有価証券報告書-第113期(2023/04/01-2024/03/31)
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、次期の見通しについては、不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と乖離する可能性があります。
(1)経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進み緩やかな回復基調をたどりました。一方で、国際情勢の不安定化や円安に伴う原材料・エネルギー価格等をはじめとする物価動向の不確実性、及び世界的な金融引き締めの長期化懸念等、依然として景気の先行は不透明な状況です。
当社グループは、2021年度から2023年度を対象期間とする第4次中期事業計画において、「強靭な事業ポートフォリオの確立」「財務体質強化」「気候変動問題への対応」を基本方針に掲げて事業運営を行ってきました。
初年度に当たる2021年度は、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益で過去最高益を更新するとともに、財務体質の改善が進み信用格付でA格を取得する幸先の良いスタートを切ることが出来ましたが、2022年度には、原燃料の調達価格をはじめとするあらゆる製造コストが急速かつ大幅に悪化したことで、上場以来初の営業赤字となりました。これに対し、営業面では、各製品で複数回にわたる販売価格改定の実施及び改定後の販売価格の維持に取り組み、生産面では、エネルギー構成や生産体制の最適化によるコストアップの軽減、及び省力化を含む聖域なきコストダウンを推進しました。
この結果、最終年度である2023年度は、国内のメディア用途の紙の一層の市場縮小やホーム&パーソナルケア事業における中国での苦戦はありましたが、収益力の復元が一定程度進んだことに加え、ブラジル子会社の収益貢献等の事業ポートフォリオの充実化が進み、1年間で全ての段階利益が黒字に転換しました。
一方で、第4次中期事業計画の数値計画に対しては、原燃料価格をはじめとする製造コストの悪化を全て吸収するには至っていないことに加え、想定為替レート等の前提が乖離した影響もあり、未達となりました。第4次中期事業計画の数値目標及び当連結会計年度の連結業績は以下のとおりです。
当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりです。
① 売上高
売上高は、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業において、国内需要減等の影響により一部で販売数量が減少したアイテムがありましたが、前連結会計年度から取り組んでいる価格改定の浸透等により、前連結会計年度に比べ25,475百万円増加(前年同期比 3.9%増)し、671,688百万円となりました。
② 営業利益
営業利益は、原燃料の調達価格の高騰や海外事業の業績悪化等のマイナス要因を価格改定効果で吸収したこと等により、前連結会計年度に比べ35,808百万円増加(前年同期は営業損失△21,441百万円)し、14,367百万円となりました。
③ 経常利益
経常利益は、支払利息やデリバティブ評価損が増加しましたが営業利益の増加の影響が大きく、前連結会計年度に比べ33,673百万円増加(前年同期は経常損失△24,050百万円)し、9,622百万円となりました。
④ 特別損益
特別利益は、主に国庫補助金の減少により、前連結会計年度に比べ3,135百万円減少し、5,276百万円となりました。特別損失は、主に減損損失の減少により、前連結会計年度に比べ19,682百万円減少し、3,880百万円となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ39,213百万円増加(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失△34,705百万円)し、4,507百万円となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は前連結会計年度に比べ236円11銭増加し、27円10銭となりました。
当連結会計年度のセグメントの状況は、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後の報告セグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。
① 紙・板紙
紙・板紙事業においては、新聞用紙は、発行部数及び頁数の減少により販売数量は前年同期から減少しましたが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
洋紙(新聞用紙を除く)は、デジタル化の加速に伴う需要減少によってチラシやパンフレット用途の紙を中心に販売数量は前年同期から減少しましたが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
包装用紙は、物価高騰による消費者の買い控えや省包装化の進行等に伴う需要の減少によって販売数量は前年同期から減少しましたが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
板紙・段ボールは、主要用途である食料品や日用品の値上げによって国内需要が低迷し、輸出についても中国をはじめとする国際市場の停滞の影響を受けたことで販売数量は前年同期から減少しましたが、国内での価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
これらの結果、紙・板紙事業では、売上高及びセグメント利益は前年同期を上回りました。
② ホーム&パーソナルケア
