有価証券報告書-第177期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 13:17
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【項目】
138項目

対処すべき課題

(事業環境認識)
我が国経済は、昨年4月の消費増税に伴う駆け込み需要の反動減が一巡しつつあるほか、輸出の増加や企業の設備投資の増加などにより、景気は総じて持ち直しの方向で推移しております。
国内紙パルプ産業においては、印刷・情報用紙は電子媒体へのシフト等構造的な要因により長期的には漸減傾向にありますが、包装用紙・板紙等は比較的堅調に推移しており、全体としては持ち直しの様相を呈してまいりました。しかし、昨年秋からの急激な円安により原材料コストが高騰し、もはやコストダウン等の自助努力だけでは吸収することが困難になったため、当社グループは、洋紙・特殊紙・紙加工製品の価格修正を実現してまいりました。
このような事業環境のもと、当社グループは、中期経営計画「C-next」に基づき、川上・川下分野を含めた主要4事業(洋紙・白板紙・特殊紙・紙加工)を基軸とした高効率・高収益体質の構築に向けた様々な経営施策を実行してまいりました。
(重点経営施策)
(1)事業収益基盤の強化
洋紙事業については、新潟工場においてパルプ薬品回収工程の設備増強と天然ガス発電設備稼働によるエネルギーコストの一層の改善に努めるとともに、昨年秋からの急激な円安を背景に輸出を拡大することで、高効率生産体制を維持してまいりました。今後も国内市場の動向を見極めながら、アジア地域を中心にさらなる輸出拡大を進めてまいります。
白板紙事業については、昨年、当社連結子会社である中国の江門星輝造紙有限公司の白板紙工場が完工し、竣工式を行いました。本年1月、年間30万トン規模で営業生産を開始したことにより、当社グループは日本で最大の塗工白板紙メーカーとなり、中国市場における新たな収益基盤を確立いたしました。これからも、需要が旺盛な中国華南地区を中心に販売を展開してまいります。
特殊紙事業については、特にフランスのBernard Dumas S.A.S.で生産している車載用バッテリーセパレータの販売が好調であり、欧州市場に加え米国市場にも急速に広がりを見せているため、このたびアメリカの当社子会社を通じて販売を開始いたしました。なお、車載用バッテリーセパレータは、当社長岡工場においても生産を開始し、国内販売も順調に進んでおります。このように、新製品開発や新規市場への展開を加速させることで、世界市場を対象に規模拡大を目指してまいります。
紙加工事業については、本年4月に当社グループの北越パッケージ株式会社と株式会社ビーエフを合併し、新たにビーエフ&パッケージ株式会社が誕生しました。この合併により、両社の高い技術力を結集し、お客様のニーズに合致した新製品開発を迅速且つ強力に推進し、成長の見込まれる包装分野を軸に、紙加工分野における一層の競争力強化を図ってまいります。
加えて、当社はグローバル成長戦略の一環として、紙パルプ事業における川上(原料)分野の強化につなげるため、カナダのパルプ製造会社であるAlpac Forest Products Inc.及び販売会社であるAlpac Pulp Sales Inc.の全株式を取得し、完全子会社化することを決定しました。当社が両社を完全子会社化することは、世界的に需要拡大が続くパルプ事業に本格的に進出することであり、当社グループの国際競争力と収益基盤のさらなる強化につながります。これにより、当社グループは長期経営ビジョン「Vision 2020」で掲げた経営目標を数年前倒しで達成することが可能となりました。
(2)環境への取組みの深化
当社グループは、原料から製品に至るまで、環境へのあらゆる影響を最小限にする「ミニマム・インパクト」を基本方針とし、業界に先駆けた環境対策を積極的に進めてまいりました。
当社は国内大手紙パルプ産業の中でもCO2排出原単位の少なさでは国内トップを維持しており、平成25年度のCO2排出原単位は、平成2年度の紙1tあたり734kgから430kgへと大幅に削減し、業界平均の約半分となっております。今後もさらなるCO2排出量削減にむけた様々な施策を継続して推進してまいります。
また、当社関東工場(勝田)、連結子会社である株式会社北越フォレストに続き、本年5月より当社新潟工場において太陽光発電設備が稼働いたしました。今後も自然エネルギーの有効活用を進め、環境経営を積極的に推進してまいります。
(3)ガバナンスの強化
本年5月に判明した連結子会社元従業員による不正行為については、今後、このような事態が二度と起こることがないよう、調査委員会の提言を真摯に受け止め、当社グループにおいて確立されている内部統制システムを補完し、コンプライアンスを含むガバナンスを「草の根」から更に有効に運用するため、内部統制監査室を拡充した新組織「グループ統制管理室」を中心として、再発防止に向けた改善策を当社グループ全体に展開してまいります。
