有価証券報告書-第20期(令和1年8月1日-令和2年7月31日)

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2020/10/30 12:09
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(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要、及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績の分析
我が国経済と当社を取り巻く事業環境の概況
当事業年度における我が国経済は、内閣府の2020年8月の月例経済報告によると、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる。」とされております。先行きについては、「感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、感染症が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動に十分留意する必要がある。」とされております。
新型コロナウイルス感染症が、当社の経営環境に及ぼす現下の状況については、「第5 経理の状況 1.財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 追加情報」へ記載しております。
UGCサービス事業(注1)を展開するインターネット関連業界におきましては、『消費動向調査』(内閣府経済社会総合研究所)によりますと、2019年のスマートフォン世帯普及率は78.4%(前年比3.2%増)と普及が進んでおり、今後もスマートフォン市場は緩やかに拡大していくものと予測されます。
また、2019年9月に総務省情報通信政策研究所が公表した『平成30年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』によりますと、「全世代の行為者率について見ると、テレビ(リアルタイム)視聴が平日79.3%、休日82.2%と微減したのに対して、インターネット利用は平日82.0%、休日84.5%と増加し、調査開始から初めて、平日休日ともにインターネット利用の行為者率がテレビ(リアルタイム)視聴を上回り、最も多くなった。」、「いち早く世の中の出来事や動きを知るために、一番利用するメディアとしては、インターネットが50.7%、テレビが45.3%となり、インターネットが5割を超えて初めてテレビを上回った。」とされており、インターネットの存在がテレビと肩を並べつつあり、今後もインターネットを取り巻くマーケットサイズは拡大していくものと予測しております。
このような事業環境のもと、当社におきましては、自社で開発したユーザー参加型サービス群を「コンテンツプラットフォームサービス」と位置付け、その運営を通して培われた技術力やユーザーコミュニティを活かし、法人顧客向けに「コンテンツマーケティングサービス」、「テクノロジーソリューションサービス」をサービス領域として提供しております。
② 業績の概況
(ⅰ)サービス別の販売動向
<コンテンツプラットフォームサービス>コンテンツプラットフォームサービスでは、ユーザーがコンテンツを発信、拡散するUGCサービスとして、「はてなブックマーク」、「はてなブログ」等のサービスを展開しております。
主力サービスとなっている「はてなブログ」の登録ユーザー数や、月間ユニークブラウザ数(注2)が順調に推移し、「はてなブログ」の有料プラン「はてなブログPro」等の課金売上についても好調に推移しました。
アフィリエイト広告については、広告枠を提供したい数多くの広告媒体の運営事業者との間で、広告を出稿したい数多くの広告主を集めた広告配信ネットワーク(アドネットワーク(注3))が形成される等、関係者は年々増加傾向にあり、各事業者の関与の仕方は、多様かつ複雑なものとなっております。このような事業環境の中で、当社が運営するメディアについて、一部の広告配信ネットワーク(アドネットワーク)への接続が停止される状況が発生いたしました。当該状況は、当第2四半期会計期間中に解消され、広告配信取引の再開が順調になされておりますが、広告配信取引の再開までのビハインド(広告枠に対する入札参加広告主数の減少等)により、平均広告単価が回復の途上であるため、広告売上は軟調に推移しました。
その結果、コンテンツプラットフォームサービスの売上高は、521,346千円(前年比10.3%減)となりました。
<コンテンツマーケティングサービス>コンテンツマーケティングサービスでは、BtoB向けストック型ビジネスとして、CMS(注4)である「はてなブログMedia」を活用したオウンドメディア(企業が顧客等に向けて伝えたい情報を発信するための自社メディア)の構築・運用支援サービスや、「はてなブログ」等のUGCサービスを活用したネイティブ広告、バナー広告、タイアップ広告等を展開しております。
当社が提供する「はてなブログMedia」について、使いやすい操作画面、高いシステム安定性、検索エンジンから評価されやすいサイト構造を実現するため、機能強化に努めました。Googleが業界各社と協力して開発を進める「モバイル環境でWebコンテンツの表示を高速化するプロジェクト」であるAMP(Accelerated Mobile Pages)に国産CMSとしてはいち早く対応し、大手企業、ベンチャー企業を問わず、幅広い企業層に対してサービス提供実績を積み上げてまいりました。
