訂正有価証券報告書-第176期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2015/06/12 11:50
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対処すべき課題

(事業環境認識)
我が国経済は、金融緩和や財政出動等の経済対策による株価上昇、円高の是正等が進展したことを受け、消費マインドの改善が進み、一部輸出産業等を中心に企業収益の改善もみられ、緩やかな景気回復基調で推移しております。紙パルプ産業につきましては、円安による輸入紙の減少もあり、昨年4月以降は内需の回復がみられるようになってきました。しかし、急激な円安による原燃料コストの高騰などにより、厳しい収益状況が続いております。
このような事業環境認識のもと、当社は国内基盤のさらなる強化と国際競争力を高めるためのグローバル戦略を着実に実行し、高効率・高収益体制の構築に向けた様々な経営諸施策を実行してまいります。
(中期経営計画の推進)
当社グループでは、平成23年4月に、2020年(平成32年)を目標とする長期経営ビジョン「Vision 2020」を策定し、第1ステップとして平成26年3月まで、中期経営計画「G-1st」を実行し、グループ全体で生き生きとした企業風土を醸成し、環境経営のさらなる推進を図るとともに、優れた品質とコスト競争力を有するグローバル企業に向けて、成長戦略を推進してまいりました。そして、激変する事業環境の中で、「G-1st」に続く「Vision 2020」へ向けた第2ステップとして、平成26年4月から平成29年3月までの新中期経営計画「C-next」をスタートさせました。その基本方針は、収益基盤の強化と環境への取り組みの深化を基本に、変化に対応した新規分野の創造及び事業構成の変革を進め、製紙企業としてさらなる成長に挑戦することであります。
「C-next」における重点経営施策は以下のとおりであります。
重点経営施策
(1)事業構造の変革による収益基盤の強化
当社グループは主要4事業による収益基盤の強化を推進し、いかなる事業環境下においても、安定した収益を実現できる体質への変革を目指してまいります。
洋紙事業については、昨年は、印刷・情報用紙の販売価格の下落や急速な円安による原燃料価格の高騰を受けて、2度にわたる価格修正を行い、再生産可能な価格への復元に努めてまいりました。今後はサプライチェーン全体の徹底的な効率化及び積極的輸出戦略の継続による生産効率のさらなる改善を図るとともに、子会社である北越紀州販売株式会社をはじめとした主力代理店との取り組みを強化し、当社製品の環境優位性を積極的にアピールするなど、さらなる販売力の強化を進めてまいります。
白板紙事業については、中期経営計画「C-next」において、中国・白板紙事業を成長戦略の要と位置づけ、即戦力化を実現し、本格的な海外進出に向けての布石といたします。中国白板紙工場は、本年3月から現地駐在員を増員し、営業運転に向けた最終段階に入っております。年間30万トンの白板紙工場が稼働することで、当社は日本で最大の塗工白板紙メーカーとなり、さらに同市場における新たな収益基盤を確立いたします。また、国内においては、紙加工事業との連携強化、都市立地を活かした「古紙再生クリーン工場」への取り組み及びエネルギー事業等の基盤強化を推進してまいります。
特殊紙事業については、新製品開発や新規事業・新規市場への展開を加速させることで、より世界市場を対象に規模拡大を目指してまいります。当社は、平成24年9月にフランスのBernard Dumas S.A.S.(デュマ社)を子会社化いたしました。当社にとっては新たな製品分野の獲得であると同時にガラス繊維事業の強化につながるものであり、欧州における初の生産拠点として、さらなる海外展開につなげてまいります。
また当社グループは、本年4月より、子会社の北越東洋ファイバー株式会社へヴァルカナイズドファイバー事業を集約いたしました。これにより、グローバル市場における競争力をさらに強化させてまいります。そして、特殊紙事業全般におきまして、国内外顧客に向けた技術志向マーケティングの強化による新製品の開発や新規分野の展開を推進してまいります。
紙加工事業については、成長の見込まれる包装分野を軸に、規模拡大の実現を目指してまいります。具体的には、他の主要3事業部門との連携による生産・営業体制の強化及び新規用途・新製品開発の強化を行うとともに、国内・アジア市場での、当社グループの特色を活かした新規事業を展開いたします。
当社グループは、これらの主要4事業における国内外の成長市場と新規分野へ積極的な戦略投資を展開することにより、アジア市場における拡大均衡策を経営の基盤とし、主要4事業の「製品ポートフォリオの転換」及び日本市場のみならず、成長する海外市場を取り込んだ、グローバルな「地域ポートフォリオの転換」をすすめ、今後の成長につなげてまいります。
また、当社グループは、三菱商事株式会社との業務提携契約を締結しており、同社の国際的な信用力と取引基盤を活用した原材料の調達や、特に中国をはじめとするアジア市場における製品販売に関する協業をこれからも強化してまいります。
(2)環境への取り組みの深化
当社は、従来から環境経営を積極的に推進し、製品トンあたりCO2排出量の業界トップクラスの低負荷の維持とさらなる環境負荷の低減に取り組んでまいりました。この取り組みが評価され、昨年12月には、日本製紙連合会温暖化対策表彰において「特別賞」を受賞いたしました。さらに本年2月には新潟工場構内において、当社と三菱商事株式会社の合弁会社であるMC北越エネルギーサービス株式会社を通じ、ガスタービン発電設備と排熱ボイラーの建設工事を完工し営業運転を開始したことにより、さらなる重油使用量及びCO2排出量の削減につなげました。