危機管理体制の強化については、一昨年に先行して策定した当社新潟工場及び紀州工場に続き、他の事業場並びに主要グループ会社において地震・津波に対するBCP(事業継続計画)を策定いたしました。今後は、各事業場内の周知をはじめ、定期的に訓練等を実施することを通じて事業継続の信頼性を高め、お客様への信用力のさらなる向上につなげてまいります。
また、本年6月から適用されたコーポレートガバナンス・コードを踏まえ、「北越紀州製紙企業理念」で掲げる「法を遵守し、透明性の高い企業活動により信頼される企業」として、すべてのステークホルダーの皆様からの信頼をもとに、持続的な成長を果たしてまいります。
(株式会社の支配に関する基本方針)
(1) 当社の基本方針の内容の概要
当社は、先進の技術と従業員の強固な信頼関係をベースとして、環境負荷を低減した紙素材の提供を通して、顧客・株主・取引先・地域社会等に貢献できる会社となり、同時に企業価値の長期安定的な向上を図ることを、経営の最重要課題と認識しております。従いまして、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる者でなければならないと考えております。
当社は、株式の大量買付であっても、当社自身の企業価値を増大させ、株主共同の利益を向上させるものであれば、これを一概に否定するものではありません。会社の支配権の移転については、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと認識しております。
しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て却って企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するもの、株主に株式売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための充分な時間や情報を提供しないもの等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なからず見受けられます。
当社の属する製紙産業は、設備の投資から回収まで長期間を要するものであり、中長期的視点での経営判断が必要とされます。当社は適宜・適切な設備投資を実施し、国際競争力を確保して参りましたが、こうした努力が当社の株式の大量買付を行う者により中長期的に確保され、向上させられなくてはなりません。また、当社の競争力の源泉は設備の比較優位性だけでなく、需要家の皆様から当社製品の品質と短期間での納品をはじめとしたお客様の要請に応えるきめ細かなサービスに対して、多くの御支持を頂いていることにあります。さらに、当社グループ従業員の一体感を持った、高いモチベーションや、当社とその事業がなされる地域社会との関係も重要と考えられます。これらが当社の企業価値、ひいては株主共同の利益の確保・向上にとって不可欠であると考えております。
当社としては、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、このような当社の企業価値の源泉を十分に理解したうえで、当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を中長期的に確保し、向上させる者でなければならないと考えております。従いまして、当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある株式の大量買付を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。
(2) 基本方針実現に資する特別な取組みの概要
当社グループは、明治40年の創業以来、一貫して紙素材を社会に提供することにより、社会経済の発展と生活文化の向上に努めております。また、国際的な競争力を有し、持続的な成長を可能とすることにより企業価値の長期安定的な向上を図ることを、経営の最重要課題と捉えております。そのため、いかなる事業環境下においても持続的な成長を目指し、さらに企業価値を向上させるため、2020年(平成32年)を目標とする長期経営ビジョン「Vision 2020」の第2ステップとして、平成26年4月より新中期経営計画「C-next」に取り組んでおります。ここで掲げた基本方針、経営目標を実現することにより、企業価値、ひいては株主共同の利益の向上に努めてまいります。
(3) 基本方針に照らして不適切な者によって当該株式会社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要
当社は、平成25年5月14日開催の取締役会において、「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」という。)の更新を決議し、同年6月25日開催の第175回定時株主総会において、本プランは株主の皆様のご承認をいただき、更新されました。
