有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/12 15:00
【資料】
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【項目】
127項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当社は、CRMを中心としたソフトウエアプラットフォームをSaaSで提供するため、以下の主要課題に取り組んでおります。
(1)経営方針
当社では、「私たちは、顧客価値を創造するプラットフォームを提供し続けることで、社会に貢献します。」という経営理念のもと事業を進めております。そのための施策として、以下の特長を持つビジネスモデルの運営に取組んでおります。
・SaaS型のサービス提供とし、共通のサービスを多くの会社に共有で格安に活用していただけるようにする
・自社で企画・設計・開発・販売・サポートする体制を整え、日本市場特有の肌理の細かい顧客管理ができる水準のソフトウエアにする
・消費者が所有するモバイル環境を中心に事業を推進し、BtoBtoB向け(一般法人向け)のソフトウエアではカバーできていないBtoBtoC向け(主として実店舗をお持ちの法人向け)に最適な環境を提供する
(2)経営戦略等
当社の事業の中心であるスマートCRMサービスにおいては、現在まで導入実績が多い小売・飲食業に重点を置き販売展開を行います。販売展開においては、中期経営計画ではチャネル政策に比重をおき、国内では全国的な販路を持つ販売力の強い戦略的なパートナーと提携し、拡販を目指します。
スマートCRMサービスの中心となる機能は、顧客データベース管理機能であり、当該機能周辺に付加価値を提供するソフトウエアを継続的に開発してまいります。
既にスマートフォンをプラットフォームとしたキャッシュレス決済は大手通信会社やコンビニ各社による電子マネー、飲食・小売り業界各社のプリペイドマネー等のキャッシュレス推進により発展期に入っており、スマートCRMサービスのアプリ機能を会員証としてとらえた、プリペイド、POS連携、カード決済等の外部システムとの連携機能の開発投資を積極的に行ってまいります。
スマートCRMサービスの販売先に多店舗展開する大手企業が多くなってくることで、導入の際には当社の標準機能にはない、独自機能の構築や機能の変更を要望されることが多くなっています。そのためソフトウエア開発を行うエンジニアの確保が必要となってきますが、人的リソースの確保についても積極的に投資を行っていく予定です。
(3)経営環境
当社が提供する「CRMサービス」は、大きな区分として「CRM市場」に属しております。
CRMとは、「顧客満足度」の向上を軸足において、顧客情報を中心とする情報に対してITツールを使い、有機的に連携・活用し、最終的には導入企業の収益を向上させることをいい、当社は、これらを実現する機能を消費者に対してより的確な情報や利便性を提供する企業向けに提供しております。
CRMソフトウエアは、導入企業が独自のシステムとして構築し保有するオンプレミス型と、自社ではシステムを保有せずアプリケーションサービス事業者が提供するクラウド型に区分されます。当社が提供する「CRMサービス」はクラウド型CRMの市場に属しており、その市場規模は、2017年は1,674億円、2018年は2,084億円、2019年は2,524億円と伸長する一方、オンプレミス型CRMの市場規模は、2017年は4,800億円、2018年は4,600億円、2019年は4,400億円と減少する傾向にあり、CRM市場が従来型のオンプレミス型からクラウド型へと変遷していることが示唆される結果となりました(株式会社ミック経済研究所「クラウド型CRM総市場及びオンプレミス型CRM市場との市場推移比較 2020年2月」)。
対象となる消費者が保有するモバイル機器の技術の変化の速さや嗜好の多様性に対応することが求められるため、提供する機能の追加・改修及び市場で要求される高いセキュリティ水準に合わせるためのシステムの改変等、自社で構築するオンプレミス型CRMでは、これらに多額の投資をせざるを得ない傾向があります。一方、クラウド型CRMでは専門の事業者により顧客の要望に応じて柔軟で難易度の高いサービスを提供することが可能であることから、当社の属するクラウド型CRMサービスは順調に拡大しているものと認識しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、持続的な利益成長を目指し、継続的に事業拡大をさせるため、事業の成長性や収益性の向上に取り組んでいることから、売上高、営業利益及び経常利益を重要な経営指標としております。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題について
