有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/05/21 15:00
【資料】
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【項目】
168項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営理念・経営方針
当社グループは以下の経営理念(ミッション)を制定し、お客様とともに成長・発展し続けることで社会に貢献することを目指しております。
私達はICTを人間の良きパートナーとして活用し、日本の「少子高齢化・人口減少」「環境・資源問題」などに取り組み、「課題解決先進国ニッポン」の持続可能な成長に貢献すると共に、その技術を世界に発信する。

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、主な成長性・収益性の指標として、経営の効率性向上による収益重視の観点から、営業利益、営業利益率を主たる経営指標としております。また株主重視の観点から自己資本利益率(ROE)についても重要な経営指標と考えております。
(3)経営環境、経営戦略等
国内企業においては大企業を中心に、デジタル技術を駆使し、ビジネスモデルやビジネスプロセスを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」(注1)に取り組む企業が増加しており(電通デジタル「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2019年度)」より)、魅力的なサービスの提供及び高い競争力を持つビジネスモデルの実現を目的とした情報化投資が今後拡大していくことが期待されます。
また、我が国では、少子高齢化により人口は減少局面を迎え、労働力人口が減少していく中で日本経済が持続的に成長を続けるためには、労働生産性の向上が不可欠であると考えております。
この様な経営環境下において、お客様に真に価値あるサービスを提供できるようコア・コンピテンシーの醸成と品質向上に取り組むとともに、ITサービスの構造的変化を先取りしたビジネス展開により新たな市場を開拓し、経営体質の強化と事業の継続的発展のため、当社グループは以下の取り組みを進めてまいります。
①デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
企業の社会的責任として経済発展と社会課題解決の両立が求められてきている中、企業によるDXの投資が増加することが見込まれます。そのような社会環境を踏まえ、当社グループはお客様企業のデジタル化支援に重点を置き、既存ビジネスで収益を確保していくとともに、デジタルマーケティング事業のマーケティングソリューションサービスや情報サービス事業のプラットフォームソリューションサービス((4)③参照)を始めとするDX関連ビジネスを推進し、従来からあるIT部門や大手システムインテグレータとのビジネスに加え、事業部門とのダイレクトビジネスを拡大してまいります。
②ワークスタイル変革の推進
仕事と自分のやりたいことの充実というワークライフバランスの実現に向け、「働きやすさ」「働きがい」の2つの視点で多様な働き方への対応、職場環境改革、福利厚生の充実、再雇用制度の拡充、女性活躍推進等の施策を実施いたします。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く経営環境は、消費税増税に伴う企業の情報投資や設備投資意欲に停滞感があることに加え、新型コロナウイルスの感染症拡大が世界経済への深刻な影響を与えており、いまだ収束のめどがたっていないことから、予断を許さない状況となっております。
このような状況下においても、当社グループは引き続き持続的かつ飛躍的な成長と、より強固な経営基盤を確立するために、以下の事項を重要課題と捉え、更なる企業価値の向上に努めるとともに、収益性の向上を図り、財務体質の強化に取り組んでまいります。
①成長分野への展開
当社グループは、常にお客様に満足していただくサービスを提供していくために、技術革新のスピードに対応して新たな分野へ積極的にチャレンジし、更なる成長を目指してまいります。特に、国内のITサービス市場では、IT技術からデジタル技術へ、顧客の情報システム部門からビジネス部門へと成長の分野が変化しており、当社グループはこの成長分野へ軸足をシフトしてまいります。 また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、働き方の変化に対応したソリューション並びにサービスの提供を図ってまいります。
②グループ力の発揮
ITサービス業界がいわゆる「2025年の崖」(注2)の克服に向けた大きな変化の節目を迎えているなか、グループ各社がそれぞれの強みを発揮するとともに機動力を持って相互補完をすることによって、既存ビジネスの再構築とデジタルトランスフォーメーションを担う新規ビジネスの拡大を同時に推進し、持続的な成長の実現と安定した収益の確保に努めるとともに、税務上の繰越欠損金が存在する一部の子会社の業績改善を図ります。
③有力ベンダーとの関係強化
当社グループでは、持続可能な社会の実現に貢献することを経営理念に掲げておりますが、これを推進するため海外ベンダーとアライアンスを組み、エネルギー消費削減(輸送コストやサーバー維持コスト等の削減)や、人手不足対策(ソフトウェア開発等の自動化)に資するソリューション等を、情報サービス事業のプラットフォームソリューションサービスとして提供してまいる所存であります。
