有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/02/07 15:00
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事業内容

当社及び連結子会社2社(SE住宅ローンサービス株式会社、株式会社MAKE HOUSE)並びに持分法適用関連会社1社(株式会社MUJI HOUSE)により構成される当社グループは、「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。」ことを目標としております。また、主たる事業である木造耐震設計事業において、木造建築の耐震性を確保するための高度な構造計算を事業化するとともに、構造計算された耐震性の高い木造建築を実現するための当社独自の建築システムである「SE構法」(注1)を、工務店を中心としたSE構法登録施工店(以下、「登録施工店」という)ネットワークを通じて提供しております。
当社グループが創業以来取り組む木造建築の耐震化を取り巻く状況は、住宅分野では、1995年1月に発生した阪神淡路大震災において6,400人を超える犠牲者のうち89%が家屋の倒壊による(注2)ものであったことなどから、木造住宅の耐震性が問題視されております。しかしながら、建築基準法第6条の4の規定により、「2階建て以下・延べ面積500㎡以下・高さ13m以下・軒の高さ9m以下の木造建物」については、建築確認の審査が省略でき構造計算の必要がないことから、新耐震基準が導入された1981年以前に建築された住宅を中心として耐震性を有しない住宅が少なくない状況であります。国土交通省が2018年6月5日に公表した「国土強靭化アクションプラン2018」では、2008年に約79%であった住宅の耐震化率を2020年までに約95%まで引き上げることを重要業績指標としており、今後、新築住宅及び既存住宅の耐震性強化に向けた動きが進むものと考えております(下記『「住宅・建築物の耐震化について」中「住宅の耐震化率」出所:国土交通省』参照)。
また、非住宅分野では、2010年10月に施行された「公共建築物等木材利用促進法」により、国や地方自治体の関与する公共建築物への木材利用が促進されております。病院や保育園など、住宅より規模の大きい建築物はこれまで鉄骨造や鉄筋コンクリート造が主流でしたが、今後は木造での建設需要が高まるとともに、それに伴うSE構法を含む耐震性の高い建築システムに対する需要が高まるものと期待しております。
このような状況の中、当社グループは創業以来20年以上に亘り木造耐震設計事業を中心とした事業を展開し、構造計算から部材供給、温熱計算、性能保証及び金融サポートまで一括管理することで、木造建築の耐震性の向上による安全性の確保と資産価値向上に寄与してまいりました。
当社グループが営む事業の内容は、以下のとおりであります。なお、当社グループは「木造耐震設計事業」が事業のほとんどを占めており、新規事業等については「その他」として記載しております。
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(1)木造耐震設計事業
施主よりSE構法による木造建築を受注した登録施工店に対して、設計段階で構造計算書を出荷するとともに、建設段階で構造加工品等を販売しております。また登録施工店からは登録料及び月会費を受領しております。
当社の構造計算の特徴
一般の木造住宅ではほとんど構造計算は実施されておりませんが、SE構法では、鉄骨造やRC造と同じ手法である許容応力度計算(注3)による構造計算を実施しております。構造計算においては、構造図面作成用CADと連動した立体解析による構造計算プログラムを使用することで、構造図と構造計算の整合性を確保する形で安全性を検証しております。
当社の構造加工品供給の特徴
SE構法では、構造部材として強度にばらつきのある無垢材ではなく、構造品質が高く一定の強度が保たれた構造用集成材(以下、「構造加工品」という)を採用しております。また、接合部には独自開発した金物(以下、「SE金物」という)を採用するとともに、耐力壁や床材には構造用合板を採用しております。これにより高い耐震性と大空間を実現させることが可能となっております。
当社では、構造計算の際に作図される構造データを指定構造加工工場がそのまま加工データとして利用できるシステムを構築しており、正確に加工された構造加工品を供給するとともに、合わせてSE金物や構造用合板も供給することで、木造建築の耐震性と安全性を実現しております。
木造耐震設計事業では、物件の規模に応じて住宅分野と大規模木造建築(非住宅)分野に区分するとともに、住宅分野については、工務店ネットワークを通じて展開するネットワーク展開と、持分法適用関連会社である株式会社MUJI HOUSE等を通じて展開するハウスメーカー対応に分類して事業展開をしております。
① 住宅分野
・ネットワーク展開
ネットワーク展開では、工務店を中心とする建設会社を登録施工店としてネットワーク化し、そのネットワークを通じてSE構法による耐震性の確保された木造住宅の普及促進につとめております。また、全国各地の建設会社をネットワーク化することにより、地域性を熟知した登録施工店を通じて、地域それぞれの文化慣習と気候風土に合わせた機能的かつ資産性の高い住宅を提供しております。
登録施工店は、当社が実施する講習を受講した上で、当社独自の試験に合格し資格を取得した建設会社であり、各登録施工店にSE構法管理技師を配置し現場検査を実施することで、高品質で耐震性の確保された木造住宅が提供できる体制を構築しております。
