有価証券報告書-第21期(令和2年8月1日-令和3年7月31日)

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2021/10/28 15:10
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103項目
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要、及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績の分析
当事業年度における我が国経済は、内閣府の2021年8月の月例経済報告によると、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが増している」とされております。先行きについては、「感染拡大の防止策を講じ、ワクチン接種を促進するなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある」とされております。
UGCサービス事業(注1)を展開するインターネット関連業界におきましては、『消費動向調査(令和3(2021)年3月実施分』(内閣府経済社会総合研究所)によりますと、スマートフォン世帯普及率は88.9%(前年比4.5ポイント増)と普及が進んでおり、今後もスマートフォン市場は緩やかに拡大していくものと予測されます。
また、2021年8月に総務省情報通信政策研究所が公表した『令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』によりますと、「インターネットの平均利用時間が、平日、休日ともに各年代で増加している。特に、10代及び20代の平均利用時間が長い傾向にある。全世代では、平日、休日ともに「テレビ(リアルタイム)視聴及びインターネット利用が長い傾向が継続している。平日のインターネット利用の平均利用時間が、テレビ(リアルタイム)視聴の平均利用時間を2012年の調査開始以来、初めて超過した」、「スマートフォンの利用率は全年代で92.7%となり、2012年の調査開始以降、一貫して増加している。年代別には、10代から40代で90%を超過し、50代及び60代についても一貫して増加、60代で80%を超過している」とされており、インターネットの情報通信メディアとしての存在がテレビと肩を並べ、今後もスマートフォンなどの機器の保有・利用により、インターネットを取り巻くマーケットサイズは拡大していくものと予測しております。
さらに、『2020年 日本の広告費』(株式会社電通)によりますと、「世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、日本の総広告費は6兆1,594億円となり、前年比88.8%となった。これは、東日本大震災が発生した2011年以来、実に9年ぶりのマイナス成長であり、リーマン・ショックの影響を受けた2009年に次ぐマイナス幅となった。一方で、インターネット広告費は、社会のデジタル化の加速が追い風となり、前年に引き続きプラス成長となった」とされており、インターネット広告は伸長傾向にあるものの、各種イベントや広告販促キャンペーンの延期・中止により、広告費全体としては縮減傾向となっており、急激な市場環境の回復は望めないものと予測しております。
このような事業環境のもと、当社におきましては、自社で開発したユーザー参加型サービス群を「コンテンツプラットフォームサービス」と位置付け、その運営を通して培われた技術力やユーザーコミュニティを活かし、法人顧客向けに「コンテンツマーケティングサービス」、「テクノロジーソリューションサービス」をサービス領域として提供しております。市場環境の変化や、それに伴う経済的予測等を鑑み、人的資源や知的財産、資金等の経営資源を各サービスへ効率的に配分することで、経営の機動力の向上を図ってまいります。
② 業績の概況
(ⅰ)サービス別の販売動向
<コンテンツプラットフォームサービス>コンテンツプラットフォームサービスでは、ユーザーがコンテンツを発信、拡散するUGCサービスとして、「はてなブログ」、「はてなブックマーク」などのサービスを展開しております。
当事業年度においては、主力サービスとなっている「はてなブログ」の登録ユーザー数は順調に増加したものの、月間ユニークブラウザ数(注2)や、「はてなブログ」の個人向け有料プラン「はてなブログPro」などの課金売上については、軟調に推移しました。「はてなブログ」においては、2020年9月よりスモールビジネス向けプラン「はてなブログBusiness」の提供を開始いたしました。これは、「はてなブログMedia」を活用した本格的なオウンドメディア構築よりも手軽な情報発信を要望するスタートアップ企業や、スモールビジネスを展開する企業のニーズの高まりに対応するため、使いやすい機能に絞ったうえで、戦略的な価格で「はてなブログ」を法人向けに提供するものであります。有料課金サービスについては、今後も、個人・法人向け問わずに機能拡充を図りながら、契約件数を着実に積み上げ、広告収入以外の収益基盤を育成してまいります。
コンテンツプラットフォームサービス上に掲載するアフィリエイト広告については、広告枠を提供したい数多くの広告媒体の運営事業者との間で、広告を出稿したい数多くの広告主を集めた広告配信ネットワーク(アドネットワーク(注3))が形成されるなど、関係者は年々増加傾向にあり、各事業者の関与の仕方は、多様かつ複雑なものとなっております。このような事業環境の中で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う景気悪化懸念から、前事業年度において、旅行業界など一部の業界における国内の広告出稿量が大幅に減少したものの、当事業年度においては、緩やかな回復傾向にあるため、広告売上は底堅く推移いたしました。
