有価証券報告書-第182期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
文中における将来に関する事項は、当年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
詳細につきましては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等]内、連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。
(2) 経営成績の状況
①事業全体の状況
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を掲げ、世界のCSV先進企業を目指して取り組みを進めた2020年は、キリングループにとって大変重要な年となりました。
世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大し、不確実性が大きく増す中で、発酵・バイオテクノロジーを通じて培った「食領域」、「医領域」、「ヘルスサイエンス領域」の3領域で確実に事業を展開するとともに、シナジーを追求しました。3領域の展開により、新型コロナウイルス感染拡大による業績への影響を一定程度吸収する等、加速する健康志向に応える事業ポートフォリオの強みを発揮し、社会課題解決を事業の成長につなげる当社のCSV経営の強みを確信しました。また、多様性を増したガバナンス体制のもと、各ステークホルダーとの対話を積極的に行い、グローバルマネジメント体制を強化しました。
新型コロナウイルスは、世界中の人々の行動を制約し、社会経済活動に甚大な影響を与えました。キリングループ各社の事業活動においても、外食市場の縮小、各種イベントの延期や中止、外出制限等による大きな影響が出ましたが、従業員とお客様・取引先の健康と安全の確保を前提に、感染防止策を徹底し、商品や医薬品、サービス等を供給する社会的責任を果たすことを最優先に取り組みました。大変厳しい経営環境ではありましたが、「食領域」では国内ビール・スピリッツ事業のキリンビール㈱が3年連続で市場推移を上回り、ビール業界内の存在感を大きく向上させました。また「医領域」の医薬事業では協和キリン㈱がグローバル戦略3品を複数地域で順調に拡大する等、多くの成果を創出しました。
このようにお客様の価値観や事業環境が大きく変化する状況に適応しながら、将来の価値創造に向けて、変革・加速・縮小・中止をキーワードに、グループ各社の構造改革を進めました。特に、変革・加速した活動としては、商品・サービスのブランド育成や、デジタルを活用した社内外のコミュニケーション、グローバルに重要度が増す環境問題への取り組み、将来の成長基盤となる「ヘルスサイエンス領域」の育成があり、活動を一層深化させました。
「ヘルスサイエンス領域」では、「免疫」、「脳機能」、「腸内環境」を重点領域に定め、新たにキリングループに加わった㈱ファンケルとのシナジー創出や、さまざまな研究開発及び商品開発を進めました。その中で、キリングループの独自素材であるプラズマ乳酸菌を配合した「iMUSE(イミューズ)」ブランドの清涼飲料とサプリメントが、日本で初めて免疫機能をうたう機能性表示食品として8月に届出受理されました。その後、プラズマ乳酸菌を使用した小岩井乳業㈱のヨーグルトや㈱ファンケルのサプリメント等も同様に届出が受理され、順次発売を開始し、CSV重点課題の1つである「健康」の取り組みも大きく前進しました。
なお、キリングループ2019年-2021年中期経営計画(略称:2019年中計)で重要成果指標とする従業員エンゲージメントは、CSV経営に対する従業員の理解と共感が高まったことや、7月から開始した「『働きがい』改革」で業務の見直し・働く場所の自由化を進めたこと等により、前年から大幅に向上しました。CSV重点課題の一つである「環境」では、気候変動対応や生物資源保護等の取り組みが高く評価され、「第2回日経SDGs経営大賞」で「環境価値賞」を受賞しました。また、女性取締役及び外国人取締役の選任、社外取締役比率を過半数とする等、ガバナンス体制を大きく変更し、多様性に富む外部人材の招聘を行った点や、CSV経営が高く評価され、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2020」の「Grand Prize Company」に選ばれました。
(重要成果指標)
(2019年中計 重要成果指標目標※)
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う事業環境の変化により、キリングループの主要な事業は大きく影響を受けました。2019年中計で掲げている財務目標(平準化EPS:年平均成長率5%以上、ROIC:2021年度10%以上)について、2021年度の目標は、以下のとおり見直しています。
※ 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除くこととしております。各事業の重要成果指標には事業利益、ROAを使用しております。
これらの結果、当年度の売上収益は、多くの事業で新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、減収となりました。事業利益も減益となりましたが、各事業でコスト削減やリスク低減を進め、その減少を最低限にとどめました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業利益の減少に加え、主要な関連会社であるサンミゲルビール社も新型コロナウイルス感染症の影響を受け、持分法による投資利益も減少しましたが、前年度に計上したオセアニア綜合飲料事業の減損損失の反動等による影響で、増益となりました。
重要成果指標である平準化EPS、ROICは、主に「食領域」各事業における新型コロナウイルス感染拡大の影響や、医薬事業におけるグローバルな販売体制・事業基盤整備等のための先行投資等を行っているため、2019年中計の目標は下回る見込みです。
