有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/01/31 15:00
【資料】
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【項目】
58項目

事業内容

当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしております。
(1)事業の内容
当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。現在、スマートフォンやIoTの普及により、日々産み出されるデータは加速度的に増加しております。当社グループは、この様々なデータ(ビッグデータ)を「新しい資源」としてとらえており、この資源を活用して、企業や社会に様々な価値をもたらすソフトウェア及びサービスの提供を行っております。
当社グループは、当社、連結子会社8社の計9社で構成されており、その特徴は以下のとおりです。
・独自のテクノロジー
当社グループは、創業以来、企業の情報活用に特化した独自の技術開発に取り組んできました。超高速集計、データの仮想統合、IoTデータのリアルタイム処理は特徴的技術であり、当社グループの競争力の源泉となっています。それぞれ技術は高度で難解なものですが、「誰でも簡単」に利用することができ、素早く効果をあげられるようにシンプルで直観的に使用できるユーザーインターフェイス(UI)を備えたソフトウェア及びサービスとして提供しております。なお、研究開発活動及びソフトウェア開発のコア部分は、すべて自社グループ内で行っております。
・強力なビジネスチャネル
当社グループの販売モデルは、パートナーを介した間接販売が主となっております。大都市圏で大企業や官公庁の大型案件を得意とするSIerや地方を拠点とするSIer、特定領域に特化したコンサルティングファームやクラウドシステムの構築を専業とするクラウドSIer等多くのパートナー企業と契約しており、日本全国のシステム開発案件をカバーする販売網を構築しております。これにより、継続的な案件創出と営業コストの抑制が可能となり、効率的な販売活動が可能となっております。
契約パートナー数推移(注) (社)
旧ウイングアーク1st株式会社ウイングアーク1st
株式会社
決算年月2014年2月2015年2月2016年2月2017年2月2018年2月
契約パートナー数(累計)190220279347439

(注)当社パートナー向けプログラム「WingArc Relationship Program(WARP)」において、各区分(インテグレーション、プロダクト、WARP-Associate等)での期末時点における解約パートナーを除いた契約パートナー数の合計。
・厚いリカーリングレベニュー
当社グループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引だけではなく、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。これは導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、リカーリングビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、当社グループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。また、当社グループは契約継続率をリカーリングビジネスの最も重要なKPIの一つとしております。高い契約継続率を維持することによって、既存の契約は最大限維持しつつ、新規契約を積み上げ、持続的な成長を実現してまいります。
(百万円)
旧ウイングアーク
1st株式会社
ウイングアーク1st株式会社
決算年月2016年2月2017年2月
(注)3
2018年2月
ライセンス/サービス(注)15,9336,2557,162
リカーリング(注)26,1807,0298,403
売上収益合計12,11313,28415,566
リカーリング比率51.0%52.9%54.0%

(注)1.ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引に係る売上の合計。
2.保守、サブスクリプション(ソフトウェアの購入ではなく、利用期間に応じて料金を収受する契約形態)、クラウドといった継続契約を前提とした取引に係る売上の合計。
3.2017年2月期につきましては、当社の設立は2016年3月7日でありますが、2016年4月14日付で全株式を取得した旧ウイングアーク1st株式会社の事業年度開始の日は2016年3月1日であるため、旧ウイングアーク1st株式会社の2016年3月1日から同年4月13日までの期間の実績及び2016年4月14日から2017年2月28日までの期間の当社の実績を合算し、概算値を記載しております。なお、当該概算値は、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。
・契約継続率(注)1
旧ウイングアーク
1st株式会社
ウイングアーク1st株式会社
決算年月2016年2月2017年2月
(注)2
2018年2月
契約継続率92.1%93.1%93.4%

