有価証券報告書-第73期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/26 9:31
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116項目

対処すべき課題

今後の見通しといたしましては、雇用・所得環境の改善により国内消費が回復すること、また、企業収益の改善が設備投資の増加に寄与することなどから、わが国経済は、緩やかに回復していくものと思われます。
一方、中国の景気減速や米国の金利引上が新興国経済にもたらす影響など、世界経済は依然不透明な状況が続くものと予想されます。
このような経営環境のもと、当社グループは熱技術のリーディングカンパニーとして、豊富な経験と独自の技術力により、自動車・航空機関連向け熱処理設備をはじめとする戦略商品の早期開発と市場投入を図ると共に、既存商品の市場競争力を強化して、受注拡大に注力してまいります。
需要が堅調な鉄鋼業界では、稼働後数十年が経過し更新の時期を迎えた設備も多く、生産性の向上や省エネなどの改善提案とともに、短納期対応型工法により顧客ニーズに応えてまいります。加えて、今後、拡大が見込まれる高機能材需要(超ハイテン材、自動車構造用アルミ材、電磁鋼板等)を踏まえた新技術・新商品も適宜市場投入し、受注の拡大を図ります。
自動車関連では、円安を受け好調に推移する業績や、次世代自動車の開発などを背景に、積極的な設備投資が続くとみられ、市場動向に迅速に対応できる事業体制に改編して、量産型真空浸炭設備などの高い商品力で、受注の上積みを実現してまいります。
さらに、自動車メーカの海外生産拡大に合わせ、中国・タイ・インドネシアの拠点に加え、北中米でのアフターサービス体制整備により、今後も海外でのサービス力を充実してまいります。
一方、情報・通信分野においては、フレキシブルディスプレー市場で、塗工・乾燥・焼成のトータルソリューションビジネスを展開し、また、高精細ディスプレーや光学貼り合せ設備の分野でも新商品を投入し、早期に事業を再構築してまいります。
さらに、環境保全分野では、木質バイオマス蒸気ボイラー設備の普及や、環境規制が厳しくなりつつある新興国で、蓄熱式排ガス処理装置などの受注を強化してまいります。
当社グループは、人材の育成を強化して業務遂行力を向上させるとともに、熱技術の先進性を推し進め、成長市場における需要を確実に捕捉し、安定的な収益を確保出来る、強固な経営基盤の確立と企業価値の向上に取り組んでまいる所存であります。
なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりです。
(1) 基本方針の内容の概要
①当社の企業価値の源泉
当社は、設立以来、独自の熱技術を有する工業炉の総合メーカとして、独創的な技術・商品を市場に送り出すことにより、産業界の発展に貢献してまいりました。当社の企業価値は、高度な研究開発力、熱技術を活かした高品質な商品開発力、エンジニアリングと製造技術が一体となった事業運営体制、さらには顧客ニーズに機敏な営業推進体制にあると考えており、これらを支える人材や取引先との関係が、当社の企業価値を生み出す基盤となっております。そのため、当社では、長期的な視野に立った人材の育成や技術の承継に注力するとともに、あらゆる業務プロセスの生産性を高めることで、顧客との信頼関係を構築してまいりました。
このような、長年にわたり築いてきた人的・技術的資源と、顧客・取引先・従業員及び地域社会等の様々なステークホルダーとの良好な信頼関係こそが、当社の企業価値の源泉であります。
②基本方針
当社としては、当社の財務及び事業の方針を決定する者は、当社の財務及び事業の内容や、上記①の当社の企業価値の源泉を十分に理解し、企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を継続的かつ持続的に確保し、より向上させていくことを可能とする者であると考えています。
もっとも、当社としても、会社を支配する者の在り方は、最終的には、株主の皆様全体の意思に基づき決定されるべきものであると考えています。
しかしながら、わが国の資本市場における株式の大規模買付行為の中には、株主の皆様に買付の目的や内容、買付後の経営戦略などについての十分な情報開示がされず、又は十分な検討時間が与えられないもの等、株主の皆様の共同の利益を毀損するものもあります。
このような大規模買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当ではないと考えております。
(2) 基本方針を実現するための当社における取組みの概要
当社は、上記(1)①の当社の企業価値の源泉を活かして、企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益をより一層向上させ、基本方針を実現するために、2015年度を初年度とする3年後の新経営ビジョン2017を策定し、いかなる経営環境においても市場の変化を的確に捉え、中長期的に成長を続けられる強固な経営基盤の確立を目指しております。