また、関東工場(勝田)や子会社である株式会社北越フォレストにおける太陽光発電による売電事業等、自然エネルギーの有効活用を積極的に推進しております。今後も、環境負荷低減につながる設備投資等を積極的に実施し、より環境に優しい製品をお客様にご提供することで、地球環境の保全に努めてまいります。
(3)ガバナンスの強化
当社グループは、企業価値の長期安定的な向上を図るために、公正な企業活動と透明性のある意思決定を通じたグループガバナンス体制の強化に努めております。特に、コンプライアンスをガバナンスの柱に据え、定期的に開催するコンプライアンス・オフィサー会議では、各種法改正の要点解説やコンプライアンス自己点検等を行っております。
また、関係会社数の増加に応じた教育や規程類の見直しを継続的に行うなど、様々な諸施策を実行しております。平成25年度においては、グループ全体で、暴力団排除条例に対する対応の定期点検等を実施し、グループガバナンス強化に向け取り組みを継続してまいりました。
また、危機管理体制の強化を図るため、当社の主力工場である新潟工場及び紀州工場において、BCP(事業継続計画)を策定いたしました。今後も、定期的な訓練等を通じて迅速な対応と製品供給責任を果たし、信用力の向上につなげてまいります。
また、当社は平成24年8月に大王製紙株式会社及び同社関連会社の株式の取得及び譲渡により大王製紙株式会社を持分法適用関連会社といたしました。平成25年6月には当社より同社へ役員を派遣し、同社のガバナンスの強化につなげるとともに、両社の提携関係をさらに強固なものとすることによって、その効果の最大化に向けて今後も取り組んでまいります。
今後も、「北越紀州製紙企業理念」で掲げる「法を遵守し、透明性の高い企業活動により信頼される企業」として、すべてのステークホルダーの皆様からの信頼をもとに、持続的な成長を果たしてまいります。

(株式会社の支配に関する基本方針)
(1) 当社の基本方針の内容の概要
当社は、先進の技術と従業員の強固な信頼関係をベースとして、環境負荷を低減した紙素材の提供を通して、顧客・株主・取引先・地域社会等に貢献できる会社となり、同時に企業価値の長期安定的な向上を図ることを、経営の最重要課題と認識しております。従いまして、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる者でなければならないと考えております。
当社は、株式の大量買付であっても、当社自身の企業価値を増大させ、株主共同の利益を向上させるものであれば、これを一概に否定するものではありません。会社の支配権の移転については、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと認識しております。
しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て却って企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するもの、株主に株式売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための充分な時間や情報を提供しないもの等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なからず見受けられます。
当社の属する製紙産業は、設備の投資から回収まで長期間を要するものであり、中長期的視点での経営判断が必要とされます。当社は適宜・適切な設備投資を実施し、国際競争力を確保して参りましたが、こうした努力が当社の株式の大量買付を行う者により中長期的に確保され、向上させられなくてはなりません。また、当社の競争力の源泉は設備の比較優位性だけでなく、需要家の皆様から当社製品の品質と短期間での納品をはじめとしたお客様の要請に応えるきめ細かなサービスに対して、多くの御支持を頂いていることにあります。さらに、当社グループ従業員の一体感を持った、高いモチベーションや、当社とその事業がなされる地域社会との関係も重要と考えられます。これらが当社の企業価値、ひいては株主共同の利益の確保・向上にとって不可欠であると考えております。
当社としては、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、このような当社の企業価値の源泉を十分に理解したうえで、当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を中長期的に確保し、向上させる者でなければならないと考えております。従いまして、当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある株式の大量買付を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。
(2) 基本方針実現に資する特別な取組みの概要
当社グループは、明治40年の創業以来、一貫して紙素材を社会に提供することにより、社会経済の発展と生活文化の向上に努めております。また、国際的な競争力を有し、持続的な成長を可能とすることにより企業価値の長期安定的な向上を図ることを、経営の最重要課題と捉えております。そのため、いかなる事業環境下においても持続的な成長を目指し、さらに企業価値を向上させるため、2020年(平成32年)を目標とする長期経営ビジョン「Vision 2020」の第2ステップとして、前述のとおり、平成26年4月より新中期経営計画「C-next」に取り組んでおります。ここで掲げた基本方針、経営目標を実現することにより、企業価値、ひいては株主共同の利益の向上に努めてまいります。