一方で、新型コロナウイルス感染拡大により加速した環境変化をビジネスモデルや収益構造の改革の機会と捉え、それぞれの事業で成長のための施策を実施してきました。また、低収益事業の再編や政策保有株式の縮減等により、資本効率の改善を進めました。KV2027の実現に向けて、2019年中計の戦略の加速とともに、抜本的なコスト構造改革を実行し、短期と中長期の両方に目配りした資源配分を行いながら、企業価値向上を果たしていきます。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
セグメント別の業績は次のとおりです。
<国内ビール・スピリッツ事業>国内酒類市場では、新型コロナウイルスの影響により外食市場向け商品の販売が大きく減少する中、キリンビール㈱では、主力ブランドに投資を集中したマーケティング活動によりブランドを強化し、成果を創出しました。ビールカテゴリーの販売数量は外食需要低下により減少しましたが、10月の酒税改正による減税もあり、主力商品「キリン一番搾り生ビール」の缶商品や新商品「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が好調で、「一番搾り」ブランドの缶商品の販売数量は前年から増加しました。新ジャンルカテゴリーでは、「家飲み需要」を確実に捉えた「本麒麟」の販売数量が前年比3割増と大幅に伸び、「キリン のどごし〈生〉」の販売も堅調で、同カテゴリーの販売数量は同社史上最高となりました。その結果、ビール類カテゴリーの販売数量は4.5%減少したものの、3年連続で市場推移を上回り、ビール業界内の存在感を大きく向上させました。
家庭用商品が中心のRTDカテゴリーは、シリーズ累計販売本数150億本(250ml換算)を達成した基幹ブランドの「キリン 氷結」の堅調な販売に加え、「麒麟特製サワー」、「キリン 本搾りTMチューハイ」が大変好調で、カテゴリー合計の販売数量は前年比1割増となりました。
これらの結果、家庭用チャネルにおいてビール類缶やRTD、ノンアルコール飲料カテゴリーの販売数量が増加したものの、業務用チャネルにおいてビール類の販売数量が大幅に減少し、売上収益は4.5%減少し6,514億円となりました。また、販売数量減少及びビールカテゴリーの比率低下により限界利益が低下し、事業利益は11.4%減少し755億円となりました。
<国内飲料事業>国内飲料市場では、商品購入場所の変化、自宅でお茶やコーヒーをいれる機会の増加、無糖・低糖飲料といった健康カテゴリー商品の支持拡大等、新型コロナウイルスの影響によるお客様の行動様式の変化が販売面に大きな影響を与えました。キリンビバレッジ㈱は「CSVの実践を軸とした成長による利益創出」を目指し、お客様の「健康」ニーズに応える取り組みを加速しました。6月発売の「キリンレモン スパークリング 無糖」、9月発売の「キリン 生茶 ほうじ煎茶」等の無糖商品や、「キリン 午後の紅茶 マイスターズ」シリーズ等の低糖商品を拡充し、“摂りすぎない健康”という価値を提供しました。また、“プラスの健康”という価値を提案して発売した「キリン iMUSE(イミューズ) レモン」等のプラズマ乳酸菌配合飲料の販売数量は、前年比約2.4倍と大きく増加しました。一方、新型コロナウイルスの影響を受けた自動販売機やコンビニエンスストアでの販売が苦戦し、清涼飲料全体の販売数量は9.1%減少しました。
これらの結果、販売数量の減少に加え、売上収益単価の悪化により売上収益は12.1%減少し2,522億円となりました。また販売促進費、広告費の削減を進めたものの、販売数量の減少及びチャネル構成比の変化等による商品・容器構成差異等の悪化を補いきれず、事業利益は17.4%減少し218億円となりました。
<オセアニア綜合飲料事業>同事業が事業展開する豪州・ニュージーランド・米国及び英国では、新型コロナウイルスの影響により外出制限や飲食店入場人数制限が行われました。ライオン社酒類事業でも外食市場を中心に販売数量が減少しましたが、リスクを機会と捉えて戦略を修正し、事業構造改革を進めました。
豪州では「フォーエックス」、「ジェームス・スクワイア」から新商品を上市する等、主力ビールブランドを強化、育成しました。将来の成長分野と位置付ける海外クラフトビール事業では、2020年より連結開始した米国ニュー・ベルジャン・ブルーイング社で、主力商品「ブードゥー・レンジャー」が米国クラフトビール市場を上回る成長を実現しました。また、ERPシステム導入による業務効率化や、豪州国内で操業するすべての自社ビール工場でカーボンニュートラル達成など「環境」の取り組みも進めました。ライオン社飲料事業については、11月に豪州の乳業大手ベガ チーズ社と株式譲渡契約を締結することで、低収益事業の再編を完了しました。
これらの結果、新型コロナウイルスの影響により販売数量が減少する中、米国ニュー・ベルジャン・ブルーイング社の連結子会社化に伴う増収等により現地通貨ベースの売上収益は0.2%増加しましたが、前年同期よりも豪ドル安・円高が進行したため、円ベースの売上収益は2.5%減少し2,921億円となりました 。また新型コロナウイルスの影響により、収益性の高い業務用チャネルを通じた販売が大きく減少したため、事業利益は現地通貨ベースで45.9%減少し295百万豪ドル、円ベースで46.5%減少し221億円となりました。
<医薬事業>医薬品業界では、新型コロナウイルスによる治療環境の変化と事業活動の制限の中、販売・臨床開発などに影響がみられました。協和キリン㈱は「グローバル・スペシャリティファーマへの飛躍」を掲げる中、これらの影響を限定的に留め、増収増益を達成しました。グローバル戦略3品である「Crysvita」、「Poteligeo」、「Nourianz」は、欧米をはじめ各国で順調に拡大し、アジアでは中国で「Regpara」の売上が好調でした。国内での薬価基準の引き下げや、主力製品「ネスプ」の特許切れによる後発バイオ医薬品への切り替え進行による影響を、海外の売上が補いました。
また協和キリン㈱では、経営の最優先事項として強固な品質保証体制の構築、リスクマネジメントの改善、企業文化の改革に加え、グローバルマネジメント体制の強化に取り組みました。
これらの結果、グローバル戦略品を中心とした海外医薬品売上の増加により売上収益は4.2%増加し3,178億円となりました。また事業利益は、グローバル戦略品の販売に係る販売費及び一般管理費が増加したものの、売上収益増収に伴う売上総利益の増加により、6.6%増加し590億円となりました。
また、その他の主な各事業の業績は以下のとおりです。
(メルシャン㈱)
