有価証券届出書(新規公開時)

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2022/11/18 15:00
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143項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
第35期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
当連結会計年度における世界情勢について、ロシアのウクライナ侵攻、米中覇権争いにより新冷戦構造の形成、米国を始め各国のコロナウイルス経済対策としての金融緩和からもたらされたインフレ、24年ぶりの歴史的な円安など、地政学及び経済情勢両方から極めて不透明な状況が続いていると考えられます。
また、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しがないまま、サル痘の世界的感染拡大により、人々の往来正常化の見通しが未だに不透明なままであります。
こうした状況のなか当社グループは、引き続き世界の歯科業界に貢献できるよう、グローバルな視点での事業展開、矯正歯科技工物の価値向上や品質などを強化してまいりました。
事業の更なる発展を図りながら、従業員とその家族の健康・安全を確保するという双方の目標を達成するため、市場環境や歯科医師及び患者のニーズの変化に対応した矯正歯科技工物に営業活動を注力するとともに、働く環境の改善や伝染病感染防止対策など従業員の健康のための様々な措置を施しておりました。また、設備投資や固定費の抑制などによる財務健全性の確保にも努めてまいりました。
しかし、急激な円安のため、矯正歯科技工物に必要な原材料価格が高騰しており、当グループの業績に影響をもたらしたことを認識しております。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高3,115,106千円(前連結会計年度比1.7%増)、営業利益512,174千円(前連結会計年度比18.2%減)、経常利益518,387千円(前連結会計年度比17.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益351,840千円(前連結会計年度比14.4%減)となりました。
なお、当社グループの事業は、歯科矯正事業の単一のセグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
第36期第1四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2022年9月30日)
当第1四半期連結累計期間における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大と収束を繰り返す中、水際対策や行動制限は緩和され、経済活動は徐々に正常化への動きがみられました。しかし、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や急激な円安の進行等により、原材料価格の高騰によるインフレ圧力など、我が国経済を取り巻く状況は引き続き厳しく、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
こうした状況の中、当第1四半期連結累計期間では、矯正歯科技工物の価値向上や品質などを強化するとともに、歯科医療機関に対して、高品質かつ用途や目的にあった適切な歯科矯正技工物を提供できる当社の強みを活かして継続的な営業活動に注力し、引き続き顧客満足度の向上に取り組みました。また、当社グループにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響は限定的で、蔓延初期段階においては歯科医療機関による一時休診等により、矯正歯科技工物の受注が減少する影響はあったものの、その後は回復しほぼ影響を受けることなく業績は推移しております。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の業績は、売上高837,907千円、営業利益147,931千円、経常利益139,381千円、親会社株主に帰属する四半期純利益94,228千円となりました。
なお、当社グループの事業は、歯科矯正事業の単一のセグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
第35期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して150,774千円増加し、2,193,097千円となりました。これは主に売上債権の回収により現金及び預金の増加82,391千円、事業拡大により商品及び製品及び原材料がそれぞれ8,663千円、39,183千円増加、3DCADシステムの切替によりソフトウエアの増加14,038千円や、減価償却により建物及び機械装置及び運搬具がそれぞれ6,324千円、9,917千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度と比較して99,245千円減少し、640,166千円となりました。これは主に、事業拡大により商品及び原材料の仕入れ増加により買掛金が8,559千円増加した一方で、約定返済により1年内返済予定の長期借入金が1,815千円、利益減少に伴い未払法人税等が74,044千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度と比較して、250,020千円増加し、1,552,931千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益351,840千円により利益剰余金が249,052千円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は70.8%(前連結会計年度末は63.8%)となりました。
第36期第1四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2022年9月30日)
(資産)
当第1四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末と比較して99,593千円増加し、2,292,690千円となりました。これは主に、売上高の増加により売掛金が65,709千円増加、事業拡大により原材料が23,964千円増加したことによるものであります。
(負債)
当第1四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末と比較して106,232千円増加し、746,398千円となりました。これは主に、配当金の支払確定等による未払金が104,223千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当第1四半期連結会計期間末における純資産は、前連結会計年度末と比較して、6,639千円減少し、1,546,291千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益94,228千円を計上した一方で、未払配当金105,000千円を計上したことにより、利益剰余金が11,124千円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は67.4%(前連結会計年度末は70.8%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
第35期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ、主に売上債権の回収により82,391千円増加し、1,292,077千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動におけるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、246,654千円(前連結会計年度は385,089千円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が517,788千円、取得当初の耐用年数に基づく減価償却費が38,840千円の計上があった一方で、事業拡大により棚卸資産の増加額49,076千円、法人税等の支払額239,110千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、67,712千円(前連結会計年度は49,738千円の使用)となりました。これは主に、製造能力拡大のために有形固定資産の取得による支出49,418千円、有事に備え保険積立金の積立による支出11,864千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、104,668千円(前連結会計年度は65,208千円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額102,788千円等があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。なお、当社は、歯科矯正事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
セグメントの名称第35期連結会計年度
(自 2021年7月1日
至 2022年6月30日)
第36期第1四半期
連結累計期間
(自 2022年7月1日
至 2022年9月30日)
生産高(千円)前年比(%)生産高(千円)
歯科矯正事業1,434,520102.4353,009
合計1,434,520102.4353,009

(注) 金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当社グループが行う事業は、受注から売上計上までの期間が短いため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を売上区分ごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社は、歯科矯正事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
売上区分第35期連結会計年度
(自 2021年7月1日
至 2022年6月30日)
第36期第1四半期
連結累計期間
(自 2022年7月1日
至 2022年9月30日)
金額(千円)前年比(%)金額(千円)
矯正歯科技工物売上
アナログ2,189,152100.6555,713
デジタル561,019101.8145,615
商品売上346,441108.7129,932
その他18,493107.16,645
合計3,115,106101.7837,907