なお、当社が取り組んでおります具体的な内容は、概略、次のとおりです。
① 生産設備関連の国内市場が縮小するなか、新たにタイ、インドネシアに拠点を設置することにより、海外案件への対応力の飛躍的な向上を図り、主力の鉄鋼、自動車、機械、化学などの分野において、アジア新興国市場からの設備需要を積極的に取り込み、安定した収益を確保してまいります。
② 省エネルギー、CO2削減などを主眼とした既存の事業領域における商品開発だけでなく、太陽光発電などの再生可能エネルギー分野やバイオコークスなどの環境関連分野をはじめ、幅広い応用が期待されている有機ELなど今後も注目を集める様々な新事業領域においては、革新的な新技術を提案することにより、顧客に新たな付加価値を創出して受注を増やし、収益の拡大を目指してまいります。
③ さらに品質・価格・納期面から採算性の見直しを徹底するとともに、飛躍的に生産性を向上させて、質の高い設備を安価に短納期で提供することにより、商品競争力の格段の強化を実現してまいります。
当社は、引き続き以上の取り組みを推進・実行していくことにより、株主の皆様や顧客、取引先、従業員及び地域社会等の様々なステークホルダーとの間で、長年にわたる良好な関係を更に発展させ、企業価値の源泉となる信頼関係をより強化してまいります。
(3) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み(本プラン)の概要
①本プラン採用の目的
上記(1)の「基本方針の内容の概要」において述べたとおり、当社株主の皆様が、大規模買付提案を受け入れるかどうかを判断なさるためには、大規模買付行為が行われる際に大規模買付者から当該大規模買付行為の内容、目的、将来にわたる経営戦略等、株主の皆様が大規模買付行為を受け入れるか否かを判断するのに必要な情報及び判断のための十分な時間が提供される必要があります。
当社は、企業価値及び株主の皆様の共同の利益の確保のため、基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みとして、大規模買付行為及びその提案がなされた場合におけるルールを以下のとおり策定いたしました。
②本プランの概要
(詳細につきましては、弊社ウェブサイト(http://www.chugai.co.jp)をご覧ください。)
ア 本プランの対象となる大規模買付行為
特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする当社株式等(注)の買付等の行為、又は結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となる当社株式等の買付等の行為を対象とします。
(注)「株式等」とは、金融商品取引法第27条の23第1項に規定する株券等を意味します。
イ 独立委員会の設置
当社は、当社取締役会が恣意的な判断を行うことを防止するため、当社社外取締役、当社社外監査役及び社外有識者の中から選任された委員により構成される独立委員会を設置いたしました。
独立委員会は、大規模買付者から提供される情報が、本プランに照らして十分か否かの判断、大規模買付者が本プランを遵守したか否かの判断及び対抗措置の発動の可否について、当社取締役会に助言・勧告を行い、当社取締役会は、独立委員会の助言・勧告を最大限尊重するものとします。
ウ 大規模買付者からの情報の提供
(ア)大規模買付者は、大規模買付行為に先立ち、本プランに基づいた手続により、当該買付行為を行う旨の誓約文言等が記載された「意向表明書」を、当社に対して提出するものとします。
(イ)当社取締役会は、上記「意向表明書」を受領した日から10営業日以内に、当該買付行為の内容を検討するのに必要な情報のリストを、当該大規模買付者に交付します。
(ウ)当該大規模買付者は、当社取締役会が定める回答期限までに、当該必要情報を、当社の定める書式で提出するものとします。
エ 当社取締役会による評価・検討
当社取締役会は、大規模買付者が必要かつ十分な情報の提供を行ったと判断できる場合には、その旨開示し、その日から最大60日(対価を現金(円貨)のみとする公開買付の場合)又は90日(その他の方法による大規模買付行為の場合)が経過するまでの期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)、大規模買付者の提案に関する評価、検討、交渉、意見形成、代替案立案及び対抗措置の発動の可否の判断を行います。
大規模買付者は、取締役会評価期間が経過するまで、大規模買付行為を開始することができないものとします。
オ 独立委員会による助言・勧告
当社取締役会は、大規模買付者から意向表明書の提出がなされた後、遅滞なく、独立委員会に対して、大規模買付行為の提案があった事実を通知するとともに、大規模買付者から必要情報の提供を受けた場合にも、当該必要情報を独立委員会に提出します。
独立委員会は、取締役会評価期間中、当該必要情報を分析評価し、大規模買付行為に対し、一定の対抗措置の発動をすべきか否かにつき、当社取締役会に対して助言・勧告を行うものとし、当社取締役会は、独立委員会の助言・勧告を最大限尊重します。
