用いた二重盲検法による2つのPhase2臨床試験を完了し、次相の臨床試験の準備を進めています。また、Transposon社は、OBP-601が炎症性神経損傷を抑制したバイオマーカーの結果などから、アルツハイマー病を対象とした新たな臨床試験を開始する準備を進めています。さらに、米国の医療先端研究計画局(Advanced Research Projects Agency for Health:以下「ARPA-H」)のPROSPR(Proactive Solutions for Prolonging Resilience)プログラムの下で、OBP-601を用いた抗加齢を目的とする研究開発に対し、最大22百万ドルの研究開発支援(以下「アワード」)を受けることが公表されました。本アワードに基づく資金は、研究の進捗及び費用発生に応じて、Transposon社並びに参画する研究機関へARPA-Hから支払われる予定です。なお、アイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS: Aicardi-Goutieres Syndrome)を対象にした欧州での単群のPhase2臨床試験の優先順位を引き下げました。
これらのOBP-601に関する臨床試験は、ライセンス契約に基づき全額Transposon社の費用負担で進められています。また、同ライセンス契約に基づき、Transposon社はビジネス活動を行い、第三者である製薬会社などにOBP-601のライセンスを再許諾(サブライセンス)することが可能となっています。サブライセンスが成功した場合には、Transposon社がサブライセンス先から得た収入の一定割合が当社へ支払われます。
i) PSP Phase3臨床試験
PSPを対象としたPhase2臨床試験は2021年11月に1例目への投与が開始され、2022年8月に目標症例数の組入れが完了しました。
現在Transposon社は、第三者へのライセンスなどのビジネス活動と並行してPSPのPhase3臨床試験の開始に向けたEnd of Phase2 meetingを実施するなど、米国食品医薬品局(FDA)とPSPを対象にしたPhase3臨床試験の準備を具体的に進めています。Transposon社は、資金調達完了後に、PSPを対象としたPhase3臨床試験を2026年に開始する計画です。なお、FDAはPSPに対して、2024年5月にOBP-601を迅速承認審査制度であるファストトラック品目に指定しています。
ii) ALS Phase2/3臨床試験
C9ALS/FTDを対象としたPhase2臨床試験は2022年1月に投与が開始されました。2023年3月に目標症例数の組入れが完了し、本試験を終了しました。Transposon社は、2025年1月にFDAとALSに関するEnd of Phase2 meetingを実施しました。また、OBP-601はヒーリーALSプラットフォームに採択されました。Transposon社は、ヒーリーALSプラットフォームを活用して、ALSを対象としたPhase2/3臨床試験を2026年に開始する計画です。
iii) アルツハイマー病Phase2臨床試験
現在Transposon社は、PSPとALSのPhase2臨床試験の結果に基づいた以下の理由により、OBP-601をアルツハイマー病で展開するためにPhase2臨床試験の準備を進めています。OBP-601は、Alzheimer's Drug Discovery Foundation(アルツハイマー病創薬財団、以下「ADDF」)によりアルツハイマー病治療に対して有望であると判断され、Transposon社はADDFから約5百万ドルの投資を受けることになりました。Transposon社は、同資金を活用してアルツハイマー病に対するPhase2試験を2026年に開始する計画です。
iv) AGS Phase2臨床試験
Transposon社は、AGSという小頭症や高度な精神発達遅滞等を呈する遺伝性疾患を対象に、2023年7月にPhase2臨床試験の投与を欧州で開始しました。現在までに、本試験の中止を要するような安全性上の問題は報告されていませんが、Transposon社はOBP-601の開発戦略を見直し、PSPやALSの許可取り試験やアルツハイマー病のPhase2試験の開始を優先するため、AGSの優先順位を引き下げています。
v) 抗加齢
加齢に伴う炎症の増加とLINE-1活性化との関連性が注目され、OBP-601はARPA-Hのアワードに採択されました。健康寿命の延伸を目的に、OBP-601で健やかな加齢を実現できる可能性を活かした研究開発に関して、Transposon社と参画する研究機関へ最大22百万ドルのアワードが支払われます。Transposon社及び研究機関は、今後研究を進めて、将来の臨床応用を目指します。
③次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702に関する活動