その結果、コンテンツプラットフォームサービスの売上高は、524,775千円(前年比0.7%増)となりました。
<コンテンツマーケティングサービス>コンテンツマーケティングサービスでは、BtoB向けストック型ビジネスとして、CMS(注4)である「はてなブログMedia」を活用したオウンドメディア(企業が顧客などに向けて伝えたい情報を発信するための自社メディア)の構築・運用支援サービスや、「はてなブログ」などのUGCサービスを活用したネイティブ広告、バナー広告、タイアップ広告などを展開しております。
当社が提供する「はてなブログMedia」について、使いやすい操作画面、高いシステム安定性、検索エンジンから評価されやすいサイト構造を実現するため、機能強化に努めました。Googleが業界各社と協力して開発を進める「モバイル環境でWebコンテンツの表示を高速化するプロジェクト」であるAMP(Accelerated Mobile Pages)に国産CMSとしてはいち早く対応し、大手企業、ベンチャー企業を問わず、幅広い企業層に対してサービス提供実績を積み上げてまいりました。
また、提供サービスプランに「レギュラープラン」「ライトプラン」「採用オウンドメディアプラン」の各プランを導入し、販売機会の更なる獲得に努めました。デジタルマーケティングを目的としたオウンドメディアの開設が活発化している昨今の市場環境において、フルサービスを提供する「レギュラープラン」はもとより、「ライトプラン」という販売価格面での戦略的提示により、顧客のオウンドメディアの新規開設を推進したことや、「採用オウンドメディアプラン」として、自社で求める人材の獲得や、働き方改革に関する情報発信や社員インタビューなど、採用マーケティングの一環として、採用を成功に導くための機能と、素早く安価にオウンドメディアを立ち上げられるプランを訴求し、顧客サイドのオウンドメディアの導入障壁をさらに押し下げた結果、新規導入のメディア数が増加したものであります。
一方で、新型コロナウイルス感染症拡大による景気悪化懸念から、「はてなブログMadia」の運用媒体数の増加ペースは鈍化し、当社UGCサービスに掲載されるネイティブ広告、バナー広告などの広告売上、コンテンツ作成支援料についても厳しい販売環境となりました。政府や自治体主導の経済対策や感染対策が取られていく中で、外出や移動の自粛によるデリバリーやネット通販、オンライン会議やオンラインイベント・セミナー、リモートワークなど社会におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、インターネット広告費の回復も見られ始めていることから、デジタル起点の広告需要を確実に取り込むべく邁進してまいります。
その結果、コンテンツマーケティングサービスの売上高は、662,161千円(前年比18.2%減)となりました。
<テクノロジーソリューションサービス>テクノロジーソリューションサービスでは、受託サービスとして、顧客独自のネットワークサービスに関する企画、開発、運用の受託と、ビッグデータサービスとして、BtoB向けストック型ビジネスであるサーバー監視サービス「Mackerel(マカレル)」を展開しております。
Webマンガサービスに特化したマンガビューワ「GigaViewer」について、当事業年度においては、「コミックトレイル」(サービス提供者:株式会社芳文社)、「コミックブシロードWEB」(サービス提供者:株式会社ブシロードメディア)、「FEEL web」(サービス提供者:株式会社祥伝社)の3サービスに搭載されました。「少年ジャンプ+」「となりのヤングジャンプ」(サービス提供者:株式会社集英社)、「マガジンポケット」「コミックDAYS」(サービス提供者:株式会社講談社)など、合計12社、搭載累計14サービスとなりました。また、ユーザー向けの各種機能に加え、サービス提供者のサービス運用コストの削減に貢献する管理機能の継続的な機能開発の提供により、売上は堅調に推移いたしました。また、2020年11月には、「少年ジャンプ+」に提供する「GigaViewer」のストア機能を拡張し、電子版「週刊少年ジャンプ」のレンタル対応のみならず、定期購読対応が可能となりました。12月には「コミプレ」(サービス提供者:株式会社ヒーローズ)に対し、「GigaViewer」を搭載したマネタイズ支援機能「ストア機能」の提供を開始しました。2021年4月には、株式会社集英社の少年ジャンプ+編集部と協業のうえ、マンガ投稿サービス「マンガノ」の提供を開始しました。「マンガノ」は、ユーザー投稿型サービスや「GigaViewer」を提供する当社と、株式会社集英社が共同開発した、マンガ作品に特化した投稿サービスになります。マンガ家にとっての使いやすさを追求した作品投稿機能に加えて、作品の販売機能も備えており、継続的な機能開発に共同で取り組むことで、マンガ作品の公開、販売などを支援してまいります。7月には、「くらげバンチ」(サービス提供者:株式会社新潮社)に対し、「GigaViewer」を搭載したマネタイズ支援機能「ストア機能」の提供を開始しました。このように、「GigaViewer」の利便性や広告運用を含めたソリューションは、顧客から評価されており、WEBマンガにおけるデファクトスタンダードの位置を築き上げるべく、「GigaViewer」の導入拡大を推進し、開発・運用料のみならず、レベニューシェア(広告・課金収益など)の収益拡大にも注力してまいります。
