有価証券報告書-第163期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(以下、「当年度」といいます。)における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)の感染拡大により、世界経済が甚大な打撃を受けた中、中国は新型コロナ感染拡大をいち早く抑え込み、経済活動が復調しました。米国は、人の動きの制限、財政・金融政策により、徐々に経済活動が回復してきました。しかしながら、感染再拡大のうえ、当第4四半期には、半導体不足、原燃料価格高騰も加わり、今後、国内を含む世界経済の正常化には時間がかかることが予想されます。
こうした事業環境において、当社グループは、新型コロナ感染拡大により、当年度前半を中心に自動車関連製品、衣料繊維が影響を受けました。アクリル繊維事業では、事業用資産の減損損失78億円を計上しました。
一方、新型コロナ感染が拡大する中、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用原料や試薬の生産量を倍増する体制をとりました。また、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は、自動車生産の回復に伴い販売が復調し、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”は、新ライン(3号機)による量産を開始し、販売を伸ばしました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は前年度比22億円(0.6%)減の3,374億円となり、営業利益は39億円(16.9%)増の267億円、経常利益は同27億円(14.8%)増の207億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、アクリル繊維事業の事業用資産の減損損失や犬山工場の火災による損失を特別損失に計上したことなどから同96億円(69.5%)減の42億円となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
なお、当年度より、報告セグメントの区分を変更しています。以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(フィルム・機能マテリアル)
当セグメントは、フィルム事業が堅調に推移した結果、増収増益となりました。
フィルム事業では、包装用フィルムは、新型コロナ感染拡大の影響により業務用製品等が減少した一方、巣ごもり需要は高まりました。また、火災事故により一部の製品販売は減少しましたが、消費者の環境意識の高まりを背景に環境対応製品は販売を伸ばしました。工業用フィルムは、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”が堅調に販売を伸ばし、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は自動車生産の回復に伴い、当年度後半に復調しました。
機能マテリアル事業では、工業用接着剤“バイロン”、ポリオレフィン用接着性付与剤“ハードレン”は、当年度後半に販売は復調したものの、当年度前半までの新型コロナ感染拡大による販売減少を補えませんでした。一方、水現像型感光性印刷版を扱う光機能材料事業は、中国・欧米向けの販売が堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比257億円(20.2%)増の1,528億円、営業利益は同54億円(37.3%)増の200億円となりました。
(モビリティ)
当セグメントは、世界的な自動車生産の復調に伴い、当年度後半の販売は回復したものの、第2四半期までの新型コロナ感染拡大による自動車減産の影響を補えず、減収減益となりました。
エンジニアリングプラスチックは、当年度後半に国内外の需要は回復し、当第4四半期には前年同四半期以上に販売が伸びましたが、当年度前半の自動車減産による販売減少を補うには至りませんでした。エアバッグ用基布は、当年度後半に需要は回復してきたものの、原料逼迫により、苦戦が続きました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比73億円(16.7%)減の366億円、営業損失は16億円となりました(前年同期は営業損失7億円)。
(生活・環境)
当セグメントは、新型コロナ感染拡大により需要が減少し、スーパー繊維、衣料繊維が低調に推移し、減収減益となりました。
環境ソリューション事業では、溶剤を回収するVOC処理装置は、新型コロナ感染拡大により、新規案件の獲得に苦戦したものの、受注残の販売により通年では堅調でした。海水淡水化用逆浸透膜は、交換膜の受注時期が当年度後半にシフトし、通年では販売を伸ばしました。
不織布事業では、長繊維不織布スパンボンドは、建築・土木用途の販売が伸び悩みました。機能フィルターは、空気清浄機やマスク向けの販売は堅調でしたが、事務機器向けが苦戦しました。
繊維機能材事業では、ポリエステル短繊維は衛生材料用途、機能性クッション材“ブレスエアー”は寝装用途の販売が堅調に推移しました。一方、スーパー繊維は、“ツヌーガ”が、世界各地での工場稼働率低下により耐切創手袋の需要が縮小した影響を受け、“イザナス”は、国内のロープ用途の需要減退の影響を受けました。
衣料繊維事業では、スポーツ、インナー、スーツ用途の店頭販売などが不振で、受注が大幅に減少しました。中東向け特化生地は、中東各国での外出制限の影響で店頭販売が低調でした。
アクリル繊維は、中国市場の需要低下、アンチダンピング政策により厳しい事業運営を強いられていた中、新型コロナ感染拡大によりさらに市場環境が悪化し、苦戦しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比193億円(15.0%)減の1,091億円、営業利益は同16億円(26.3%)減の44億円となりました。
(ライフサイエンス)
当セグメントは、医薬品製造受託事業が苦戦したものの、PCR検査用試薬の需要が急拡大し、増収増益となりました。
バイオ事業では、生化学診断薬用原料の需要が減少しましたが、新型コロナ感染拡大に伴い、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などは需要が高まり、販売を大きく伸ばしました。
