訂正有価証券報告書-第206期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/07/05 11:57
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123項目

研究開発活動

当社グループの研究開発活動は、長年にわたり蓄積してきた技術力を基盤とし、新技術の開発、応用を進めて、多様化する社会のニーズに応える商品開発を図り、もって事業基盤の強化と新規事業の拡大を行うことを目標としている。
当連結会計年度の研究開発費は、3,203百万円であり、この中には中央研究所で行っている全社共通テーマの各事業部門に配賦できない費用809百万円が含まれている。
(1)高分子事業
フィルム事業は、高付加価値品の展開および拡大を推進している。高耐熱性ポリアミドフィルムは、製品ブランドを「ユニアミド」(商標登録出願中)と決定し、平成28年1月に当社宇治事業所(京都府宇治市)の既存設備を改造し、量産体制を整えた。すでに、耐熱性と溶融加工性が評価されポリイミドフィルムの代替としてモバイル機器向けに採用されており、販売量は着実に増加している。今後はFPC(フレキシブルプリント基板)および関連基材や、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が使用されている振動板、耐熱性と無色透明性の特長を活かした各種工程フィルムなどへの展開を検討している。柔軟性のある有機系バリア層をナイロンフィルムに積層した新規バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」も平成27年10月に既存設備を改造し、量産化技術を確立した。ボイル・レトルト用途に対する高いガスバリア性能と食品の色目保持効果が格段に高いことから、漬物、惣菜、農産加工品を中心に採用が拡大している。シリコーンフリー離型PETフィルム「ユニピール」は、さらなる高品位用途へ対応できるように生産設備を改造し、量産化技術を確立した。これにより、表面の凹凸がほとんどない超平滑ユニピールを上市することができた。その他新規商品として、表面粗度がサンドマットと同等レベルで、フィルムを加熱してもオリゴマーによる汚染が極端に少ない高粗度PETフィルムを開発し、市場評価を進めている。
樹脂関連では、自動車などの軽量化に有効なナイロン系射出発泡用樹脂「フォーミロン」(商標登録出願中)を平成28年3月にプレスリリースし、商品展開に注力している。当社固有のエンジニアリングプラスチックであるポリアリレート樹脂「Uポリマー」については、その広い温度域における性能、寸法の安定性から、スマートフォン、タブレット用途で引き続き好調に販売を伸ばしているほか、新たに溶剤可溶タイプのポリアリレート樹脂「ユニファイナー」Vシリーズ、高耐熱成形用途Tシリーズについてもプレスリリースを平成28年3月に行った。優れた耐熱性と電気特性から、多用途で評価が進められており、早期実績化を目指している。高耐熱性ポリアミド樹脂である「ゼコット」は電気・電子用途で採用が進み、宇治事業所内の中量産プラントの稼働率が向上しつつある。オレフィン系エマルションである「アローベース」はエネルギー関連用途、食品用途などでの接着層、コーティング層として順調に拡大している。ポリエステル樹脂としては、ダイレクトブロー用に開発した共重合品のラインナップに耐衝撃グレードを加え、採用が拡大している。接着剤・コート剤用共重合ポリエステルである「エリーテル」は電気・電子用途の海外需用の増加に伴い、引き続き海外での用途展開が堅調である。また、ナノ多孔膜を形成することができるポリイミドワニスについて平成27年11月にプレスリリースを行い、リチウムイオン電池の熱暴走を防ぐ新たな技術として高い関心が寄せられている。メタリック着色、ピアノブラック着色等の高外観グレードは、家電関係、自動車関係で採用が増えており、特に欧州での自動車業界から注目を浴びている。中央研究所発の技術として「セルロースナノファイバー配合ナイロン6」をプレスリリースした。重合工程でセルロースナノファイバーを樹脂中に均一に分散させる独自の製造方法により得られるこの樹脂は、発泡成形すると気泡の大きさが均一になる特色があり、すでに複数のユーザーで評価が進んでいる。
不織布関連においてスパンボンドでは、極太の異形断面糸である「ディラ」は、類をみない繊維構造で硬さと高通気性からフィルター材、ワイパー材他、多様な用途への展開を計り、採用実績に繋がっている。また、「ディラ」の特長を活かして、他不織布、他素材との複合品の開発も行っており、更なる拡販を行う。農業分野へは多様なニーズに応えるべく開発を進めている。従来からのべたがけシートは透光・保温を兼ね備え、耐久性アップを目指した開発を進め、今年度中の本格販売を目指す。また、透明性を高めた高透光性シートや遮熱材と複合した遮熱性シートなど新たな用途への開発を進めている。土木分野では複合繊維エルベスを使用したガス透過性防水シートは、その性能の優位性から東北地方の除染廃棄物仮置き場に採用され、本年も引き続き順調に推移した。また、メガソーラー向けの雑草抑制の防草シートなどの開発を行い、販売を開始した。タイ国における新機台の増設により、今までと違った材料を提供することが可能となり、新規用途を含めた開発を進めている。スパンレースではコットンの素材の持つ優位性から国内外の衛材用途を中心に積極的な開発を推し進めている。撥水や抗菌等の機能性付与や他シートとの複合、柄付け等の意匠性等の開発により採用実績に繋がっている。今後ともお客様のご要望に応える製品をタイムリーに提供できるよう開発を進めていく。