受託サービスにおけるシステム開発については、複数の受託開発案件の納品及び検収が完了したため、収益認識にいたりました。保守運用サービスでは、運用案件数の積上げにより、売上成長に繋がりました。
「Mackerel(マカレル)」については、AWS(アマゾンウェブサービス)のパートナー制度「AWS パートナーコンピテンシープログラム」において、「AWS DevOps コンピテンシー」認定を、当社が国内企業で初めて取得しております。さらに、「AWS Partner Network(APN)Award2019」において、「Mackerel(マカレル)」を通じたAWSへのビジネス貢献が評価され、「APN Technology Partner of the Year 2019 - Japan」を受賞いたしました。これはAWSの最新サービスへのいち早い対応により、AWSユーザーの運用負荷を軽減させるサービス連携を行ったことで、新規顧客の獲得に繋がったことなどが評価されたことによります。これにより、AWS(アマゾンウェブサービス)の中で、サーバー監視サービスとしての認知度が向上し、更なる導入実績の積上げを図ることができました。また、「Mackerelコンテナエージェント」、「ロール内異常検知」がリリース後好評を得ており、潜在顧客のサービス需要に対して、効果的にアプローチした結果、売上は順調に成長いたしました。
2020年9月には、新機能として「Google Cloud インテグレーション」の提供を開始いたしました。本機能により、「Mackerel(マカレル)」を使うことで簡単にGoogle Cloudの連携対象サービスの監視ができるようになりました。また、2021年2月には、エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社が提供する「スマートコネクト クラウド監視保守サービス」に、4月には、株式会社コマースニジュウイチが提供するECプラットフォームサービス「ECo2(エコツー)」の監視サービスに当社の「Mackerel(マカレル)」が標準機能として採用されました。今後も、「Mackerel(マカレル)」の更なる拡販と、より快適な監視環境の提供に取り組んでまいります。
その結果、テクノロジーソリューションサービスの売上高は、1,434,283千円(前年比18.3%増)となりました。
(ⅱ)利益の概況
中長期的な企業価値の向上への取り組みの結果、営業費用(売上原価と販売費及び一般管理費の合計)については2,372,509千円となり、前年比4.7%増となりました。主な増加要因は、自社利用目的のソフトウエアの計上に伴い、売上原価の減価償却費が増加したことや、広告レベニューシェアに伴う収益配分原価が増加したこと、主要3サービス拡張と事業創出のため、人材採用投資を積極的に行ったことにより、給料及び手当が前年比14.3%増となったことなどによります。主な減少要因は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために国内外を問わず、不要不急の出張は原則禁止としたことや、販促イベントの休止・制限など、関連する営業活動費が減少したことによります。人材への経営資源の配分は、当社が将来にわたり、競争優位性を確保するために、収益基盤の確立に向けた成長戦略投資として位置づけております。サービスの高成長を中長期的に実現していくために、エンジニアを中心とした更なる人材投資について、市場環境を注視しつつ、フレキシブルな対応をしてまいります。
営業外損益や特別損益については、受取利息及び配当金1,376千円の計上、為替差益2,993千円の計上、サーバー機器等の廃棄に伴う固定資産除却損2,062千円の計上などがありました。
以上の結果、当事業年度の売上高は2,621,220千円(前年比3.1%増)、営業利益は248,711千円(同10.2%減)、経常利益は253,401千円(同9.2%減)、当期純利益は172,640千円(同9.5%減)となりました。
なお、当社はUGCサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(注)1.User Generated Contentの略。インターネット上で利用者自身がテキストや画像、映像などのコンテンツを発信することができる場を提供するサービス。
2.ある一定期間内にWEBサイトにアクセスした、重複のないブラウザ数。1人のユーザーが何度でも同じWEBサイトを訪れても1人と数えられる。「訪問数」ではなく、「訪問者数」を表し、WEBサイトの人気や興味の度合いを判断する指標。
3.アドネットワークとは、多数の広告媒体のWebサイトを束ねた広告配信ネットワークを形成し、それらのWEBサイト上で一括して広告を配信する手法であり、メディア運営者は、サイトページ上に広告枠のみをアドネットワーク事業者に提供し、掲載される広告が、システムにより自動配信される仕組み。
4.Contents Management Systemの略。HTMLやCSSのようなWEBサイトの制作に必要な専門知識を必要とせず、テキストや画像などの情報を入力するだけで、サイト構築を自動的に行うことができるシステム。
(ⅲ)新型コロナウイルス感染症による当社を取り巻く経営環境や想定されるリスクなど
新型コロナウイルス感染症について、感染力の強い変異株の出現により、これまでに経験のないスピードで感染が拡大しており、国内外の景気への影響が避けられない現況下、今後の経済活動、事業環境、雇用情勢など先行きは不透明な状況が継続しております。