また、提供サービスプランに「レギュラープラン」「ライトプラン」の2プラン制を導入し、販売機会の更なる獲得に努めた結果、前事業年度末に74件であったメディア運用数が、当事業年度において104件に到達いたしました。これは、デジタルマーケティングを目的としたオウンドメディアの開設が活発化している昨今の市場環境において、「ライトプラン」という戦略的な販売価格の提示により、顧客のオウンドメディアの新規開設を推進したことや、顧客企業における人材採用について、「採用オウンドメディアキャンペーン」として、期間限定の特別価格によるオウンドメディアの新規導入を提案訴求し、顧客サイドのオウンドメディアの導入障壁を押し下げた結果、新規導入のメディア数が増加したものであります。
また、2019年11月には、TRENDEMON JAPAN株式会社のアトリビューション解析ツール「TRENDEMON(トレンデーモン)」と連携し、当社の顧客への提供を開始し、オウンドメディアの効果の可視化や効果向上のための改善ポイントの把握が可能な「TRENDEMON(トレンデーモン)」を利用することができるようになる等、「はてなブログMedia」を活用する企業のコンテンツマーケティング支援の更なる強化をしてまいります。
さらに、当社UGCサービスに掲載されるネイティブ広告、バナー広告等の広告売上についても、「はてなブログMedia」の運用媒体数の増加に伴い、堅調に推移いたしました。
その結果、コンテンツマーケティングサービスの売上高は、809,397千円(前年比5.0%減)となりました。
<テクノロジーソリューションサービス>テクノロジーソリューションサービスでは、受託サービスとして、顧客独自のネットワークサービスに関する企画、開発、運用の受託と、ビッグデータサービスとして、BtoB向けストック型ビジネスであるサーバー監視サービス「Mackerel(マカレル)」を展開しております。
Webマンガサービスに特化したマンガビューワ「GigaViewer」について、当事業年度においては、「MAGCOMI」(サービス提供者:株式会社マッグガーデン)、「webアクション」(サービス提供者:株式会社双葉社)の2サービスに搭載されました。その結果、「少年ジャンプ+」「となりのヤングジャンプ」(サービス提供者:株式会社集英社)、「マガジンポケット」「コミックDAYS」(サービス提供者:株式会社講談社)等、合計9社、搭載累計11サービスとなりました。今後も、WEBマンガにおけるデファクトスタンダードの位置を築き上げるべく、サービス展開してまいります。また、ユーザー向けの各種機能に加え、サービス提供者のサービス運用コストの削減に貢献する管理機能の継続的な機能開発や、マンガビューワに掲載する広告の販売と運用に注力し、売上は堅調に推移いたしました。
受託サービスにおけるシステム開発については、当社が2016年にサービス企画・システム開発協力した株式会社KADOKAWAが運営するWEB小説サイト「カクヨム」において提供される、クリエイターに収益を還元するための決済及び送金プラットフォーム(以下、「収益還元プラットフォーム」)の開発や、同社が運営する日本最大級のガールズエンターテインメントサイト「魔法のiらんど」のリニューアル開発の納品及び検収が完了、その他複数の納品及び検収が完了したため、収益認識にいたりました。「収益還元プラットフォーム」については、UGCサービス提供事業者にとって負担の大きかったサービスごとの決済や送金処理の課題を解決する本プラットフォームを提供することで、優れたクリエイターと良質な作品が集まる仕組みによるサービスとビジネスの成長に貢献してまいります。また、「魔法のiらんど」については、今後は追加機能の継続的開発や広告運用等の支援に取り組んでまいります。
保守運用サービスでは、運用案件数の積上により、売上成長に繋がりました。
「Mackerel(マカレル)」については、AWS(アマゾンウェブサービス)のパートナー制度「AWS パートナーコンピテンシープログラム」において、「AWS DevOps コンピテンシー」認定を、当社が国内企業で初めて取得しております。さらに、「AWS Partner Network(APN)Award2019」において、「Mackerel(マカレル)」を通じたAWSへのビジネス貢献が評価され、「APN Technology Partner of the Year 2019 - Japan」を受賞いたしました。これはAWSの最新サービスへのいち早い対応により、AWSユーザーの運用負荷を軽減させるサービス連携を行ったことで、新規顧客の獲得に繋がったこと等が評価されたことによります。また、各新機能としてリリースした「Mackerelコンテナエージェント」、「ロール内異常検知」が好評を得ており、潜在顧客のサービス需要に対して、効果的にアプローチした結果、売上は堅調に推移いたしました。
2019年10月には、ソニービズネットワークス株式会社が提供しているAWS導入・運用支援サービス「マネージドクラウド with AWS」のオプションサービスとして「Mackerel(マカレル)」が採用されました。これにより、販売ネットワークの更なる拡充が実現しております。また、2019年11月には、NHNテコラス株式会社が提供するAWSの活用支援サービス「C-Chorus(シー コーラス)」における監視ツールに「Mackerel(マカレル)」が採用され、サービス提供を開始しております。同社との提携により、「Mackerel(マカレル)」の販売の更なる拡張を目指してまいります。
