有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/03/08 15:00
【資料】
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【項目】
145項目

研究開発活動

第12期連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
当社グループは月着陸、月面探査プロジェクトの達成に向けて、ランダー及びローバーの開発を実施しております。現在の研究開発は、当社のCTO室で実施されており、当連結会計年度における研究開発費の総額は、3,251,878千円となっております。当該研究開発費の内訳には、本社で発生する研究開発費用(主にミッション1、ミッション2ランダーの開発に係るもの)2,885,875千円及び欧州子会社で発生する研究開発費用(主にローバー開発に係るもの)42,660千円及び米国子会社で発生する研究開発費用(主にミッション3ランダーの開発に係るもの)323,342千円が含まれます。
当社は、2021年初頭にミッション1のランダー開発に係るCDR(Critical Design Review)を経て、フェーズC(詳細設計)を完了致しました。CDRは、ミッション要求からシステム仕様を経て設計結果に至るまでの一貫した整合性・実現性、開発計画を審査するものであり、一般的に宇宙機の開発において、設計段階が完了しモノ作りとしての製造段階への移行可否を判断する、開発上の中でも重要なマイルストーンとされています。CDRの実施に際しては、下記のとおり開発の各分野の外部専門家をレビュアーとして招聘し審議を頂きました。
中須賀 真一氏(東京大学教授)
低コストの超小型衛星の開発に精通しており、全体システムを俯瞰して技術妥当性を判断できる方であることからレビュアーとして招聘
趙 孟佑氏(九州工業大学教授)
深宇宙ミッションで特に重要となる帯電の影響について豊富な経験を有する方であることからレビュアーとして招聘
高島 健氏(JAXA)
JAXAにて深宇宙探査宇宙機の開発に携わり、全体システムを俯瞰して判断できる方であることからレビュアーとして招聘
一連の審査過程においては、社内エンジニアとは離れた中立的な外部専門家の立場から、設計(システム設計全般や帯放電環境等について)、試験(フライトモデルシステム試験計画等について)、運用(軌道設計等について)に関する一連の流れを審査頂いております。当社が実施したミッション1のランダー開発について、開発計画、設計の成果と、CDR後に実施する試験、運用の計画検討を審査頂いた結果、適切に進められていることをご確認頂きました。
CDRの完了後は、次のフェーズD(制作・試験)の段階へと開発フェーズを移行し、必要な加工やテストなどが完了したコンポーネントが段階的にランダーシステムへと組み立てられていきます。当社のミッション1においては、2021年初頭から当社がランダーの組み立て作業を行っている千葉県成田市の株式会社JALエンジニアリングのエンジン工場において、パイプの溶接作業を実施しました。また2021年5月より開始したドイツのAriane Groupの工場における本格的な組み立て作業を実施し、2022年10月までにすべてのランダー製造工程及び最終試験まで完了しております。その後、打上げ地である米国への輸送を実施し、輸送後はロケットへの搭載作業、燃料充填等の最終準備を完了させ、2022年12月11日に米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地 40射点より打上を実施しております。
また当社は、ミッション1の実施以降も、継続して高頻度ミッションを実現していく上で、ミッション1ランダーの開発と並行してミッション2及びミッション3ランダーの開発を開始しております。ミッション2は基本的にミッション1と同様のランダーを製造して、やはり同様にSpaceX社のロケットに搭載して打ち上げることを想定しています。基本設計がミッション1と同様のものを利用する予定のため、2022年7月にPDR(Preliminary Design Review)が完了し、現在フェーズC(詳細設計)へ移行しております。
また2025年に計画するミッション3では、ランダーの設計をこれまでのサイズから変更し、500kgのペイロードを輸送可能なランダーのサイズアップを実行することを計画し、主に米国子会社の拠点において研究開発を開始しております。
(注) 上記は、現時点での想定であり、今後、変更される可能性があります。
第13期第3四半期連結累計期間(自 2022年4月1日 至 2022年12月31日)
当社グループは月着陸、月面探査プロジェクトの達成に向けて、ランダー及びローバーの開発を実施しております。現在の研究開発は、当社のCTO室で実施されており、当第3四半期連結累計期間における研究開発費の総額は、8,182,535千円となっております。当該研究開発費の内訳には、本社で発生する研究開発費用(主にミッション1、ミッション2ランダーの開発に係るもの)7,666,228千円及び欧州子会社で発生する研究開発費用(主にローバー開発に係るもの)31,938千円及び米国子会社で発生する研究開発費用(主にミッション3ランダーの開発に係るもの)484,368千円が含まれます。
当期において引き続きミッション1ランダーの開発を進捗させ、2021年6月より組立を開始したランダーフライトモデルについて2022年5月において組立作業を完了致しました。その後2022年6月より、過酷な宇宙空間での稼働に向けた振動試験、熱真空試験、機能試験等の最終試験を2022年9月まで行っておりました。最終試験完了後、当社ミッション1ランダーは打上場所である米国フロリダ州への輸送が行われ、2022年12月11日(日)16時38分(日本時間)に米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地40射点より打上を実施しております。
今後当社は、2025年までに3回の月面着陸ミッションを行い、ランダー及びローバーの設計及び技術の検証と、月面輸送サービス・月面データサービスの提供という事業モデルの検証を行い、その信頼度と成熟度を商業化に足る水準にまで高めることを計画しています。宇宙開発における本格的な商業化の時代を見据えると、継続的かつ短いサイクルでの技術及び事業モデルの進化が不可欠です。ミッション1で得られたデータやノウハウの蓄積は、後続するミッション2、ミッション3へとフィードバックされ、ミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスをNASAや顧客に提供し、有人月面探査「アルテミス計画」にも貢献する計画です。
ミッションを短いサイクルで継続的に行うためにも、まずミッション1では、打上げから着陸までの間に、以下の10段階のマイルストーンを設定しており、それぞれに設けたサクセスクライテリアを達成することを目指します。なお、本書提出日現在、サクセスクライテリア5まで達成しております。
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0202010_002.pngミッションの途中では何らかの課題が発生し、すべてのマイルストーンを達成できない可能性もありますが、その事象のみを捉えて単なる失敗と評価せず、その時点で発生した課題と、その時点までに得たデータやノウハウなどの成果を正確に把握し、将来のミッションへ繋げていくことが、持続可能な技術進化と事業モデルの進化のために必要と考えております。