有価証券報告書-第162期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 13:12
【資料】
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【項目】
147項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、1914年の創業以来、「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」からなる「創業精神」を経営理念に掲げ、事業に挺身してまいりました。当社グループは、この「創業精神」に基づき、時代が求める様々なニーズに応え新しい価値を提供し続ける開拓者として、誠実な企業活動を通じ持続的に成長を続け、社会に貢献することを経営の基本方針としております。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、新製品創出加速や洋紙事業改革に代表される21項目の重点課題を設定し、それら課題解決策のPDCAを強力に進め、「成長軌道への回帰を盤石化」を主題とした2022年3月期を最終年度とする3ヶ年の第7次中期経営計画を推進してまいりました。これまでの取り組みとしては、生産・営業拠点の集約、設備休止といった構造改革を鋭意進めてきており、また、電子部品や半導体製造装置関連で高まっている「熱・電気・電磁波コントロール」等のニーズに応えるべく、抄紙及び塗工技術を活用した様々なシート製品の開発を推進してきた結果、この度、いくつかの新製品の量産化が視野に入ってまいりました。このような状況変化を踏まえ、改めて当社グループの立ち位置を明確にし、更に発展することを企図し、この度、2026年3月期を最終年度とした第8次中期経営計画を策定し、その取り組みを開始いたしました。
この計画を着実に実行していくことで、最終年度には連結売上高360億円以上、営業利益20億円以上、ROAも3%以上に回復させるなど、さらなる企業体質の強化につなげていく所存であります。
(3)経営環境
世界経済は、昨年初めからの新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響により大きく停滞し、この結果、年度前半は需要が大幅に低迷する厳しい状況となりました。年度後半にかけては、中国経済の回復や欧米のロックダウン解除などにより回復傾向が見られたものの、前半の需要低迷が大きく影響する結果となりました。
主要セグメントにおける経営環境等は以下の通りです。
①トナー事業
モノクロトナー事業は、世界市場では数量が減少に転じ、2011年頃をピークに年率約3%で減少していることに加え、中国メーカーの市場参入もあり業界全体での需給バランスが崩れ、価格競争が激化しています。当社は、独立系トナーメーカーとして売上、開発力、品質、原材料購買力、供給安定性などNo.1のポジションを活かし、縮小する市場の中で価格競争に打ち勝ってシェアを伸ばすことを目指しております。このような視点に立ち、2020年9月末をもって北米におけるトナー生産を終了し、グループ全体で保有設備の集約を図りました。
一方、カラートナー事業は、マシンメーカーの純正トナー値下げ影響による価格低下が一部で見られるものの、モノクロトナーとは異なり全体として年率約4%成長してきております。今後伸び率は下がるものの成熟市場化するまでには数年かかるものと見込まれ、積極的に新製品開発などを進め、売上、数量、シェアの伸長を目指しております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大により、特に年度の前半においてロックダウン等によるオフィス・学校での需要の減少など、事業活動は大きな影響を受けました。年度後半には一部の市場において需要回復があったものの、今後の当事業を取り巻く環境変化への対応も対処すべき課題として認識しております。
②電子材料事業
半導体実装用テープ事業は、主力のリードフレーム固定テープが高い信頼性と採用実績から車載用途を中心に使用されており、家電、自動車のエレクトロニクス化の流れにおいて半導体産業が成長している状況で、中期的な成長が見込まれます。また、半導体製造に使われるQFN用接着テープについても、市場の成長に加え、当社シェアを伸ばすことでリードフレーム固定テープに次ぐ主力製品に育成していくことを目指しております。
ディスプレイ用光学フィルム事業は、スマートフォン、タブレットパソコン、ウェアラブル、車載用途を中心とした中小型パネル市場で展開しております。
