有価証券報告書-第184期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 16:38
【資料】
PDFをみる
【項目】
160項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
① 会社の経営の基本方針
当社グループは、「グループ企業理念」のもと、洋紙、白板紙、機能紙、パッケージング・紙加工及び投資事業を核として、魅力ある商品とサービスを広く社会に提供し、顧客、株主、取引先、地域社会をはじめとする総てのステークホルダーの支持と信頼に基づいた企業グループの安定的かつ持続的な成長と企業価値の向上を図ることを経営の基本方針としております。
また、「グループ企業理念」に掲げる「自然との共生」を達成するため、原料から製品に至るまでの環境へのあらゆる影響を最小限にとどめることにより、持続可能な社会の実現に貢献することを目的に「北越グループサステナビリティ基本方針」を制定しております。特に環境については、2050年までにCO2排出実質ゼロに挑戦するなど、気候変動問題に対する取り組みを積極的かつ能動的に推進してまいります。
② 目標とする経営指標
当社グループでは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益を重要な経営指標と位置付け、この向上を通じて、企業価値の拡大を図ってまいります。
③ 中長期的な会社の経営戦略
新型コロナウイルス感染症の影響は、国内外の紙・パルプ需要減退及び需要構造転換のスピードを加速させており、また足元では世界情勢の不安定化などによる原燃料価格の高騰などが続いておりますが、当社グループは長期経営ビジョン「Vision 2030」に基づき、さらなるグローバル企業としての持続的な成長を目指してまいります。その「Vision 2030」における企業グループイメージは、環境経営を基軸として、持続可能な社会の発展に貢献する企業グループ、多様な労働力と最新技術を活用し、時代に適応した新たな事業領域に挑戦する企業グループ、夢・希望・誇りが持てる働きがいのある企業グループであります。
また、長期経営ビジョン「Vision 2030」の企業グループイメージ実現に向けた第1ステップとして2020年4月より「中期経営計画 2023」をスタートさせました。「中期経営計画 2023」では、事業ポートフォリオシフト、海外事業拡充、国内事業強化、ガバナンス経営強化及びSDGs活動推進の5つの基本方針を柱とする経営施策を迅速かつ強力に推進することにより、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
① 経営環境認識
世界経済は、新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ情勢の影響等により、非常に不透明な状況となっております。国内紙パルプ産業については、これらの要因による世界的な経済活動の停滞及び緊張感の高まりに加え、原燃料価格の高騰及び国内需要動向の急激な変化等により、厳しい事業環境が継続しております。
② 対処すべき課題
イ 環境競争力強化
当社グループでは、従来から原材料の調達から紙製品の生産、使用・廃棄に至るまでライフサイクル全体でのCO2排出量の削減に取り組んでおり、業界に先駆けて、CO2の発生が少ないガスを使用した高効率タービンの導入や、バイオマス燃料への転換など、この25年間で約500億円のCO2削減投資を実施してまいりました。その結果、現在当社の紙製品は、70%のCO2ゼロ・エネルギーで生産されており、この環境優位性が当社グループの競争力の源泉となっております。
さらに当社グループは、将来目指すべき環境ビジョンを明確化するため、2050年までにCO2排出実質ゼロに挑戦する「北越グループ ゼロCO2 2050」を策定し、環境競争力の強化を推進しております。
具体的には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づくリスクや機会のシナリオ分析を行うことにより、当社グループの事業活動や収益等に与える影響を経営課題の一つとして認識した上で、気候変動対策を経営戦略に反映させております。
また、当社は国土交通省が制定し公益社団法人鉄道貨物協会が運用するエコレールマーク取組企業に、また当社商品の「洋紙」がエコレールマーク商品にそれぞれ認定されるなど、鉄道貨物輸送の活用によるCO2排出量の低減と生産物流の効率改善に取り組んでおります。当社グループはこれからも社会のカーボンニュートラルの実現と、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みに貢献してまいります。
ロ 事業ポートフォリオシフト