医薬品製造受託事業は、操業の一時停止、GMP対応に係る費用が増加し、苦戦しました。
メディカル事業では、医用膜において、人工腎臓用中空糸膜の販売が堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比15億円(6.1%)増の271億円となり、営業利益は同7億円(18.9%)増の45億円となりました。
(不動産、その他)
当セグメントは、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比29億円(19.6%)減の118億円、営業利益は同3億円(12.2%)減の23億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比92億円収入が減少し、350億円の収入となりました。主な内容は、減価償却費191億円及び減損損失89億円による資金の増加です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比75億円支出が減少し、317億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出275億円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、53億円の収入となりました(前年度は18億円の支出)。主な内容は、短期借入金の純増加85億円、長期借入れによる収入120億円、長期借入金の返済による支出95億円及び配当金の支払額36億円です。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比94億円増の345億円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.外注生産を含んでいます。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
4.不動産の生産実績はありません。
5.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更し、「前連結会計年度比(%)」については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(ロ)受注実績
当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。
(ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しています。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
4.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更し、「前連結会計年度比(%)」については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前年度末比23億円(0.5%)増の4,912億円となりました。これは主として新型コロナ感染拡大の影響を考慮して、手元流動性を高めるために金融機関からの借入による資金調達を行い、現金及び預金が増加した一方で、減損損失による影響で有形固定資産が減少したことによります。
当連結会計年度末の負債は、前年度末比37億円(1.2%)減の3,026億円となりました。これは主としてその他の流動負債や電子記録債務が減少したことによります。
当連結会計年度末の純資産は、主として退職給付に係る調整累計額などその他の包括利益累計額が増加したことから、前年度末比60億円(3.3%)増の1,886億円となりました。
また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。
自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産
自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末
平均
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払
額
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産
当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しており、目標を1.0倍未満としています。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う不測の事態に備えるため手元資金を厚めに保有し流動性を確保したため、D/Eレシオは当連結会計年度末で1.01倍となりました。
(ロ)経営成績の分析
当連結会計年度は、第1四半期連結会計期間において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、世界的な自動車の生産の減少、個人消費の縮小、サプライチェーンの混乱など、当社グループのさまざまな事業に影響を及ぼすことが懸念されたことから、前連結会計年度実績と比べ減収、減益の売上高3,300億円、営業利益200億円を計画しましたが、PCR検査用原料や試薬、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”などが販売を伸ばしました。この結果、当連結会計年度の売上高は3,374億円、営業利益は267億円となり、売上高、営業利益ともに計画を上回ることができました。当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症拡大による影響は、当社グループのそれぞれの事業で濃淡はあるものの、影響は限定的でした。
新型コロナウイルス感染症拡大による当社グループの事業への影響
また、当連結会計年度は、原燃料価格の低下による増益寄与に加え、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”やセラコン用離型フィルム“コスモピール”の販売拡大等が増益に寄与しました。“コスモシャインSRF”は新ラインの生産が開始し、液晶テレビ保護フィルム市場におけるシェアが約45%となり、前連結会計年度から約10ポイント増加したものと推定しています。“コスモピール”も同様に新加工設備が本格稼働し、下期からの車載用途の回復に伴って販売が拡大しました。以上により、営業利益は267億円となり、「総資本営業利益率(ROA)」は5.4%となりました。