(注)1.「SVF」「Dr.Sum」「MotionBoard」の保守契約において、当該期間の更新対象契約の総数に対して実際に契約が更新された金額ベースでの割合。
2.2017年2月期につきましては、当社の設立は2016年3月7日でありますが、2016年4月14日付で全株式を取得した旧ウイングアーク1st株式会社の事業年度開始の日は2016年3月1日であるため、旧ウイングアーク1st株式会社の2016年3月1日から同年4月13日までの期間の実績及び2016年4月14日から2017年2月28日までの期間の当社の実績を合算し、概算値を記載しております。なお、当該概算値は、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。
また、当社グループは、日本国外に拠点を置く多くの外資系ソフトウェアベンダーと異なり、自社内に営業、開発、サポートすべての機能を有しております。これにより、営業部門やサポート部門が収集した様々な顧客ニーズを開発部門が素早く製品化するといったことが可能となり、当社グループの強みの一つとなっております。
現在、IT投資の主軸はクラウド、ビッグデータ、IoT、AIの登場により、システム要件が画一的なIT部門から顧客ごとにシステム要件が異なる事業部門へ移行しつつあります。このような状況において、当社グループは、これまで様々な顧客へソフトウェア及びサービスを提供することで培った知見を活かし、製造、小売、運輸、医療、公共、金融といった「業種・業界」や営業活動のような「業務」に最適化したソリューションの提供を進めております。今後は、さらにより多くの顧客へ素早くサービスを提供出来るよう上述のソリューションをプラットフォーム型のクラウドサービスとして、広く展開していく方針です。
(2)製・商品及びサービスの特徴
当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「ソフトウェア基盤ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しており、データエンパワーメントソリューションを戦略の中核に位置付けております。
[ソフトウェア基盤ソリューション]
ソフトウェア基盤ソリューションでは、エンドユーザーに対して、ソフトウェアの販売、クラウドサービス、保守サポートの提供を主に行っております。これらは、請求書、納品書、発送伝票といった業務帳票や市役所で発行される各種証明書のようなものまで、社会の様々な場所で帳票に関する業務基盤として利用されているソリューションです。当社グループは帳票ソフトウェアの先駆者として、多くの顧客にご利用頂いており、当社グループの主力製品である「SVF」の帳票市場(帳票運用製品)における市場シェアは、69%(注)となっております。主なソフトウェア及びサービスは以下の通りです。
注 株式会社ミック経済研究所「帳票設計・運用製品の市場動向 2018年度版(帳票運用製品ベンダー別出荷金額推移(全体推計)2017年度実績)」より、当社が2017年6月に株式会社日立製作所から、帳票ソフトウェア資産「EUR」を取得したため、当社シェアに株式会社日立製作所のシェアを加算して作成。
(主要な関係会社) 当社、文雅科信息技術(大連)有限公司、文雅科信息技術(上海)有限公司、
WINGARC SINGAPORE PTE. LTD.
(a)SVF
当社グループの主力製品である「SVF」は、帳票開発の効率化と多様な出力要件に応えるための帳票基盤ソリューションです。「SVF」は、業務システムの必須要件である納品書や請求書等の帳票を、ノンプログラミングで直観的に操作可能なグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)で、表や罫線の設定、データベースとの接続、改ページ等の制御等を行うことができます。さらに、紙ベースの帳票やMicrosoft Corporationが提供するOffice製品のファイルを再利用することも可能で、エンドユーザーの業務の効率化をサポートしております。
また、「SVF」は設計した帳票を出力する機能も有しており、プリンターによる印刷、FAX・メール送信、PDFファイル化等の各種出力方法に対応している他、各種ハードウェア、OS、プリンター等との連携インターフェースを備えており、固有のシステム環境に依存しない汎用性を実現しております。
(b)SVF Cloud
「SVF Cloud」は、従来の「SVF」の強みに加え、柔軟性とリアルタイム性を兼ね備えた帳票クラウドサービスです。クラウド上でのSFAサービスを提供している株式会社セールスフォース・ドットコムと連携した「SVF Cloud for Salesforce」やビジネスプラットフォームを提供しているサイボウズ株式会社と連携した「SVF Cloud for kintone」を提供しております。更に、Web API機能により様々なクラウドサービスと連携し、企業間のシステムの違いやシステム変更にも柔軟に対応することができます。また、外出先で、スマートフォンやタブレットからその場でPDFの見積書を出力する、といったリアルタイム性が求められる場面での利用も可能となっております。
[データエンパワーメントソリューション]
データエンパワーメントソリューションでは、エンドユーザーに対して、ソフトウェアの販売、クラウドサービス、保守サポートの提供を主に行っております。これらは様々な種類のデータを組み合わせ、分析することにより、気づきや今までにない価値を生み出し、生産性の向上や効率化を実現することをコンセプトとしたソリューションです。経営者から現場の業務担当者まで多くの方々にご利用頂いております。主なソフトウェア及びサービスは以下の通りです。