①ECや決済周辺ビジネスなどCRMサービスに付随する収益性の高いビジネスへの取り組み
データ分析用のダッシュボードサービス、当社の主力顧客である外食産業全体が直面する人手不足の解消や新型コロナウイルス感染症による宅配ニーズの拡大に対応することに貢献するソリューションである通販代行運営(ECフルフィルメントサービス)等、CRMサービスに付随した追加サービスを提供し収益を拡大いたします。
また、キャッシュレス社会の進展に対応するスマホ会員証アプリに付随するクレジットカードや通信キャリア決済、プリペイメントカード決済への接続・連携対応などを積極的に推進し事業を拡大しており、当社が提供するスマートCRMサービスの導入企業社数は2020年9月末現在で147社(対前期末比18.5%増)、利用会員数は2020年9月末現在で17,155千人(対前期末比14.1%増)と堅調に推移しております。
②メールマーケティングサービスからスマートCRMサービスへの移行促進
スマートフォンが消費者に本格的に普及し、これに伴い発展してきたソーシャルメディア(SNS)が主流になってきたことから既存のメール配信サービスを中心としたメールマーケティングに対するニーズが減退し、当該サービスの解約に繋がりつつあります。これに対応するため、多様なコミュニケーションツールとしてショートメッセージ(SMS)、音声自動送受信(IVR)、アプリ向けプッシュ通知、LINE連携などのインテグレーション開発を進め、それらを統合したスマートCRMサービスを提供しています。販売面では、有力代理店との関係強化、既存取引先においてはサービス領域の拡大を図り的確な販促アプローチを強化することによってメール配信サービスの解約の抑止とともに、スマートCRMサービスへのスムーズな移行を促進しております。
③海外向けサービスの提供開始
メールマーケティングサービスは、過去にシンガポールにおいてサービス提供をしておりましたが、現地でのメール配信需要の減退により現在では撤退しております。スマートCRMサービスは、株式会社ペッパーフードサービスの米国進出に合わせて米国ニューヨークにおいてサービスを提供しておりましたが、同社の米国事業縮退を理由に撤退致しました。その後、他の国内企業の海外進出についても検討を進めておりましたが、新型コロナウィルス感染症の影響により足踏み状態が続いております。今後は、将来の日本企業の海外展開に備え、過去の経験を踏まえ再度準備を行ってまいります。
④内部管理体制の強化による事業基盤強化
当社は成長段階にあり、業務運営の効率化やガバナンス、リスクマネジメントのための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。従来より当社は監査役会の設置、社外取締役の選任、内部監査の強化などを通じて、コンプライアンス強化に努めております。具体的には、部門間の役割分担の明確化とともに関係を強化し、顧客からの様々な要望に迅速に応えるため優先順位をつける等業務整理を推進して効率化を図るとともに、経営の公平性や透明性を確保するために内部統制の実効性を高め、当社のコーポレート・ガバナンス体制をより一層整備し内部管理体制の強化に取り組み事業基盤を強化いたします。
⑤システム信頼性の継続的な維持や品質の向上、設備環境の強化
当社のCRMサービスは、SaaSで提供しており、顧客企業とそのお客様が24時間365日間、安心してサービスを利用していただくために、システム稼働の安定化が重要な課題であると認識しております。セキュリティ・開発・保守管理体制の整備は不可欠であり、また、大型案件の増加によるアクセス数の増加はサーバーに負荷を与えるため、設備の増強や負荷分散、冗長化等の対策が必要となります。それらの重要性を認識した上で、継続的な設備投資を行い、システムの継続的な安定化、品質の向上に取り組んでおります。
⑥売上原価の削減
CRMサービス売上の増加によりそれに伴ったライセンス仕入額も増加しており、売上原価率を上げている要因として重要な課題であると認識しております。既に、売上原価の外部のソフトウエア使用料のライセンス費用の内、一部の外部ソフトウエアの代替として社内で同等の機能を備えたソフトウエアの構築を開始しております。今後は、この代替ソフトウエアの運用を開始することにより、原価の売上原価率の削減を目指します。
⑦組織体制の強化
当社は、今後の成長のために、要員拡充と組織体制の更なる整備を進めてまいります。主に、当社CRMサービスの利便性と実装機能の向上のためにはサービス構築を担う有能な技術者の採用、またより多くの顧客企業への販売拡大のために提案力の強い優秀な営業及び手厚い顧客サポート体制の強化による採用を継続することが課題であると認識しております。これらの課題に対処するため、求める人材に応じて、採用方法の柔軟化を図ることで、事業規模や必要な人材に応じた採用活動を行い、着実な組織体制の整備を図ってまいります。