ホーム&パーソナルケア事業において国内事業では、衛生用紙は、汎用品から付加価値品への販売シフトに取り組むとともに、トップメーカーとして生活者に支持される価値の提供と価格改定の浸透の両立を推進しました。紙加工品は、生活者の要望を反映した新商品やリニューアル商品、著名人やアウトドアブランドとのコラボレーション商品、及びデザイン企画品を連続して市場に投入し好評を得ました。また、2023年9月に立ち上げた新ブランド「エリエール Pet キミおもい」によって、ペットケア事業に本格参入しました。この結果、国内事業全体としては、新型コロナウイルスの5類感染症移行に伴う需要の減少により除菌関連商品やマスク等で前年同期から販売数量は減少しましたが、価格改定の浸透により販売金額は前年同期を上回りました。
海外事業では、中国は、フェミニンケアの販売拡大が進んだ一方で、主力のベビーケアで景況感の悪化、出生人口の減少、及びALPS処理水の影響を受けて減速したことに加え、生活者の購買動向や市場変化への対応が遅れたことで販売金額は前年同期を下回りました。ブラジルは、各商品の価格改定の浸透に加え、衛生用紙、ベビーケア、フェミニンケアにおける付加価値品の販売が伸長したことで販売金額は前年同期を上回りました。
これらの結果、ホーム&パーソナルケア事業では、売上高は前年同期を上回りましたが、セグメント利益は、中国での収益悪化の影響が大きく、セグメント損失となりました。
③ その他
主に売電事業、機械事業、木材事業及び物流事業であり、売電事業の外部向けの販売減少等により、売上高は前年同期を下回りました。
<主要品種別販売数量・金額増減要因>紙・板紙セグメント
ホーム&パーソナルケアセグメント(国内)
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べ15,958百万円増加し、939,490百万円となりました。
負債はコマーシャル・ペーパーや支払手形及び買掛金の減少があるものの、その他流動負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ798百万円増加し、679,659百万円となりました。
純資産は為替換算調整勘定やその他有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末に比べ15,160百万円増加し、259,831百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.8ポイント上昇し、26.3%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して21,345百万円増加し、123,750百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、59,297百万円(前連結会計年度は26,233百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益11,018百万円、減価償却費45,124百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は、26,543百万円(前連結会計年度比31,406百万円の支出の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出30,101百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、13,612百万円(前連結会計年度は96,437百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入75,031百万円、コマーシャル・ペーパーの純減額(支出)5,000百万円、長期借入金の返済による支出80,465百万円によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と投資資金需要です。運転資金需要のうち主なものは、生産・販売活動における原材料及び商品仕入、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、事業戦略の遂行に必要な投資や品質改善・安全・環境のために必要な設備投資等です。
運転資金につきましては主に金融機関からの短期借入金で調達し、投資資金につきましては主に長期社債及び金融機関からの長期借入金により調達しています。また、今後の資金需要や金利動向等の調達環境、既存借入金や長期社債の償還時期等を総合的に考慮し、調達額及び調達手段等を適宜判断して実施することとしています。
なお、当社は国内子会社との間で導入しているキャッシュマネジメント・システムの一層の機能充実による資金効率化により、成長投資を進めながらも財務規律の維持に努めています。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(6)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(注)1.金額は製造原価によっています。
2.当連結会計年度より、従来「紙・板紙」セグメントに含めていた事業の一部を「ホーム&パーソナルケア」セグメントに移管しており、前年同期比は、変更後のセグメントの区分に組み替えた数値によって算出しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)セグメント情報 1.報告セグメントの概要」に記載のとおりです。
(7)受注実績
紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業の製品については、需要を予測して見込生産を行っており、特に受注生産は行っていません。
(8)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しています。
なお、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、「相手先別の販売実績」は記載していません。