カ 大規模買付行為がなされた場合の対応
(ア)大規模買付者が本プランを遵守しない場合
当社取締役会は、必要性及び相当性を勘案し、独立委員会の助言・勧告を受けた上で、当該買付行為への対抗措置をとることがあります。対抗措置として、現時点では、新株予約権の株主無償割当てを予定しています(ただし、当該方法に限られるものではありません。)。
(イ)大規模買付者が本プランを遵守した場合
当社取締役会は、当該買付行為に対する反対意見の表明や代替案の提示等により、株主の皆様に当該買付行為に応じないように説得するに留め、原則として対抗措置はとりません。
ただし、当該大規模買付行為が、当社の企業価値及び株主の皆様の共同の利益を著しく損なうと、当社取締役会が判断した場合は、例外的に独立委員会による助言・勧告を受けた上で、一定の対抗措置をとることがあります。
(ウ)当社取締役会は、対抗措置発動の決定を行った場合、当該決議の内容その他当社取締役会が適切と判断する事項について、速やかに情報を開示します。
(4) 基本方針を実現するための当社における取組みに関する当社取締役会の判断及びその判断に係る理由
当社の中期経営ビジョンは、基本方針に基づいて作成され、当該経営計画を実行することにより、当社の企業価値が向上いたします。したがって、基本方針を実現するための当社における取組みは、基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を高めるものと考えます。
(5) 本プランに関する当社取締役会の判断及びその判断に係る理由
当社取締役会は、次の理由から、本プランが、基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものでなく、当社役員の地位を維持することを目的とするものではないと判断しています。
①買収防衛策に関する指針の要件を完全に充足していること
本プランは、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保または向上のための買収防衛策に関する指針」に定める三原則(ⅰ.企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、ⅱ.事前開示・株主意思の原則、ⅲ.必要性・相当性の原則)を完全に充足しています。また、本プランは、企業価値研究会が平成20年6月30日に発表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえて設計されているものです。
②株主共同の利益の確保・向上の目的に資すること
本プランは、株主の皆様が、大規模買付行為を受け入れるか否かを適切に判断するために必要な情報や時間を確保し、かつ当社の企業価値及び株主の皆様の共同の利益に対する明白な侵害を防止するため、大規模買付者が従うべき手続、並びに当社が発動しうる対抗措置の内容及び発動条件をあらかじめ定めるものであり、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益の確保・向上に資するものです。
③株主意思を反映するものであること
平成26年6月25日開催の当社第72期定時株主総会において、本プランを採用することについて、株主の皆様に承認していただいております。また、本プランの有効期間は、平成28年6月開催予定の当社第74期定時株主総会終結のときまでであり、再度当該総会において株主の皆様に本プランの採用の可否についてご決議いただく予定としております。
したがって、本プランの導入、継続及び廃止には、株主の皆様のご意思が反映される仕組みとなっております。
④独立性の高い社外者の判断の尊重
当社は、本プランの採用に当たり、上記(3)②イで述べたとおり、独立委員会を設置し、当社取締役会が、恣意的に本プランの運用を行うことがないよう、厳しく監視するとともに、独立委員会の判断の概要について株主の皆様に情報開示することとされており、当社の企業価値・株主の皆様の共同の利益に適うように本プランの運用が行われる仕組みが確保されています。
⑤取締役会の判断の客観性・合理性の確保
本プランでは、上記(3)②で述べたとおり、対抗措置の発動に関して、合理的かつ詳細な客観的要件及び手続が予め設定されており、当社取締役会による恣意的な対抗措置の発動を防止するための仕組みを確保しています。
⑥デッドハンド型買収防衛策でないこと
本プランは、当社の株主総会で選任された取締役で構成される取締役会において、過半数の決議により廃止することができます。したがって、デッドハンド型買収防衛策(取締役の過半数を交代させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)ではありません。
なお、当社においては、取締役の任期を2年としておりますが、期差選任制ではありません。また、取締役解任決議要件につきましても、特別決議を要件とするなど決議要件の加重を行っておりません。