有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/03/16 15:03
【資料】
PDFをみる
【項目】
162項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは1906年の創業以来、化学品メーカーとして歩み続けてきました。現在は、「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」を企業理念に掲げ、様々な製品の基礎原料として使われる苛性ソーダや殺菌、消毒に使われる次亜塩素酸ソーダをはじめとする「基礎化学品事業」、酢酸ナトリウム(食品用日持ち向上剤)、グルコサミンをはじめとする「機能化学品事業」、土壌殺菌剤として使われる農薬クロルピクリンをはじめとする「アグリ事業」、廃硫酸のリサイクルを中心とする「環境リサイクル事業」、及び塩の加工・販売に関する「各種塩事業」の5事業を展開しています。
特に、2013年にそれまでの親会社であった㈱中山製鋼所から独立したタイミングを機に、それまでの化学品のシナジーを生かしたプロダクトアウト型から、顧客のニーズをふまえ商品開発を行うマーケットイン型の企業へと大きく企業体質を転換しており、顧客に近接した工場立地と、硫黄、水素などの原料を自社製造できるコスト競争力を強みに、商品提案力に磨きをかけ、さらなる発展に繋げていく方針です。
(2) 経営環境及び中長期的な経営戦略
当社グループを取り巻く経営環境は、米中の貿易摩擦やロシアのウクライナ侵攻がもたらした国際情勢の極端な緊張と世界経済分断化リスクの増大や、一昨年来続いている新型コロナウイルス感染症の拡大による生活様式・国内製造業の変化を、十分に留意すべき局面にあります。当社においては、原材料価格や用益費の急激な増加を如何に吸収し、製品単価へ適正に転嫁することが安定的な収益の確保の喫緊の課題になっています。
そのような状況下、当社グループの経営方針において、「守りの成長」と「攻めの成長」に焦点をあて、既存ビジネスの事業基盤強化と新規ビジネスの成長へと導いていくことを目標とした取組みを実施し、これからも顧客を大切にしながら収益をあげる企業構造への転換に努めてまいります。具体的には、「環境に貢献する新規ビジネスによる成長分野の確立」、「新たな事業投資ポートフォリオによる強靭な企業集団の構築」、「生産性の向上と原価率の低減による事業基盤の確立」を企業経営方針と定め、既存ビジネスの拡大に加え、多種多様な新規事業の展開により売上増加を目指すとともに、採算性を重視し、グループ一丸となったコスト意識の徹底で経常利益を確保してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上と株主利益の増大を図るため、事業の収益性と設備投資を効果的に実施しながら成長性を高めるため、主な経営指標として、売上高、経常利益及び資産効率を示すROA(総資産利益率)、ROE(自己資本利益率)を掲げております。
(4) 経営上及び財務上の対処すべき課題
当社グループでは、企業経営方針である「環境に貢献する新規ビジネスによる成長分野の確立」、「新たな事業投資ポートフォリオによる強靭な企業集団の構築」、「生産性の向上と原価率の低減による事業基盤の確立」を経営上及び財務上の対処すべき課題として認識しており、それぞれの課題の克服を目指し、以下のような取組みを実施しております。
①「環境に貢献する新規ビジネスによる成長分野の確立」
SDGsが企業・社会において一般化する中、環境を軸としたビジネスの深化と開発に注力していきます。当社グループが手掛ける硫酸リサイクル事業の基盤を強化するとともに、当社持分法適用関連会社であるサンワ南海リサイクル株式会社との連携を深めていきます。又、セメント会社の資源リサイクル比率向上に寄与する脱塩事業を土佐工場に新設し、さらには電池領域でのリサイクル技術の確立に向けて研究開発部門の充実を図り、将来のリサイクルビジネス拡大への布石作りをしております。
②「新たな事業投資ポートフォリオによる強靭な企業集団の構築」
戦略優位性の少ない事業の撤退も含めた方向性の確定とともに、エコ社会実現に貢献するビジネスに注力する等、グループ内の事業ポートフォリオの見直しを継続していきます。具体的には、当社青岸工場に立地する持分法適用関連会社ATNグラファイト・テクノロジー株式会社は、当社の原料優位性を活かして、自動車部品や建築資材の耐火・難燃性能を向上する特殊黒鉛の製造を行っていきます。又、青岸工場で製造する水硫化ソーダは、自動車部品の軽量化や耐熱性向上に繋がる高機能樹脂の原料として、エコ社会実現に貢献しています。
③「生産性の向上と原価率の低減による事業基盤の確立」
急激な為替変動と国際市況の高騰に対処すべく、仕入先及び販売先との取組みを強化するとともに、原料ソースの多角化を図り、生産性の向上と原価率の低減に努め、適正な収益基盤を維持してまいります。
具体的には、和歌山工場で生産される苛性ソーダを中心とした多品目商品群は近隣に位置する500か所程度の納入先への小ロット取引を展開し、収益地盤を固めております。
もう一つの主力工場である土佐工場で生産されるクロルピクリンと高度さらし粉は、競業メーカーが少ないニッチ商品であるため、生産能力増強等で安定供給に努め日本全国及び海外市場への展開を進めております。
又、原料ソースの多角化に対応するため、原料在庫スペースの増強を実施しております。