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10
以上となる取引先が存在しないため、記載を省略しております。
2.売上区分の「矯正歯科技工物売上」のうち「アナログ」とは、矯正歯科技工物を製造する際に、患者の口
腔内情報について印象模型を利用したものを言い、「デジタル」とは、矯正歯科技工物を製造する際に、患者の口腔内情報について、3Dスキャナー等で採取したデータを利用したものを言います。
3.売上区分の「商品売上」は、矯正関連材料の販売に係る売上になります。
4.売上区分の「その他」は、主としてセットアップ用ソフトウエアのライセンス料が含まれております。
5.セットアップとは、患者の歯列を並び替えることをいいます。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されて
おります。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費
用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りに関して、過去の
実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異
なる可能性があります。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況
1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載し
ておりますが、連結財務諸表の作成に当たり会計上の見積りに用いた仮定のうち重要なものはないため、重要な会
計上の見積りを要する項目はないと判断しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループにおける主な資金需要は、大きく分けて材料費、外注加工費、人件費等の運転資金及び製造で使用
する設備投資資金となります。基本的には営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの短期借入金によ
り運転資金を賄い、設備投資資金につきましては、長期借入金により調達を行う方針であります。なお、当社は、取引銀行の3行と当座貸越契約を締結しており、資金の流動性が逼迫した状況下においても、当該当座貸越契約に
基づき十分な流動性を確保することができると考えております。
③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に含めて記載しておりま
す。
b.経営成績の分析
第35期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
(売上高、売上原価、売上総利益)
売上高については、前連結会計年度に比べ、52,343千円増加し、3,115,106千円となりました。これは主に歯
科矯正市場の拡大により、当社グループの取引歯科医療機関数が堅調に推移したことによるものであります。
売上原価については、前連結会計年度に比べ、98,624千円増加し、1,695,849千円(前連結会計年度比6.2%増)
となりました。これは主に、売上高の拡大及び円安の影響で、商品仕入が259,040千円、原材料仕入が217,982千
円、人件費321,311千円等となったことによるものであります。
この結果、売上総利益は前連結会計年度に比べ、46,280千円減少し、1,419,257千円(前連結会計年度比3.2%
減)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ、67,341千円増加し、907,082千円(前連結会計年
度比8.0%増)となりました。これは主に、業容拡大のため人員の増加により給料及び手当が38,526千円増加した
ことによるものであります。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ、113,622千円減少し、512,174千円(前連結会計年度比18.2%減)
となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益については、受取地代家賃5,371千円及び受取手数料7,750千円等により14,201千円となりました。
営業外費用については、支払利息1,472千円、為替差損4,803千円及び支払手数料1,666千円等により7,988千円と
なりました。
この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ、109,715千円減少し518,387千円(前連結会計年度比17.5%減)
となりました。
(特別利益、特別損失、法人税等合計、親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は、有形固定資産売却益を計上したことにより、272千円となりました。
特別損失は、有形固定資産除却損を計上したことにより、872千円となりました。
法人税等合計165,948千円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ、59,315
千円減少し351,840千円(前連結会計年度比14.4%減)となりました。
第36期第1四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2022年9月30日)
(売上高、売上原価、売上総利益)
売上高は、既存の歯科医療機関からの追加受注及び新規の歯科医療機関の獲得もあり、矯正歯科技工物の受注が順調に積み上がったことにより、売上高は837,907千円となりました。
売上原価は、主に商品仕入、材料仕入、歯科技工士の労務費及び外注加工費等を計上し、447,664千円となりました。
この結果、売上総利益は390,243千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、242,311千円となりました。これは主に、営業部門や管理部門の人員の給料及び手当
86,185千円を計上したことによるものであります。
この結果、営業利益は147,931千円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益については、受取地代家賃1,228千円及び貸倒引当金戻入額758千円等により2,393千円となりまし
た。
営業外費用については、為替差損8,621千円及び支払手数料2,026千円等により10,944千円となりました。
この結果、経常利益は139,381千円となりました。
(特別利益、特別損失、法人税等合計、親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益及び特別損失の計上はありませんでした。
法人税等合計45,153千円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は94,228千円となりました。
c.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの、経営上の目標と達成状況を判断するための客観的な指標として、取引歯科医療機関数及び取引
歯科医療機関あたりの売上高を重視しております。取引歯科医療機関数及び取引歯科医療機関あたりの売上高は営
業活動の成果である売上高と密接に関係する指標であることから当該指標を採用しております。全国の歯科医療機
関のうち、矯正治療対応歯科医療機関は約25千施設(出典:一般社団法人日本矯正歯科技工協会)ありますが、当社グループは順調に取引歯科医療機関数を増やしており、2022年6月期は、6,047施設の歯科医療機関と取引実
績があります。
また、取引歯科医療機関数及び取引歯科医療機関あたりの売上高と直結する売上高、並びに収益力を示す指標と
して、売上高営業利益率を重要な経営指標と位置付けております。当連結会計年度の数値については、次のとおり
となっております。
当連結会計年度前年比増減率
売上高3,115,106千円1.7%
営業利益512,174千円△18.2%
売上高営業利益率16.4%△4.0ポイント

0202010_004.jpg(注)各期において、1回以上取引があった歯科医療機関数
0202010_005.jpg(注)各期の売上高を取引歯科医療機関数で除した数値
d.経営成績等に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照ください。ま
た、経営者の問題認識、今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照くだ
さい。