有価証券報告書-第87期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 15:25
【資料】
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【項目】
155項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、①コミュニケーションに不可欠なICT(※1)技術から通信建設工事や電気・空調設備、ビルファシリティ設備構築までカバーできる総合的な施工力までを持つ独特な「技術力」や、②全国に展開する営業拠点をはじめ、ネットワークの運用・監視・保守サービス、ヘルプデスク対応を行うオペレーションセンターやネットワーク機器・ICT製品の調達・保管、システム設定、修理、評価検証、配送といった一連のサプライチェーンマネジメントを担う総合テクニカルセンターなどの多様な全国サポートサービス体制/基盤といった「事業展開力」、③それらを活用して、NECグループならではの高い品質レベルでマルチベンダーに対応したシステムの企画・導入から運用・保守、アウトソーシングまで一貫したサービスを提供できる「幅広いサービス提供力」、そして④企業内のICTをはじめ海底から宇宙に至る事業領域と、企業、官公庁や社会インフラ事業者、通信事業者と多岐に渡るお客様といった「幅広い事業領域と顧客基盤」、などの強みを有する企業グループであります。
これら当社独自の強みをさらに磨き、専門性、競争力を強化するとともに、将来を見据えた事業構造の変革や先端技術を活用した新しい事業を創出する基盤・体制の強化、イノベーションの加速により、成長力、収益力の強化を図ってまいります。
当社グループは、これまで培ってきた価値観やDNA、将来を見据えた目指す姿・企業像などを明文化した「私たちNECネッツエスアイグループは世界中の人々が安心・安全で豊かな明日を過ごせるよう、長年培ってきた確かな技術と信頼のサービスで海底から宇宙まで、つながる社会を支え、より快適で便利なコミュニケーションをデザインし続けます」というNECネッツエスアイグループ宣言を2017年1月に制定いたしました。
これに基づき、当社の強みを活かしパートナーとの共創で新しいバリューチェーンをプロデュースするコミュニケーションサービス・オーケストレーターとして、より快適で便利なコミュニケーション社会の実現に貢献してまいります。当社グループはお客様にとって必要不可欠なパートナーとして、より一層ご満足頂けるサービスを提供するとともに、高い競争力と収益力を備えた存在感を発揮する会社として、企業価値の向上を目指してまいります。
(2)経営戦略
現在、世界ではボーダレス化の進行により、国籍や業種、既存の枠組みといったさまざまな垣根が無くなりつつあり、その中で社会や企業は、国際競争力、経営スピードを高めるために、ビジネスモデルやプロセス、労働生産性・働き方の革新を迫られております。また、テクノロジーの面では、CAMBRIC(※2)などのデジタル技術の進化や5G(※3)に代表されるネットワーク技術の高速/高度化など、大きな変革の波が訪れようとしております。
これまで、NECネッツエスアイでは、これら変革の波に対応すべく、先進企業との協業を推進し、デジタル関連事業の立上げや先進サービスの投入、新たなパートナーシップの推進、スタートアップ企業との共創の仕組み作りなど、自社の枠を越えて成長力強化に向けた打ち手を展開してまいりました。
これらの成果をベースに、技術革新を事業拡大の好機との認識のもと、将来の「デジタル×5G」時代を見据えた事業構造の変革や、先端技術を活用した新しい事業を創出する基盤・体制の強化、グループ全体でのイノベーションの加速により、成長力、収益力の強化を図り、持続的な成長の実現を目指すとともに、これら事業活動を通じて社会課題の解決に寄与してまいります。
「デジタル×5G」時代において、デジタル技術とネットワーク技術はより密接に関わり合い、ビジネスや社会生活において革新的な変化や既存の概念を超えたサービス・ビジネスが創出されることが想定されます。そのようななか、通信事業者や社会インフラのミッションクリティカルなネットワークの構築から企業向けICTのサービス提供までフルレンジで提供できる事業基盤をコアコンピタンスとし、時代に先駆けて働き方改革ソリューション「EmpoweredOffice(※4)」を生み出したビジネス創造力を有する当社の役割は飛躍的に拡大すると考えております。これらのコアコンピタンスを磨き、「デジタル×5G」時代における専門性・競争力をより一層強化してまいります。
このような考えに基づき、当社では2019年4月にデジタルソリューション、ネットワークインフラ、エンジニアリング&サポートサービスの3つに事業領域を再編いたしました。
デジタルソリューション分野では、最新デジタル技術の活用により、働き方改革関連事業をビジネス変革事業へ進化させます。そのため、先端技術を有する企業との共創と、新技術の自社実践とをさらに推進し、事業化を加速してまいります。