『2020年 日本の広告費』(株式会社電通)によりますと、広告市場において、インターネット広告費はマスコミ四媒体広告費に匹敵する2.2兆円規模、総広告費全体の36.2%の市場規模となりました。その中でも動画広告やソーシャルメディア広告が牽引する形で市場が拡大し、特にモバイル向け広告の成長が顕著となり、明るい兆しも見え始めております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による景況感の著しい悪化から、広告出稿の取止や予算縮小の影響も依然として出ております。当社を含め、広告媒体社の業績は、景気によって広告支出を増減させる広告主の動向により、景気変動の影響を受けやすい傾向にあります。これに伴い、広告支出額の比較的大きい産業部門の事業環境の変化が、今後の当社の業績及び財政状態に負の影響を及ぼす可能性があります。
また、「はてなブログMedia」や「Mackerel(マカレル)」といったBtoB向けストック型サービスについては、オンラインセミナーなどの開催、SNS広告の活用などによるマーケティング戦略の実施により、リード顧客の獲得や、既存顧客に対する丁寧なフォローアップに努めてまいります。しかしながら、リアル展示場への出店機会の減少や、来客人数制限による集客効果の不調、顧客への外訪を含む対面販売機会の減少により、新規契約獲得の鈍化を一定程度見込んでおります。
一方で、当社が保有するサービス開発力を、「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などにおける機能開発や機能改善へ投下することにより、訪問者数の拡大を狙い、その結果として、有料オプション「はてなブログPro」の課金収入の伸長の実現や、ユーザー企業独自のネットサービスに関する企画、開発、運用を受託するサービス領域などで効果的に展開し、新たな収益機会の獲得を実現する好機とも見込んでおります。
当社は、収益機会を積極的に獲得するために、売上の立ち上がりを見通しつつ、新たな収益基盤の確立に向けた戦略的投資を継続してまいります。
経済的不透明感や危機感が継続することが予想される経営環境の中で、当社の資金の財源及び流動性については次のとおりであります。また、事業継続に対して万全の備えをする方針であります。
当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動により獲得したキャッシュ・フローでありますが、資金の手元流動性については、現金及び預金1,435,415千円と月平均売上高に対し6.6ヶ月分であり、現下、当社における資金流動性は十分確保されていると考えております。
また、当社は事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本的な財務方針としており、金融機関からの借入により調達することを目的として、前事業年度までに取引銀行5行との間で、総額1,000,000千円の当座貸越契約を締結しておりました。当事業年度において、新型コロナウイルス感染症に対するリスクファイナンスの一環として、与信枠の拡大の交渉を行った結果、既存取引銀行4行との間で、総額600,000千円の与信枠を純増いたしました。更なるバックアップラインを確保したことで、資金の手元流動性の補完が実現いたしました。今後は、運転資金や設備投資の需要動向や、それに伴うキャッシュ・ポジションを精査しつつ、適切なタイミングで資金調達を実行してまいります。
なお、当座貸越契約の未実行残高は、1,600,000千円となっております。
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(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、197,965千円増加し、
1,402,559千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は296,437円(前年は115,912千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として、税引前当期純利益251,496千円の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は105,849千円(前年は203,497千円の支出)となりました。
これは主に、減少要因として、無形固定資産の取得による支出109,857千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は6,923千円(前年は32,991千円の収入)となりました。
これは、増加要因として、新株予約権の行使による株式の発行による収入6,923千円があったことによるものであります。
(3)生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当社は生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
(b)受注実績
当事業年度の受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
サービスの名称当事業年度
(自 2020年8月1日
至 2021年7月31日)
受注高
(千円)
前年同期比
(%)
受注残高
(千円)
前年同期比
(%)
テクノロジーソリューションサービス405,180143.8275,505184.9
合計405,180143.8275,505184.9

