有価証券報告書-第137期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/21 15:32
【資料】
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【項目】
57項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 住友化学の目指す姿
幅広い技術基盤を活かして革新的なソリューションを創りだす力、グローバル市場へのアクセス、そしてロイヤリティの高い従業員は、一世紀にわたる事業活動を通じて築き上げてきた、当社のコア・コンピタンスであります。
今後も、これらの強みを最大限に発揮し、社会が直面している環境、食糧、資源・エネルギーに係る課題の解決に挑戦していくと共に、健康増進、心地良い暮らしの実現、人々のQuality of Lifeの向上に貢献してまいります。
当社は、革新的な技術による価値創造を通じ、持続的な成長を実現し、中長期的にROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)10%以上、配当性向30%程度などを安定して達成することを目指しております。

(2) 世界経済の動向
今後の世界経済の動向につきましては、好調な米国経済に支えられ、回復傾向が持続することと思われますが、米国の保護主義的な通商政策にともなうグローバル経済への影響、中国での構造改革による経済減速の懸念や欧州政治の混乱のリスクなど、不確実性も存在し、楽観はできないものと思われます。一方、国内経済は、堅調な雇用・所得情勢を背景に個人消費に改善の兆しがみられるなど、底堅く推移していくことと思われますが、上述の海外経済の影響を受ける可能性がございます。
(3) 当社を取り巻く環境
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、為替レートの動向、米中貿易摩擦や米国の対イラン経済制裁等による原材料価格の変動や製品市況の動向など、先行き不透明な要因があり、引き続き、市場環境を注視するとともに、環境変化に前広に対応していくことが重要であると考えております。
(4) 2016年度~2018年度中期経営計画
このような状況の下で、当社グループは、2016年度を初年度とする「中期経営計画」に取り組んでおります。本計画では、「Change and Innovation~Create New Value~」をスローガンに掲げ、前中期経営計画で実現した強固な財務基盤をベースに、攻めの経営に取り組むことによって、持続的な成長を続けるレジリエント(回復力に富む)な住友化学グループへの変革をより一層加速してまいります。この中期経営計画は、以下を基本方針としております。
① 事業ポートフォリオの高度化
「環境・エネルギー」「ICT」「ライフサイエンス」を中心とした、「技術」で勝負できる事業分野に経営資源を投入し、社会が抱える諸課題に対し、「技術」を基盤とした新しい価値を提供いたします。
② キャッシュフロー創出力の強化
筋肉質な財務基盤の維持、キャッシュフローを安定して生み続ける体質を定着させ、大型投資を機動的に実施できる体制を構築いたします。
③ 次世代事業の早期戦列化
重点3分野である「環境・エネルギー」「ICT」「ライフサイエンス」への投資を継続し、研究テーマの着実な事業化を図るほか、重点3分野の「境界領域」でのソリューション提供に取り組みます。
上記3点とともに、④グローバル経営の深化 ⑤コンプライアンスの徹底、安全・安定操業の確立と継続に取り組んでまいります。

2018年度経営目標
中期経営計画では、最終年度である2018年度には、為替レート120円/ドル、ナフサ価格45,000円/klを前提に、売上収益2兆5,400億円、コア営業利益2,400億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,100億円を達成し、同年度のROEは12%、ROIは7%、D/Eレシオは0.7倍程度となる計画でありました。中期経営計画の2年目となる2017年度は、医薬品や石油化学製品の販売好調により、過去最高益を記録することができました。2018年度は、石油化学製品の需給悪化を見込んでいますが、中期経営計画で目標とした業績を概ね達成できる予想であります。

新たな価値創造に向けて
当社は、「環境・エネルギー」「ICT」「ライフサイエンス」を中心に、技術で勝負できる分野を見極め、積極的かつ集中的に投資を行うことで、新たな価値を創造し、事業ポートフォリオを高度化することを目指しております。
このため、中期経営計画の3年間で4,000億円の設備投資・投融資を決定することに加え、スペシャリティケミカル分野の早期拡充に向け、最大3,000億円の戦略的M&Aも実施したいと考えております。最大7,000億円の設備投資・投融資のうち約7~8割はライフサイエンスを中心としたスペシャリティケミカル分野に投資する計画であります。
当連結会計年度の進捗実績
中期経営計画の2年目となる当連結会計年度は、事業ポートフォリオの高度化に向けた施策を着実に実施いたしました。
各部門の主な取り組み実績は以下の通りであります。
(石油化学部門)
ラービグ第二期計画の建設を完了し、製品の生産を開始したほか、シンガポールなどで製品の高付加価値化に向けた取り組みが進展いたしました。
(エネルギー・機能材料部門)
電気自動車用途で需要拡大が続くリチウムイオン二次電池用セパレータ等の生産能力を拡大した一方、ディーゼルエンジン用すす除去フィルター(DPF)事業から撤退するなど事業の再構築を進めました。
(情報電子化学部門)
半導体の生産に使用される各種材料の生産能力増強に着手したほか、LED用サファイア基板事業から撤退をいたしました。
(健康・農業関連事業部門)
次世代大型農薬の開発が進展し登録申請を開始したほか、除虫菊由来殺虫成分の大手サプライヤーを買収いたしました。
(医薬品部門)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬ロンハラ マグネアの米国での承認を取得(本年4月上市)したほか、米国で開発中のパーキンソン病治療薬の第三相臨床試験でも良好な結果を得ること(本年4月承認申請)ができました。

新たな価値創造に向けた取り組みを加速
現在、当社では、中期経営計画の3年間で約6,900億円の設備投資・投融資を決定する予定にしており、2016年度~2017年度に3/4の約5,300億円の設備投資・投融資を決定いたしました。決定した投資プロジェクトを迅速かつ着実に実施し、早期に当社の収益に貢献する事業に育てることで新たな価値創造を加速してまいります。