2 当連結会計年度より、従来「紙・板紙」セグメントに含めていた事業の一部を「ホーム&パーソナルケア」セグメントに移管しており、前年同期比は、変更後のセグメントの区分に組み替えた数値によって算出しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)セグメント情報 1.報告セグメントの概要」に記載のとおりです。
(9)次期の見通し
国内においては、人口の減少や長期化する物価高、物流2024年問題による物流費の高騰が見込まれ、海外においても地政学リスクが高まるなど、当社をとりまく事業環境は不透明な状況が続くことが予想されます。
紙・パルプ業界においては、原燃料価格の高止まりや急激な円安といったコストの面における不安定要素に加えて、新聞用紙、印刷用紙等のグラフィック用紙の市場縮小の傾向が顕著となっています。
このような状況の中、当社グループは、紙・板紙事業を安定基盤としながらも、今後の成長を担うホーム&パーソナルケア事業へのウエイトシフトを積極的に進めています。国内では、2023年に本格参入したペットケア事業の規模拡大や衛生用紙の価格改定等による収益の最大化に取り組み、ブラジル、中国等の海外では、市場ニーズに沿った商品の展開及び複合事業化を進め、持続的な成長に向けた経営基盤の強化を図ってまいります。
これらの取り組みにより、2025年3月期の連結業績については、売上高700,000百万円、営業利益15,000百万円、経常利益7,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を予想しています。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、次期の見通しについては、不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と乖離する可能性があります。
(1)経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進み緩やかな回復基調をたどりました。一方で、国際情勢の不安定化や円安に伴う原材料・エネルギー価格等をはじめとする物価動向の不確実性、及び世界的な金融引き締めの長期化懸念等、依然として景気の先行は不透明な状況です。
当社グループは、2021年度から2023年度を対象期間とする第4次中期事業計画において、「強靭な事業ポートフォリオの確立」「財務体質強化」「気候変動問題への対応」を基本方針に掲げて事業運営を行ってきました。
初年度に当たる2021年度は、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益で過去最高益を更新するとともに、財務体質の改善が進み信用格付でA格を取得する幸先の良いスタートを切ることが出来ましたが、2022年度には、原燃料の調達価格をはじめとするあらゆる製造コストが急速かつ大幅に悪化したことで、上場以来初の営業赤字となりました。これに対し、営業面では、各製品で複数回にわたる販売価格改定の実施及び改定後の販売価格の維持に取り組み、生産面では、エネルギー構成や生産体制の最適化によるコストアップの軽減、及び省力化を含む聖域なきコストダウンを推進しました。
この結果、最終年度である2023年度は、国内のメディア用途の紙の一層の市場縮小やホーム&パーソナルケア事業における中国での苦戦はありましたが、収益力の復元が一定程度進んだことに加え、ブラジル子会社の収益貢献等の事業ポートフォリオの充実化が進み、1年間で全ての段階利益が黒字に転換しました。
一方で、第4次中期事業計画の数値計画に対しては、原燃料価格をはじめとする製造コストの悪化を全て吸収するには至っていないことに加え、想定為替レート等の前提が乖離した影響もあり、未達となりました。第4次中期事業計画の数値目標及び当連結会計年度の連結業績は以下のとおりです。
第4次 中期事業計画 数値計画 | 2023年度 (2024年3月期) 連結業績 | |
売上高 | 7,200億円 | 6,717億円 |
営業利益 | 510億円 | 144億円 |
営業利益率 | 7.1% | 2.1% |
ホーム&パーソナルケア 海外売上比率 | 18.8% | 14.3% |
ROE | 10%以上 | 1.9% |
ネットD/Eレシオ | 1.0倍 | 1.5倍 |
(前提)為替 | 110.0円/ドル | 144.6円/ドル |
ドバイ原油 | 63.0ドル/bbl | 82.3ドル/bbl |
当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりです。
① 売上高
売上高は、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業において、国内需要減等の影響により一部で販売数量が減少したアイテムがありましたが、前連結会計年度から取り組んでいる価格改定の浸透等により、前連結会計年度に比べ25,475百万円増加(前年同期比 3.9%増)し、671,688百万円となりました。
② 営業利益
営業利益は、原燃料の調達価格の高騰や海外事業の業績悪化等のマイナス要因を価格改定効果で吸収したこと等により、前連結会計年度に比べ35,808百万円増加(前年同期は営業損失△21,441百万円)し、14,367百万円となりました。
③ 経常利益
経常利益は、支払利息やデリバティブ評価損が増加しましたが営業利益の増加の影響が大きく、前連結会計年度に比べ33,673百万円増加(前年同期は経常損失△24,050百万円)し、9,622百万円となりました。
④ 特別損益
特別利益は、主に国庫補助金の減少により、前連結会計年度に比べ3,135百万円減少し、5,276百万円となりました。特別損失は、主に減損損失の減少により、前連結会計年度に比べ19,682百万円減少し、3,880百万円となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ39,213百万円増加(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失△34,705百万円)し、4,507百万円となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は前連結会計年度に比べ236円11銭増加し、27円10銭となりました。