(注)1. 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
2. 金額は、販売価格によっております。
3. コンテンツプラットフォームサービス、コンテンツマーケティングサービスは受注によらないため、記載はしておりません。
4.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
(4)販売実績
当事業年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
サービスの名称当事業年度
(自 2020年8月1日
至 2021年7月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)
コンテンツプラットフォームサービス524,775100.7
コンテンツマーケティングサービス662,16181.8
テクノロジーソリューションサービス1,434,283118.3
合計2,621,220103.1

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
3.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2019年8月1日
至 2020年7月31日)
当事業年度
(自 2020年8月1日
至 2021年7月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
ストライプジャパン株式会社242,0319.5278,28210.6
株式会社エフレジ268,92610.6232,7348.9

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わねばなりません。経営者は、債権、たな卸資産、投資、繰延税金資産等に関する見積り及び判断について、継続して評価を行っており、過去の実績や状況に応じて合理的と思われる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。また、その結果は資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、
「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであり
ます。
(2)当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、当社が重視している経営指標は、売上高、営業利益及び経常利益であります。
主要3サービスのシナジー効果を最大限に活用しつつ、売上高、営業利益及び経常利益を継続的に成長させることにより、企業価値の向上、株主価値の向上を目指してまいりました。当社は、経営方針に則った業績目標について、2020年9月11日に業績予想値を公表、2021年5月31日に業績予想値を修正いたしました。当社が定める経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況については次のとおりです。
なお、経営成績の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(単位:千円)
区分売上高営業利益経常利益当期純利益
業績予想値(A)2,607,675212,178216,215147,514
実績(B)2,621,220248,711253,401172,640
増減(B-A)13,54536,53237,18625,126
増減率(%)0.517.217.217.0

当社の資本の財源及び資金の流動性については次のとおりであります。当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動によるキャッシュ・フローによっております。資金の手元流動性については現金及び預金1,435,415千円と月平均売上高に対し6.6ヶ月分であり、当社における資金の流動性は十分確保されていると考えております。なお、当事業年度末時点において、有利子負債残高はありません。
運転資金需要のうち主なものは、人件費やデータセンター利用料等の営業費用、法人税等の税金費用であります。また、投資を目的とした資金需要の主なものは、ITインフラ設備や事務所設備等の設備投資であります。
当社は、事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。そのため、より一層の事業拡大を継続することに備え、金融機関からの借入により調達することを目的として、取引銀行5行との間で、総額1,600,000千円の当座貸越契約を締結しております。借入に関しては、経常的な運転資金需要の場合には、短期借入を基本方針とし、多額の設備投資需要の場合には、長期借入を基本方針としております。また、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討し、対応してまいります。
また、当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動により支出されたキャッシュ・フローの合計と定義しております。当社の経営者は、この指標を戦略的投資または負債返済に充当可能な資金の純額、あるいは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、投資家に有用な指標であると考えており、以下の表のとおり、フリーキャッシュ・フローを算出しています。
(単位:千円)
区分前事業年度
