有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/16 15:00
【資料】
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【項目】
153項目
(2)【手取金の使途】
上記の手取概算額3,106百万円及び「1 新規発行株式」の(注)5に記載の第三者割当増資の手取概算額上限1,389百万円については、株式会社ポピンズホールディングスの基幹システム開発資金として296百万円(2021年12月期:296百万円)、借入金の返済資金として2,014百万円(2020年12月期:412百万円、2021年12月期:1,262百万円、2022年12月期:339百万円)、連結子会社の株式会社ポピンズへの投融資資金として1,968百万円、株式会社ウィッシュへの投融資資金として215百万円に充当する予定であります。
上記調達資金については、具体的な充当時期までは、安全性の高い金融商品等で運用する予定であります。
なお、投融資資金の詳細については以下のとおりとなります。
株式会社ポピンズでの資金の使途は、2021年12月期中に開設及び増床を予定している認可保育所等(4施設)及び2022年12月期中に開設及び増床を予定している認可保育所等(7施設)の設備投資資金として1,939百万円(2020年12月期:184百万円、2021年12月期:764百万円、2022年12月期:990百万円)、借入金の返済資金として28百万円(2020年12月期:1百万円、2021年12月期:27百万円)に充当する予定であります。
株式会社ウィッシュでの資金の使途は、2022年4月に開設を予定している認可保育所(1施設)の設備投資資金として215百万円(2021年12月期:86百万円、2022年12月期:129百万円)に充当する予定であります。
(注) 設備資金の内容については、「第二部 企業情報 第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」の項をご参照下さい。
当社は「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」をミッションとしており、我が国が推進している「待機児童の解消」に向けた対策に寄与することは、当社の経営戦略を推進する上でも、きわめて重要な意義を持つと考えております。
上記資金使途において、認可保育所開設地域は東京都内・横浜市内を予定しております。いずれも保育サービス利用児童数・保育所等利用待機児童数が増加している地域となっており、近年高まっている保育サービスへの社会的要請にお応えできると考えております。
また、当社は上記保育所の開設にあたって、騒音対策や送迎時の混雑対策、また、LED照明の設置といった点を考慮して建設を行っており、社会・環境負荷の低減にも努めております。
このように、当社の経営戦略を推進すると同時に上記のような社会的課題への取り組みを行うことで、当社の企業価値の向上だけでなく、様々なステークホルダーの利益に資することを目指しております。
なお、今回のエクイティ・ファイナンスに際しては、当社グループにおける経営の基本方針や30年超に亘るこれまでの活動が社会に与える影響について、より理解を深めて頂く事が当社への投資を検討頂く上で重要であるとの考えから、今般調達する資金の充当先に関する社会貢献インパクト、及び、発行体である当社グループ自身のESG(※1)への対応状況を、第三者の目から客観的に評価して頂くべきであるとの考えに至りました。このような考えを実践する為に、外部レビューを提供する株式会社日本総合研究所より、エクイティ・ファイナンスにおいては各インパクトの評価に適した指針等がないものの、デット・ファイナンスにおける各インパクトの評価指針とされるソーシャルボンド原則(以下、「SBP」という)(※2)を用いることについて助言を得ました。SBPはソーシャルボンドという各債券の発行の際に、調達資金の使途、プロジェクトの評価及び選定のプロセス、調達資金の管理、レポーティングという4つの要件について、その各要件とその枠組みを評価する指針であります。今回のエクイティ・ファイナンスは、債券の発行ではないことから、厳密な意味ではSBPに適合することはありませんが、SBPの持つ評価特性を用いることで、今回のエクイティ・ファイナンスの社会貢献インパクト等に関する客観的な評価を得ることはできると考え、前記4つの要件とその枠組みについて同社より外部レビューを頂いております。当該レビューの結果、上記の設備投資及び借入金返済の資金使途、そしてその設備投資と借入金返済により提供される当社グループのサービスによる社会貢献度に関して、同社より取得したオピニオン(以下、「セカンドパーティ・オピニオン」という。)において原則類が示す特性に従うものである旨の意見を得ております。本セカンドパーティ・オピニオンでは、SDGs(※3)の目標及びターゲットへの貢献についても分析されています。当該セカンドパーティ・オピニオンの冒頭「Ⅰ.要約」の記載は以下の通りです。
