有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/06/12 15:00
【資料】
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【項目】
132項目
(1)経営成績等の状況の概要
第10期事業年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
当事業年度につきましては、個人向け資格支援事業においては、前年に引き続きスタディング講座の新規開発や既存講座の改良に注力いたしました。有料会員数(ユニーク数)も順調に伸長しており、2019年9月には有料会員数は累計で5万人を突破しました。システム面では、人工知能(機械学習)のアルゴリズムを用いることで、受講者ごとに最適なアドバイスを行うことを目的とした「機械学習レコメンド機能(AIマスター)」や、間違えた問題や復習したい問題を抜粋して学習することが可能な「問題横断復習機能」等をリリースし、より受講生の思考に寄り添った学習機能の開発を進めてまいりました。また、2019年8月には「STUDYingアプリ(iOS版)」をリリースし、従来はストリーミング再生だった動画講座をスマートフォンにダウンロードして再生できるようになり、通信環境を気にせず学習を行うことが可能となりました。
法人向け事業においても、前年に引き続き「エアコース」の内容充実、品質向上に加えて、研修会社各社が提供する研修コースの比較、申込、社員の受講履歴までを一元管理できる研修管理クラウドサービス「研修ナビ」の開発・提供や、当社本社内に設置したバーチャルスタジオを使用して、各社の独自ノウハウや業務フローを高品質の動画に記録することで社員教育に活用できる「動画製作サービス」といった新サービスも開始しており、サービス内容の拡充と売上拡大のための活動を積極的に行っております。
このような状況のなか、当事業年度の業績は売上高835,264千円(前年同期比37.1%増)となりましたが、今後の成長を見据えた優秀な人材の確保、学習システムやコンテンツの開発、及び来期以降の売上増の基盤となる無料会員を獲得するための広告宣伝費の先行投入等により、営業損失は149,504千円(前年同期は210,816千円の営業損失)、経常損失は150,375千円(前年同期は211,136千円の経常損失)、当期純損失は150,665千円(前年同期は211,402千円の当期純損失)となりました。
また、当事業年度における現金ベース売上高は961,949千円(前年同期比50.4%増)、新規有料登録会員数(ユニーク)は20,040人(前年同期比38.0%増)となりました。
第11期第1四半期累計期間(自 2020年1月1日 至 2020年3月31日)
当第1四半期会計期間につきましては、個人向け資格支援事業においては、前期に引き続きスタディング講座の新規開発や既存講座の改良に注力いたしました。有料会員数(ユニーク数)も順調に伸長しており、2020年2月には有料会員数が累計で6万人を突破しました。また、3月には株式会社アルクと共同で、英語試験のオンライン講座「TOEICTEST対策講座」を新たに開講し、より資格講座ラインナップを充実させることができました。法人向け事業につきましても、TOEICを中心とした新コンテンツの開発を行いつつ、エアコースや動画制作等の新規案件受注獲得に向けた営業活動を中心に積極的に行ってまいりました。
このような状況のなか、当第1四半期累計期間の業績は売上高250,528千円となり、営業損失は35,348千円、経常損失は36,008千円、四半期純損失は36,082千円となりました。
また、当第1四半期累計期間における現金ベース売上高は359,511千円、新規有料登録会員数(ユニーク)は7,509人となりました。
①財政状態の状況
第10期事業年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
(資産)
当事業年度末における資産合計は757,351千円となり、前事業年度末に比べ145,884千円増加いたしました。これは主に借入の実行及び売掛金の回収に伴う現金及び預金の増加105,191千円、受託開発売上及び現金ベース売上増に伴う売掛金の増加22,293千円、還付請求の入金に伴う未収消費税等の減少18,298千円、新規システム開発に伴うソフトウエアの増加22,349千円によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は686,839千円となり、前事業年度末に比べ296,550千円増加いたしました。これは主に現金ベース売上増に伴う前受金の増加170,964千円、新規借り入れによる長期借入金及び一年内返済予定の長期借入金の増加57,223千円、広告宣伝費の支払方法変更による未払金の増加42,895千円によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は70,512千円となり、前事業年度末に比べ150,665千円減少いたしました。これは、当期純損失150,665千円によるものであります。
第11期第1四半期累計期間(自 2020年1月1日 至 2020年3月31日)
(資産)
当第1四半期会計期間末における資産合計は844,610千円となり、前事業年度末に比べ87,258千円増加いたしました。これは主に売掛金の回収に伴う現金及び預金の増加82,089千円によるものであります。
(負債)
当第1四半期会計期間末における負債合計は810,180千円となり、前事業年度末に比べ123,340千円増加いたしました。これは主に現金ベース売上増に伴う前受金の増加136,761千円によるものであります。
(純資産)
当第1四半期会計期間末における純資産合計は34,430千円となり、前事業年度末に比べ36,082千円減少いたしました。これは、四半期純損失36,082千円によるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
第10期事業年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ105,191千円増加し、510,726千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は85,889千円となりました。これは主に、前受金の増加額170,964千円、税引前当期純損失150,375千円、未払金の増加額42,895千円、未払又は未収消費税等の増加額27,502千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は37,920千円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出40,065千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は57,223千円となりました。これは、長期借入れによる収入101,000千円、長期借入金の返済による支出43,777千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