その結果、テクノロジーソリューションサービスの売上高は、1,211,994千円(前年比11.5%増)となりました。
(ⅱ)利益の概況
中長期的な企業価値の向上への取り組みの結果、コスト面において、人材の採用に伴う労務費や、各種サービスに係る管理コストを中心とした販売費及び一般管理費が2,003,138千円となり、前年比9.1%増となりました。主な増加要因は、中長期的なサービス拡張と事業創出のため、サービス開発要員等の採用等を積極的に行ったことにより、給料及び手当が前年比19.1%増となったこと、インターネットサービスの品質向上・維持のため、戦略的にコスト投下したことや、サービスの伸張に伴い、データセンター利用料が前年比11.6%増となったことなどによります。
これらのコストは、短期的な収益獲得を目的とした資本投下というよりはむしろ、当社が将来にわたり、競争優位性を確保するために、収益基盤の確立に向けた戦略的先行投資として位置づけております。
以上の結果、当事業年度の売上高は2,542,737千円(前年比0.9%増)、営業利益は276,811千円(同38.8%減)、経常利益は279,106千円(同37.9%減)、当期純利益は190,688千円(同41.8%減)となりました。
なお、当社はUGCサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(注)1.User Generated Contentの略。インターネット上で利用者自身がテキストや画像、映像などのコンテンツを発信することができる場を提供するサービス。
2.ある一定期間内にWEBサイトにアクセスした、重複のないブラウザ数。1人のユーザーが何度でも同じWEBサイトを訪れても1人と数えられる。「訪問数」ではなく、「訪問者数」を表し、WEBサイトの人気や興味の度合いを判断する指標。
3.アドネットワークとは、多数の広告媒体のWebサイトを束ねた広告配信ネットワークを形成し、それらのWEBサイト上で一括して広告を配信する手法であり、メディア運営者は、サイトページ上に広告枠のみをアドネットワーク事業者に提供し、掲載される広告が、システムにより自動配信される仕組み。
4.Contents Management Systemの略。HTMLやCSSのようなWEBサイトの制作に必要な専門知識を必要とせず、テキストや画像等の情報を入力するだけで、サイト構築を自動的に行うことができるシステム。
(ⅲ)新型コロナウイルス感染症による当社を取り巻く経営環境や想定されるリスク等
2019年末、中国で初めて確認され、提出日現在、世界の国や地域へ拡大した新型コロナウイルス感染症に対して、当社では顧客、取引先及び従業員の安全第一を考え、感染拡大を防ぐために、感染防止策の徹底をはじめとして、販
売促進企画等のイベントの休止や制限等、対応を実施しております。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、代表取締役社長を責任者とする対策会議は、Web会議システム等を用いて開催し、日々変化する状況を共有するとともに、国の緊急事態宣言発出、各自治体による外出自粛要請に対し、該当地域では、国内外問わず、不要不急の出張は原則禁止とするとともに、原則在宅勤務へ切替を指示し、感染症拡大防止に努めてまいりました。顧客、取引先との打ち合わせに関しても、可能な限りWeb会議システム等を活用するなど、感染症拡大の収束時に、速やかに経済活動が再開できるように取り組んでまいりました。加えて、予防策の具体例を示すとともに、マスクや除菌剤を各オフィスに配備することで、更なる感染防止に努めてまいりました。
このような状況の中、従業員が新型コロナウイルスに感染していることが判明しました。当社では、所管保健所等の関係機関と緊密に連携して、感染拡大防止のための当該従業員の行動履歴、濃厚接触者の健康観察、オフィス消毒作業等の適切な措置を講じてまいりました。今後も社内の感染者発生時マニュアルに沿って、対応を進めてまいりますが、新たに従業員が新型コロナウイルスに感染し、従業員同士の接触等により社内での感染が拡大し、クラスター(集団感染)に陥った場合には、営業活動、開発業務、制作業務、管理業務に支障をきたし、一定期間、事業活動を停止または縮小する可能性があります。当社は、社内外への感染被害を抑止し、従業員の健康と安全を確保するため、在宅勤務・時差出勤の拡充等を含めた勤務制度の見直しを積極的に推進し、事業継続に向けた体制づくりに一層注力してまいります。
このように、経済的不透明感や危機感が継続することの予想される経営環境の中で、当社の資金の財源及び流動性については次のとおりであります。また、事業継続に対して万全の備えをする方針であります。
当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動によるキャッシュ・フローによっておりますが、資金の手元流動性については、現金及び預金1,246,437千円と月平均売上高に対し5.9ヶ月分であり、現下、当社における資金流動性は十分確保されていると考えております。
また、当社は事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本的な財務方針としており、金融機関からの借入により調達することを目的として、取引銀行5行との間で、総額1,000,000千円の当座貸越契約を締結しております。なお、当座貸越契約の未実行残高は1,000,000千円となっております。今後は、新型コロナウイルス感染症に対するリスクファイナンスの一環として、適切なタイミングで借入を実行してまいります。更に、与信枠の拡大の交渉を行い、新たなバックアップラインを確保することで、資金の手元流動性の更なる補完を目指してまいります。