新型コロナウイルスの影響により「家飲み需要」が広がる中、メルシャン㈱は家庭用ワイン市場での飲用者拡大と収益性改善を図りました。中でも、間口拡大に向けた商品「メーカーズレシピ 」や「おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル」が好調に推移しました。日本ワイン「シャトー・メルシャン」では、椀子ワイナリーが「ワールド・ベスト・ヴィンヤード 2020」を日本で初めて受賞する快挙を遂げました。これらの結果、売上収益は2.7%減少し621億円、事業利益は63.3%増加し36億円となりました。
(ミャンマー・ブルワリー社)
ミャンマーでは、新型コロナウイルスの影響で飲食店の営業規制や自宅待機措置の発令があり、外食市場が大きく減退した一方、家庭用市場は拡大しました。ミャンマー・ブルワリー社は、統合マーケティングの展開やIT投資による業務効率化を進めました。家庭用市場の伸長に伴い営業活動を強化したエコノミーカテゴリーの「アンダマン ゴールド」の販売数量が増加しましたが、全体の販売数量は5.8%減少しました。これらの結果、売上収益は2.2%減少し318億円、事業利益は7.2%増加し138億円となりました。
(コーク・ノースイースト社)
米国の飲料市場では新型コロナウイルスの影響で春先から外食市場を中心に販売面への影響が生じる中、コーク・ノースイースト社は収益力向上を目指し構造改革を継続しました。激変した市場に対する事業活動の迅速な見直しと、業務や組織の大幅な改革による業務効率化で、目標を大きく上回り同社史上最高益を達成しました。これらの結果、売上収益は2.4%減少し1,294億円、事業利益は75.1%増加し93億円となりました。
(協和発酵バイオ㈱)
協和発酵バイオ㈱では、2019年度末から山口事業所の製造管理・品質保証体制の見直しを進める中で、製造品目を制限した影響が大きく、主要製品の売上が大きく減少しました。同社は新たな事業戦略を策定し、キリングループの支援を受け品質保証体制の強化と生産体制の再構築に取り組みました。また、成長をけん引する高機能素材に集中する方針のもと、11月にはタイ拠点でのヒトミルクオリゴ糖の製造設備新設を発表しました。これらの結果、売上収益は23.5%減少し573億円、事業損失は23億円となりました。
③生産、受注及び販売の状況
(ⅰ) 生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(ⅱ) 受注状況
当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。
(ⅲ) 販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 財政状態
①事業全体の状況
当年度末の資産合計は、前年度末に比べ465億円増加して2兆4,594億円となりました。無形資産がソフトウエア開発及びニュー・ベルジャン・ブルーイング社の子会社化の影響等で前年度末比404億円の増加、のれんがニュー・ベルジャン・ブルーイング社の子会社化の影響等で前年度末比118億円の増加となりました。一方、その他の金融資産(非流動)は、政策保有株式の売却や保有株式の時価減少等に伴い333億円減少しました。なお、オセアニア綜合飲料事業他の資産737億円は売却目的で保有する資産に分類しており、有形固定資産が376億円、営業債権及びその他の債権が197億円、その他各科目の減少要因となっています。
資本は、利益剰余金が226億円増加、非支配持分が171億円増加したものの、768億円の自己株式の増加及び139億円のその他の資本の構成要素の減少等により、前年度末に比べ509億円減少して1兆959億円となりました。自己株式の増加は、株主還元のさらなる充実を図るため2019年11月に上限1,000億円の自己株式取得を発表し、当年度その一部を実施したことによるものです。非支配持分の増加は、協和キリン㈱の当期利益の発生によるもの等です。その他の資本の構成要素は、保有株式の時価減少に伴いその他の包括利益を通じて測定する金融資産の公正価値の純変動が減少したこと、保有株式の売却によってその他の資本の構成要素から利益剰余金へ振り替えたことにより減少しております。
負債は、社債及び借入金の増加等により、前年度末に比べ974億円増加して1兆3,634億円となりました。社債及び借入金は、適正な資本構成を維持しながら調達と返済を行っており、社債については、2020年3月に200億円の社債を償還した一方、2020年6月に500億円の普通社債を発行、また2020年11月には再生PET樹脂の調達及び工場におけるヒートポンプシステム導入への支出に充当するため100億円の社債(グリーンボンド)を発行しました。その他、長期借入金の返済及び新規借入、コマーシャル・ペーパーの発行と償還により、社債及び借入金は、前年度末比1,118億円増加しました。なお、オセアニア綜合飲料事業の負債270億円は売却目的で保有する資産に直接関連する負債に分類しており、営業債務及びその他の債務が112億円、その他の流動負債が59億円、その他各科目の減少要因となっています。
これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は34.1%、グロスDEレシオは0.77倍となりました。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
<国内ビール・スピリッツ>当年度末のセグメント資産は、有形固定資産の設備投資抑制等により、前年度末に比べ130億円減少して4,244億円となりました。
<国内飲料>当年度末のセグメント資産は、政策保有株式の売却や、営業債権の減少等により、前年度末に比べ247億円減少して1,499億円となりました。
<オセアニア綜合飲料>当年度末のセグメント資産は、有形固定資産及び無形資産の減損損失による減少等により、前年度末に比べ197億円減少して4,713億円となりました。
<医薬>当年度末のセグメント資産は、開発品導入による無形資産の取得や繰延税金資産の増加等により、前年度末に比べ166億円増加して7,417億円となりました。
(4) キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フロー及び流動性の状況