当連結会計年度は、158億円の特別損失を計上しました。主な内容として、アクリル繊維事業において減損損失78億円を計上しました。当該事業は、主要輸出先の中国市場における需要の低下、同国アンチダンピング政策の影響を受け、厳しい経営状況が続いていましたが、2020年初からの新型コロナウイルス感染症拡大により中国をはじめ欧州市場環境のさらなる悪化が続き、継続的な赤字計上が避けられない状況となったため、第3四半期連結会計期間において減損損失を計上しました。今後、当該事業については、競争力の維持・向上のため、アクリル系機能資材等の競争力のある商品・分野に経営資源を重点的に投入し選択と集中を徹底します。また、2020年9月に発生した犬山工場の火災事故により火災による損失19億円を計上したことなどから当連結会計年度の特別損失は158億円となりました。
以上から当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は42億円となり、「自己資本当期純利益率(ROE)」は2.3%となりました。
(単位:億円)
(*) 第1四半期連結会計期間において計画した計画値
2019年3月期から2022年3月期までの2018年中期経営計画において、当社グループが重視する数値目標および経営指標は、「営業利益」、「総資本営業利益率(ROA)」および「自己資本当期純利益率(ROE)」です。営業利益は300億円以上、ROAは7%以上およびROEは8%以上を目標としてきました。しかしながら、2018年度、2020年度の火災事故、品質の不適切事案に加え、新型コロナウイルス感染症拡大など、中期経営計画策定時に比べ足元の事業環境は大きく変化しました。まずは、「安全・防災」「品質」に関して、最優先で改善に取り組み、信頼回復に努めます。事業面では、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などの提供に尽力していきます。また、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”の増産を計画し、電子機器の強い需要に対応していきます。
今後も、信頼回復を最優先課題とし、持続的な成長に向けて、全社一体となって改善に取り組んでまいります。
(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に、度重なる火災事故、品質の不適切事案により損なわれた信頼を回復すべく「安全・防災」「品質」を最重要課題として改善に取り組んでまいります。また、新型コロナウイルス感染症の収束時期等が不透明な状況であり、経済活動の正常化には時間がかかる恐れがあることから、人の動きの制約による個人消費の回復遅れに留意していくとともに、原燃料などの価格動向や為替変動についても引き続き注視していく必要があると考えています。
(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.契約債務
2021年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。
上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。
当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2021年3月31日現在の債務保証額は、4,049百万円です。
c.財務政策
当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしています。このうち、借入による資金調達に関しては、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金および社債は主に設備投資と投融資に係る資金調達です。
2021年3月31日現在、長期借入金の残高は87,153百万円です。また、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています(借入未実行残高17,500百万円)。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(以下、「当年度」といいます。)における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)の感染拡大により、世界経済が甚大な打撃を受けた中、中国は新型コロナ感染拡大をいち早く抑え込み、経済活動が復調しました。米国は、人の動きの制限、財政・金融政策により、徐々に経済活動が回復してきました。しかしながら、感染再拡大のうえ、当第4四半期には、半導体不足、原燃料価格高騰も加わり、今後、国内を含む世界経済の正常化には時間がかかることが予想されます。
こうした事業環境において、当社グループは、新型コロナ感染拡大により、当年度前半を中心に自動車関連製品、衣料繊維が影響を受けました。アクリル繊維事業では、事業用資産の減損損失78億円を計上しました。
一方、新型コロナ感染が拡大する中、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用原料や試薬の生産量を倍増する体制をとりました。また、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は、自動車生産の回復に伴い販売が復調し、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”は、新ライン(3号機)による量産を開始し、販売を伸ばしました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は前年度比22億円(0.6%)減の3,374億円となり、営業利益は39億円(16.9%)増の267億円、経常利益は同27億円(14.8%)増の207億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、アクリル繊維事業の事業用資産の減損損失や犬山工場の火災による損失を特別損失に計上したことなどから同96億円(69.5%)減の42億円となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