(3) 基本方針に照らして不適切な者によって当該株式会社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要
当社は、平成25年5月14日開催の取締役会において、「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」という。)の更新を決議し、同年6月25日開催の第175回定時株主総会において、本プランは株主の皆様のご承認をいただき、更新されました。
本プランは、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、当社株式の20%以上の買付等が行われる場合に、買付者等に対し、事前に当該買付等に関する情報の提供を求め、当社が、当該買付等についての情報収集・検討等を行う期間を確保した上で、株主に対して当社経営陣の計画や代替案等を提示したり、買付者等との交渉等を行っていくための手続を定めるものです。
買付者等が、本プランに定める手続に従うことなく買付等を行う場合や、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれのある買付等である場合など、買付等が本プランに定められた客観的な発動要件に該当し、対抗措置を発動することが相当であると認められる場合は、当社は、会社法その他の法律及び当社定款が当社取締役会の権限として認める措置(以下「対抗措置」という。)をとり、当該買付等に対抗することがあります。当社取締役会は、具体的にいかなる対抗措置を講じるかについては、その時点で最も適切と当社取締役会が判断したものを選択することとしますが、現時点における具体的な対抗措置としては、新株予約権の無償割当てを行うことを予定しており、その場合には、当該買付者等による権利行使は認められないなどの差別的行使条件及び当該買付者等以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得するなどの差別的取得条項が付された新株予約権を、その時点の全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法(会社法第277条以降に規定されます。)により割り当てます。
なお、対抗措置の発動、不発動または中止等の判断については、当社取締役会の恣意的判断を排するため、当社経営陣から独立した者のみから構成される独立委員会の判断を経るとともに、株主に対して適時に情報開示を行うことにより透明性を確保することとしています。
本プランの有効期間は、平成28年3月期に係る定時株主総会の終結時までとし、本プランの有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において本プランを変更または廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランは当該決議に従いその時点で変更または廃止されます。また、当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されます。
本プランの導入(更新)時点においては、本新株予約権の無償割当て自体は行われませんので、株主及び投資家の皆様の権利に直接具体的な影響が生じることはありません。他方、対抗措置が発動され、新株予約権無償割当てが実施された場合、株主の皆様が新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みを行わないと、他の株主の皆様による新株予約権の行使により、その保有する当社株式が希釈化することになります。ただし、当社は、買付者等以外の株主の皆様から本新株予約権を取得し、それと引換えに当社株式を交付することがあります。当社が係る取得の手続を取った場合、買付者等以外の株主の皆様は、新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みをせずに当社株式を受領することとなり、その保有する当社株式の希釈化は原則として生じません。
(4) 上記の取組みに対する取締役会の判断及びその理由
本プランは、当社株式に対する買付等が行われた場合に、当該買付等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させるという目的をもって導入されるものです。従いまして、本プランは、当社の基本方針に沿うものであって、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性確保の原則)も完全に充足しています。
また、本プランは、経済産業省に設置された企業価値研究会が平成20年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえた内容となっております。
当社は、本プランの導入にあたり、当社取締役会の恣意的判断を排除し、株主の皆様のために本プランの発動等の運用に際しての実質的な判断を客観的に行う機関として、独立委員会を設置しております。独立委員会は、当社の業務執行を行う経営陣から独立している当社の社外取締役もしくは社外監査役または社外の有識者のいずれかに該当する委員3名以上により構成されます。また、独立委員会の判断の概要については株主の皆様に情報開示をすることとされており、当社の企業価値・株主共同の利益に資する範囲で本プランの透明な運営が行われる仕組みが確保されています。本プランの発動については、予め定められた合理的な客観的発動要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しているものといえます。
このように、本プランは高度の合理性を有しており、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。