当年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前年度末に比べ40億円減少の1,617億円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の収入は前年同期に比べ140億円減少の1,648億円となりました。運転資金の流出が203億円減少し、税引前利益が77億円増加したものの、非資金損益項目である減損損失が347億円減少しており、小計では1億円の微減となりました。小計以下では法人所得税の支払額が172億円増加したこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期比で減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は前年同期に比べ596億円減少の1,160億円となりました。減少の主な要因は、前年同期に発生した㈱ファンケルの株式取得の反動により、持分法で会計処理されている投資の取得が前年同期に比べ1,326億円減少の19億円となったことです。一方、当期はニュー・ベルジャン・ブルーイング社の子会社化に伴い子会社株式の取得による支出が前年同期に比べ351億円増加の396億円となりました。有形固定資産及び無形資産の取得については、前年同期に比べ34億円減少の930億円を支出しました。また、前年同期比では179億円減少したものの、政策保有株式の縮減に向けた取組みを引き続き推進したことにより投資の売却により194億円の収入がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の支出は前年同期に比べ425億円増加の525億円となりました。前年度より、平準化EPSに対する連結配当性向を40%以上の配当を実施し、非支配持分を含めた配当金の支払いは49億円増加の701億円となりました。また、自己株式の取得による支出は、2019年11月に発表した上限1,000億円の自己株式取得によって当年度は768億円を支出し、子会社実施分を含めた前年同期比で310億円増加しました。また、適正な資本構成を維持しながら資金の調達と返済を行っており、その内訳はコマーシャル・ペーパーにより280億円、社債により600億円、長期借入により1,350億円の収入、長期借入金の返済により866億円、社債の償還により200億円の支出となりました。
上記の結果、財務戦略に則り、既存事業への投資に加え、グローバルクラフト戦略等の成長投資を進めつつ、株主還元のさらなる充実を図ることができました。
2021年度につきましても事業から創出したキャッシュを原資に生産能力の増強やグローバルクラフト戦略、「ヘルスサイエンス領域」への成長投資等、規律を保った投資を行う予定です。なお、株主還元については、次年度も平準化EPSに対する連結配当性向40%以上を目処に安定した配当を実施して参ります。引き続き、利益成長によるキャッシュの創出力を高めながら、資本コストと財務柔軟性のバランスを考慮した適切な資本構成を維持していく方針です。
②資本政策の基本的な方針
当社は、2019年中計にて策定した資本政策に基づき、事業への資源配分及び株主還元について以下のとおり考えております。
事業への資源配分については、酒類・飲料などの収益力の高い既存事業のさらなる強化・成長に資する投資(設備投資・事業投資)を最優先としながら、将来のキャッシュ・フロー成長を支える無形資産(ブランド、研究開発、情報化、人材・組織)及びヘルスサイエンス事業の立ち上げ・育成のための資源配分を安定的かつ継続的に実施します。なお、投資に際しては、グループ全体の資本効率を維持・向上させる観点からの規律を働かせます。
株主還元についても、経営における最重要課題の一つと考えており、1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。2019年中計より連結配当性向を引き上げ、「平準化EPSに対する連結配当性向40%以上」による配当を継続的に実施するとともに、最適資本構成や市場環境及び投資後の資金余力等を総合的に鑑み、機動的な追加的株主還元として自己株式取得の実施等を検討していきます。
資金調達については、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢に左右されない高格付けを維持しつつ、負債による資金調達を優先します。支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資金調達については、KV2027や2019年中計の目標の達成やステークホルダーへの影響等を十分に考慮し、取締役会にて検証及び検討を行った上で、株主に対する説明責任を果たします。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
詳細につきましては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等]内、連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。
(2) 経営成績の状況
①事業全体の状況
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を掲げ、世界のCSV先進企業を目指して取り組みを進めた2020年は、キリングループにとって大変重要な年となりました。
世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大し、不確実性が大きく増す中で、発酵・バイオテクノロジーを通じて培った「食領域」、「医領域」、「ヘルスサイエンス領域」の3領域で確実に事業を展開するとともに、シナジーを追求しました。3領域の展開により、新型コロナウイルス感染拡大による業績への影響を一定程度吸収する等、加速する健康志向に応える事業ポートフォリオの強みを発揮し、社会課題解決を事業の成長につなげる当社のCSV経営の強みを確信しました。また、多様性を増したガバナンス体制のもと、各ステークホルダーとの対話を積極的に行い、グローバルマネジメント体制を強化しました。