当社は、登録施工店向けのサービスとして、各種販促ツールの提供や勉強会での情報提供に加え、構造に関する瑕疵を保証する「SE住宅性能保証」の無償提供や長期優良住宅の認定サポートを提供しております。その他、情報誌「ネットワークSE」を定期発行しております。なお、「ネットワークSE」は4,000部を定期発行しており、登録施工店だけでなく、設計事務所や学識経験者に定期購読いただいております。
2018年3月末現在の登録施工店数は514社となっておりますが、登録施工店ネットワークの継続的な拡大に向けて、定期的に勉強会やセミナーを通じて新規顧客の開拓につとめております。
・ハウスメーカー対応
ハウスメーカー対応では、規格型住宅を販売するハウスメーカー等パートナー企業に対してSE構法をOEM提供しており、パートナー企業が規格型住宅を販売する際に、当社は構造計算書を出荷するとともに構造加工品等を販売しております。
当社の持分法適用関連会社である株式会社MUJI HOUSEが企画・開発・販売を行う「無印良品の家」にはSE構法が標準採用されているほか、大手ハウスメーカー数社を含むパートナー企業にSE構法を提供しております。当社では引き続きパートナー企業の開拓につとめております。
② 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野では、延床面積500㎡以上の木造建築を対象にSE構法の提供を行っております。
上述のとおり、「公共建築物等木材利用促進法」の施行等により、構造計算が必要となる大規模木造建築の建設需要が高まることが期待されておりますが、当社では創業以来、住宅を中心に2万棟以上の構造計算実績(2018年3月末時点)を有しており、その中で培った木造建築の耐震設計ノウハウを大規模木造建築へ転用し、事業化を推進しております。
(2)その他
当社グループでは、木造耐震設計事業を主軸としながら「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。」という目標を実現するため、温熱計算サービスや長期優良住宅認定の代行サービス等、住宅の資産価値向上に向けた様々なサービスを手がけております。
① 新規事業
当社において、温熱計算サービス、長期優良住宅認定代行サービス等を提供しております。
温熱計算サービスは、2013年に導入された「改正省エネルギー基準」により一次エネルギー(注4)の消費量が評価基準に加わったこと、また、2020年以降の省エネ基準適合住宅が義務化されることを見越して2010年からサービス提供を開始しております。SE構法による住宅だけでなく、他の工法による住宅に対してもサービス提供を行い、ゼロエネルギー住宅の普及に向けて取り組んでおります。
また、長期優良住宅認定の代行サービスは、国が認定する「長期優良住宅」の認定取得に係る各種手続きをサポートする登録施工店向けのサービスとして展開しております。
② 住宅ローン事業
当社の連結子会社であるSE住宅ローンサービス株式会社において、SE構法による住宅専用の住宅ローンを代理販売しており、住宅購入者を資金面でバックアップする仕組みを整えております。
③ BIM事業
当社の連結子会社である株式会社MAKE HOUSEにおいて、木造住宅に対して3次元CADデータ(BIM(注5)データ)生成技術を普及促進する事業を行っております。木造住宅の間取りやデザインに3次元CADデータ(BIMデータ)を用いることにより、構造加工品などの3次元製造図の自動作成、付属する部材のリスト作成、施工図の自動生成など、設計から生産までのデータの一元化を実現し、資産価値の高い住宅をより安く市場に提供するため、BIMソリューションの開発及び販売を行っております。また、3次元CADデータは、建築後のメンテナンスデータとしても利用が可能であり、住宅の資産価値向上に寄与するものでもあります。
(注1) SE構法
SE(Safety Engineering)構法は、従来、鉄骨造やRC造において主流だったラーメン構法を木造住宅に取り入れ、安全かつ便利に利用できるようにシステム化した当社独自の木造建築用の建築システムであります。
(注2) 出所:兵庫県「阪神・淡路大震災の死者にかかる調査」(2005年12月22日記者発表にて)
(注3) 許容応力度計算
許容応力度計算とは、小規模な建築物に用いられる構造計算方法であり、建築物にかかる固定荷重や積載荷重に地震力などの長期荷重、及び短期荷重を想定して応力(部材等の内部に生じる抵抗力のこと)を算出し、それぞれの部材が応力に耐えられるかどうかを許容応力度(限界点)と比較するものです。
(注4) 一次エネルギー
化石燃料、原子力燃料、水力・太陽光など自然から得られるエネルギーを「一次エネルギー」、これらを変換・加工して得られるエネルギー(電気、灯油、都市ガス等)を「二次エネルギー」といいます。建築物では二次エネルギーが多く使用されており、それぞれ異なる計算単位(kWl、l、MJ等)で使用されています。それを一次エネルギー消費量へ換算することにより、建築物の総エネルギー消費量を同じ単位(MJ、GJ)で求めることができるようになります。一次エネルギー計算とは、建築物に導入される設備機器の仕様から年間の設計一次エネルギー消費量を算出することです。
(注5) BIM
Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略称で、コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションであります。
[事業系統図]
以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
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[ネットワーク相関図]
以上述べた事項をネットワーク相関図によって示すと次のとおりであります。
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