有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/05/21 15:00
【資料】
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【項目】
139項目

対処すべき課題

(1) 経営の基本方針
当社グループは、『グローバルな市場で選ばれる電解銅箔メーカーとして、永続的な発展を目指します。』を経営理念とし、経営ビジョンには以下の事項を掲げております。

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、生産数量(㌧数)、EBITDA並びにEBITDAマージンによる評価を行っております。生産数量(㌧数)は、当社グループの生産販売活動の進捗状況を、銅価格の騰落による影響額を除外して把握するために活用しております。また当社グループは生産設備を多数保有しているため、減価償却費や金利負担等の影響を補正した利益指標としてEBITDA及びEBITDAマージンの状況を重視しております。EBITDA及びEBITDAマージンは、それぞれ以下の計算式より算定しております。
● EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + のれん償却費
● EBITDAマージン = EBITDA ÷ 売上高 × 100
(3) 経営環境
(主要製品の内容)
当社グループは、硫酸銅を主成分とする電解液の電気分解により析出した金属銅を、薄膜状の銅箔に生成加工する電解銅箔製造事業を営んでおります。
当社の製品には、車載電池用銅箔と回路基板用銅箔があり、車載電池用銅箔は、主としてEVやHVに搭載されるリチウムイオン電池の素材に、回路基板用銅箔は、携帯電話などの電子機器に実装する回路基板の素材等に使用されております。
(市場の状況)
車載電池用銅箔については、主要各国におけるCO₂排出規制の導入・強化の動きが後押しとなり、xEV(EV、HV、PHV、マイルドHV、FCV等の総称)と呼ばれる、電動モーターを動力源とする電動自動車の市場は今後も拡大が見込まれます。またリチウムイオン電池の技術進化に対応した、より高品質の銅箔製品が求められると予測されます。
回路基板市場については、第5世代移動通信システム(5G)の商用サービス開始に伴い、今後、電子機器の高性能化、通信機器の5Gへのシフトが急速に進むとともに、5Gや高周波HDI(High Density Interconnection:高密度相互接続)等のニーズに適合する銅箔製品が求められると予測されます。さらに5Gの普及に応じて、自動運転技術や遠隔医療などの社会インフラや、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)等の領域への需要の広がりも想定されます。
(競合他社との競争優位性)
当社の車載電池用銅箔、回路基板用銅箔ともに、国内外の銅箔メーカーの製品と競合する場面がありますが、当社では、品質や性能の高さを最大の差別化要因として製品の競合を回避しております。今後も高品質の製品を提案していくことにより製品の競争力を確保する方針です。
(4) 中長期的な経営戦略
当社グループでは、今後の更なる成長を実現するため、今後の事業方針として①高付加価値分野へのシフト、②技術力の更なる強化、③米国子会社との事業シナジー拡大を掲げております。
①の高付加価値分野へのシフトについては、当社の技術優位性と品質・信頼性が活かせる高性能車載電池用銅箔や5Gなどをターゲットにした高周波基板用銅箔に注力し、収益性の高い製品の販売比率向上を目指します。
②の技術力の更なる強化については、プロセス技術開発の推進を通じ、製品のさらなる品質向上や生産効率改善によるコスト競争力確保に努めてまいります。また、並行して、今後の市場ニーズに適合する製品の開発も推進します。
車載電池用銅箔においては、先進LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した薄箔製品や高強度電池用銅箔などの開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、5GやHDI領域をターゲットとした製品の開発及び市場投入を継続的に進めます。
③の米国子会社との事業シナジー拡大については、昨今、自動車産業界において電動車シフトが急速に進み、車載用LIB向けの銅箔需要が世界的に高まっている状況を受け、米国子会社にて車載電池用銅箔の生産開始に向けた体制の整備を進め、当社及び米国子会社より車載電池用銅箔が供給できる体制を整備します。また需要に応じた更なる生産能力の増強についても検討を進めます。米国子会社は、米国唯一の電解銅箔メーカーであるとともに、競合他社の生産拠点が米国内に存在しない状況であることから、その立地条件を活かして、米国市場への製品供給を目指します。