バイオマスプラスチック関連では、バイオマスプラスチックの普及に向けた研究開発を引き続き進めている。前述した「ゼコット」は、スーパーエンジニアリングプラスチックでありながらバイオマスを原料とした樹脂であり、ポリ乳酸を用いた環境素材「テラマック」と共に、ユニチカの高い環境意識を象徴した製品としての役割も期待されている。用途開発においては、それぞれの特性をユーザーのニーズと一致させることに注力しており、「ゼコット」の電気、自動車用途への適用に加えて、「テラマック」の包装フィルム用マスターバッチや、後述の3Dプリンター用フィラメントなど、その成果を示す例が出てきている。このほかにも新規バイオマスプラスチックの開発に関して、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「木質バイオマスからの各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」プロジェクトに参加し、次世代のバイオマスプラスチックの開発を行っている。
当事業に係る研究開発費は1,793百万円である。
(2)機能材事業
ガラス繊維関連では、産業資材用途で顧客ニーズに応えたガラスクロス及びそれら処理加工品の製品開発を進め、ユーザーから好評価をいただいている。また、電子材料用途では、超薄クロスの生産技術革新に取り組むと共に、高性能な新規ICクロスも開発中である。
活性炭繊維関連では、液相分野においては、浄水器用及び工業フィルター用の高性能化とコストダウンにより国内外での競争力の強化を図っている。また、気相分野においては、自動車用に加え、空気清浄機やマスクなど、空気脱臭用の高性能化とコストダウンにより海外展開を進めていく。
業界で初めて製品化したナイロン6樹脂製の中空糸膜フィルターは、これまでの平膜タイプの同樹脂製フィルターに比べて高流量で長寿命であり、有機溶剤系での使用にも耐えられることから、半導体や化学分野で使用される薬物に含まれる不純物の除去などの用途で採用が続いている。
当事業に係る研究開発費は401百万円である。
(3)繊維事業
繊維事業においては、スポーツ用素材として当社独自の特殊加工技術により生地表面に凹凸構造を形成し、スポーツやアウトドアシーンなどでの長時間の降雨に優れた水滴転がり性を発揮する「タクティーム」を開発した。その撥水機能の持続性より、様々なスポーツ・アウトドアアパレルから好評価を得ている。
レディス用素材としては、ユニチカ独自の特殊紡糸、延伸技術により1本の糸に濃染部と淡染部を発生させたシルキー杢調素材の「ラインスターE」に特殊セラミックスを高濃度に付与した「ラインスターFE」を開発した。また、当社独自の特殊仮撚り技術と混繊技術を融合することにより、ポリエステル100%でありながらナチュラルなトップ杢調の外観と適度なストレッチ性、ふくらみと反撥感のある独特な風合いを実現した「ファンシーナ」を開発した。
ブラックフォーマル用素材として平成24年から販売開始した「ノイエ」に加え、新たなブランドとして高発色性ストレッチ素材「モニカ」を展開し、多くのファッションアパレルに採用された。この高い評価から、平成27年度の繊研合繊賞マーケティング部門を受賞、更なる拡販を目指している。
ユニフォーム素材としては、カレーやラー油といった家庭洗濯では落ちにくい汚れを落ちやすくした後加工素材「ホワイティング」を開発し、ユニフォームアパレルへの採用に向けて営業活動を開始した。また、ISO規格による高視認性基準をクリアした「プロテクサHV」は道路工事などの安全作業服として各ユニフォームアパレルからの引き合いも多く、平成27年10月にJIS規格にも制定されるなどその注目度から平成27年度の繊研合繊賞特別賞を受賞した。
生活資材用素材としては、株式会社サクラクレパスとの共同開発で、当社の付帯加工技術を応用した洗濯に強く、書いた文字が滲みにくい素材を開発した。平成27年12月10日から同社より「名前ラベル・マイネームツインセット」、「ゼッケン・マイネームツイン(太・細)セット」として販売が開始された。
産業繊維事業では、ポリ乳酸成形技術による光沢や透明性、そしてモノフィラメント製造技術による真円性、耐屈曲性や配向(結晶)性を有し、クリアで易取扱い性(耐折れ性)に優れた「Material Extrusion方式(熱で融解した造形材料を少しずつ積み重ねていく方式)」に使用される3Dプリンター用フィラメントは生産技術を確立した着色グレードも品揃えに加え、販路が拡大した。またこの製品は、繊維紡糸技術の応用としても高く評価され、平成27年度の繊研合繊賞エコロジー部門を受賞した。
当事業に係る研究開発費は194百万円である。