なお、当年度より、報告セグメントの区分を変更しています。以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(フィルム・機能マテリアル)
当セグメントは、フィルム事業が堅調に推移した結果、増収増益となりました。
フィルム事業では、包装用フィルムは、新型コロナ感染拡大の影響により業務用製品等が減少した一方、巣ごもり需要は高まりました。また、火災事故により一部の製品販売は減少しましたが、消費者の環境意識の高まりを背景に環境対応製品は販売を伸ばしました。工業用フィルムは、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”が堅調に販売を伸ばし、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は自動車生産の回復に伴い、当年度後半に復調しました。
機能マテリアル事業では、工業用接着剤“バイロン”、ポリオレフィン用接着性付与剤“ハードレン”は、当年度後半に販売は復調したものの、当年度前半までの新型コロナ感染拡大による販売減少を補えませんでした。一方、水現像型感光性印刷版を扱う光機能材料事業は、中国・欧米向けの販売が堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比257億円(20.2%)増の1,528億円、営業利益は同54億円(37.3%)増の200億円となりました。
(モビリティ)
当セグメントは、世界的な自動車生産の復調に伴い、当年度後半の販売は回復したものの、第2四半期までの新型コロナ感染拡大による自動車減産の影響を補えず、減収減益となりました。
エンジニアリングプラスチックは、当年度後半に国内外の需要は回復し、当第4四半期には前年同四半期以上に販売が伸びましたが、当年度前半の自動車減産による販売減少を補うには至りませんでした。エアバッグ用基布は、当年度後半に需要は回復してきたものの、原料逼迫により、苦戦が続きました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比73億円(16.7%)減の366億円、営業損失は16億円となりました(前年同期は営業損失7億円)。
(生活・環境)
当セグメントは、新型コロナ感染拡大により需要が減少し、スーパー繊維、衣料繊維が低調に推移し、減収減益となりました。
環境ソリューション事業では、溶剤を回収するVOC処理装置は、新型コロナ感染拡大により、新規案件の獲得に苦戦したものの、受注残の販売により通年では堅調でした。海水淡水化用逆浸透膜は、交換膜の受注時期が当年度後半にシフトし、通年では販売を伸ばしました。
不織布事業では、長繊維不織布スパンボンドは、建築・土木用途の販売が伸び悩みました。機能フィルターは、空気清浄機やマスク向けの販売は堅調でしたが、事務機器向けが苦戦しました。
繊維機能材事業では、ポリエステル短繊維は衛生材料用途、機能性クッション材“ブレスエアー”は寝装用途の販売が堅調に推移しました。一方、スーパー繊維は、“ツヌーガ”が、世界各地での工場稼働率低下により耐切創手袋の需要が縮小した影響を受け、“イザナス”は、国内のロープ用途の需要減退の影響を受けました。
衣料繊維事業では、スポーツ、インナー、スーツ用途の店頭販売などが不振で、受注が大幅に減少しました。中東向け特化生地は、中東各国での外出制限の影響で店頭販売が低調でした。
アクリル繊維は、中国市場の需要低下、アンチダンピング政策により厳しい事業運営を強いられていた中、新型コロナ感染拡大によりさらに市場環境が悪化し、苦戦しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比193億円(15.0%)減の1,091億円、営業利益は同16億円(26.3%)減の44億円となりました。
(ライフサイエンス)
当セグメントは、医薬品製造受託事業が苦戦したものの、PCR検査用試薬の需要が急拡大し、増収増益となりました。
バイオ事業では、生化学診断薬用原料の需要が減少しましたが、新型コロナ感染拡大に伴い、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などは需要が高まり、販売を大きく伸ばしました。
医薬品製造受託事業は、操業の一時停止、GMP対応に係る費用が増加し、苦戦しました。
メディカル事業では、医用膜において、人工腎臓用中空糸膜の販売が堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比15億円(6.1%)増の271億円となり、営業利益は同7億円(18.9%)増の45億円となりました。
(不動産、その他)
当セグメントは、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比29億円(19.6%)減の118億円、営業利益は同3億円(12.2%)減の23億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比92億円収入が減少し、350億円の収入となりました。主な内容は、減価償却費191億円及び減損損失89億円による資金の増加です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比75億円支出が減少し、317億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出275億円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、53億円の収入となりました(前年度は18億円の支出)。主な内容は、短期借入金の純増加85億円、長期借入れによる収入120億円、長期借入金の返済による支出95億円及び配当金の支払額36億円です。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比94億円増の345億円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
| フィルム・機能マテリアル | 153,963 | 19.6 |