このほか、当社が製造する回路基板用銅箔について、米国子会社が有する顧客基盤を通じた輸出販売を促進すること、米国子会社が製造する汎用箔の品質向上のため当社より技術支援を行うこと等に取り組みます。
またESGへの取り組みとして、当社の事業活動を通じて、脱炭素社会・循環型社会の実現に取り組みます。
当社においては、銅原料の100%再利用及び車載用電池銅箔によるxEV普及への寄与を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
● 地球温暖化対策は喫緊の課題であり、脱炭素社会の実現が求められています。当社グループでは、車載電池用銅箔の供給及び高品質化による電気自動車の更なる普及に寄与することを通じて、脱炭素社会の実現に貢献します。
● 当社グループでは、銅箔の原材料となる銅材料はすべてリサイクル品を使用しており、また製造過程で発生する銅箔屑もリサイクルし、限りある資源を有効活用する、持続可能な社会の実現へ貢献します。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(新型コロナウイルス感染症対策)
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、当社グループでは、取引先、役員及び社員とその家族をはじめ、当社を取り巻くステークホルダーの方々の安全と健康を第一に考えております。役員及び社員に日々の検温や手指消毒を徹底させるとともに、居室内の仕切設置、執務場所の分散、さらに一部の社員を対象として時差出勤や在宅勤務等、感染拡大防止に向けた取り組みを実施しております。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年3月期末頃より当社製品においても需要の落ち込みが認められました。生産現場においては、自動車メーカーや電子機器メーカー等の世界的な需要動向等を確認しながら、一時帰休等による生産調整も行いました。幸いにして、2021年3月期第2四半期末ごろから当社の主要顧客における生産活動が再開され、新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準にまで需要が回復しております。
なお今後においても、新型コロナウイルス感染症が再び拡大する事態となる場合には、サプライチェーン全体の需給状況等を注視しつつ、機動的に対応できる体制を維持します。
(米国子会社との連結経営体制の整備)
当社は2020年3月31日付で米国の電解銅箔製造会社Denkai America Inc.の全株式を取得して完全子会社化しました。当社では今後、更なる成長を実現するため、当社をマザー工場と位置づけ、当社より米国子会社への技術支援を行いつつ、米国子会社において車載電池用銅箔の生産開始に向けた体制整備を進めるとともに、需要に応じたさらなる生産能力の拡大についても検討します。また米国子会社を米国における銅箔製品の生産及び販売活動の拠点と位置づけ、グループ全体での生産能力の最適化や、在外顧客への製品供給体制を構築します。
(新製品開発)
今後の新製品開発は、今後の市場ニーズに適合する製品の開発を推進します。
車載電池用銅箔においては、先進LIBや全固体電池等の次世代LIBの要求特性に適合した薄箔製品や高強度電池用銅箔等の開発及び市場投入、回路基板用銅箔においては、5GやHDI領域をターゲットとした製品の開発及び市場投入を各々継続的に進めます。車載電池用銅箔の分野においては、主としてxEVに搭載されるリチウムイオン二次電池におけるエネルギー密度向上・コバルトフリー等の技術進化に対応した新製品の開発を進めます。
回路基板用銅箔の分野においては、5GやHDI領域の需要を取り込むべく、より高品質な高性能回路基板用銅箔の開発を推進します。
(販路の拡大)
車載電池用銅箔の分野においては、電動自動車関連の需要を取り込むべく、既存顧客との取引深耕や新規顧客の開拓により製品供給量の拡大に取り組みます。
回路基板用銅箔の分野においては、国内の他、米国子会社が有する顧客基盤を通じて、当社の回路基板用銅箔の輸出販売を促進し、米国及び東アジアにおける新規顧客の開拓により、先端分野向け需要の獲得に取り組みます。
(コスト競争力の確保)
車載電池用銅箔の分野においては今後、他社製品との価格競争が厳しさを増すことが予測されます。従来製品においては日米の生産拠点における全体最適化による生産能力最大化、顧客所在地に近い生産拠点で製造が行なえる体制を整備するとともに、当社グループ全体での原価管理の強化や生産効率のさらなる改善に努め、コスト競争力を高めます。