有価証券報告書-第73期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 13:00
【資料】
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【項目】
156項目

研究開発活動

当連結会計年度の当社研究開発部門は、開発本部(基礎研究所、ものづくり部)、生産本部(製造・技術部)の各部を中心に機能強化しました。当社子会社であるプライムテック株式会社とともに、食肉加工あるいは食肉生産に関する先端的な基礎研究から、それらを活用した商品開発、生産技術開発に至るまで、精力的な研究開発活動を行っております。
基礎研究所では、安全・安心、おいしさ、健康、環境保全などに係わる研究開発を行うとともに、基礎研究から生まれた開発商品の拡販活動を推進するため、社外セミナーや大学での講義、専門誌への投稿などを行なってまいりました。また、各研究機関との連携による研究のレベルアップと効率化を目的とし、研究員を大学院博士課程に派遣しております。「安全・安心に係わる研究開発」では、独自に開発した食物アレルギー物質検査用の「簡易キット」や公定法である「定量ELISA法」などの販売を継続してまいりました。また、現在販売しているキットよりも、より簡易で精度の高いアレルゲン検査キットの開発及び検査項目の拡充を行い、更なる売上拡大を目指しております。「衛生向上技術の開発」では、製造環境・ラインの改善、新規微生物検査手法の導入、異物検査手法の開発を行ってまいりました。「おいしさの研究」では、『美味しさの見える化』を具現化するため、食肉加工品の品質を適正に捕らえる新評価手法に関する研究を推進し、科学的解析に基づいたおいしさの数値化と情報提供を行い、関連部門とともに商品開発、品質改善や販促活動の一翼を担ってまいりました。「健康に係わる研究」では、食肉本来のもっている機能を健康維持に活かす研究を進めています。「環境保全に係わる研究」では、動物性残渣や油脂を効果的に処理できる「環境浄化微生物」の拡販活動を推進してまいりました。本年度は、特に関連する他部門との連携を強化し、研究活動の中から得られた情報を全社的に発信することにより、研究開発部門、事業部門と一体となって具体的施策を推進し、利益の最大化、企業価値向上に貢献することを目標に活動を実施してまいりました。
製造・技術部では、従来から生産工程の省人省力化及び生産性向上を目指した生産設備の開発を中心とした取り組みに加え、最近では基礎研究所やものづくり部と連動し革新的製造技術開発や差別化商品の開発を目指した取り組みも始めています。ハム・ソーセージにおきましては主力商品であるコンシューマパック包装ラインにおいて、当社独自の自動化技術により業界でもトップクラスを誇る生産性を達成し、製造コスト削減に貢献してまいりました。最近ではIT推進部とも連携を取りながらAI、IoT関連技術の動向を睨みつつ、合理化や検査技術開発、工程管理等の応用化への取り組みを行っています。昨今の雇用難による人手不足を鑑みて、業務時間の多くを占める工場内のサニテーション作業についてもメス入れを行い、ハード・ソフトの両面から作業負荷の軽減を目指す取り組みを行っております。
ものづくり部は、中・長期的な視点からの革新的ものづくりを追求することにより、独創的で斬新な商品及び製法・工程の開発に加え、2018年度より主に業務用商品の開発を進めてまいりました。中・長期課題では、新規の塩漬方法や乾燥技術を用いた生ハム、サラミの工程時間短縮及び新商品の開発を推進し、乾燥期間短縮・歩留向上の効果を確認しております。美味しさ・楽しさの追求では、包装技術や真空フライなどの加熱調理技術を応用し、簡便性、利便性、健康などをキーワードとした新カテゴリーの商品開発を進め、トレイ含気包装商品や常温販売商品の市場投入を目指しております。
また、ハム・ソーセージ製造技術を体系的に習得した技術者の育成を目的として、2017年から継続して、社員1名をドイツ食肉加工メーカーに派遣し、マイスター資格の取得を目指しております。
業務用商品の開発では、関連部署と連携しながら新商品あるいはリニューアル商品の設計から工場導入までを行い、数量及び利益の拡大に貢献することを目標として活動を実施しております。
プライムテック株式会社は“マイクロマニピュレーションのプロフェッショナル”の自負をもって、高度な精密駆動技術を利用し独自に開発したピエゾマイクロマニピュレータ「PMM」の専門メーカーとして、装置の開発と製造・販売、また装置を活用した研究を行っております。
近年、日本では、少子高齢化が大きな問題となるなか、社会環境、価値観、意識の変化に起因する結婚年齢の高齢化により不妊治療技術の進歩とその普及が進んでいます。PMMを用いた顕微授精「Piezo-ICSI」は不妊治療を行う医療の現場から、その効果と操作性に高い評価をいただいており、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業において東京医科歯科大学及び亀田IVFクリニック幕張とともに国内でのPiezo-ICSIの標準化と普及への取り組み、また、この日本発の技術の全世界への展開に向けた準備を推進しています。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、376百万円です。