第10期事業年度及び第11期第1四半期累計期間の販売実績は、次のとおりであります。
第10期事業年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
前年同期比(%)第11期第1四半期累計期間
(自 2020年1月1日
至 2020年3月31日
835,264千円137.1250,528千円

(注)1.当社は、e-learning・教育事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.最近2事業年度及び第11期第1四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度の経営成績については、個人向け資格支援事業は、有料会員による受講料の支払額の総額を、それぞれの受講期間に按分した発生ベース売上に関しては、新規講座の開発、既存講座のプロモーションの強化、効率化等により、有料受講者数の順調な推移とともに対前年同期比と比較し32.1%増を達成することができました。当社の事業モデルにおいては先行投資となるWeb広告への適切な出稿や告知により、無料会員を獲得しその中から講座を購入(有料会員へ移行)していただくことが重要です。それにより受講料の支払額の総額である現金ベース売上が積み上がり、現金ベース売上はその後、発生ベース売上として売上按分されることになるため、現金ベース売上の推移(貸借対照表上は前受金計上)はそのまま収益に影響を及ぼすことになります。Web広告はGoogleやYahoo!等が提供する検索連動型広告(リスティング広告)への出稿が主でありますが、リスティング広告はいわゆるオークション形式であり、キーワードの入札価格や広告としての品質によって順位付けられて表示されるため、適切な運用が重要です。Web広告では、広告が表示された回数、クリックされた回数、かかった費用、費用対効果などのデータ収集や効果測定が可能であるため、データを分析しながらより効果的な運用が可能となります。
一方で、広告効果を高めるには、Web広告の効果測定の分析結果から、費用対効果の見極めと、きめ細やかな運用をすることが不可欠となるため、当社では日時でデータをチェックし対応するための人的リソース確保や運用ノウハウの獲得を重視しております。また、集客をリスティング広告のみに依存した場合、運用結果次第では費用が予期せず増大するリスクがあるため、検索での流入を増やすSEO対策や、資格取得市場における認知度を高めるブランディング施策など、中長期的に自然流入による集客の増加を図ることを重視しております。したがって、個人向け資格支援事業においては、現金ベース売上を確保していくこと、そのベースとなる集客手段において、費用対効果の改善を含め、より収益性を高めていくことが重要な経営目標であると認識しております。
当社の売上高は現状では個人向け資格支援事業が大半を占め、2019年12月期の売上高における割合は95.6%となり順調に伸長しております。しかしながら中長期の経営戦略を考えたとき、収益源の多様化は重要な経営課題であると認識しております。個人向け資格支援事業における資格ごとの減衰や季節要因等のリスクを低減し、安定した収益を確保するためには、法人企業との取引が不可欠であると考えております。そのため、2018年7月に法人事業部を立ち上げ、法人向け事業を本格的に開始いたしました。法人事業部では、企業にニーズの高い社員教育クラウドサービスの販売や、社員教育動画制作サービス、個人向け資格取得支援事業で展開している資格対策講座の法人向け販売などを推進し、中長期的には個人向け資格支援事業と同等の売上を確保して経営リスクを低減させていく方針です。
なお、2020年12月期第1四半期における個人向け資格取得支援事業の割合は88.6%となっております。
当社は、ITを駆使し、スマートフォンやタブレット、PCなどの情報端末を活用した学習方法を提供しております。それら情報端末の進化は著しく、また通信環境の改善により、ユーザーは動画を始めとするリッチコンテンツの閲覧や多様な情報の取得が可能となっております。したがってそれら技術革新を正しく理解し、品質の高いサービスの提供に向け高い技術力の確保が重要であると考えております。その実現のため、優秀な技術者の確保を加速するとともに、AIを含む最新の技術知識の獲得を加速させる方針です。
将来を見据えた人材の採用も重要な経営課題です。優秀な人材の確保と事業拡大に備え、先行投資として2018年10月に本社の拡張移転を実施し、あわせて本社と動画撮影スタジオを統合した事業効率化等を行いました。今後も先行投資については、費用対効果を十分に検討・精査し適宜、実施していく方針です。
当事業年度において、当社の個人向け資格支援事業のサービス開始から12年、法人設立後10周年を迎えることができ、2018年12月にはブランド名称を従来の「通勤講座」から「スタディング」へと変更しました。これにより、「通勤」という従来のイメージから学生や主婦層等にもターゲットを広げ、生涯学び続けるという人生100年時代を見据えたブランドイメージとしました。来期以降の成長戦略としてブランド認知向上を実行していくことも、当社の重要な経営課題と認識しております。
来期については、今期に引き続き新規講座の開発、既存講座の強化、広告宣伝費率の向上、AIを活用した新たなサービスの開始等、売上拡大につながるための施策を積極的に展開するとともに、社内管理体制や法令順守等、コンプライアンス体制についてもより充実させてまいります。常に顧客目線を心掛け、「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンのもと、顧客への提供価値および企業価値を高める方法を追求してまいります。そしてそれこそが、私たちのミッションである『学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す』を達成することにつながると考えております。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、広告宣伝費等の営業費用であり、これらに必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて最適な方法による資金調達を行う予定であります。
なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は510,726千円であり、有利子負債の残高は121,781千円であります。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。