成長著しいデジタル技術の分野では、海外の先進技術や製品を有するベンダーとパートナーを組み、サービスの開発や販売で連携することが重要であると認識しております。当社グループでは、各分野で協業いただけるベンダーとのリレーションシップ強化に努め、差別化を図ってまいります。
なお、同サービスの主な内容は以下の通りです。
a.Microsoft Azureへのシステム移行および運用支援
Microsoft Azureは、米Microsoft社が提供するクラウドベースのプラットフォームであり、アプリケーションソフトウェアを開発・実行するための環境が提供されております。
当社グループでは、お客様の所有サーバー等で運用されている基幹システム(ERPソフトウェア等)をMicrosoft Azureへ移行することにより、ランニングコストの削減、システム基盤の最新化、セキュリティの強化等を支援いたします。また、構築から運用までをワンストップで提供するマネージドサービスによりお客様の負担を軽減いたします。
b.Infor Nexus導入支援
Infor Nexusは、米Infor社が提供するクラウド(注3)ベースのグローバルサプライチェーンプラットフォームであります。同プラットフォームを活用する企業は、プラットフォーム上でサプライヤやメーカー、3PL(注4)、銀行等、サプライチェーンにおける関係企業を繋げることで、企業間取引が連携され、これまで可視化できなかった企業間のデータが見える化されるため、グローバルサプライチェーンでの、輸送コスト、輸送リードタイムの短縮、在庫の削減を実現し、顧客サービス及び収益の向上を図ることができます。Infor社の公表では、Infor Nexusでは世界約65,000社により年間約1兆ドルの取引が行われております。
当社グループは、世界最大規模のグローバルサプライチェーンプラットフォームである、Infor Nexusの国内初の導入パートナーであり、グローバルで事業展開されているお客様のサプライチェーンの最適化を支援してまいります。
c.OutSystems導入および開発支援
OutSystemsは、米OutSystems社が提供するローコード開発プラットフォームであります。ソースコードを手作業で書くことなく、ビジュアルなモデルで、ワークフロー、画面、データ、ビジネスロジック(注5)を定義することにより、最小限のコード記述(ローコード)でアプリケーションソフトウェアを自動生成することができ、これにより高速開発を実現することができます。また、生成した各アプリケーションの依存関係が分析できることからシステムの保守性にも優れている他、外部システムとの連携も容易に行うことができます。
当社グループでは、ビジネス環境の変化に対応するためシステム開発の生産性を高めたいお客様や、旧技術で構築された既存システムを新技術で刷新したいお客様等を対象に、Outsystemsの導入および開発支援をしてまいります。
④プロフェッショナル人材の育成・確保
当社グループでは、デジタル技術や顧客ビジネスへの提案力獲得のために、既存人材のシフト、中途採用の強化及び有力なサービスプロバイダーとの連携を図ってまいります。 また、あわせて社員の働き方改革を積極的に推進し、労働環境の改善とやりがいの持てる職場風土の醸成によって、社員の満足度向上やワークライフバランスの推進に努めてまいります。特に昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の状況を踏まえ、テレワーク推進など社員を守る働き方を推進してまいります。
⑤新型コロナウイルス感染症への対応
リスクの内容と影響、リスクへの対応は、「2事業等のリスク <経営戦略遂行上のリスク>(1) 新型コロナウイルス感染症について」に記載の通りであります。また、当社グループでは、のれん評価や繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき実施しておりますが、新型コロナウイルス感染症の収束時期及び経済環境の変化等が上記の見積りに影響し、その結果、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対して、当社グループは、引き続き感染拡大防止を徹底し、コロナ禍における事業継続に注力するとともに、事業資金の確保等を図ってまいります。
[用語説明]
(注1)デジタルトランスフォーメーション
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念。企業活動においては、人工知能、インターネット経由によるセンサー情報の遠隔検知等の新しい情報技術(デジタル技術と総称される)を駆使して、ビジネスモデル、製品・サービス、業務プロセスなどを変革することを指します。
(注2)2025年の崖
経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」の中で指摘された「複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合に想定される国際競争への遅れや我が国の経済の停滞」を指す言葉。
日本企業がこの「2025年の崖」を乗り越えるために必要だと提唱されているのがデジタルトランスフォーメーションです。
(注3)クラウド
クラウドコンピューティングの略称であります。ソフトウェア、データベース、サーバー及びストレージ(データ記憶領域)等のコンピュータ資源を、インターネット等の通信ネットワーク経由で、必要に応じてサービスとして使う利用形態を指します。
(注4)3PL
サードパーティ・ロジスティクスの略称であります。荷主企業に代わって最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、それを包括的に受託し実行する事業者のことを指します。
(注5)ビジネスロジック
コンピュータに行わせるデータに対する処理手順を指します。