有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/15 15:24
【資料】
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【項目】
138項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社の親会社は、株式会社ビジネスブレイン太田昭和(東京証券取引所市場第一部に上場)であり、当社は連結子会社として親会社グループに属しているため、当社の株式上場は親子上場となります。
親会社グループは、経営会計を基軸にした「総合バックオフィスサポーター」を目指し、コンサルティングやシステム構築・運用、ビジネス・プロセス・アウトソーシング等を展開しておりますが、親会社グループにおいて当社と類似するサイバーセキュリティ事業を展開する会社はなく、当社の独立性が確保されております。その中で、親会社の提供する経営会計システムは、顧客企業のグローバル化やDXの進展に伴い、サイバーセキュリティ対策が重要になっております。また、親会社グループにおいても、各種サイバーセキュリティ対策のニーズが顕在化している状況です。
親会社は、当社の販売代理店及び最終顧客としての関係にあるため、今後も継続した関係を維持することが、当社の事業成長に有益であると判断し、親子上場となる形を選択しております。
中長期的には、さらなる当社の事業成長と、一般株主との利益相反を解消していくべく、親会社による当社株式の保有比率を下げ、親子上場を解消していく考えであります。
(1)経営方針
当社は「サイバーセキュリティ教育カンパニー」をコンセプトに掲げております。情報セキュリティ・サイバーセキュリティに特化した専門会社として、セキュリティコンサルティング、脆弱性診断、サイバーセキュリティソリューションをはじめ、セキュリティの全体像を網羅した教育サービスを提供しております。
特に中堅企業において、情報セキュリティ対策が必要であるものの、サービスを提供する事業者や人材が不足している現状を踏まえ、当社は、長年のセキュリティコンサルティングや脆弱性診断等で培った豊富な知見を社会に還元することで、日本の情報セキュリティレベル向上に貢献することを理念としております。
(2)目標とする経営指標
当社は、成長性と収益性を重視しており、成長性については売上高の前期比増加率、収益性については売上高営業利益率を重要な経営指標としております。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
社会システムのネットワーク化が進む近年において、コンピュータ・システムを取り巻く脅威は多様化しており、システムを攻撃されることにより甚大な被害を及ぼす傾向が強まっております。さらに新型コロナウイルス感染拡大防止対策として急速に進展するテレワーク等働き方の変化に伴い、サイバーリスクの及ぶ範囲とその被害は大幅に拡大しております。
一方で、サイバーセキュリティの専門知識を持つ人材(セキュリティ人材)の多くは、一部の大手サイバーセキュリティ専門企業に所属しており、また、一般企業においては、自社のサイバーセキュリティに関する業務を外部の専門企業へ委託することが一般的であるため、自社内におけるセキュリティ人材の育成方法や育成機会が確立されず、結果的に、日本におけるセキュリティ人材が圧倒的に不足しております。また、サイバーセキュリティに関するサービスを提供する事業者側の提供能力にも限界があり、一般企業、特に中堅・中小企業では、サイバーセキュリティ対策を講じる上での相談先がないのが現状です。
このような経営環境のもと、当社は「教育」を軸とし、中堅・中小企業に最適化したサービスを提供することで、顧客の自衛力を高め、日本の情報セキュリティレベルを底上げすることを中長期的な経営戦略として、事業を推進してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
優先的に対処すべき財務上の課題は、現在ありません。今後さらなる事業の拡大と収益性の確保、そしてリスク低減のため、特に下記の5点を優先的に対処すべき事業上の課題として取組んでおります。
①「サイバーセキュリティ教育カンパニー」の更なる訴求
サイバーセキュリティニーズが高まる一方で、依然としてセキュリティ人材が不足している業界環境のなか、日本全国の企業がサイバーセキュリティ「自衛力」を向上するためには、セキュリティ人材の育成が急務と考えます。コンサルティングや脆弱性診断、緊急対応等のサービスを提供するだけでなく、それらで培った知見を教育コンテンツにも反映して提供することで、本質的な「サイバーセキュリティ教育」を実施するという、明確なビジネスコンセプトを引き続き訴求することで、業界唯一のポジションの確立と、プレゼンスの向上を目指します。
②「点から面へ」戦略のさらなる推進
顧客ニーズや顧客の状況を的確に捉え、ひとつのサービス提供から多角的なサービス提供へと繋げる「点から面へ」の活動を積極的に展開し、1社当たりの売上高を増加させていきます。
「点から面へ」の手法としては、当社が保有する7万件を超えるハウスリストを用いたマーケティング活動(プレスリリース、ウェビナー等)や、販売パートナー企業による安定的な見込み顧客の獲得、サービス提供完了時の報告会における体系的なセキュリティ対策の提案(例:脆弱性診断結果を顧客に報告する際に、脆弱性診断員のみならず、セキュリティコンサルタントが同席し、より効果的なセキュリティ対策を提案)等を行います。
③東京以外の商圏拡大
西日本を皮切りに、全国へと商圏拡大を目指します。地元の販売店との連携強化、サイバーセキュリティ分野における診断・研究・教育の拠点を全国展開することによって、全国的なプレゼンス向上と売上高増加を目指します。
④業容拡大にともなう人材リソース不足の解消
セキュリティ人材が不足している業界環境のなか、当社では、社員育成だけでなく社外から安定的に人材リソースを供給できる体制構築に取り組んでおります。
具体的には、同業他社へ当社の教育コンテンツを提供することで、業界全体のセキュリティ人材を育成したうえで協業を推進したり、沖縄県においては、地元企業のIT人材にセキュリティ教育を実施し、脆弱性診断業務のニアショア化(国内の地方都市への業務委託)を図るなど、「サイバーセキュリティ教育カンパニー」の強みを活かした施策を実行してまいります。
⑤新型コロナウイルス感染症の拡大による経済環境の変化への対応
新型コロナウイルス感染症の拡大が経済環境へ与える影響は甚大であり、今後の当社ビジネスに与える影響も不透明です。当事業年度においては、テレワークが強く推奨されたことによる情報セキュリティ需要の高まりや、教育事業においては、これまでの集合研修型からオンラインでの講座開催へと切り替えたことが受講者数の増加に繋がるなど、当社ビジネスに対する悪影響はありませんでしたが、今後も経済環境の変化を敏感に捉え、柔軟な対応によって当社ビジネスの進展へと繋げることを目指します。