※1ESG: Environment(環境)、 Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字
※2ソーシャルボンド原則:国際資本市場協会(ICMA)により策定されたソーシャルボンド発行に係るガイドライン
※3SDGs:国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された国際目標
1.本資料の目的
株式会社ポピンズホールディングス(以下、ポピンズホールディングス)は、「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」というミッションのもと、働く女性の支援に資する事業を広く手掛けている。ポピンズホールディングスはポピンズホールディングスの保育所関連事業「エデュケア事業」における保育所の新設等及び関連基幹システムの整備、「在宅サービス事業」における基幹システムの整備、及び全社共通の基幹システムの整備(以下、対象事業)を実施するための設備投資等を資金使途として、株式市場からの資金調達(以下、本調達)を行う。本資料の目的は、国際資本市場協会が発行する「ソーシャルボンド原則2020年版(以下、SBP)」の特性に基づき、株式会社日本総合研究所(以下、日本総合研究所)が本調達についてレビューを行い、そのレビュー結果をセカンドパーティ・オピニオンとして公表するものである。
2.発行者の役割とレビュー範囲
日本総合研究所の役割は、 SBP が推奨する資金調達主体に対する外部レビューを実施するコンサルタントとして位置づけられる。 SBP が示す外部レビューは「セカンド・オピニオン」、「検証」、「認証」、「ソーシャルボンドスコアリング/格付け」の4種類に分類されるが、本レビューはそのうち「セカンド・オピニオン」に該当する。
本資料のレビュー範囲は、(1) 本調達のフレームワーク、(2) 対象事業が創出するインパクトおよびSDGsへの貢献可能性、(3) ポピンズホールディングスのESG側面の取り組みや情報開示の3点が対象である。フレームワークは、SBPが基本原則として示す「調達資金の使途」、「プロジェクトの評価及び選定のプロセス」、「調達資金の管理」、「レポーティング」の4項目から構成される。これらに沿って評価を行う。
3.セカンドパーティ・オピニオン(要約版)
(1)ソーシャルボンド原則への準拠性
本調達のフレームワークをSBPが示す4原則に基づきレビューした結果、SBPが示す社会課題への対応を目的とした資金調達の特性に従うものとして評価する。

「調達資金の使途」:本調達により資金充当される対象事業はポピンズホールディングスの保育所関連事業「エデュケア事業」における保育所の新設等及び関連基幹システムの整備、「在宅サービス事業」における基幹システムの整備、及び全社共通の基幹システムの整備(以下、「対象事業」と総称する)に限定されている。ポピンズホールディングスのミッション「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」に基づき、子育て支援サービスの展開は女性の社会参画の促進や、待機児童という社会課題の解決に寄与する。よって、資金使途の適格クライテリアは適切に設定されていると言える。
「事業の評価・選定プロセス」:適格クライテリアとして策定した項目は、SBPにおいて適格なプロジェクトカテゴリーと認められること、ポピンズホールディングスの管理部門が対象事業の内容を検討したうえで、取締役会にて社会側面でのインパクト創出の可能性を評価し、社会課題解決に資する事業として選定・評価する予定であることを確認した。
「資金管理」:本調達により調達した資金は、当初の目的以外に充当される予定はないことを確認した。本調達による調達資金は、新たな預金口座において管理され、対象事業への充当状況を追跡可能な仕組みを有していることを確認した。
「レポーティング」:ポピンズホールディングスは自社のホームページにおいて、調達資金を充当したサステナビリティプロジェクトの概要、充当した資金の総額、未充当資金が発生する場合はその額、対象事業による社会側面での改善インパクトを開示する予定である。インパクト・レポーティングにおけるKPI等、具体的な開示項目については今後検討が必要である。また、これらの情報は少なくとも年に一度、対外的に開示することから、情報開示の頻度は適切と考える。
