有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/15 15:00
【資料】
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【項目】
140項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「患者さん(利用者さん)が24時間365日、自宅で『安心』して療養できる社会インフラを創る」を経営理念としており、在宅患者の身近に基本的な医療・介護・住まいの相談に乗ってくれる窓口となり、要介護状態となっても水道、電気のような社会インフラと同様にいつでも生活の助けとなれるプライマリーケアを目指しております。
また、医療・介護事業者等を地域内で繋ぎ、在宅患者様を中心として連携されたネットワークの中で、安心して住み慣れた環境で過ごすことができる体制を、プライマリーケアのプラットフォーム企業として定義し、患者様・利用者様のニーズに応えながら、社会的課題の解決に貢献してまいります。
このような考えのもと、在宅患者様へお薬をお届け又は外来患者様へお薬をお渡しする在宅訪問薬局事業や、退院後の入居先を紹介するタイサポ事業及び介護認定者を支援するケアプラン事業だけではなく、在宅患者様をサポートしようとする中小薬局事業者への支援としてきらりプライム事業を拡大し、1社だけではできないより多くの在宅患者様に直接、間接を問わず包括的なケアができる体制を構築していきます。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社の経営環境としては、内閣府「令和2年版高齢社会白書」において、国内の75歳以上の人口が2018年の1,798万人から2055年には2,446万人となり、高齢化が進むことで社会保障の財源に問題が生じると予測されております。そのため、政府の施策として医療及び介護の現場を病院から在宅へシフトしていく方針を積極的に進めていることから、厚生労働省の「患者調査」でも見られるように全患者に占める在宅患者の比率が上昇しており、中長期的に市場が拡大していくものと考えております。さらに、要介護者の増加に伴い慢性的に人材が不足するなどの新たな社会課題に対して、当社の医療、介護事業者とのネットワーク及び中小調剤薬局のネットワークを活かした新たなサービスを展開する機会が生まれております。
このような経営環境のなか、当社は、在宅訪問薬局事業において当社、在宅医療及び介護の現場運営の効率化を図るためのIT並びにICT分野の開発や、当社人材によるコンサルティングを展開し、きらりプライム加盟先を含めた各事業のシナジーを更に高めていく方針であります。既存の調剤薬局の枠を超えたプライマリーケアを追求してまいります。
(3)目標とする経営指標
当社は持続的な事業成長のため、当社と契約している在宅患者数及びきらりプライム加盟店数の増加を重要な指標としております。さらに、高齢者施設とのネットワークの広がりをタイサポ登録施設数で確認しております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 在宅患者数の増加に対応する店舗出店
当社は、自宅で療養する患者数の増加に対応するために出店を進めており、現在は福岡県、佐賀県、東京都、神奈川県及び千葉県において在宅患者様に届ける薬の配送効率を高めるドミナント戦略(※)を展開しております。当社のきらりプライム加盟先は全国に広がっていることから、今後きらりプライム加盟先が多い地域に出店し、仮想ドミナントを形成する新たな出店形態を構築していきます。また、大手調剤薬局が大型門前薬局を展開していく方向性であるのに対して、当社は比較的外来処方箋枚数が少ない中小規模薬局を当社の在宅訪問薬局モデルと合わせることで収益性を高めることができます。そのため、大型薬局のM&A(合併・買収)による出店に付随するのれんの発生や仲介手数料を低減し高い投資効率で出店を進めます。
※ドミナント戦略・・・特定地域内で集中して出店することで、経営効率を高める戦略
② きらりプライム加盟店舗数の拡大及び新サービスの拡充
直営店舗の出店だけでは、当社の経営理念にある社会インフラと呼べる状態を速やかに構築するのは困難と考えております。大手調剤薬局事業者の寡占度合が低い調剤薬局市場では、中小規模の薬局が多く、この中小規模の薬局事業者との連携を拡大し、当社のノウハウを提供することで多くの在宅患者にサービスを提供できる体制を構築します。さらに、新しいサービスを開発・提供することで加盟店収入単価の増加に取り組みます。
③ 人材の獲得と育成
当社では、在宅訪問薬局だけでなく、今後地域包括ケアシステムにおける多様なサービスを提供していくために優秀な人材の獲得と育成を必要としております。主に各種サービスをネットワークで繋ぐシステムインフラに明るいエンジニアや当社サービスを広く知ってもらうための広報・広告に強い人材など、医療・介護業界以外の異業種からも人材を獲得してまいります。
④ 新事業及び新サービスの開発
当社が属する医療介護業界は一般的に労働集約型産業であり、高齢化が進む社会で労働人口が縮小する中でより効率的な運営が求められます。少ない労働力で業務を回す仕組みとして、当社の在宅訪問業務を効率化し、収益化したノウハウをコンサルティングやIT、ICTを通じて提供していく商品、サービスを開発していく必要があるため、新規事業として2021年9月にICT事業をスタートしております。また新サービスとして在宅訪問支援情報システム(ファムケア)の外販仕様として開発中であり、2022年1月にサービス開始予定となっております。
⑤ 内部統制とコーポレート・ガバナンスの強化
当社は、意思決定のプロセスにおける透明性を確保し、迅速化による経営の効率性を高め、事業執行において内部統制機能充実を図ることがコーポレート・ガバナンスの基本であり、経営上重要な課題と考えております。そのため、コンプライアンス体制の強化、迅速かつ正確な情報開示に努め、コーポレート・ガバナンスを強化してまいります。