| モビリティ | 37,947 | △16.1 |
| 生活・環境 | 109,107 | △12.8 |
| ライフサイエンス | 28,201 | 7.4 |
| 不動産 | - | - |
| その他(うち製造) | 19,770 | △17.3 |
| 合計 | 348,987 | △0.1 |
(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.外注生産を含んでいます。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
4.不動産の生産実績はありません。
5.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更し、「前連結会計年度比(%)」については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(ロ)受注実績
当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。
(ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
| フィルム・機能マテリアル | 152,842 | 20.2 |
| モビリティ | 36,573 | △16.7 |
| 生活・環境 | 109,148 | △15.0 |
| ライフサイエンス | 27,087 | 6.1 |
| 不動産 | 3,959 | △10.1 |
| その他 | 7,798 | △23.7 |
| 合計 | 337,406 | △0.6 |
(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しています。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
4.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更し、「前連結会計年度比(%)」については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前年度末比23億円(0.5%)増の4,912億円となりました。これは主として新型コロナ感染拡大の影響を考慮して、手元流動性を高めるために金融機関からの借入による資金調達を行い、現金及び預金が増加した一方で、減損損失による影響で有形固定資産が減少したことによります。
当連結会計年度末の負債は、前年度末比37億円(1.2%)減の3,026億円となりました。これは主としてその他の流動負債や電子記録債務が減少したことによります。
当連結会計年度末の純資産は、主として退職給付に係る調整累計額などその他の包括利益累計額が増加したことから、前年度末比60億円(3.3%)増の1,886億円となりました。
また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。
| 回次 | 第159期 | 第160期 | 第161期 | 第162期 | 第163期 | |
| 決算年月 | 2017年3月 | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | |
| 自己資本比率 | (%) | 37.2 | 40.5 | 38.3 | 36.4 | 37.8 |
| 時価ベースの自己資本比率 | (%) | 38.0 | 41.8 | 27.2 | 20.8 | 25.8 |
| 自己資本当期純利益率 | (%) | 5.8 | 7.5 | △0.3 | 7.8 | 2.3 |
| キャッシュ・フロー対 有利子負債比率 | (年) | 6.3 | 6.5 | 21.0 | 4.0 | 5.3 |
| インタレスト・カバレッジ・レシオ | (倍) | 19.3 | 16.9 | 6.0 | 32.2 | 28.0 |
| 有利子負債自己資本比率 (D/Eレシオ) | (倍) | 1.01 | 0.81 | 0.93 | 0.98 | 1.01 |
自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産
自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末
平均
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払
額
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産
当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しており、目標を1.0倍未満としています。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う不測の事態に備えるため手元資金を厚めに保有し流動性を確保したため、D/Eレシオは当連結会計年度末で1.01倍となりました。
(ロ)経営成績の分析
当連結会計年度は、第1四半期連結会計期間において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、世界的な自動車の生産の減少、個人消費の縮小、サプライチェーンの混乱など、当社グループのさまざまな事業に影響を及ぼすことが懸念されたことから、前連結会計年度実績と比べ減収、減益の売上高3,300億円、営業利益200億円を計画しましたが、PCR検査用原料や試薬、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”などが販売を伸ばしました。この結果、当連結会計年度の売上高は3,374億円、営業利益は267億円となり、売上高、営業利益ともに計画を上回ることができました。当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症拡大による影響は、当社グループのそれぞれの事業で濃淡はあるものの、影響は限定的でした。
新型コロナウイルス感染症拡大による当社グループの事業への影響
| セグメント | 主なプラス影響 | 主なマイナス影響 |
| フィルム・ 機能マテリアル | 外出自粛から、家庭内で使用される食品の包装用フィルムの増加 | 外出自粛に伴う500mlのPETボトルラベル、業務用包装フィルムの需要減少 |
