有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/02/12 15:00
【資料】
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【項目】
143項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「つながりで世界をワクワクさせる」というミッションのもと、「人の成長を加速させるキャリアデータベースプラットフォームをつくる」(注1)をビジョンに掲げ、日本の労働市場が直面する急速な労働人口の減少という問題を企業と求職者とのマッチングの観点からテクノロジーとプラットフォームビジネスで解決することを目指しております。まずは、入社後3年で3割が離職しているというミスマッチの問題(出典:厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」)が顕在化している新卒採用領域において、新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」と適性検査サービス「eF-1G」を提供し、個人の成長と企業の発展に貢献することを通じて企業価値の最大化を図っております。
以上のミッション、ビジョンの実現にあたって必要な価値観を5Valuesとして示し、組織への浸透を図っております。
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(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、新卒ダイレクトリクルーティング市場のリーディングカンパニーとして、当該市場を拡大することにより高い成長性を継続することを目指します。また、高い成長性を維持するために積極的な投資を行う方針であります。従いまして、売上高及び売上高に直接的に紐づく決定人数を当社グループの経営上重要な指標等としております。
(3)経営環境及び経営戦略
当社グループを取り巻く環境変化については、次のとおりです。
① 新卒採用を含めた「働き方改革」の推進
政府主導の「働き方改革」により、新卒者の受け皿である企業側の労働時間管理の見直しや勤務体系の柔軟化といった体質改善のみならず、採用活動へのテクノロジーの活用やジョブ型採用の導入などが進むと考えており、当社グループが提供するサービスとの親和性が高いと考えております。この取り組みの延長線上では、従来の新卒一括採用の在り方や大学教育の在り方についても見直しが進むと考えられ、主要事業の成長に加え、大学を含む外部連携を加速させることで周辺領域への事業拡大の機会を獲得しやすい環境になると考えております。
② テクノロジーのさらなる進化
人工知能をはじめとするテクノロジーの進化はHR領域にも浸透してきております(HR Tech)。ICTを活用したタレントマネジメント(注2)や業績評価に加え、ハイパフォーマー分析(注3)等による活躍人材の再定義を検討する企業は増加傾向にあり、経済産業省の新産業構造ビジョン(注4)の中でも「人工知能等の技術を活用した「労働市場の効果的なマッチング」の実現」が明記されていることから、HR領域におけるテクノロジーの導入は更に進むと考えられます。
③ 人口減少による慢性的な人材不足
我が国の大卒求人倍率(2021年3月卒業者)は1.53倍(出典:㈱リクルート「第37回 ワークス大卒求人倍率調査」)と新型コロナウィルス感染症拡大の影響で前年の1.83倍からはやや下がったものの、依然として高い水準で推移しております。特に300名未満の従業員規模の企業においては3倍を超えており(出典:㈱リクルート「第37回 ワークス大卒求人倍率調査」)、人材獲得は容易ではない状況にあります。加えて、地方においては行政主導でUIJターン(注5)採用等も活発化してきており、都市部に限らず全国的に企業の人材需要は高まりを見せてきております。
④ 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う採用手法の変化
従来の新卒採用手法は、企業と就活生共に大手就活情報ナビサイトを利用し、就活生から企業にエントリーすることで、企業が母集団を大量に集めて絞り込み、対面で面接を行うものが一般的でした。しかし、この度の新型コロナウイルス感染症拡大により、オンラインでの選考が急速に普及しております。オンラインでの選考は、これまでの対面での選考とは異なり、採用候補者の見極めや候補者の意向上げに工夫が必要となります。このため、大量に集めて絞り込むという採用手法から、最初から候補者の見極めを行い、候補者と企業との一対一での丁寧なコミュニケーションを経て採用するという採用手法への移行が進みつつあります。
⑤ ダイレクトリクルーティングサービス市場の拡大
2020年度の新卒採用支援サービスの市場規模は、前年度比0.4%減の1,281億円が見込まれているのに対して、そのうち新卒紹介サービス市場の成長率は前年度比109.5%、ダイレクトリクルーティングサービス市場の成長率は122.7%と、当該二分野においては前年度比二桁成長を維持しており、激しい採用競争の中で、ターゲット層の学生獲得のために企業が「新しい採用のカタチ」を模索する動きの拡大が予想されています(出典:株式会社矢野経済研究所「新卒採用支援市場の現状と展望(2020年版)」)。
新卒採用支援サービス市場は、就職情報サイト、イベント・セミナー、新卒紹介サービス、新卒採用アウトソーシング、新卒採用アセスメントツール、内定者フォローサービス、ダイレクトリクルーティングサービスの7つのサービスに大別されますが、当社が位置するダイレクトリクルーティング市場の伸びが最も顕著となっております。
当社グループの主要事業である「OfferBox」は、テクノロジー×プラットフォームビジネスで各企業が求める人材を特定及びデータベースより検出、直接アプローチし、一対一のコミュニケーションを通じて採用につなげることができることから、前述の経営環境の変化に適したものであり、今後益々全国規模で深刻化する企業の人材採用における課題解決になり得ると考えております。加えて新型コロナウイルス感染症拡大に伴うオンライン選考の急速な普及など採用手法の劇的な変化がフォローとなり、さらなる成長機会を獲得できると考えております。