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(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、54,773千円減少し、1,204,593千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は115,912円(前年は496,952千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として、税引前当期純利益279,296千円の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は203,497千円(前年は148,468千円の支出)となりました。
これは主に、減少要因として無形固定資産の取得による支出132,692千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は32,991千円(前年は21,812千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として新株予約権の行使による株式の発行による収入33,325千円があったことによるものであります。
(3)生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当社は生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
(b)受注実績
当事業年度の受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
サービスの名称当事業年度
(自 2019年8月1日
至 2020年7月31日)
受注高
(千円)
前年同期比
(%)
受注残高
(千円)
前年同期比
(%)
テクノロジーソリューションサービス281,750101.1149,00074.3
合計281,750101.1149,00074.3

(注)1. 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
2. 金額は、販売価格によっております。
3. コンテンツプラットフォームサービス、コンテンツマーケティングサービスは受注によらないため、記載はしておりません。
4.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
(4)販売実績
当事業年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
サービスの名称当事業年度
(自 2019年8月1日
至 2020年7月31日)
販売高(千円)前年同期比(%)
コンテンツプラットフォームサービス521,34689.7
コンテンツマーケティングサービス809,39795.0
テクノロジーソリューションサービス1,211,994111.5
合計2,542,737100.9

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
3.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2018年8月1日
至 2019年7月31日)
当事業年度
(自 2019年8月1日
至 2020年7月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
株式会社エフレジ262,70510.4268,92610.6

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わねばなりません。経営者は、債権、たな卸資産、投資、繰延税金資産等に関する見積り及び判断について、継続して評価を行っており、過去の実績や状況に応じて合理的と思われる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。また、その結果は資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
① 固定資産の減損
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合に、減損処理が必要となる可能性があります。
② 繰延税金資産
当社は、繰越欠損金や税務上と会計上の取扱いの違いにより生じる一時差異について、税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の計上にあたり、経営計画や業績予想、外部環境予測、一時差異の解消スケジュール等を基にタックス・プランニングを検討して将来の課税所得を推定し、繰延税金資産の回収可能性を判断しております。その結果、実現が困難であると判断される繰延税金資産については、評価性引当額を計上します。経営者は、当該回収可能性の評価は合理的であると判断しておりますが、将来の業績及び課税時期に関する判断が変動する場合、繰延税金資産の計上金額に影響を及ぼす可能性があります。

(2)当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、当社が重視している経営指標は、売上高、営業利益及び経常利益であります。
