有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/19 15:00
【資料】
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【項目】
135項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
現在、我が国の医療は、高齢化と医療の高度化による「社会保障関係予算の増大」と、財政維持のための「社会保障関係費用の抑制」という相反する課題に直面しています。当社の創業者である現代表取締役社長の上野太郎は、誰もが必要な時に必要な医療や介護を受けられ、安心して暮らせる社会を創造したいという思いから2015年7月に当社を創業しました。
当社は、そのような創業者の思いのもと、医療が必要な全ての患者に最適な医療を提供し続けることができる、持続可能な社会の実現を目指して、IT技術と臨床現場のニーズとを有機的に融合させ、今までになかったソリューションを提供することで社会への価値を生み出し、現在の状況を変えるべく事業活動を行っております。
創業後は不眠症治療用アプリケーションをはじめとした治療用アプリの開発、汎用臨床試験システム、機械学習自動分析システムなどを通じて、未来に残すべき良質な医療システムを構築してきました。
医療は今後も進行する高齢化社会に向けて、様々な課題の解決や仕組みの整備が求められる分野であり、当社としては、更なるICTの活用及びデータ解析システムの開発を進めることで、医療従事者、患者双方のジレンマの解消、ひいては持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えております。
(2) 目標とする経営指標
現在、研究開発段階にある当社は、ROA、ROEその他の数値的な目標となる経営指標等は用いておりませんが、DTxプロダクト事業では、長期的視点での収益の最大化のために財務指標に先行する開発パイプラインの件数や臨床試験の進捗率を、DTxプラットフォーム事業では、収益の継続的かつ累積的な増加を実現するため契約件数や利用継続率を重要な経営指標として位置付けております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
DTxプロダクト事業では、DTxシーズの横断的な探索及び市場性の高い案件の選択と深耕が重要だと考えております。シーズの探索では、代表の上野を中心に当社役職員が保有する業界内でのネットワークを最大限活用するとともに、機械学習自動分析システムの導入によるRWDの分析や販売後調査を通じて、医療機関・学術研究機関・製薬企業が抱えるDTxシーズの発掘を行ってまいります。案件の選択と集中については、高い収益性が見込まれる案件に十分なリソース配分を行うための投資判断基準を構築して、臨床試験の各相で案件の適切な取捨選択を行い、加えて、自社で完結することに固執せず販売権の導出等、他社との連携による早期収益化の方策を検討してまいります。
DTxプラットフォーム事業のうち汎用臨床試験システムでは、サンドボックス制度での研究成果とそれを踏まえたグレーゾーン解消制度での当社の確認に対する厚生労働省からの回答に基づき、臨床試験における実地モニタリングを省略するためのデファクトスタンダートを目指しております。実地モニタリングの省略に加え、被験者募集プロセスの効率化やデータ欠損の防止による臨床試験品質の向上の観点から、製薬企業や学術研究機関における研究開発コストのさらなる低減をシステム全体で実現してまいります。
さらに、機械学習自動分析システムでは、RWDを対象としたユースケースを蓄積しながら、新たな機能開発と使いやすいUI/UX(User Interface/User Experience)の改善を継続的に行い、既存顧客での利用継続率と顧客単価の向上を目指してまいります。
DTx開発支援においても、支援実績を積み上げると同時に、システム基盤の機能拡充を図り、更なる効率化を目指してまいります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
今後事業及び収益の拡大を図るために当社が対処すべきDTxプロダクト事業での主な課題は、開発中の治療用アプリそれぞれの医療機器承認の取得と十分な収益が確保できる水準での保険収載を確実に実現することであります。併せて、市場ニーズに対応した新たな治療用アプリの開発に着手し、それらを継続的に市場に投入していくことも長期的な課題として認識しております。また、プラットフォーム事業のうち汎用臨床試験システムでの課題は、規制に対応した上で研究開発コストの低減に着実に寄与すること、機械学習自動分析システムでの課題は、長期にわたって利用してもらうために継続的な機能拡充を行うことだと考えております。新型コロナ感染症の拡大は多くの業界で事業運営に影響を及ぼしておりますが、外出自粛、医療機関への通院に対する抵抗感などが医療業界のデジタル化を促進する要因ともなっており、デジタル技術の活用で医療の効率化を目指す当社の事業展開にとってはポジティブな環境となっております。その他、継続的な成長と企業価値の向上を目指す上で対処しなければならない各機能面での課題を以下のように考えております。
(営業活動における課題)
当社は、国内外の製薬企業や医療機関等と友好的かつ経済的な相互関係(共同研究開発体制)を築いており、今後さらなる共同研究開発契約を獲得・推進するために研究開発体制の整備・充実と連動した戦略的な営業活動が重要だと考えております。
(研究開発活動における課題)
当社は、DTxプロダクト事業において治療用アプリの治験システム、治療用アプリを搭載した端末装置、および治療用アプリのプログラムに関する特許技術を保有・活用しており、現時点においては大きな技術的優位性があると考えております。また、DTxプラットフォーム事業に分類される汎用臨床試験システムおよび機械学習自動分析システムは今後の活用に大きな可能性を秘めております。当社は、自社システムの優位性を確保し続けるため、国内外の製薬企業及び学術研究機関等との共同研究を推進しつつ、今後も自社内における研究開発及びその体制の強化を進めてまいります。
(内部管理・統制における課題)
当社は、継続的に企業価値を高めていくためには、コーポレート・ガバナンスの強化が重要な課題の一つであると認識しております。経営の効率化を図りながら、一方でその健全性、透明性を高め、長期的、安定的かつ継続的に企業価値を向上させることが、株主をはじめ、すべてのステークホルダーの皆様から信頼をいただく条件であると考えております。企業価値向上のために、俊敏さを備えた全社的に効率的な組織の構築を必要条件としつつ、業務執行の妥当性、管理機能の効率性・有効性を心がけ、改善に努めてまいります。