当連結会計年度のセグメントの状況は、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後の報告セグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。
① 紙・板紙
売上高 | 355,307百万円 | (前年同期比 5.0%増) |
セグメント利益 | 15,974百万円 | (前年同期はセグメント損失△12,369百万円) |
紙・板紙事業においては、新聞用紙は、発行部数及び頁数の減少により販売数量は前年同期から減少しましたが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
洋紙(新聞用紙を除く)は、デジタル化の加速に伴う需要減少によってチラシやパンフレット用途の紙を中心に販売数量は前年同期から減少しましたが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
包装用紙は、物価高騰による消費者の買い控えや省包装化の進行等に伴う需要の減少によって販売数量は前年同期から減少しましたが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
板紙・段ボールは、主要用途である食料品や日用品の値上げによって国内需要が低迷し、輸出についても中国をはじめとする国際市場の停滞の影響を受けたことで販売数量は前年同期から減少しましたが、国内での価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回りました。
これらの結果、紙・板紙事業では、売上高及びセグメント利益は前年同期を上回りました。
② ホーム&パーソナルケア
売上高 | 293,064百万円 | (前年同期比 5.1%増) |
セグメント損失(△) | △4,087百万円 | (前年同期はセグメント損失△12,608百万円) |
ホーム&パーソナルケア事業において国内事業では、衛生用紙は、汎用品から付加価値品への販売シフトに取り組むとともに、トップメーカーとして生活者に支持される価値の提供と価格改定の浸透の両立を推進しました。紙加工品は、生活者の要望を反映した新商品やリニューアル商品、著名人やアウトドアブランドとのコラボレーション商品、及びデザイン企画品を連続して市場に投入し好評を得ました。また、2023年9月に立ち上げた新ブランド「エリエール Pet キミおもい」によって、ペットケア事業に本格参入しました。この結果、国内事業全体としては、新型コロナウイルスの5類感染症移行に伴う需要の減少により除菌関連商品やマスク等で前年同期から販売数量は減少しましたが、価格改定の浸透により販売金額は前年同期を上回りました。
海外事業では、中国は、フェミニンケアの販売拡大が進んだ一方で、主力のベビーケアで景況感の悪化、出生人口の減少、及びALPS処理水の影響を受けて減速したことに加え、生活者の購買動向や市場変化への対応が遅れたことで販売金額は前年同期を下回りました。ブラジルは、各商品の価格改定の浸透に加え、衛生用紙、ベビーケア、フェミニンケアにおける付加価値品の販売が伸長したことで販売金額は前年同期を上回りました。
これらの結果、ホーム&パーソナルケア事業では、売上高は前年同期を上回りましたが、セグメント利益は、中国での収益悪化の影響が大きく、セグメント損失となりました。
③ その他
売上高 | 23,316百万円 | (前年同期比 19.2%減) |
セグメント利益 | 2,420百万円 | (前年同期比 30.8%減) |
主に売電事業、機械事業、木材事業及び物流事業であり、売電事業の外部向けの販売減少等により、売上高は前年同期を下回りました。
<主要品種別販売数量・金額増減要因>紙・板紙セグメント
品種 | 数量 | 金額 | 動向 |
新聞用紙 | - | + | 新聞発行部数及び頁数の減少、価格改定の浸透 |
洋紙 | - | + | 印刷・情報用紙の需要減少、価格改定の浸透 |
包装用紙 | - | + | 包装用紙の需要減少、価格改定の浸透 |
板紙・段ボール | - | + | 段ボール等の需要減少、価格改定の浸透 |
ホーム&パーソナルケアセグメント(国内)
品種 | 数量 | 金額 | 動向 |
衛生用紙 | - | + | ソフトパックティシュー、長尺トイレット等の付加価値品の 販売伸長、ペーパータオルの需要減、価格改定の浸透 |
ベビーケア | - | → | 少子化に伴う需要減少、価格改定の浸透 |
大人用ケア | + | + | 高付加価値パッドの販売伸長、価格改定の浸透 |
フェミニンケア | - | + | 価格改定に伴う汎用品の販売減少、価格改定の浸透 |
ウエットティシュー | - | - | 新型コロナウイルスの5類感染症移行に伴う需要減少、 トイレクリーナーの販売伸長 |
ペットケア | + | + | ペット市場に本格参入 |
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べ15,958百万円増加し、939,490百万円となりました。
負債はコマーシャル・ペーパーや支払手形及び買掛金の減少があるものの、その他流動負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ798百万円増加し、679,659百万円となりました。