(自 2019年8月1日
至 2020年7月31日)
当事業年度
(自 2020年8月1日
至 2021年7月31日)
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー115,912296,437180,525
投資活動によるキャッシュ・フロー△203,497△105,84997,647
フリーキャッシュ・フロー△87,584190,587278,172

なお、経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
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(3) 財政状態の分析
(資産)
流動資産は1,986,490千円となり、前事業年度末に比べ、308,561千円増加いたしました。
これは主に、増加要因として、現金及び預金が188,977千円増加したことによるものであります。
固定資産は623,127千円となり、前事業年度末に比べ、38,062千円減少いたしました。
これは主に、減少要因として、投資有価証券が48,636千円減少したことによるものであります。
(負債)
流動負債は285,377千円となり、前事業年度末に比べ、82,202千円増加いたしました。
これは主に、増加要因として、未払法人税等が20,344千円増加したことによるものであります。
固定負債は32,832千円となり、前事業年度末と比べ、595千円減少いたしました。
これは、減少要因として、その他に含まれる固定負債が786千円減少したことによるものであります。
(純資産)
純資産は2,291,407千円となり、前事業年度末に比べ、188,891千円増加いたしました。
これは主に、増加要因として資本金及び資本準備金がそれぞれ3,461千円増加したこと、当期純利益を172,640千円計上したことによるものであります。
(4) 経営成績等の状況に関する分析
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は2,621,220千円となり、前事業年度に比べ、78,482千円増加いたしました。
これは主に、テクノロジーソリューションサービスにおける受託開発売上や保守運用売上、「Mackerel(マカレ
ル)」サービス売上が堅調に推移したことによります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は278,206千円となり、前事業年度に比べ、15,418千円増加いたしました。これは主に、自社利用目的のソフトウエアの計上に伴い、ソフトウエアの減価償却費が増加したこと、広告レベニューシェアに伴う収益配分原価が増加したことによるものであります。
この結果、当事業年度の売上総利益は2,343,013千円となり、前事業年度に比べ63,063千円増加いたしました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は2,094,302千円となり、前事業年度に比べ、91,164千円増加いたしました。
これは主に、役員報酬11,250千円の増加、給料及び手当115,398千円の増加、法定福利費16,233千円の増加によるものであります。
この結果、当事業年度の営業利益は248,711千円となり、前事業年度に比べ、28,100千円減少いたしました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度の営業外収益は5,097千円となり、前事業年度に比べ、298千円減少いたしました。
これは主に、補助金収入1,518千円の減少、助成金収入883千円の減少があったことによるものであります。
当事業年度の営業外費用は406千円となり、前事業年度に比べ、2,695千円減少いたしました。
これは主に、前事業年度において為替差損2,625千円の計上があったことによるものであります。
この結果、当事業年度の経常利益は253,401千円となり、前事業年度に比べ、25,704千円減少いたしました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度の特別利益は157千円となり、前事業年度に比べ、33千円減少いたしました。
これは主に、固定資産売却益33千円の減少があったことによるものであります。
当事業年度の特別損失は2,062千円となり、前事業年度に比べ、2,062千円増加いたしました。
これは主に、固定資産除却損2,062千円の増加があったことによるものであります。
この結果、当事業年度の当期純利益は172,640千円となり、前事業年度に比べ、18,047千円減少いたしました。
(投下資本利益率、株主資本利益率)
税引前営業利益(NOPAT:営業利益×(1-実効税率))は、172,555千円となり、投下資本(自己資本+有利子負債:期中平均)2,264,670千円に対する利益率(ROIC)は、7.6%となりました。また、株主資本利益率(ROE)は、7.9%となりました。株主資本コストと負債コストの加重平均(WACC)は、4.3%と認識しており、ROE、ROICの維持・向上によって株主資本に対する利益率(ROE)の維持・向上に努めてまいります。
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(5) キャッシュ・フローの状況の分析
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、197,965千円増加し、