新型コロナウイルスは、世界中の人々の行動を制約し、社会経済活動に甚大な影響を与えました。キリングループ各社の事業活動においても、外食市場の縮小、各種イベントの延期や中止、外出制限等による大きな影響が出ましたが、従業員とお客様・取引先の健康と安全の確保を前提に、感染防止策を徹底し、商品や医薬品、サービス等を供給する社会的責任を果たすことを最優先に取り組みました。大変厳しい経営環境ではありましたが、「食領域」では国内ビール・スピリッツ事業のキリンビール㈱が3年連続で市場推移を上回り、ビール業界内の存在感を大きく向上させました。また「医領域」の医薬事業では協和キリン㈱がグローバル戦略3品を複数地域で順調に拡大する等、多くの成果を創出しました。
このようにお客様の価値観や事業環境が大きく変化する状況に適応しながら、将来の価値創造に向けて、変革・加速・縮小・中止をキーワードに、グループ各社の構造改革を進めました。特に、変革・加速した活動としては、商品・サービスのブランド育成や、デジタルを活用した社内外のコミュニケーション、グローバルに重要度が増す環境問題への取り組み、将来の成長基盤となる「ヘルスサイエンス領域」の育成があり、活動を一層深化させました。
「ヘルスサイエンス領域」では、「免疫」、「脳機能」、「腸内環境」を重点領域に定め、新たにキリングループに加わった㈱ファンケルとのシナジー創出や、さまざまな研究開発及び商品開発を進めました。その中で、キリングループの独自素材であるプラズマ乳酸菌を配合した「iMUSE(イミューズ)」ブランドの清涼飲料とサプリメントが、日本で初めて免疫機能をうたう機能性表示食品として8月に届出受理されました。その後、プラズマ乳酸菌を使用した小岩井乳業㈱のヨーグルトや㈱ファンケルのサプリメント等も同様に届出が受理され、順次発売を開始し、CSV重点課題の1つである「健康」の取り組みも大きく前進しました。
なお、キリングループ2019年-2021年中期経営計画(略称:2019年中計)で重要成果指標とする従業員エンゲージメントは、CSV経営に対する従業員の理解と共感が高まったことや、7月から開始した「『働きがい』改革」で業務の見直し・働く場所の自由化を進めたこと等により、前年から大幅に向上しました。CSV重点課題の一つである「環境」では、気候変動対応や生物資源保護等の取り組みが高く評価され、「第2回日経SDGs経営大賞」で「環境価値賞」を受賞しました。また、女性取締役及び外国人取締役の選任、社外取締役比率を過半数とする等、ガバナンス体制を大きく変更し、多様性に富む外部人材の招聘を行った点や、CSV経営が高く評価され、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2020」の「Grand Prize Company」に選ばれました。
| 2020年実績 | 2019年実績 | 対前年増減 | 対前年増減率 | |
| 連結売上収益 | 1兆8,495億円 | 1兆9,413億円 | △918億円 | △4.7% |
| 連結事業利益 | 1,621億円 | 1,908億円 | △286億円 | △15.0% |
| 連結営業利益 | 1,029億円 | 877億円 | 152億円 | 17.3% |
| 連結税引前利益 | 1,246億円 | 1,168億円 | 77億円 | 6.6% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 719億円 | 596億円 | 123億円 | 20.6% |
(重要成果指標)
| ROIC | 6.0% | 5.2% | ||
| 平準化EPS | 136円 | 158円 | △22円 | △13.9% |
(2019年中計 重要成果指標目標※)
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う事業環境の変化により、キリングループの主要な事業は大きく影響を受けました。2019年中計で掲げている財務目標(平準化EPS:年平均成長率5%以上、ROIC:2021年度10%以上)について、2021年度の目標は、以下のとおり見直しています。
| ROIC | 7.6% |
| 平準化EPS | 147円 |
※ 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除くこととしております。各事業の重要成果指標には事業利益、ROAを使用しております。
これらの結果、当年度の売上収益は、多くの事業で新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、減収となりました。事業利益も減益となりましたが、各事業でコスト削減やリスク低減を進め、その減少を最低限にとどめました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業利益の減少に加え、主要な関連会社であるサンミゲルビール社も新型コロナウイルス感染症の影響を受け、持分法による投資利益も減少しましたが、前年度に計上したオセアニア綜合飲料事業の減損損失の反動等による影響で、増益となりました。
重要成果指標である平準化EPS、ROICは、主に「食領域」各事業における新型コロナウイルス感染拡大の影響や、医薬事業におけるグローバルな販売体制・事業基盤整備等のための先行投資等を行っているため、2019年中計の目標は下回る見込みです。
一方で、新型コロナウイルス感染拡大により加速した環境変化をビジネスモデルや収益構造の改革の機会と捉え、それぞれの事業で成長のための施策を実施してきました。また、低収益事業の再編や政策保有株式の縮減等により、資本効率の改善を進めました。KV2027の実現に向けて、2019年中計の戦略の加速とともに、抜本的なコスト構造改革を実行し、短期と中長期の両方に目配りした資源配分を行いながら、企業価値向上を果たしていきます。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
セグメント別の業績は次のとおりです。
| 2020年実績 | 2019年実績 | 対前年増減 | 対前年増減率 | |
| 連結売上収益 | 1兆8,495億円 | 1兆9,413億円 | △918億円 | △4.7% |
| 国内ビール・スピリッツ | 6,514億円 | 6,819億円 | △305億円 | △4.5% |
| 国内飲料 | 2,522億円 | 2,868億円 | △346億円 | △12.1% |
| オセアニア綜合飲料 | 2,921億円 | 2,997億円 | △76億円 | △2.5% |
| 医薬 | 3,178億円 | 3,049億円 | 129億円 | 4.2% |