(主要な関係会社) 当社、株式会社リテールマーケティングワン、株式会社Everforth、WINGARC AUSTRALIA PTY LTD
(c)Dr.Sum
「Dr.Sum」は、企業内外のデータを蓄積し、そのデータを加工・分析することによって企業の意思決定に活用することを目的とした「ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)」という分野に属する製品です。「Dr.Sum」は数百億件ものビッグデータを数秒で処理できる性能と、ユーザーが使い慣れたwebベースとExcelベースのユーザーインターフェースを備えており、システム担当者でなくともビッグデータの集計や分析を容易に行うことが可能となっております。また、「Dr.Sum」上で販売や会計といった社内の様々なデータを統合管理することで、企業を支える情報分析基盤として利用されております。
(d)MotionBoard
「MotionBoard」は、企業をとりまく様々なデータを価値ある情報に変え、企業にイノベーションをもたらすことをコンセプトとした情報活用ダッシュボードです。第一の特徴は多彩な表現力です。PC画面上にグラフィカルな数多くのチャートを自由に配置可能で、業務内容の確認から事業戦略の遂行状況の確認まで、目的に合わせた使い方が可能です。また、GIS機能を備えており、位置情報を持つデータを地図上にプロットすることが可能です。これにより、競合店舗情報と人口動態情報を組み合わせた店舗戦略や走行情報を利用したトラックの運行管理等、新しい情報活用の形が生まれております。第二の特徴は、リアルタイム処理です。「MotionBoard」は、基幹システム、情報系システム、SFAやCRM、外部のクラウドサービス等様々なデータソースとリアルタイムに接続し、これらの情報を一つのチャート上で統合し、可視化することが可能です。さらに、現在はIoTに対応した機能を備えており、例えば工場の工作機械に設置された稼働状況をミリ秒単位で取得するセンサーからのデータをリアルタイムで取得、可視化し、閾値の設定によるリスク検知等に利用されております。第三の特徴は、高いメンテナンス性です。通常、情報システムの構築は、高度な知識を持ったシステム担当者が行うことが一般的ですが、「MotionBoard」は、ユーザーが自由な発想で可視化や分析を行うことを想定しているため、データの設定から表示項目やチャートの選定、配置までユーザー自身で行うことが可能です。これにより、業務フローの変更等にも迅速に対応できます。
(e)SPA
「SPA」は、企業内で流通している紙文書を電子化し、業務の自動化や文書管理工数の削減を目的としたソフトウェアです。「SPA」で紙文書をスキャンすることにより記載内容をデータとして抽出することができ、他の業務システムに連携させることで業務の効率化に貢献します。文書保管の自動化や文書情報をデータ化するための検索機能も充実しています。
(f)プロフェッショナルサービス
当社グループのソフトウェア及びサービスは、導入が容易であることが特徴の一つですが、大規模案件では、複雑なシステム要件が発生することがあります。そのような場合には、システムに熟知した当社の技術スタッフが、導入支援サービスの提供を行っております。また、近年では、製造業でのIoTを用いた工場の可視化や小売業でのビッグデータ分析といった業界特有の課題解決のニーズが増加しており、このような要望に対しては、社内の専門チームが要件定義から導入まで、総合的なコンサルティングサービスを提供しております。
[用語の説明]
本書において使用しているIT業界特有の主な用語についてご説明いたします。
用語説明
SIerシステムインテグレーター(System Integrator)の略。主に企業のシステム構築、運用業務を一括して請け負う事業者。
IoTInternet of Thingsの略。通信技術やインフラの発達により、インターネットを介して、あらゆるものがネットワークにつながること。
AIArtificial Intelligenceの略。人間の脳が行っているような認識や判断といった作業を自律的に行うソフトウェアやシステム。
SFASales Force Automationの略。案件管理や見込管理等、企業の営業活動の効率化を目的とするソフトウェアやシステム。
CRMCustomer Relationship Managementの略。顧客属性や対応履歴を管理し、顧客ごとに最適な対応を行うことで、長期的に良好な関係を築き、結果として収益の最大化を目的とするソフトウェアやシステム。
APIApplication Programming Interfaceの略。外部の他のプログラムから機能やデータなどを呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めたもの。開発効率やシステム間連携が大幅に向上する。
BIビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)の略。企業活動によって生じた様々なデータを集計・分析し、企業の意思決定を支援するソフトウェアやシステム。
GISGeographical Information Systemの略。デジタル化された地図情報と位置情報を持ったデータを統合し、情報全体の視覚的な把握を可能とするソフトウェアやシステム。

事業系統図は次のとおりであります。
[事業系統図]
0201010_003.png(注) 上記系統図の子会社は当社グループの事業上重要なものについて記載しております。