1,402,559千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は296,437千円(前年は115,912千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として、税引前当期純利益251,496千円の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は105,849千円(前年は203,497千円の支出)となりました。
これは主に、減少要因として、無形固定資産の取得による支出109,857千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は6,923千円(前年は32,991千円の収入)となりました。
これは、増加要因として、新株予約権の行使による株式の発行による収入6,923千円があったことによるものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2020年7月期2021年7月期
自己資本比率(%)89.987.8
時価ベースの自己資本比率(%)248.2159.3
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)--
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)243.2728.9

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
2.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
3.有利子負債がないため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率は記載しておりません。
(企業価値・キャッシュ創出力)
キャッシュ創出力を示す減価償却前の営業利益(EBITDA:償却前営業利益=営業利益+減価償却費)は、361,282千円となっており、キャッシュを生み出す力は着実に成長しております。
今後についても、運転資金の確保のための有利子負債の水準を一定程度に維持しつつ、人材投資やインフラ投資を行う方針を継続するとともに、主要3サービスにおける収益の柱を成長させることで、キャッシュ創出力を高め、企業価値を向上させてまいります。
2021年7月末の企業価値(EV:時価総額+ネット有利子負債)は、4,156,800千円となっております。企業価値とキャッシュ創出力の倍率を示すEV/EBITDA倍率は、11.5倍となっております。
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(7) 戦略の現状と見通し
当社は『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』をミッションに掲げ、「技術で支えられているサービスを提供する会社」として技術を磨き、インターネット領域において様々なサービス提供を行っております。
当社は今後も拡大されることが予想されるIT市場において、競争優位性を確保するために、顧客企業に対して高付加価値を提供するサービスの創造に鋭意努めてまいります。また、より強固なポジションを獲得するために、開発体制及び営業体制の強化を重要な戦略と認識し、事業の拡大に取り組んでまいります。
(8) 経営者の問題意識と今後の方針について
当社が今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続提供していくためには、経営者は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社の経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。
(9) その他会社の現況に関する重要な事項
当社は、企業の社会性を認識し、社会貢献活動を重要な責務として捉え、以下のCSR活動を実施しております。
2004年に発生した「新潟県中越地震」の大被害を受け、多くのはてなユーザー様から「はてなポイントを使って義援金を現地に届けたい」とご要望いただき、本窓口を開設し、ユーザー様からお寄せいただいたポイントを義援金として日本赤十字に寄付する取り組みを開始しました。以来、大規模な災害が国内外で発生した折には、義援金(国内)及び救援金(海外)の募集と寄付を行いました。
「預金を通じて、困っている人や団体を支援する」という活動のもと、SDGsに貢献できる預金として「応援定期預金」を作成することで、定期預金の預入残高に一定割合を乗じた金額を、取引先金融機関が、応援先(こどもの医療支援、こどもの自立支援、障がい者スポーツ支援、環境保護の4つのテーマから選定)に寄付しております。寄付を通じて、重い病気や障がい等で長期入院するこどもたちを支援するなど、「支え合う気持ち」を繋いでまいります。
発行額の0.15%を、新型コロナウイルス感染症による影響を受けたこどもたちへの支援を行う団体への緊急支援及び経済的に困難な状況下のこどもたちを支える団体の基盤づくり(組織のデジタライゼーションや事業のオンライン化を含む)への寄付にそれぞれ充当する新発債券の購入により、間接的に中長期的な支援をしております。
(注)CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略。持続可能な社会形成を目的として、企業が経済活動に加えて、社会や環境などの要素に向けても責任ある活動をすべきであるという概念。