ネットワークインフラ分野では、5Gなどの通信技術の高度化に向けた技術力の強化により、移動体通信基地局からコアネットワークまでフルレイヤーのSI力を活かし、通信事業者向け事業の拡大を図ってまいります。同時に、企業向けを含む5G技術応用サービス領域での事業展開を強化するとともに、社会インフラなどの公共性の高いネットワーク領域においても5G等の先端技術を組み合わせた独自ソリューションを提供していきます。加えて、通信トラフィックが増加し、今後需要が拡大することが見込まれる海洋通信関連の事業の強化も図ってまいります。
エンジニアリング&サポートサービス分野では国内外のフィールドエンジニアリング、保守体制の集約・一元化により、施工・保守といった全社共通機能の事業力を強化すると同時に、事業運営の効率化を進めます。そのため、関連する全社技術者の育成強化を行い、プロジェクト品質、マネジメント力の強化を図ってまいります。
加えて、経営改革活動の一環として、イノベーション加速に向けた働き方、オフィス改革への取り組みを加速させていきます。最新デジタル技術やプロセス・制度改革の自社実践、機能別分散型オフィスへの再編により、今までのオフィスの概念を越えた最先端の働き方にチャレンジするとともに、オープンイノベーションを取り入れた共創による新ビジネス創出など、「EmpoweredOffice」をお客様のビジネスそのものをより強くイノベーションする事業へと強化してまいります。
また、業務プロセス効率化および低コスト構造への改善活動も継続して行い、今後も、売上拡大による収益力強化に加え、外注費の効率化、標準化と集約化による機器費・材料費の低減、標準化推進・後戻りコストの撲滅に向けたマネジメント強化など、さらなる収益力強化を目指した経営改革活動を強化・推進してまいります。
これら戦略の実行により、事業規模、収益性ともに従来の水準を越えるレベルへシフトさせ、2022年3月期を最終年度とする中期経営目標としては、売上高3,100億円、営業利益200億円(営業利益率6.5%)を目指してまいります。また、資本効率の向上の面から、ROE(自己資本利益率)については、10%以上の達成を目指しております。
(3)コンプライアンスおよび内部統制の強化
コンプライアンスの徹底は企業活動の基本であり、コンプライアンス重視のマネジメントの実践こそが、NECネッツエスアイグループの持続的な事業活動および事業発展の礎であると考えております。当社は、当社ならびに連結子会社を含む当社グループ全体として、コンプライアンスを最優先に企業倫理および遵法精神に基づく企業行動の徹底を進めてまいります。
(4)戦略的現状と見通し
2020年3月期のわが国経済は、政府の経済対策効果や雇用・所得環境の改善などにより緩やかな回復が継続することが期待されますが、通商問題の動向やそれに伴う金融資本市場の変動の影響などによる国内景気の下ぶれが懸念されます。
当社の事業領域であるICT分野におきましては、国内景気の下ぶれによる企業の投資意欲低下が懸念されるものの、働き方改革関連分野への投資意欲の拡大や、通信事業者における基地局を中心としたネットワークインフラへの設備投資も拡大が見込まれます。一方、官庁・自治体、公益関連領域では大きな投資テーマが期待できないなか、競争環境の厳しさが継続するなど低調に推移することが想定されます。
このような環境のなか、2020年3月期におきましては、働き方改革関連分野や通信事業者向け事業への取り組みを強化することにより、売上高は前期比増加を見込んでおります。
収益面は、今後の中長期的な成長を見据え、DX(※5)をはじめとした最先端技術への対応強化や人材育成、さらには新しい働き方に向けたオフィス再編等の成長投資をさらに積極的に実行していきますが、増収効果やさらなる効率化の推進などにより、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益について、それぞれ前期比増加を見込んでおります。
※1 ICT:
Information and Communication Technology(情報通信技術)の略。
※2 CAMBRIC:
Cloud computing、AI、Mobility、Big data、Robotics、IoT、Cyber security
※3 5G:
第5世代移動通信システム。無線だけではなく有線も含めたネットワーク全体のアーキクチャにおける技術革新により、現4G比 1000倍の高速化、 1/10の低遅延、100倍の同時接続を実現。
※4 EmpoweredOffice(エンパワードオフィス):
当社の提供する働き方改革ソリューション。当社の強みであるICTとファシリティ施工力を融合し、最先端技術を使い、働く場所や時間にとらわれない、より知的で創造的なワークスタイルへの業務プロセス改革を実現するとともに、セキュリティ強化や環境対応力といった社会的責任に応える「働き方」の改革を提案するもの。
※5 DX:
Digital transformationの略。AI・IoT・RPA(Robotic Process Automation)等の最先端技術を用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを大きく変革すること。