主要3サービスのシナジー効果を最大限に活用しつつ、売上高、営業利益及び経常利益を継続的に成長させることにより、企業価値の向上、株主価値の向上を目指してまいりました。当社は、経営方針に則った業績目標について、2019年9月12日に業績予想値を公表いたしました。当社が定める経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況については次のとおりです。
なお、経営成績の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(単位:千円)
区分売上高営業利益経常利益当期純利益
業績予想値(A)2,781,278287,007287,007197,828
実績(B)2,542,737276,811279,106190,688
増減(B-A)△238,540△10,196△7,901△7,140
増減率(%)△8.6△3.6△2.8△3.6

当社の資本の財源及び資金の流動性については次のとおりであります。当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動によるキャッシュ・フローによっております。資金の手元流動性については現金及び預金1,246,437千円と月平均売上高に対し5.9ヶ月分であり、当社における資金の流動性は十分確保されていると考えております。なお、当事業年度末時点において、有利子負債残高はありません。
運転資金需要のうち主なものは、人件費やデータセンター利用料等の営業費用、法人税等の税金費用であります。また、投資を目的とした資金需要の主なものは、ITインフラ設備や事務所設備等の設備投資であります。
当社は、事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。そのため、より一層の事業拡大を継続することに備え、金融機関からの借入により調達することを目的として、取引銀行5行との間で、総額1,000,000千円の当座貸越契約を締結しております。借入に関しては、経常的な運転資金需要の場合には、短期借入を基本方針とし、多額の設備投資需要の場合には、長期借入を基本方針としております。また、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討し、対応してまいります。
また、当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動より獲得されたキャッシュ・フローと投資活動により支出されたキャッシュ・フローの合計と定義しております。当社の経営者は、この指標を戦略的投資または負債返済に充当可能な資金の純額、あるいは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、投資家に有用な指標であると考えており、以下の表のとおり、フリーキャッシュ・フローを算出しています。
(単位:千円)
区分前事業年度
(自 2018年8月1日
至 2019年7月31日)
当事業年度
(自 2019年8月1日
至 2020年7月31日)
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー496,952115,912△381,040
投資活動によるキャッシュ・フロー△148,468△203,497△55,028
フリーキャッシュ・フロー348,484△87,584△436,068

なお、経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(3) 財政状態の分析
(資産)
流動資産は1,677,928千円となり、前事業年度末に比べ、37,134千円減少いたしました。
これは主に、減少要因として現金及び預金が34,657千円減少したことによるものであります。
固定資産は661,190千円となり、前事業年度末に比べ、66,007千円増加いたしました。
これは主に、増加要因としてソフトウエアが57,182千円増加したことによるものであります。
(負債)
流動負債は203,175千円となり、前事業年度末に比べ、195,944千円減少いたしました。
これは主に、減少要因として未払金が85,252千円減少したことによるものであります。
固定負債は33,428千円となり、前事業年度末と比べ、3,571千円増加いたしました。
これは、増加要因として資産除去債務が2,784千円増加したことによるものであります。
(純資産)
純資産は2,102,515千円となり、前事業年度末に比べ、221,245千円増加いたしました。
これは主に、増加要因として資本金及び資本準備金がそれぞれ16,662千円増加したこと、当期純利益を190,688千円計上したことによるものであります。
(4) 経営成績等の状況に関する分析
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は2,542,737千円となり、前事業年度に比べ、22,285千円増加いたしました。これは主に、コンテンツプラットフォームサービスにおける課金売上や、コンテンツマーケティングサービスにおける「はてなブログMedia」サービス売上、テクノロジーソリューションサービスにおける受託開発売上や保守運用売上、「Mackerel(マカレル)」サービス売上が堅調に推移したことによります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は262,788千円となり、前事業年度に比べ、31,061千円増加いたしました。これは主に、テクノロジーソリューションサービスに関する製造原価の増加やソフトウエアの減価償却費によるものであります。