以上の経営環境の変化をふまえ、当社グループの経営戦略は以下のとおりであります。
① 「OfferBox」の新卒採用市場におけるシェア拡大
創業時より蓄積した登録学生の属性及び利用企業と登録学生のインターネット上での行動データ等のビックデータ及び適性検査「eF-1G」で蓄積したパーソナリティデータを適切に活用し、利用企業と登録学生のマッチング効率をさらに向上させることで、顧客への提供価値を高めてまいります。これによりプラットフォームとしてのネットワーク効果を高め、クチコミによる学生の登録促進、企業の新規リード獲得につなげ、新卒ダイレクトリクルーティング市場でのシェアの拡大を目指します。
さらに、新規利用企業へのフォロー体制の強化に取り組むことで成功報酬型から早期定額型への流れを一層強め、強固な顧客基盤の形成を目指します。
② 「eF-1G」の収益力向上
システムの刷新による顧客の利便性の向上とサービス提供のオペレーションの見直しによるオペレーションコストの低減により収益力を高めてまいります。加えて、営業・マーケティング活動でのグループ間連携などを強め、新規顧客の開拓を強化してまいります。
③ 新規事業の展開
当社グループは、学生の保有経験やパーソナリティデータ、企業とのマッチングデータといったビッグデータの蓄積に加え、そういったデータを用いたマッチング技術に磨きをかけてきております。また、多くの企業や大学とのつながり、就活生に対してのサービス認知を形成してきております。
これらの強みを活かすことで、キャリアデータベースプラットフォーム構想のもと、新卒採用領域を起点に前後の領域に対して新規事業の展開に取り組んでまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが今後事業を拡大し、継続的な成長を行うために、当社は以下に記載しております課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するために、継続的な顧客開拓による利用企業数の増加及びサービスの開発・改良による顧客満足度を高め、プラットフォームの拡大を通じて、ビッグデータの有効活用による顧客の採用効率の向上、企業規模の拡大に対応した内部管理体制強化等の整備を進め、企業価値のさらなる向上を目指して取り組んでまいります。
① 顧客開拓について
当社グループは、入社後3年で3割の新卒入社者が離職してしまう(早期離職)という社会の非効率を解消することを目指します。その実現のためには、企業のイメージや全体多数に対して発信するマス向け広報のやり方ではなく、企業から学生にアプローチするダイレクトリクルーティング方式により、一対一のコミュニケーションの中で学生に応じたアプローチが効果を発揮します。各企業の活用事例や採用コラム等の良質なコンテンツを発信することにより、サービスの利用を促進し、利用企業数の拡大に取り組んでまいります。
また、より多くの学生に利用してもらうため、クチコミ経由の登録数増加を目指すとともに、オンラインではリーチし難い学生を大学・大学生協との連携を強化し安定的なチャネルとすることで、学生登録者数の拡大に取り組んでまいります。
② サービス開発・改良について
当社グループは、大手・中堅・中小、あらゆる企業が良い人材を採用できない、また学生は良い企業に就職できないというミスマッチな状況を解決するために、「OfferBox」サービスの開発・改良に取り組んでまいります。学生へのサービスの提供価値の向上としては、期待しているような企業からのオファーが届くことといった機能性、利便性、デザイン性等を高めてまいります。また、企業に対しては、適性検査「eF-1G」との連携強化により、受検結果を用いた「分析」を行うことにより、ターゲット学生の探しやすさ、採用決定率の高さといった提供価値を高めていくことで満足度の向上に努めてまいります。
③ ビッグデータの有効かつ適切な活用について
当社グループは、企業から学生にアプローチするダイレクトリクルーティングサービスを提供していることから、登録学生の属性やインターネット上での行動データを創業当時より蓄積しており、競争優位性の高い独自のデータベースを保有しております。また、適性検査「eF-1G」の受検とその受検結果の活用により、更に多くのパーソナリティデータ及びそれらを用いたマッチングについての貴重なデータも保有しております。これらのビッグデータを有効かつ適切に活用し、利用企業と登録学生のマッチング効率のさらなる向上に取り組むとともに、就職活動以前の学生に対し、自身のパーソナリティや変化を可視化し成長を促進させるような新規事業の創造に向けた活用を進めてまいります。
④ 個人情報の管理について
当社グループは事業運営にあたり個人情報を保持していることから、個人情報保護に関しては重要課題と認識しております。「個人情報保護規程」をはじめとする諸規程の制定・運用、役員・従業員への定期的な社内教育の実施、システムのセキュリティ対策等により、個人情報の管理体制を構築・運用しております。また、一般財団法人日本情報経済社会推進協会が運営するプライバシーマーク制度の認証を取得しており、引き続き、情報管理体制の強化、徹底を図ってまいります。
(注)1.キャリアデータベースプラットフォームとは、若手人材の成長を加速させるために当社が構築する独自のプラットフォームの概念を指します。具体的には、個人の大学時代の多様な経験から、企業に入社後の活動までの属性や行動履歴を当社データベース上に蓄積し、そのデータを活用した人材サービスを提供することであります。
2.タレントマネジメントとは、自社の抱える優秀な人材がどのようなスキルや能力を持っているのかを把握し、そのパフォーマンスを最大化するために戦略的な人材配置や教育等の取組みを行うことを意味します。
3.ハイパフォーマー分析とは、個々の企業における活躍人材の特定のため、ハイパフォーマーの特徴や情報を収集・分析し、採用や教育研修等の人材育成の場に組み込んでいくことを指します。
4.経済産業省産業構造審議会「新産業構造ビジョン 2017年5月30日」
5.UIJターン現象とは、Uターン現象(地方から都市へ移住した後、再び地方へ移住すること)、Iターン現象(地方から都市へ又は、都市から地方へ移住すること)、Jターン現象(地方から都市へ移住した後、地方近くの中規模な都市へ移住すること)の3つの人口還流現象の総称のことであります。