有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/03/01 15:00
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
我が国の光産業は、光技術の絶え間ない革新により、情報通信、ディスプレイ・照明、情報記録、情報入出力、レーザ・光加工、光エネルギー、センシング・計測等様々な産業分野に光技術の応用が広がり、国内出荷額だけでも14兆円規模(一般財団法人光産業技術振興協会「光産業動向調査」2018年10月22日より)の一大産業に成長しております。ビッグデータ、半導体等の微細化、情報通信の大容量高速化など近年のイノベーションの進展は、電気から光の時代への移行を加速しております。光技術の絶え間ない革新に支えられ、今後も引き続き、大きく発展していくとみられる中で当社は、世の中に無い、また敢えて他社ができないものに取り組み、グローバルニッチトップの製品化/事業化に成功してまいりました。3つの経営理念、
「研究成果を社会に還元し、キーマテリアルを世界に向けて発信する」
「顧客へマテリアルソリューションを提供し、社会の発展に貢献する」
「単結晶を核とした製品を開発し、未来の市場機会を創造し続ける」
のもとに、オープンイノベーションパートナーとしてのユーザーの技術シーズと技術ニーズをマッチングさせ、新たな付加価値を創造するコーディネーターを担ってまいります。同時に、「世の中に無い、また敢えて他社ができないものに取り組む」ベンチャー精神を発揮し、世界でもユニークな光学技術で世界のイノベーションの拡大に貢献する企業を目指してまいります。
(2)経営戦略等
当社は、上記の経営方針の下、光学分野の次世代製品開発、レーザ加工、レーザセンシングといった新領域の新製品開発とともに、コア技術である単結晶の高品質化開発といった基盤技術の研究開発を推進してまいります。これらの開発については、取締役会、経営会議等により議論され、随時進捗確認を行っております。
また、中長期的な経営の指針として、「光学技術の蓄積」、「光学分野における技術者集団の形成」、「市場における新たな需要の発掘」、「事業譲受のノウハウの集積」を図り、各市場において高付加価値な製品の開発を実現し、それにより高いシェアを獲得することにより収益性を高め、企業価値の増大を達成してまいります。
(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、持続的な成長に向けて、①売上高成長率、②営業利益率を意識した経営を行ってまいります。
①売上高成長率を採用する理由は、当社は創業後の20年間、概ね5年毎に約2倍の増収を実現してきており、今後も同様の成長率をキープすることが重要と考えている為です。
②営業利益率を採用する理由は、日本の製造業の経営分析をする上で広く利用されている指標の為です。
(4)経営環境
電気の20世紀から光の21世紀と言われる社会変革は、光通信技術による情報革命が主導してまいりました。1980年代の光ファイバ、インターネットの一般家庭への導入、データセンターの活用によるクラウドサービスの拡大、スマートフォンの普及、さらに5Gの導入と技術の進展はとどまるところを知りません。ただ、これでもまだ光の機能性の一部を利用したにすぎません。具体的には、製造現場でのレーザ加工、医療分野での眼科やがんの診断及び治療、ディスプレイ、精密計測、農業利用などへの展開に向けた開発が進展しています。こうした光学分野の環境をもとに、それぞれの事業毎の経営環境は「第1 企業の概況 3 事業の内容」にも一部記載しておりますが、半導体事業及びヘルスケア事業の事業環境について以下に記載いたします。
世界の半導体市場は、元々比較的変動の大きい市場と言われておりますが、加えて新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けております。2021年1月の米調査会社のガートナーの発表によると、2020年の世界半導体市場は前年比7.3%増の4,498億ドルとなっております。また、当社の半導体事業は、特に、半導体ウエハ表面検査における半導体ウエハ欠陥検査装置市場向けとなりますが、グローバルネット株式会社「世界半導体 製造装置・試験/検査装置市場年鑑2020」によると、同市場規模は、2016年299,620百万円、2017年341,179百万円(前年比13.9%増)、2018年370,953百万円(同8.7%増)、2019年312,405百万円(同15.8%減)、2020年(予測)374,768百万円(同20.0%増)、2021年(予測)400,327百万円(同6.8%増)、2022年(予測)424,883百万円(6.1%増)、2023年(予測)432,625百万円(1.8%増)、2024年(予測)470,609百万円(8.8%増)と、2019年に落ち込みが見られたものの、顕著に推移しております。
ヘルスケア市場は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、肺炎の診断向け装置、特にCT装置の需要が高まり、当社製品のユーザーである医療機器メーカーにおいても、がん診断装置向けのリソースをCT装置向けにシフトする動きが顕在化しました。その為、当社への需要も一時的に減少しましたが、2020年8月以降は需要を取り戻しつつあり、ヘルスケア事業における2020年8月以降の売上高は、8月114百万円(前年同月比25.4%増)、9月145百万円(同251.7%増)、10月159百万円(同39.1%増)、11月91百万円(同12.8%増)、12月141百万円(同68.0%増)、1月124百万円(同52.0%増)と、前年を上回って推移しております。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
① 各種研究開発の促進
当社が推進する光技術の応用範囲は、世界規模で拡大しており、IoTやAI、ビッグデータといったイノベーションを支える半導体の微細化、医療機器の高度化等に伴い、当社の製品への需要も拡大基調にあります。一方、レーザによる加工やセンシングといった新領域・新用途への的確かつスピーディーな開発、製品化が求められてもおります。こうした展開には各種研究開発の推進が不可欠であり、また当社の独自性、技術的な優位性を保つ上でも同様であります。研究開発の推進には、社内の人的及び資金的資源に加え、東京大学、大阪大学、東北大学、理化学研究所等の大学、研究機関との研究連携や、政府機関の研究開発補助などの資金面での支援も積極的に活用しております。過去5年間の研究開発助成公募に対する採択件数は9件、助成金額は合計645百万円余りを獲得して開発を加速させております。
② 優秀な人材の採用
これらの当社製品への需要増や開発促進に対応するため、即戦力の技術者の採用とともに優秀な若手技術者の採用や人材開発が大きな経営課題になっていると認識しております。新卒採用については、国内の大学や研究室との継続的な連携を進めることや、学生の履修状況に応じた製品製造・開発の実体験型インターンシップ等の実施により卒業生の採用に繋げ、採用難の状況の中でも計画に沿った実績を重ねております。過去4年の新卒採用の実績は、2017年4月3名(うち大学院卒1名)、2018年4月4名、2019年4月9名(うち大学院卒4名)、2020年4月7名となっております。中途採用については、優秀な人材について年々採用のハードルが高まる中、各地各所で開催される企業説明会や人材紹介会社を通じて当社の魅力やマーケットでの製品優位性を効果的にアピールし、業務拡大に対応できる即戦力の確保に成果を上げております。正社員の中途採用における過去3年の実績は、2018年2月期8名、2019年2月期14名、2020年2月期11名(うちパートからの正社員登用2名)となっております。人材開発については、適材適所を考慮した配置や各階層に応じたレベルアップ研修・フィードバックを継続的に実施するとともに、次世代の中核となる技術者の育成を見据えて社会人博士号の取得支援などの施策を重層的に進めております。
③ 財務体質の健全化
当社は、当社製品の需要増に対応する為には、既存設備の増強と継続的な研究開発が必要と考えております。一方で、これら設備投資又は研究開発投資を支える財務基盤の確保も重要な課題の一つと認識しております。具体的には、自己資本比率等の指標により財務体質の健全性を確認しながら、各投資のタイミングと投資額について検討しております。