| その他 | 3,360億円 | 3,680億円 | △320億円 | △8.7% |
| 連結事業利益 | 1,621億円 | 1,908億円 | △286億円 | △15.0% |
| 国内ビール・スピリッツ | 755億円 | 852億円 | △97億円 | △11.4% |
| 国内飲料 | 218億円 | 264億円 | △46億円 | △17.4% |
| オセアニア綜合飲料 | 221億円 | 414億円 | △192億円 | △46.5% |
| 医薬 | 590億円 | 554億円 | 36億円 | 6.6% |
| その他 | △163億円 | △175億円 | 12億円 | ― |
連結売上収益 対前年![]() | 連結事業利益 対前年![]() |
<国内ビール・スピリッツ事業>国内酒類市場では、新型コロナウイルスの影響により外食市場向け商品の販売が大きく減少する中、キリンビール㈱では、主力ブランドに投資を集中したマーケティング活動によりブランドを強化し、成果を創出しました。ビールカテゴリーの販売数量は外食需要低下により減少しましたが、10月の酒税改正による減税もあり、主力商品「キリン一番搾り生ビール」の缶商品や新商品「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が好調で、「一番搾り」ブランドの缶商品の販売数量は前年から増加しました。新ジャンルカテゴリーでは、「家飲み需要」を確実に捉えた「本麒麟」の販売数量が前年比3割増と大幅に伸び、「キリン のどごし〈生〉」の販売も堅調で、同カテゴリーの販売数量は同社史上最高となりました。その結果、ビール類カテゴリーの販売数量は4.5%減少したものの、3年連続で市場推移を上回り、ビール業界内の存在感を大きく向上させました。
家庭用商品が中心のRTDカテゴリーは、シリーズ累計販売本数150億本(250ml換算)を達成した基幹ブランドの「キリン 氷結」の堅調な販売に加え、「麒麟特製サワー」、「キリン 本搾りTMチューハイ」が大変好調で、カテゴリー合計の販売数量は前年比1割増となりました。
これらの結果、家庭用チャネルにおいてビール類缶やRTD、ノンアルコール飲料カテゴリーの販売数量が増加したものの、業務用チャネルにおいてビール類の販売数量が大幅に減少し、売上収益は4.5%減少し6,514億円となりました。また、販売数量減少及びビールカテゴリーの比率低下により限界利益が低下し、事業利益は11.4%減少し755億円となりました。
<国内飲料事業>国内飲料市場では、商品購入場所の変化、自宅でお茶やコーヒーをいれる機会の増加、無糖・低糖飲料といった健康カテゴリー商品の支持拡大等、新型コロナウイルスの影響によるお客様の行動様式の変化が販売面に大きな影響を与えました。キリンビバレッジ㈱は「CSVの実践を軸とした成長による利益創出」を目指し、お客様の「健康」ニーズに応える取り組みを加速しました。6月発売の「キリンレモン スパークリング 無糖」、9月発売の「キリン 生茶 ほうじ煎茶」等の無糖商品や、「キリン 午後の紅茶 マイスターズ」シリーズ等の低糖商品を拡充し、“摂りすぎない健康”という価値を提供しました。また、“プラスの健康”という価値を提案して発売した「キリン iMUSE(イミューズ) レモン」等のプラズマ乳酸菌配合飲料の販売数量は、前年比約2.4倍と大きく増加しました。一方、新型コロナウイルスの影響を受けた自動販売機やコンビニエンスストアでの販売が苦戦し、清涼飲料全体の販売数量は9.1%減少しました。
これらの結果、販売数量の減少に加え、売上収益単価の悪化により売上収益は12.1%減少し2,522億円となりました。また販売促進費、広告費の削減を進めたものの、販売数量の減少及びチャネル構成比の変化等による商品・容器構成差異等の悪化を補いきれず、事業利益は17.4%減少し218億円となりました。
<オセアニア綜合飲料事業>同事業が事業展開する豪州・ニュージーランド・米国及び英国では、新型コロナウイルスの影響により外出制限や飲食店入場人数制限が行われました。ライオン社酒類事業でも外食市場を中心に販売数量が減少しましたが、リスクを機会と捉えて戦略を修正し、事業構造改革を進めました。
豪州では「フォーエックス」、「ジェームス・スクワイア」から新商品を上市する等、主力ビールブランドを強化、育成しました。将来の成長分野と位置付ける海外クラフトビール事業では、2020年より連結開始した米国ニュー・ベルジャン・ブルーイング社で、主力商品「ブードゥー・レンジャー」が米国クラフトビール市場を上回る成長を実現しました。また、ERPシステム導入による業務効率化や、豪州国内で操業するすべての自社ビール工場でカーボンニュートラル達成など「環境」の取り組みも進めました。ライオン社飲料事業については、11月に豪州の乳業大手ベガ チーズ社と株式譲渡契約を締結することで、低収益事業の再編を完了しました。
これらの結果、新型コロナウイルスの影響により販売数量が減少する中、米国ニュー・ベルジャン・ブルーイング社の連結子会社化に伴う増収等により現地通貨ベースの売上収益は0.2%増加しましたが、前年同期よりも豪ドル安・円高が進行したため、円ベースの売上収益は2.5%減少し2,921億円となりました 。また新型コロナウイルスの影響により、収益性の高い業務用チャネルを通じた販売が大きく減少したため、事業利益は現地通貨ベースで45.9%減少し295百万豪ドル、円ベースで46.5%減少し221億円となりました。
<医薬事業>医薬品業界では、新型コロナウイルスによる治療環境の変化と事業活動の制限の中、販売・臨床開発などに影響がみられました。協和キリン㈱は「グローバル・スペシャリティファーマへの飛躍」を掲げる中、これらの影響を限定的に留め、増収増益を達成しました。グローバル戦略3品である「Crysvita」、「Poteligeo」、「Nourianz」は、欧米をはじめ各国で順調に拡大し、アジアでは中国で「Regpara」の売上が好調でした。国内での薬価基準の引き下げや、主力製品「ネスプ」の特許切れによる後発バイオ医薬品への切り替え進行による影響を、海外の売上が補いました。
また協和キリン㈱では、経営の最優先事項として強固な品質保証体制の構築、リスクマネジメントの改善、企業文化の改革に加え、グローバルマネジメント体制の強化に取り組みました。
