有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/13 15:00
【資料】
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【項目】
122項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュフロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
第9期事業年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
(資産)
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べて、265,072千円増加し、894,691千円となりました。
流動資産は、前事業年度末に比べて103,628千円増加し、695,204千円となりました。これは主に、現金及び預金が72,151千円増加したことによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べて、161,443千円増加し、199,486千円となりました。これは主にソフトウエア仮勘定が138,990千円増加したことによるものであり、当社の中核サービスである不正検知サービスにおけるシステムのアーキテクチャ刷新に伴うソフトウエアの開発によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べて149,793千円増加し、400,425千円となりました。
流動負債は、前事業年度末に比べて64,400千円増加し、157,204千円となりました。これは主に未払金が51,300千円増加したことによるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べて85,393千円増加し、243,221千円となりました。これは主に、社債が105,000千円増加したことによるものであり、事業運営にあたり十分な流動性が確保できたものと考えております。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べて115,278千円増加し、494,266千円となりました。これは主に、当期純利益114,488千円の計上に伴い、利益剰余金の金額が同額増加したことによるものであります。
第10期第3四半期累計期間(自 2020年1月1日 至 2020年9月30日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産は906,036千円となり、前事業年度末に比べ210,831千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が207,263千円増加したことによるものであります。固定資産は336,620千円となり、前事業年度末に比べ137,134千円増加いたしました。これは主にソフトウエア仮勘定が87,934千円増加したことによるものであり、当社の中核サービスである不正検知サービスにおけるシステムのアーキテクチャ刷新に伴うソフトウエアの開発によるものであります。
この結果、総資産は1,242,657千円となり、前事業年度末に比べ347,965千円増加いたしました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債は314,896千円となり、前事業年度末に比べ157,692千円増加いたしました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が170,960千円増加したことによるものであります。固定負債は305,422千円となり、前事業年度末に比べ62,201千円増加いたしました。これは主に長期借入金が92,201千円増加したことによるものであり、事業運営にあたり十分な流動性が確保できたものと考えております。
この結果、負債合計は620,318千円となり、前事業年度末に比べ219,893千円増加いたしました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は622,338千円となり、前事業年度末に比べ128,072千円増加いたしました。これは主に四半期純利益129,081千円によるものであります。
この結果、自己資本比率は49.8%(前事業年度末は54.9%)となりました。
②経営成績の状況
第9期事業年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
当事業年度(2019年1月1日~2019年12月31日)における我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で各種政策の効果もあり、緩やかな回復基調が続いております。しかしながら、通商問題の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引上げ後の消費動向にも留意する必要があり、景気の先行きは不透明な状況となっております。
当社が関連する消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場は、経済産業省による2018年の調査「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、前年比約9%増の17.9兆円となり、依然として高い成長率を維持しております。一方で、不正アクセスやマルウェア等によってカード情報の漏えいが多発し、番号盗用被害額も年々増加傾向にあることから、クレジット取引セキュリティ協議会は、「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画2019」において、非対面取引におけるクレジットカードの不正利用対策の一つである「属性分析・行動分析」として、常に最新化された条件設定により自動判定が行われる「不正検知システム」を導入することが望ましいとするなど、より具体的にセキュリティ強化のための取組を求めております。
このような経済状況のもとで、当社は、引き続き不正検知サービス「O-PLUX」の販売拡大に努めてまいりました。既存顧客の持続的な成長とともに、オウンドメディアの立ち上げ等マーケティング活動による認知度向上及び新規顧客開拓に努めた結果、当事業年度の「O-PLUX」のストック収益(定額課金である月額料金と審査件数に応じた従量課金である審査料金の合計額)は524,092千円(前年同期比7.1%増)に拡大しました。また、2019年11月には、公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会が主催する「第14回ニッポン新事業創出大賞」において、事業の新規性、革新性及び実績が評価され、経済産業大臣賞を受賞しました。不正ログイン検知サービス「O-motion」においては、チケット業界の大手企業への導入が実現しており、引き続き多分野での販路開拓に取り組んでおります。その他、EC構築の要となる決済メニュー導入に関するコンサルティングサービスや、統計・機械学習等の知見を用いて企業の経営課題の解決を支援するデータサイエンスサービスを提供しております。
以上の結果、当事業年度の売上高は745,680千円(前年同期比3.6%増)、営業利益99,036千円(前年同期比19.4%増)、経常利益91,499千円(前年同期比12.6%増)、当期純利益114,488千円(前年同期比42.1%増)となりました。
なお、当社はSaaS型アルゴリズム提供事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
第10期第3四半期累計期間(自 2020年1月1日 至 2020年9月30日)
当第3四半期累計期間(2020年1月1日~2020年9月30日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にありますが、このところ持ち直しの動きが見られます。世界経済情勢におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、金融資本市場の変動などのリスクがあり、景気の先行きは不透明な状況となっております。
消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場は、経済産業省による2019年の調査「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、前年比7.65%増の19.3兆円となり、依然として高い成長率を維持しております。一方、クレジットカード番号等の情報を盗まれ不正に使われる「番号盗用被害」が急増している近年の状況を受け、改正割賦販売法において、クレジットカード番号等の不正な利用を防止するために必要な措置を講じることが義務化され、また、その実務上の指針となる、「クレジットカード・セキュリティガイドライン1.0版(クレジット取引セキュリティ協議会)」においては、非対面取引におけるクレジットカードの不正利用対策として、加盟店に対して「属性・行動分析(不正検知システム)」等の方策をリスク状況に応じて導入することが求められるなど、不正対策に対する社会的要請はますます高まっております。