当社グループは、「中期経営計画 2023」において基本方針にかかげた事業ポートフォリオシフトを推進するため、2020年4月より新たに段ボール原紙事業を開始いたしました。新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、インターネットを利用した宅配需要の高まりに呼応し、通販向け段ボール需要が増加しており、段ボール原紙の生産量は順調に数量を拡大しております。今後は採算性の高い薄物原紙、電子部品や建材用など中芯以外の用途開発を進め、収益のさらなる改善を目指します。
また新潟工場における家庭紙事業につきましては、営業生産に向けて、当社が長年培ってきた高品質・低コスト・高効率操業の知見と技術を活かし、準備を進めているところであります。
当社グループは、段ボール原紙事業と家庭紙事業を新たな収益事業に育成することにより、事業ポートフォリオシフトをさらに推進してまいります。
ハ 海外事業拡充
当社グループは、グローバルな経済環境の中で、積極的に海外事業を推進し、カナダのパルプ事業、中国の白板紙事業及び中国とフランスの機能材事業を軌道に乗せることにより、当社グループの業績拡大を図ってまいりました。
カナダのAlberta-Pacific Forest Industries Inc.におけるパルプ事業は、国際的なパルプ価格の回復による北米向けのパルプ販売が堅調に推移したこと、回収ボイラー熱回収設備導入工事等による売電事業や物流体制の強化などにより、当社グループの連結売上高及び収益を大きく下支えをしております。
中国の江門星輝造紙有限公司における白板紙事業は、生産効率を高めるとともにコータードライヤーのノズル改造工事を実施し、品質・コスト改善に注力しております。
フランスのBernard Dumas S.A.S.におけるバッテリーセパレータ、中国の東拓(上海)電材有限公司におけるチップキャリアテープ等の機能材事業は、前年を上回る販売を達成しており、Bernard Dumas S.A.S.においては、ロシア・ウクライナ情勢による原材料価格の高騰、東拓(上海)電材有限公司においては、新型コロナウイルス感染症の影響を見極めつつ海外事業を推進してまいります。
ニ 国内事業強化
当社グループの国内事業は、従来からの構造的な印刷・情報用紙の需要減少や新型コロナウイルス感染症による国内経済停滞の影響に加え、2021年秋頃からの原燃料価格の急騰や物流費の高騰などにより、非常に厳しい事業環境を迎えております。そのため、印刷・情報用紙をはじめとする全品種について、2022年1月以降、価格改定を実施いたしました。
さらに当社は国内需給バランスの適正化と、新潟、紀州両工場の高効率操業及びコストダウンを進めて競争力強化を図るため、2022年6月に新潟工場2号抄紙機を停機いたしました。
ホ コーポレートガバナンス及びサステナビリティの取り組みについて
当社グループは「グループ企業理念」及び「グループ行動規範」を実現することにより、全てのステークホルダーの皆様に信頼される企業グループとなることを目指し、コーポレートガバナンス及びサステナビリティの取り組みを強化してまいりました。
当社は、2022年4月より東京証券取引所の新市場区分「プライム市場」に移行・上場いたしました。プライム市場上場会社には独立社外取締役を3分の1以上選任することなど、より高いガバナンス水準が要求されており、プライム市場にふさわしいコーポレートガバナンス体制の構築に取り組んでおります。
また、グループリスクマネジメント活動においては、リスク対象範囲の拡大、リスクマップの見直し、「グループリスクマネジメント基本規程」の改定等さらなるリスク低減、回避に向けた取り組みを推進しました。コンプライアンス活動においては労働基準法や競争法(独占禁止法)に関する研修を開催し、グループ全体のコンプライアンス体制の強化を図りました。
サステナビリティの推進につきましては、2021年12月に、「グループサステナビリティ基本方針」を制定するとともに、「グループサステナビリティ基本規程」を改定し、従来のCSR活動を財務と非財務の両面から推進するサステナビリティ活動へ進化させる体制へ移行いたしました。特に、ダイバーシティについては、「グループダイバーシティ基本方針」を策定し、ダイバーシティ委員会で明確化した中核人材における多様性の確保などの重要課題の解決に向けた取り組みを進めております。また、労働安全衛生に関する国際規格である「ISO 45001」の認証取得や健康経営優良法人の認定など第三者認証についても積極的に取得しております。引き続き、当社グループの事業における重要度及び社会からの要請・期待を踏まえ、マテリアリティ(重要課題)の特定を行い、サステナビリティ推進目標に反映させた取り組みを進めてまいります。
当社グループは、コーポレートガバナンスの強化とサステナビリティの推進により、「グループ行動規範」を遵守し、企業理念に掲げる世界の人々の豊かな暮らしへの貢献を目指してまいります。