特に、高い信頼性を必要とする車載においては、ディスプレイ用飛散防止フィルムの粘着として高いシェアを得ており更なるシェア拡大を進めます。高付加価値を必要とするハイエンドLCD・OLED向けにおいては継続した拡販活動、並びに新製品開発・新規受託の両面からビジネス拡大に取り組んでおります。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、当事業の製品が使用される業界でも影響が見られたことで、当事業を取り巻く環境変化への対応も対処すべき課題として認識しております。
③機能紙事業
構造改革を進めている洋紙関連事業は、連結売上高に占める割合は10%以下まで減少しています。このような中、設備の老朽化が進んでいることから、継続的な価値最大化を狙い、マシン統合などの稼働設備の効率化や業務改善を積極的に進めており、2019年末には7号抄紙機の停機を行った他、2022年3月末までに9号抄紙機の停機も行い、固定費の大幅な削減を進めてまいる予定です。
成熟事業である塗工紙関連事業は、磁気乗車券等の製品群を取り扱っており、市場では非接触方式に変わる等、システム変更による別素材・方式での代替が進んできたところへ、新型コロナウィルス感染症拡大の影響に伴い市場縮小がさらに進みました。今後は、連結子会社である日本理化製紙㈱を含めビジネス全体としての構造改革を進めるとともにキャッシュ・フロー改善に取り組んでまいります。
一方、成長事業として位置付けている機能紙関連事業は、当社の強みである抄紙技術を活かし、パルプ以外の繊維を用いて製品化を進めてまいりました。少量多品種生産への対応が必要とされる為、大手製紙会社の参入がなく、競争環境に恵まれた事業であり、今後様々なビジネスチャンスが期待できます。
④セキュリティメディア事業
前連結会計年度末より報告セグメントに追加したセキュリティメディア事業は、有価証券印刷やICカード、ポイントカード、プリペイドカード等の製造、加工及び情報処理関連事業を行っております。近年は、デジタル社会におけるセキュリティを追求し、キャッシュレスに代表される決済手段の多様化といったニーズにも対応し、指紋認証カードをはじめとした様々な機能を有する電子回路基板内蔵カードやアミューズメントカード等、当社グループの要素技術を組み入れた最終製品を市場に送り出しています。同社も一般カードを中心に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、今後は、これまで以上に事業シナジーの創出に努め、高度な特殊印刷技術と情報加工技術を活用して新製品開発の機能拡充を目指しております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
経済の先行きには常に不透明感がある中、当社グループは対処すべき主要課題を次のように捉え、重点的に取り組んでまいります。
①中期経営計画の遂行
当社グループは、新製品創出加速や洋紙事業改革に代表される21項目の重点課題を設定し、それら課題解決策のPDCAを強力に進め、「成長軌道への回帰を盤石化」を主題とした2019年度から3ヶ年の第7次中期経営計画を推進してまいりました。
そして、生産・営業拠点の集約、設備休止といった構造改革を鋭意進めてきております。また電子部品や半導体製造装置関連で高まっている「熱・電気・電磁波コントロール」等のニーズに応えるべく、抄紙及び塗工技術を活用した様々なシート製品の開発を推進してきた結果、いくつかの新製品の量産化が視野に入って来ました。
このような状況変化を踏まえ、改めて当社の立ち位置を明確にし、更に発展することを企図し、この度2022年3月期から5ヶ年の第8次中期経営計画を策定し、取り組みを開始しました。
②ガバナンス体制の強化
当社グループは、創業精神に「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」を掲げ、高い企業倫理のもとにグローバルな企業活動を行っております。引き続き内部統制システムの更なる洗練化に努めるとともに、経営の効率性、透明性及び公正性の確保と更なる充実を図り、もって企業活動を支えている全てのステークホルダーの利益を尊重し、持続的な成長を通じて企業価値を高め社会に貢献する会社を目指してまいります。
③安全な職場環境の整備
当社グループは、従業員により働きやすい職場を提供するため、「安全は利益に優先する」をスローガンに、5Sの徹底、安全対策工事、災害情報共有、危険予知トレーニング、声かけ運動等の安全活動を推進しております。また、新型コロナウイルス感染症対策としては、新型コロナウイルス対策委員会を発足し、当社グループのウイルス対策の指揮を執り、社内感染の防止対策の実施を進めております。引き続き、状況に応じた感染症対策を継続実施し、労働災害の撲滅、安全な職場環境の整備に取り組んでまいります。