これらの結果、グローバル戦略品を中心とした海外医薬品売上の増加により売上収益は4.2%増加し3,178億円となりました。また事業利益は、グローバル戦略品の販売に係る販売費及び一般管理費が増加したものの、売上収益増収に伴う売上総利益の増加により、6.6%増加し590億円となりました。
また、その他の主な各事業の業績は以下のとおりです。
(メルシャン㈱)
新型コロナウイルスの影響により「家飲み需要」が広がる中、メルシャン㈱は家庭用ワイン市場での飲用者拡大と収益性改善を図りました。中でも、間口拡大に向けた商品「メーカーズレシピ 」や「おいしい酸化防止剤無添加ワイン シードル」が好調に推移しました。日本ワイン「シャトー・メルシャン」では、椀子ワイナリーが「ワールド・ベスト・ヴィンヤード 2020」を日本で初めて受賞する快挙を遂げました。これらの結果、売上収益は2.7%減少し621億円、事業利益は63.3%増加し36億円となりました。
(ミャンマー・ブルワリー社)
ミャンマーでは、新型コロナウイルスの影響で飲食店の営業規制や自宅待機措置の発令があり、外食市場が大きく減退した一方、家庭用市場は拡大しました。ミャンマー・ブルワリー社は、統合マーケティングの展開やIT投資による業務効率化を進めました。家庭用市場の伸長に伴い営業活動を強化したエコノミーカテゴリーの「アンダマン ゴールド」の販売数量が増加しましたが、全体の販売数量は5.8%減少しました。これらの結果、売上収益は2.2%減少し318億円、事業利益は7.2%増加し138億円となりました。
(コーク・ノースイースト社)
米国の飲料市場では新型コロナウイルスの影響で春先から外食市場を中心に販売面への影響が生じる中、コーク・ノースイースト社は収益力向上を目指し構造改革を継続しました。激変した市場に対する事業活動の迅速な見直しと、業務や組織の大幅な改革による業務効率化で、目標を大きく上回り同社史上最高益を達成しました。これらの結果、売上収益は2.4%減少し1,294億円、事業利益は75.1%増加し93億円となりました。
(協和発酵バイオ㈱)
協和発酵バイオ㈱では、2019年度末から山口事業所の製造管理・品質保証体制の見直しを進める中で、製造品目を制限した影響が大きく、主要製品の売上が大きく減少しました。同社は新たな事業戦略を策定し、キリングループの支援を受け品質保証体制の強化と生産体制の再構築に取り組みました。また、成長をけん引する高機能素材に集中する方針のもと、11月にはタイ拠点でのヒトミルクオリゴ糖の製造設備新設を発表しました。これらの結果、売上収益は23.5%減少し573億円、事業損失は23億円となりました。
③生産、受注及び販売の状況
(ⅰ) 生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 国内ビール・スピリッツ | 634,250 | △5.6 |
| 国内飲料 | 120,027 | △9.8 |
| オセアニア綜合飲料 | 282,381 | △5.4 |
| 医薬 | 175,132 | △11.9 |
| その他 | 227,192 | △5.3 |
| 合計 | 1,438,981 | △6.7 |
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(ⅱ) 受注状況
当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。
(ⅲ) 販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 国内ビール・スピリッツ | 651,424 | △4.5 |
| 国内飲料 | 252,173 | △12.1 |
| オセアニア綜合飲料 | 292,120 | △2.5 |
| 医薬 | 317,797 | 4.2 |
| その他 | 336,030 | △8.7 |
| 合計 | 1,849,545 | △4.7 |
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | ||
| 金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
| 三菱食品㈱ | 225,059 | 11.6 | 223,675 | 12.1 |
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 財政状態
①事業全体の状況
当年度末の資産合計は、前年度末に比べ465億円増加して2兆4,594億円となりました。無形資産がソフトウエア開発及びニュー・ベルジャン・ブルーイング社の子会社化の影響等で前年度末比404億円の増加、のれんがニュー・ベルジャン・ブルーイング社の子会社化の影響等で前年度末比118億円の増加となりました。一方、その他の金融資産(非流動)は、政策保有株式の売却や保有株式の時価減少等に伴い333億円減少しました。なお、オセアニア綜合飲料事業他の資産737億円は売却目的で保有する資産に分類しており、有形固定資産が376億円、営業債権及びその他の債権が197億円、その他各科目の減少要因となっています。
資本は、利益剰余金が226億円増加、非支配持分が171億円増加したものの、768億円の自己株式の増加及び139億円のその他の資本の構成要素の減少等により、前年度末に比べ509億円減少して1兆959億円となりました。自己株式の増加は、株主還元のさらなる充実を図るため2019年11月に上限1,000億円の自己株式取得を発表し、当年度その一部を実施したことによるものです。非支配持分の増加は、協和キリン㈱の当期利益の発生によるもの等です。その他の資本の構成要素は、保有株式の時価減少に伴いその他の包括利益を通じて測定する金融資産の公正価値の純変動が減少したこと、保有株式の売却によってその他の資本の構成要素から利益剰余金へ振り替えたことにより減少しております。
負債は、社債及び借入金の増加等により、前年度末に比べ974億円増加して1兆3,634億円となりました。社債及び借入金は、適正な資本構成を維持しながら調達と返済を行っており、社債については、2020年3月に200億円の社債を償還した一方、2020年6月に500億円の普通社債を発行、また2020年11月には再生PET樹脂の調達及び工場におけるヒートポンプシステム導入への支出に充当するため100億円の社債(グリーンボンド)を発行しました。その他、長期借入金の返済及び新規借入、コマーシャル・ペーパーの発行と償還により、社債及び借入金は、前年度末比1,118億円増加しました。なお、オセアニア綜合飲料事業の負債270億円は売却目的で保有する資産に直接関連する負債に分類しており、営業債務及びその他の債務が112億円、その他の流動負債が59億円、その他各科目の減少要因となっています。
これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は34.1%、グロスDEレシオは0.77倍となりました。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
<国内ビール・スピリッツ>当年度末のセグメント資産は、有形固定資産の設備投資抑制等により、前年度末に比べ130億円減少して4,244億円となりました。
<国内飲料>当年度末のセグメント資産は、政策保有株式の売却や、営業債権の減少等により、前年度末に比べ247億円減少して1,499億円となりました。
<オセアニア綜合飲料>当年度末のセグメント資産は、有形固定資産及び無形資産の減損損失による減少等により、前年度末に比べ197億円減少して4,713億円となりました。
<医薬>当年度末のセグメント資産は、開発品導入による無形資産の取得や繰延税金資産の増加等により、前年度末に比べ166億円増加して7,417億円となりました。
(4) キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フロー及び流動性の状況
当年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前年度末に比べ40億円減少の1,617億円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の収入は前年同期に比べ140億円減少の1,648億円となりました。運転資金の流出が203億円減少し、税引前利益が77億円増加したものの、非資金損益項目である減損損失が347億円減少しており、小計では1億円の微減となりました。小計以下では法人所得税の支払額が172億円増加したこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期比で減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は前年同期に比べ596億円減少の1,160億円となりました。減少の主な要因は、前年同期に発生した㈱ファンケルの株式取得の反動により、持分法で会計処理されている投資の取得が前年同期に比べ1,326億円減少の19億円となったことです。一方、当期はニュー・ベルジャン・ブルーイング社の子会社化に伴い子会社株式の取得による支出が前年同期に比べ351億円増加の396億円となりました。有形固定資産及び無形資産の取得については、前年同期に比べ34億円減少の930億円を支出しました。また、前年同期比では179億円減少したものの、政策保有株式の縮減に向けた取組みを引き続き推進したことにより投資の売却により194億円の収入がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の支出は前年同期に比べ425億円増加の525億円となりました。前年度より、平準化EPSに対する連結配当性向を40%以上の配当を実施し、非支配持分を含めた配当金の支払いは49億円増加の701億円となりました。また、自己株式の取得による支出は、2019年11月に発表した上限1,000億円の自己株式取得によって当年度は768億円を支出し、子会社実施分を含めた前年同期比で310億円増加しました。また、適正な資本構成を維持しながら資金の調達と返済を行っており、その内訳はコマーシャル・ペーパーにより280億円、社債により600億円、長期借入により1,350億円の収入、長期借入金の返済により866億円、社債の償還により200億円の支出となりました。
上記の結果、財務戦略に則り、既存事業への投資に加え、グローバルクラフト戦略等の成長投資を進めつつ、株主還元のさらなる充実を図ることができました。
2021年度につきましても事業から創出したキャッシュを原資に生産能力の増強やグローバルクラフト戦略、「ヘルスサイエンス領域」への成長投資等、規律を保った投資を行う予定です。なお、株主還元については、次年度も平準化EPSに対する連結配当性向40%以上を目処に安定した配当を実施して参ります。引き続き、利益成長によるキャッシュの創出力を高めながら、資本コストと財務柔軟性のバランスを考慮した適切な資本構成を維持していく方針です。
②資本政策の基本的な方針
当社は、2019年中計にて策定した資本政策に基づき、事業への資源配分及び株主還元について以下のとおり考えております。
事業への資源配分については、酒類・飲料などの収益力の高い既存事業のさらなる強化・成長に資する投資(設備投資・事業投資)を最優先としながら、将来のキャッシュ・フロー成長を支える無形資産(ブランド、研究開発、情報化、人材・組織)及びヘルスサイエンス事業の立ち上げ・育成のための資源配分を安定的かつ継続的に実施します。なお、投資に際しては、グループ全体の資本効率を維持・向上させる観点からの規律を働かせます。
株主還元についても、経営における最重要課題の一つと考えており、1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。2019年中計より連結配当性向を引き上げ、「平準化EPSに対する連結配当性向40%以上」による配当を継続的に実施するとともに、最適資本構成や市場環境及び投資後の資金余力等を総合的に鑑み、機動的な追加的株主還元として自己株式取得の実施等を検討していきます。
資金調達については、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢に左右されない高格付けを維持しつつ、負債による資金調達を優先します。支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資金調達については、KV2027や2019年中計の目標の達成やステークホルダーへの影響等を十分に考慮し、取締役会にて検証及び検討を行った上で、株主に対する説明責任を果たします。

