有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/11 15:00
【資料】
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【項目】
131項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
当社は経営理念として「一人でも多くの人に、感動を届け、幸せを広める。」を掲げており、世の中に良い影響力を与えるサービスを、「期待を超える=感動」のエッセンスに徹底してこだわり、提供していくことを企業のミッションとしております。
(2)目標とする経営指標等
持続的な成長を目指していくため、主な経営指標として売上高、営業利益を特に重視しております。また、エンゲージメント経営プラットフォーム事業はBtoB・SaaS・サブスクリプション型のビジネスモデルであるため、KPI(Key Performance Indicators)として、契約企業数、契約企業の平均月額収益、売上高ストック比率等を重要指標として運営を行っております。
(3)経営環境及び経営戦略
我が国は少子高齢化により、人口減少の局面を迎え、今後、生産年齢人口の減少が続く見通しであり、人手不足が経営危機を招き、倒産に至る事例も増えております。我が国の企業は、採用獲得競争の激化と雇用の流動化の中で、採用できない/採用した従業員はやめてしまう、という二重苦の状態にあり、人材定着や離職改善への意識は今後一層高まっていくことが予想されます。最近のHR Tech※1の展示会でエンゲージメントにフォーカスしたサービスが取り扱われ、また、エンゲージメント関連の書籍の出版も増えており、エンゲージメントに対する注目度は徐々に高まりつつあると当社は考えております。
他方、「TUNAG」の属するHR Tech市場を含む、国内におけるSaaSモデルサービスの市場については拡大を続けており、2018年度に4,000億円を超える規模に到達したと見られ、2023年度には8,174億円へと拡大すると予測されております※2。
※1 人事・人材領域におけるテクノロジーを活用したサービスの総称。
※2 富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2019年版」による。
HR Tech市場は育成・定着系、採用管理系、人事・配置系、労務管理系の4つの領域に区分されておりますが、「TUNAG」は「組織課題の解決」を促すソリューションとして複数の領域にまたがって顧客開拓を進めることができるため、ビジネスの拡張余地が大きくなっております。
そのため、当社の経営戦略としては、まず、国内における潜在的な顧客層に対するアプローチを継続し、「TUNAG」の契約企業を着実に拡大してまいります。同時に、当該事業を通じて蓄積したエンゲージメントによる組織運営のノウハウをもとに、東南アジア諸国を中心とした海外企業や企業以外のエンゲージメント領域にも事業拡張を行ってまいります。具体的な戦略は以下のとおりです。
① 国内市場における顧客基盤の拡大
国内市場においては引き続き、契約企業数の拡大と受注単価の向上を進めてまいります。
契約企業数について、国内の総企業数における「TUNAG」のカバー率は1%未満であり、販売パートナーの開拓や導入実績を活用した広告プロモーションの強化などにより契約企業数を拡大してまいります。
受注単価については、部署契約企業の全社展開推進、アルバイト/パートまで含めた全社展開推進といった利用者を拡大するアップセルや、チャット/リワード※などの拡張機能の拡販、エンゲージメント研修など付帯サービスの提供といったオプションを提供するクロスセルにより、受注単価の向上を図ります。
※社内制度の利用促進のために、社内制度ごとにポイントを設定し、利用者に対して付与できる機能。
② 更なるノウハウの活用
国内企業におけるエンゲージメント経営支援のノウハウをもとに、国内同様に定着率に課題を抱える海外企業への販路拡大、並びに同一オフィスビルを利用するビルコミュニティ及びスポーツやタレントを応援するファンコミュニティへの展開を進めてまいります。また、「TUNAG」に蓄積された従業員の生のアクションデータと、組織サーベイの回答データといったビッグデータについて、AIを活用し統計解析することで、新たな機能の開発や独自のコンサルティングノウハウの集積を目指してまいります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社のさらなる成長を実現するため、対処すべき課題は以下のとおりであると認識しております。
① 人材の確保と組織力の強化
当社の持続的な事業継続には、事業拡大に対応できる人材の採用を継続し、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。当社の経営理念や行動指針に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行っていくとともに、社内のエンゲージメントを高め、社員が早期に活躍できる社内施策の整備や環境構築に努めてまいります。
② 新規契約獲得力の強化
現在、名古屋・東京・大阪を中心とし、全国に営業活動を行っておりますが、新規契約実績の半数以上が、プロモーションコストを必要としない「顧客紹介」や営業人員の架電などのテレマーケティングによる「アウトバウンド活動」経由となっております。今後も新規顧客の開拓を行うために、営業人員の増員や教育体制の整備を行うとともに、販売パートナーの開拓や広告プロモーション(Web広告、イベント出展等)などの「インバウンド活動」を強化してまいります。また、導入実績が増えるにつれて、大企業からの受注が増加しており、ストック収益も2018年度末から2019年度末にかけて大きく増加しております。こうした平均単価の高い大企業の新規開拓についても、これまで以上に注力してまいります。
③ 継続率の確保
導入顧客における効果最大化のため、サービス利用を支援するカスタマーサクセス部門の新規採用や教育体制の整備を行うことで、高い継続率の維持に取り組みます。加えて、顧客企業における効果の最大化のみならず、顧客間のネットワークを形成することにより、外部への広告・宣伝効果を創出し、新規顧客の開拓の効率化を図ります。
④ 技術革新への対応
インターネット業界においては常に技術革新が起こっており、顧客ニーズに対応する技術をいち早く取り込むことが競争優位性を維持していく要因となります。当社は、顧客ニーズに対応すべく、外部サービスとの連携を含め、新たな技術を吟味しながら、サービス機能の拡充に努めてまいります。
⑤ 情報管理体制
当社は、顧客及びその従業員に関する個人情報を多く預かっており、その情報管理を強化していくことが重要な課題であると認識しております。現在も情報管理については細心の注意を払っておりますが、今後も継続して、セキュリティの確保や社内体制の整備を行ってまいります。
⑥ 国内のエンゲージメント経営プラットフォーム事業に依存しない収益基盤
当社は、国内の「働き方改革」や「テクノロジー」への注目を背景にサービスを拡大しており、その傾向は続くものと考えておりますが、技術革新や急速な景気変動に対して、現在のエンゲージメント経営プラットフォーム事業を補完すべく、エンゲージメント経営プラットフォーム事業の海外展開や、人事領域以外におけるサブスクリプション型の新規事業の創出を行ってまいります。
⑦ 利益の定常的な創出
当社の収益モデルは、サービスが継続して利用されることで収益が積み上がっていくストック型のビジネスモデルですが、収益を積み上げていくために費用が先行して計上されるという特徴があります。一方で、事業拡大に伴う人件費、採用費、広告宣伝費等の費用については、顧客基盤の拡大に伴い売上高に占める比率を低減させていくことが可能となるため、今後の新規顧客獲得活動や継続率の確保により、収益性の向上に努め、利益を定常的に創出できる体制を目指す方針であります。なお、2018年12月期、2019年12月期及び2020年12月期第3四半期累計期間における四半期ごとの経営成績の状況は以下のとおりです。
(2018年12月期)
(単位:千円)