OBP-702は、強力な生体内がん抑制遺伝子p53をベクター内に搭載する新規腫瘍溶解ウイルスで、「がん遺伝子治療」と、OBP-301の持つ「腫瘍溶解作用」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つ第二世代のウイルス療法です。2025年3月に採択された国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成金事業を活用して、岡山大学消化器腫瘍外科学の研究グループにより、すい臓がんを対象とした医師主導治験の準備を進めています。既に、ゲムシタビン耐性すい臓癌細胞株のマウスモデルを用いた実験においては、PD-L1抗体を併用することでより強い抗腫瘍効果が確認されています。また、がん治療で問題となっているがん組織の間質系細胞(CAF : Cancer Associated Fibroblast)に対しても殺傷効果を示すことが示されており、今後、間質系細胞によって治療が困難と考えられているすい臓がんなどの難治性がんに対する新しい治療法として開発していくことが期待されます。当社は、岡山大学がすい臓がんを対象としたOBP-702の医師主導治験を2026年に開始することを予定しています。
OBP-301の食道がんでの開発の経緯と同様に、岡山大学がOBP-702の臨床における安全性や用法を検討した後に、当社が臨床開発を引き継ぎ、OBP-301との棲み分けを考慮しながら開発を進めていく方針です。
④ウイルス感染症治療薬OBP-2011に関する活動
OBP-2011は、これまでの実験結果によりヌクレオカプシド形成を阻害する新規メカニズムを有する化合物であることが推定されていますが、現段階ではその詳細なメカニズムは解明されていません。OBP-2011はすでに承認されているコロナ治療薬の主なメカニズムであるポリメラーゼ阻害やプロテアーゼ阻害とは異なるメカニズムであることが推察されており、コロナウイルスの様々な変異株に対して効果が左右されないというデータが得られています。しかし、新型コロナ治療薬の承認ハードルが上昇していること、並びに新型コロナ治療薬の複数上市による緊急性の低下などの外部環境の変化や、OBP-301へ経営リソースを集中させるために、開発方針を見直す必要性が生じました。今後は、鹿児島大学と詳細なメカニズム解明を行った上でコロナウイルス以外のRNAウイルスに対する新規適応を検討していく考えです。
⑤がん検査薬OBP-401に関する活動
検査自動化プラットフォームの確立を目的に、OBP-401によって蛍光発光させた血液中で生きているがん細胞の画像学習を進め、AIによる自動判定を目指しています。しかし、画像学習に必要な多くの画像を取得することに、当初計画と比較して時間を要したため開発進捗は遅延しています。なお、OBP-301へ経営リソースを集中させるため、優先順位を引き下げています。
⑥HDAC阻害剤OBP-801に関する活動
2009年にアステラス製薬株式会社から導入したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるOBP-801は、各種固形がんを対象とした米国でのPhase1臨床試験で用量制限毒性(DLT:Dose Limiting Toxicity)が発生し、推定有効量までの投与量の増量が不可能となったため、がん領域の開発を中断しました。
一方、新規適応領域である眼科領域では、京都府立医科大学眼科学教室の実験において、緑内障手術を行った際に形成される濾過胞の線維化抑制作用が認められ、2023年4月の日本眼科学会やARVO(視覚と眼科学研究協会学会)で研究結果が発表されました。また、2024年に日本国内で成立した眼科領域に対するOBP-801の用途特許について、2025年10月に同特許の保護範囲を拡張する旨の査定を受けました。なお、OBP-301へ経営リソースを集中させるため、優先順位を引き下げています。
主なパイプラインの開発状況は、以下のとおりです。
| 開発品 | 適応疾患 | 併用療法 | 開発地域 | 開発ステージ |
| OBP-301 (suratadenoturev) | 食道がん | 放射線療法 | 日本 | 製造販売承認 (通常承認) |
| 放射線化学療法 | 米国 | Phase1 | ||
| 抗PD-1抗体ペムブロリズマブ | 日本 | Phase1 (終了) | ||
| 胃がん・ 胃食道接合部がん | 抗PD-1抗体ペムブロリズマブ (3次治療) | 米国 | Phase2 (終了) | |
| 抗PD-1抗体ペムブロリズマブ (2次治療) | 米国 | Phase2 | ||
| 肝細胞がん | 単独療法 | 韓国・台湾 | Phase1 (終了) | |
| 下部直腸・肛門がん | 放射線化学療法 | 日本 | Phase1b/2a | |
| OBP-601 (censavudine) | 進行性核上性麻痺(PSP) | 単独療法 (二重盲検) | 米国 | Phase2 (Phase3準備中) |
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 単独療法 (二重盲検) | 米国・欧州 | Phase2 (Phase2/3準備中) | |
| アルツハイマー病 | 未定 | 米国 | Phase2準備中 | |
| アイカルディ・ ゴーティエ症候群(AGS) | 単独療法 | 欧州 | Phase2 (組入れ終了) | |
| 抗加齢 | 未定 | 米国 | 前臨床 | |
| OBP-702 | すい臓がん | 未定 | 日本 | 前臨床 (Phase1準備中) |
| OBP-2011 | ウイルス感染症 | 未定 | 日本 | 前臨床 |
| OBP-401 | 固形がん | - | 日本 | 臨床研究 |
| OBP-801 | 緑内障手術後の 濾過胞線維化抑制 | - | 日本 | 前臨床 |