本プランは、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、当社株式の20%以上の買付等が行われる場合に、買付者等に対し、事前に当該買付等に関する情報の提供を求め、当社が、当該買付等についての情報収集・検討等を行う期間を確保した上で、株主に対して当社経営陣の計画や代替案等を提示したり、買付者等との交渉等を行っていくための手続を定めるものです。
買付者等が、本プランに定める手続に従うことなく買付等を行う場合や、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれのある買付等である場合など、買付等が本プランに定められた客観的な発動要件に該当し、対抗措置を発動することが相当であると認められる場合は、当社は、会社法その他の法律及び当社定款が当社取締役会の権限として認める措置(以下「対抗措置」という。)をとり、当該買付等に対抗することがあります。当社取締役会は、具体的にいかなる対抗措置を講じるかについては、その時点で最も適切と当社取締役会が判断したものを選択することとしますが、現時点における具体的な対抗措置としては、新株予約権の無償割当てを行うことを予定しており、その場合には、当該買付者等による権利行使は認められないなどの差別的行使条件及び当該買付者等以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得するなどの差別的取得条項が付された新株予約権を、その時点の全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法(会社法第277条以降に規定されます。)により割り当てます。
なお、対抗措置の発動、不発動または中止等の判断については、当社取締役会の恣意的判断を排するため、当社経営陣から独立した者のみから構成される独立委員会の判断を経るとともに、株主に対して適時に情報開示を行うことにより透明性を確保することとしています。
本プランの有効期間は、平成28年3月期に係る定時株主総会の終結時までとし、本プランの有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において本プランを変更または廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランは当該決議に従いその時点で変更または廃止されます。また、当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されます。
本プランの導入(更新)時点においては、本新株予約権の無償割当て自体は行われませんので、株主及び投資家の皆様の権利に直接具体的な影響が生じることはありません。他方、対抗措置が発動され、新株予約権無償割当てが実施された場合、株主の皆様が新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みを行わないと、他の株主の皆様による新株予約権の行使により、その保有する当社株式が希釈化することになります。ただし、当社は、買付者等以外の株主の皆様から本新株予約権を取得し、それと引換えに当社株式を交付することがあります。当社が係る取得の手続を取った場合、買付者等以外の株主の皆様は、新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みをせずに当社株式を受領することとなり、その保有する当社株式の希釈化は原則として生じません。
(4) 上記の取組みに対する取締役会の判断及びその理由
本プランは、当社株式に対する買付等が行われた場合に、当該買付等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させるという目的をもって導入されるものです。従いまして、本プランは、当社の基本方針に沿うものであって、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性確保の原則)も完全に充足しています。
また、本プランは、経済産業省に設置された企業価値研究会が平成20年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえた内容となっております。
当社は、本プランの導入にあたり、当社取締役会の恣意的判断を排除し、株主の皆様のために本プランの発動等の運用に際しての実質的な判断を客観的に行う機関として、独立委員会を設置しております。独立委員会は、当社の業務執行を行う経営陣から独立している当社の社外取締役もしくは社外監査役または社外の有識者のいずれかに該当する委員3名以上により構成されます。また、独立委員会の判断の概要については株主の皆様に情報開示をすることとされており、当社の企業価値・株主共同の利益に資する範囲で本プランの透明な運営が行われる仕組みが確保されています。本プランの発動については、予め定められた合理的な客観的発動要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しているものといえます。
このように、本プランは高度の合理性を有しており、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。