第1四半期会計期間
(自 2018年1月1日
至 2018年3月31日)
第2四半期会計期間
(自 2018年4月1日
至 2018年6月30日)
第3四半期会計期間
(自 2018年7月1日
至 2018年9月30日)
第4四半期会計期間
(自 2018年10月1日
至 2018年12月31日)
事業年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
売上高11,79123,28035,68142,265113,019
営業損失(△)△21,657△32,497△41,910△47,671△143,736

(注) 2018年12月期の四半期会計期間の数値については、監査法人によるレビューを受けておりません。
(2019年12月期)
(単位:千円)

第1四半期会計期間
(自 2019年1月1日
至 2019年3月31日)
第2四半期会計期間
(自 2019年4月1日
至 2019年6月30日)
第3四半期会計期間
(自 2019年7月1日
至 2019年9月30日)
第4四半期会計期間
(自 2019年10月1日
至 2019年12月31日)
事業年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
売上高65,76296,054111,600123,033396,451
営業利益又は営業損失(△)△23,086△17,6765,431△1,094△36,426

(注) 2019年12月期の四半期会計期間の数値については、監査法人によるレビューを受けておりません。
(2020年12月期)
(単位:千円)

第1四半期会計期間
(自 2020年1月1日
至 2020年3月31日)
第2四半期会計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年6月30日)
第3四半期会計期間
(自 2020年7月1日
至 2020年9月30日)
売上高138,835147,035158,163
営業利益又は営業損失(△)△3,64217,982△2,923

(注) 2020年12月期の四半期会計期間の数値については、監査法人によるレビューを受けておりません。
⑧ 新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染症の影響が全国的に深刻化し、緊急事態宣言の発令までに至った2020年3月~5月において、新規契約獲得数が伸び悩み、月額収益の増減に影響があったものの、四半期単位では増収を継続することができました。6月以降は月額収益が改善傾向にあるものの、感染拡大の第2波や長期化も想定されることから、対応策としてオンラインセミナー(ウェビナー)やWeb商談、IT導入補助金の活用など、テレワーク推進銘柄として継続成長できる販売体制を構築してまいります。