純資産は為替換算調整勘定やその他有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末に比べ15,160百万円増加し、259,831百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.8ポイント上昇し、26.3%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して21,345百万円増加し、123,750百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、59,297百万円(前連結会計年度は26,233百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益11,018百万円、減価償却費45,124百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は、26,543百万円(前連結会計年度比31,406百万円の支出の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出30,101百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、13,612百万円(前連結会計年度は96,437百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入75,031百万円、コマーシャル・ペーパーの純減額(支出)5,000百万円、長期借入金の返済による支出80,465百万円によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と投資資金需要です。運転資金需要のうち主なものは、生産・販売活動における原材料及び商品仕入、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、事業戦略の遂行に必要な投資や品質改善・安全・環境のために必要な設備投資等です。
運転資金につきましては主に金融機関からの短期借入金で調達し、投資資金につきましては主に長期社債及び金融機関からの長期借入金により調達しています。また、今後の資金需要や金利動向等の調達環境、既存借入金や長期社債の償還時期等を総合的に考慮し、調達額及び調達手段等を適宜判断して実施することとしています。
なお、当社は国内子会社との間で導入しているキャッシュマネジメント・システムの一層の機能充実による資金効率化により、成長投資を進めながらも財務規律の維持に努めています。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(6)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
紙・板紙 | 321,076 | 98.3 |
ホーム&パーソナルケア | 221,856 | 101.3 |
報告セグメント計 | 542,932 | 99.5 |
その他 | 30,492 | 117.8 |
合計 | 573,425 | 100.4 |
(注)1.金額は製造原価によっています。
2.当連結会計年度より、従来「紙・板紙」セグメントに含めていた事業の一部を「ホーム&パーソナルケア」セグメントに移管しており、前年同期比は、変更後のセグメントの区分に組み替えた数値によって算出しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)セグメント情報 1.報告セグメントの概要」に記載のとおりです。
(7)受注実績
紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業の製品については、需要を予測して見込生産を行っており、特に受注生産は行っていません。
(8)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
紙・板紙 | 355,307 | 105.0 |
ホーム&パーソナルケア | 293,064 | 105.1 |
報告セグメント計 | 648,372 | 105.0 |
その他 | 23,316 | 80.8 |
合計 | 671,688 | 103.9 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しています。
なお、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、「相手先別の販売実績」は記載していません。
2 当連結会計年度より、従来「紙・板紙」セグメントに含めていた事業の一部を「ホーム&パーソナルケア」セグメントに移管しており、前年同期比は、変更後のセグメントの区分に組み替えた数値によって算出しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)セグメント情報 1.報告セグメントの概要」に記載のとおりです。
(9)次期の見通し
国内においては、人口の減少や長期化する物価高、物流2024年問題による物流費の高騰が見込まれ、海外においても地政学リスクが高まるなど、当社をとりまく事業環境は不透明な状況が続くことが予想されます。
紙・パルプ業界においては、原燃料価格の高止まりや急激な円安といったコストの面における不安定要素に加えて、新聞用紙、印刷用紙等のグラフィック用紙の市場縮小の傾向が顕著となっています。
このような状況の中、当社グループは、紙・板紙事業を安定基盤としながらも、今後の成長を担うホーム&パーソナルケア事業へのウエイトシフトを積極的に進めています。国内では、2023年に本格参入したペットケア事業の規模拡大や衛生用紙の価格改定等による収益の最大化に取り組み、ブラジル、中国等の海外では、市場ニーズに沿った商品の展開及び複合事業化を進め、持続的な成長に向けた経営基盤の強化を図ってまいります。
これらの取り組みにより、2025年3月期の連結業績については、売上高700,000百万円、営業利益15,000百万円、経常利益7,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を予想しています。