有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/02/07 15:00
【資料】
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【項目】
101項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。」ことを目標としております。その上で、この国の木造住宅の資産価値を維持向上させることを当社グループの取り組む課題と捉え、その解決に向け次の5つのテーマを掲げております。
・住宅の安全性の確保(大地震発生時の安全性)
・住宅の耐久性の確保(経年劣化に対する対策)
・住宅の利用価値の確保(間取りの可変性)
・住宅の品質に対する第三者による証明(流通価値の確保)
・住宅のデザイン品質の確保(時代の変化に耐えられる普遍的デザインの追求)
これらのテーマを当社グループのみでは解決が困難であることから、全国の住宅供給会社とのネットワークを形成し、その問題解決を図り、社会の仕組みとして築き上げてまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは2019年3月期からの中長期的な経営指針として、「中期経営計画(2019年3月期~2021年3月期)」をスタートいたしました。中期経営計画においては、以下の事項を当社グループの成長戦略と位置づけ、事業の拡大を図ってまいります。
① 大規模木造建築(非住宅)分野での事業拡大
これまでの実績とノウハウを活用し大規模木造建築の構造計算数と構造加工品出荷棟数が増加することを見込んでおります。そのために、大規模木造建築(非住宅)分野での生産体制の強化を図り、全国の協力構造加工工場を、2018年12月末現在の9拠点(北海道、栃木、千葉、神奈川、岐阜、京都、大阪、岡山、九州)から2019年3月末までには10拠点体制(岡山県内に2拠点目が加わる予定であります。)とする予定です。
② 温熱計算サービスの事業拡大
2020年以降に予定されている省エネ計算義務化に向けて、積極的な獲得活動による市場シェアの拡大を目指しています。
③ 住宅分野の安定的な成長
住宅分野については、今後も安定的な成長を見込んでおります。特に提供先ハウスメーカーにおけるSE構法採用率の向上と、OEM提供先の増加による市場シェアの拡大を目指します。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは主な経営指標として、企業の事業活動の成果を示す営業利益を注視し、収益性の指標に営業利益率を掲げているほか、資本及び資産の効率性判断の指標にROE(自己資本利益率)、財務の安定性判断の指標に自己資本比率を掲げております。達成状況につきましては、月次の取締役会及び月1回以上の執行役員会等で定期的にモニタリングを行ってまいります。
(4)経営環境
当社グループが属する住宅市場においては、雇用・所得環境が改善していることに加え、政府による住宅取得支援策の効果もあり、ここ数年の新設住宅着工戸数は増加傾向にあったものの、低金利の環境が長く続いていることなどにより新たな住宅購入需要の喚起が鈍化したため、2017年の持家にかかる新設住宅着工戸数は前期比2.7%減の28万4,283戸となりました(出所:国土交通省「建築着工統計調査報告 平成29年計」)。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災や2016年4月に発生した熊本地震により、住宅の耐震性に関する意識は高まっており、当社の提供する耐震性の高い住宅には引き続き一定の需要があるものと考えております。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループにおける経営方針、経営戦略を実現するための対処すべき課題は以下のとおりであります。
① 既存事業の収益の拡大
当社グループは、木造耐震設計事業を主力事業としておりますが、この事業の安定的・継続的な発展が収益基盤の基礎として必要であると考えております。そのためには、登録施工店ネットワークの継続的な拡大に向けて、工務店を中心とした新規顧客の開拓を着実に進めていくことが必要不可欠であり、人材採用・育成体制の整備等により、営業体制の強化を進めてまいります。今後も、登録施工店ネットワークを通じたSE構法の更なる普及により、既存事業の収益基盤の拡大を図ってまいります。
② 非住宅分野での収益の拡大
当社グループは、これまで木造住宅へのSE構法の提供を主力にしておりますが、今後は、集合住宅や病院・保育園等の非住宅分野への展開にも注力してまいります。特に国内における木材利用の促進政策として、2010年10月に「公共建築物等木材利用促進法」が施行されたことにより、国や地方自治体の関与する公共建築物への木材利用が促進されております。これら住宅よりも規模の大きい木造建築においては、当社グループがこれまで培った構造計算ノウハウが活用できるため、当社グループが今後事業拡大できる分野であると考えており、受注活動をすすめております。今後、大規模木造建築に対応した技術開発及び研究に取り組み、非住宅分野における収益の拡大を図ってまいります。
③ 資材の調達
当社グループが登録施工店等に販売する構造加工品の原材料は、その大半を海外から輸入しており、安定的な資材調達体制の構築は重要課題と位置付けております。
当社グループとしましては、木材原産国の国策事情等により、世界的に木材資源の安定確保が難しくなっていることに加え、建材市場の競争が激化するなか、複数の建材商社からの調達ルートを確保するなど、より安定的な資材調達体制を構築してまいります。
④ 人材の確保
当社グループが今後更に事業を拡大していくためには、優秀な人材の確保と育成が必要不可欠であると考えております。特に木造構造計算や温熱計算に関わる設計・技術系スタッフの採用においては、他社との獲得競争が激しい状況であり、今後も安定した人材確保には厳しい状況が続くものと思われます。
当社グループとしましては、採用における競争力の強化を図るとともに、魅力ある職場環境を構築することで、当社グループの事業及び目標に共感する人材の確保に努めてまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社グループは、更なる事業拡大、継続的な成長を遂げるためには、確固たる内部管理体制構築を通じた業務の標準化と効率化の徹底を図ることが重要であると考えております。
当社グループとしましては、内部統制の環境を適正に整備し、コーポレート・ガバナンスを充実させることによって、内部管理体制の強化を図り、企業価値の最大化に努めてまいります。
⑥ コンプライアンス体制の強化
当社グループは、法令、定款及び社内規程等の遵守は勿論のこと、日々の業務を適正かつ確実に遂行し、クリーンで誠実な姿勢を企業行動の基本として、顧客の信頼を得ると同時に事故やトラブルを未然に防止する取り組みを強化してまいります。
今後、更なる事業拡大と企業価値の向上に向けて、引き続き日常業務における関連法令の遵守を徹底し、各種取引の健全性の確保、情報の共有化、並びに再発防止策の策定・徹底等を行うとともに、社内啓蒙活動を実施し、透明性のある管理体制の構築を図ってまいります。