| モビリティ | - | ・2020年度前半の自動車生産減少による影響 ・外出制限等により海外子会社で工場の一時休止 |
| 生活・環境 | マスク、除菌ウェットシート、防護服などのコロナ対策製品の受注増 | ・海外渡航困難によるVOC処理装置などの新規案件受注活動に制限 ・百貨店等の休業や世界的な個人の活動制限による衣料繊維の需要減少 ・外出制限等により国内外子会社で工場の一時休止や稼働率の低下 |
| ライフサイエンス | PCR検査用試薬の受注増 | 生化学診断薬用原料、一般検査の需要減少 |
| 共通 | 出張旅費等の経費削減 | 工事遅延による新設備の稼働遅れ |
また、当連結会計年度は、原燃料価格の低下による増益寄与に加え、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”やセラコン用離型フィルム“コスモピール”の販売拡大等が増益に寄与しました。“コスモシャインSRF”は新ラインの生産が開始し、液晶テレビ保護フィルム市場におけるシェアが約45%となり、前連結会計年度から約10ポイント増加したものと推定しています。“コスモピール”も同様に新加工設備が本格稼働し、下期からの車載用途の回復に伴って販売が拡大しました。以上により、営業利益は267億円となり、「総資本営業利益率(ROA)」は5.4%となりました。
当連結会計年度は、158億円の特別損失を計上しました。主な内容として、アクリル繊維事業において減損損失78億円を計上しました。当該事業は、主要輸出先の中国市場における需要の低下、同国アンチダンピング政策の影響を受け、厳しい経営状況が続いていましたが、2020年初からの新型コロナウイルス感染症拡大により中国をはじめ欧州市場環境のさらなる悪化が続き、継続的な赤字計上が避けられない状況となったため、第3四半期連結会計期間において減損損失を計上しました。今後、当該事業については、競争力の維持・向上のため、アクリル系機能資材等の競争力のある商品・分野に経営資源を重点的に投入し選択と集中を徹底します。また、2020年9月に発生した犬山工場の火災事故により火災による損失19億円を計上したことなどから当連結会計年度の特別損失は158億円となりました。
以上から当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は42億円となり、「自己資本当期純利益率(ROE)」は2.3%となりました。
(単位:億円)
| 2020年度 (計画(*)) | 2020年度 (実績) | 増 減 (実績-計画) | |
| 売上高 | 3,300 | 3,374 | 74 |
| 営業利益 | 200 | 267 | 67 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 70 | 42 | △28 |
(*) 第1四半期連結会計期間において計画した計画値
2019年3月期から2022年3月期までの2018年中期経営計画において、当社グループが重視する数値目標および経営指標は、「営業利益」、「総資本営業利益率(ROA)」および「自己資本当期純利益率(ROE)」です。営業利益は300億円以上、ROAは7%以上およびROEは8%以上を目標としてきました。しかしながら、2018年度、2020年度の火災事故、品質の不適切事案に加え、新型コロナウイルス感染症拡大など、中期経営計画策定時に比べ足元の事業環境は大きく変化しました。まずは、「安全・防災」「品質」に関して、最優先で改善に取り組み、信頼回復に努めます。事業面では、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などの提供に尽力していきます。また、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”の増産を計画し、電子機器の強い需要に対応していきます。
今後も、信頼回復を最優先課題とし、持続的な成長に向けて、全社一体となって改善に取り組んでまいります。
(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に、度重なる火災事故、品質の不適切事案により損なわれた信頼を回復すべく「安全・防災」「品質」を最重要課題として改善に取り組んでまいります。また、新型コロナウイルス感染症の収束時期等が不透明な状況であり、経済活動の正常化には時間がかかる恐れがあることから、人の動きの制約による個人消費の回復遅れに留意していくとともに、原燃料などの価格動向や為替変動についても引き続き注視していく必要があると考えています。
(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.契約債務
2021年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。
| 年度別要支払額(百万円) | |||||
| 契約債務 | 合計 | 1年以内 | 1年超3年以内 | 3年超5年以内 | 5年超 |
| 短期借入金 | 40,767 | 40,767 | - | - | - |
| 長期借入金 | 87,153 | 10,107 | 44,980 | 14,104 | 17,962 |
| リース債務 | 4,038 | 905 | 1,574 | 782 | 777 |
上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。
当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2021年3月31日現在の債務保証額は、4,049百万円です。
c.財務政策
当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしています。このうち、借入による資金調達に関しては、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金および社債は主に設備投資と投融資に係る資金調達です。
2021年3月31日現在、長期借入金の残高は87,153百万円です。また、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています(借入未実行残高17,500百万円)。