(2)対象事業が創出するインパクトおよびSDGsへの貢献可能性
本調達を通じて、SDGsのうち特に目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標8「働きがいも経済成長も」が設定するターゲットへの貢献が期待できる。

対象事業により、社会側面での改善インパクトが期待できること、および対象事業の効果は、複数のSDGsの達成に繋がることを確認した。
目標日本総研のオピニオン(要約)
0101010_001.png対象事業の運営は、女性が切れ目なく仕事を続けるための社会的インフラと位置付けられる。
よってターゲット5.5「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する」への貢献が期待できる。
0101010_002.pngポピンズホールディングスでは、国内外の有力大学等と乳幼児教育の研究を重ね、それらを保育サービスに取り入れるとともに、保育士およびベビーシッター向けの研修プログラムを充実させ、実践につなげている。実績面でも、保育所における死亡事故や重大な事故を発生させていない。また、待機児童の多い大都市圏での実績が豊富である。
よって、ターゲット4.2「すべての女児及び男児が、質の高い乳幼児の発達支援、ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする」への貢献が期待できる。
0101010_003.pngポピンズホールディングスでは、保育士向けの研修やシステムの導入による働き方改善に加え、業界トップレベルの処遇改善やお茶の水女子大との新たな講座設置にも取り組んでおり、今後も、保育士の仕事の社会的地位向上への貢献意欲が強い。
よって、ターゲット8.1「各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる」、8.5「2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する」への貢献が期待できる。

(3)資金調達主体のESGの取り組みおよび情報開示
ポピンズホールディングスのESGの取り組みと情報開示をレビューした結果、企業経営において、良好なESGの取り組みと一定の情報開示を実施していると評価する。

特に優れている点は、以下の各点であると判断する。
「環境側面」:保育所運営を通じ、環境学習機会を園児に提供している点、保育所の立地特性に応じた個性のある取り組み(ビオトープの設置や、すべての園から参加できる「ポピンズ農園」における田植え体験など)を実施している点を評価する。
「社会側面」:5,125人の従業員に対して多様な働き方の実現を推進し、新型コロナウイルス感染症対策においてエッセンシャルワーカーとして認知されるようになった保育士や介護ケアスタッフの働き方改善(ICTを活用した在宅勤務の可能性拡大、非接触型のサーマルカメラ導入など)に取り組んでいることを評価する。
「ガバナンス側面」:「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」というミッションをグループ全体に浸透させ、創業以来、企業の社会的責任を重視した経営を行い、事業の拡大過程を通じて従業員への理解促進を行っている点を評価する。
4)結論
レビューの結果、ポピンズホールディングスでは働く女性の支援がミッションとして経営の柱に据えられており、それに基づく本調達のフレームワークは、SBPが示す特性に従うと判断する。インパクトについては、働く女性の支援がミッションとして創業時から経営の柱に据えられており、社会側面での改善インパクトが見込まれ、さらに、SDGsの達成への貢献も期待できる。今後、ポピンズホールディングスにおいて、定量的なインパクト評価が継続的に実施されることを期待する。また、資金調達主体であるポピンズホールディングスについては、企業経営において、良好なESGの取り組みと一定の情報開示を実施していると判断する。
出所:株式会社日本総合研究所「Second Party Opinion:株式会社ポピンズホールディングス」(2020年11月16日発行)の「Ⅰ.要約」
なお、本セカンドパーティ・オピニオンは、当社HPの「当社のSDGsへの取組み」内の、「Second Party Opinion:株式会社ポピンズホールディングス」に掲載しています。