このような経済状況のもとで、当社は、引き続き不正注文検知サービス「O-PLUX」の販売拡大に努めてまいりました。既存顧客の持続的な成長とともに、オウンドメディアの立ち上げ等マーケティング活動による認知度向上及び新規顧客開拓に努めた結果、当第3四半期累計期間の「O-PLUX」のストック収益額(定額課金である月額費用と審査件数に応じた従量課金である審査費用の合計額)は430,876千円(前年同期比12.7%増)に拡大しました。また、2020年5月には、旅行、チケット、Webサービスの各業界に特化した不正検知サービスの提供を開始しました。不正アクセス検知サービス「O-motion」においては、日本ヒューレット・パッカード株式会社の提供する多要素認証基盤IceWall MFAとの連携を完了させるなど、機能充実を図りつつ引き続き多分野での販路開拓に取り組んでいます。その他、後払い決済に関するシステム提供及びコンサルティングを行う決済コンサルティングサービスや、AI、統計学、数理最適化等データサイエンスにおける最適な技法を用いて分析し、アルゴリズムを開発・提供するデータサイエンスサービスを提供しております。
以上の結果、当第3四半期累計期間の売上高は619,329千円、営業利益128,345千円、経常利益121,050千円、四半期純利益129,081千円となりました。
なお、当社はSaaS型アルゴリズム提供事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
③キャッシュ・フローの状況
第9期事業年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ72,151千円増加
し、590,011千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであり
ます。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、73,548千円(前年同期は50,401千円の収入)となりました。これは主に税引
前当期純利益88,492千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、112,221千円(前年同期は43,611千円の収入)となりました。これは主に無形固定資産の取得による支出103,780千円によるものであり、当社の中核サービスである不正検知サービスにおけるシステムのアーキテクチャ刷新に伴うソフトウエアの開発によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、110,824千円(前年同期は585千円の支出)となりました。これは主に社債の発行による収入146,986千円によるものであり、事業運営にあたり十分な流動性が確保できたものと考えております。
④生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
(b) 受注実績
当社が行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
(c) 販売実績
第9期事業年度及び第10期第3四半期累計期間の販売実績は次のとおりであります。なお、当社はSaaS型アルゴリズム提供事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載をしております。
サービスの名称第9期事業年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
第10期第3四半期累計期間(自 2020年1月1日
至 2020年9月30日)
金額(千円)前年同期比(%)金額(千円)
不正検知サービス591,666110.6485,673
決済コンサルティングサービス106,84570.991,441
データサイエンスサービス47,168138.042,215
合計745,680103.6619,329

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.最近2事業年度及び第10期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先第8期事業年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
第9期事業年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
第10期第3四半期累計期間(自 2020年1月1日
至 2020年9月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
GMOペイメントサービス株式会社153,88721.37164,18222.02138,85622.42
ジャックス・ペイメント・
ソリューションズ株式会社
108,14515.02120,20516.12121,05719.55
株式会社ジャックス--101,92013.6776,84512.41
ヤマトクレジットファイナンス
株式会社
99,31513.7977,51110.39--

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.第8期事業年度の株式会社ジャックスに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3.第10期第3四半期累計期間のヤマトクレジットファイナンス株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成に当たりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積による不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
また、当社が行っております会計上の見積りのうち特に重要なものは、繰延税金資産の計上であり、当社は繰延税金資産の回収可能性について毎期検討を行っております。当社の繰延税金資産の回収可能額は、将来の課税所得の予測に大きく依存しておりますが、課税所得の予測は将来の事業環境や当社の事業活動の推移、その他の要因により変化いたします。将来、課税所得の予測に影響を与える諸要因に変化があり、当社が繰延税金資産の回収可能性がないと判断した場合には繰延税金資産を取り崩し、損益計算書の法人税等調整額が増加し、当期純利益が減少いたします。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、事業活動に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
当社の資金需要のうち主なものは、システム運用に係る原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、システム開発への投資によるものであります。
これらの資金は、自己資金、金融機関からの借入、社債発行及び新株発行等により資金調達していくことを基本としておりますが、財政状態を勘案しつつ、資金使途及び需要額に応じて、柔軟に検討行う予定であります。
なお、当事業年度における借入金等の有利子負債の残高は292,828千円となっております。また、当事業年度における現金及び現金同等物の残高は590,011千円となっております。
⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社は経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標として、当社主力製品である「O-PLUX」のストック収益の金額を重要な経営指標と位置づけております。
当該指標については、次表のとおり継続的に増加しており、当第3四半期累計期間末の「O-PLUX」のストック収益は、既存顧客の持続的な成長とともに、オウンドメディアの立ち上げ等マーケティング活動による認知度向上及び新規顧客開拓に努めた結果、前年同期比の112.7%の水準となっております。これは、現時点において予定通りの進捗となっており、順調に推移しているものと認識しております。
2017年12月期2018年12月期2019年12月期2020年12月期
第3四半期
「O-PLUX」のストック収益(千円)450,431489,333524,092430,876