この結果、当事業年度の売上総利益は2,279,949千円となり、前事業年度に比べ8,775千円減少いたしました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は2,003,138千円となり、前事業年度に比べ、166,855千円増加いたしました。これは主に、給料及び手当128,966千円の増加、法定福利費10,348千円の増加、データセンター利用料49,463千円の増加によるものであります。
この結果、当事業年度の営業利益は276,811千円となり、前事業年度に比べ、175,631千円減少いたしました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度の営業外収益は5,396千円となり、前事業年度に比べ、3,532千円増加いたしました。これは主に、当事業年度に、補助金収入1,758千円の計上、助成金収入919千円の計上があったことによるものであります。
当事業年度の営業外費用は3,101千円となり、前事業年度に比べ、1,697千円減少いたしました。これは主に、為替差損1,290千円の減少があったことによるものであります。
この結果、当事業年度の経常利益は279,106千円となり、前事業年度に比べ、170,401千円減少いたしました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度の特別利益は190千円となり、前事業年度に比べ、400千円減少いたしました。これは主に、前事業年度に、投資有価証券売却益373千円の計上があったことによるものであります。
当事業年度の特別損失は0千円となり、前事業年度に比べ、191千円減少いたしました。これは主に、前事業年度に、その他の損失183千円の計上があったことによるものであります。
この結果、当事業年度の当期純利益は190,688千円となり、前事業年度に比べ、136,942千円減少いたしました。
(5) キャッシュ・フローの状況の分析
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、54,773千円減少し、1,204,593千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は115,912円(前年は496,952千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として、税引前当期純利益279,296千円の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は203,497千円(前年は148,468千円の支出)となりました。
これは主に、減少要因として無形固定資産の取得による支出132,692千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は32,991千円(前年は21,812千円の収入)となりました。
これは主に、増加要因として新株予約権の行使による株式の発行による収入33,325千円があったことによるものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2019年7月期2020年7月期
自己資本比率(%)81.489.9
時価ベースの自己資本比率(%)489.6248.2
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)--
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)3,349.7243.2

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
2.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
3.有利子負債がないため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率は記載しておりません。
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(7) 戦略の現状と見通し
当社は『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』をミッションに掲げ、「技術で支えられているサービスを提供する会社」として技術を磨き、インターネット領域において様々なサービス提供を行っております。
当社は今後も拡大されることが予想されるIT市場において、競争優位性を確保するために、顧客企業に対して高付加価値を提供するサービスの創造に鋭意努めてまいります。また、より強固なポジションを獲得するために、開発体制及び営業体制の強化を重要な戦略と認識し、事業の拡大に取り組んでまいります。
(8) 経営者の問題意識と今後の方針について
当社が今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続提供していくためには、経営者は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社の経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。