有価証券報告書-第138期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 15:35
【資料】
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【項目】
95項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1) 住友化学の目指す姿
当社は、別子銅山の煙害という環境問題の克服と、農産物の増産をともに図ることから誕生した起源を持ち、創業以来一世紀以上にわたり、絶えざる技術革新と事業の変革を遂げながら、事業を通じて人々の豊かな生活を支えてまいりました。またその中で、幅広い技術基盤を活かして革新的なソリューションを創りだす力、グローバル市場へのアクセス、ロイヤリティの高い従業員という当社のコア・コンピタンスを築き上げてまいりました。
今後も、これらの強みを最大限に発揮して事業を行うことで、環境、食糧、資源・エネルギー問題などの社会が直面している課題の解決に挑戦するとともに、健康増進、心地良い暮らしの実現などの人々のQuality of Lifeの向上に貢献してまいります。
そして、ROE10%以上、配当性向30%程度などの経営目標を安定して達成し、当社の持続的な成長とサステナブルな社会を実現することを目指します。

(2) 2016年度~2018年度中期経営計画 総括
2018年度を最終年度とする中期経営計画では、持続的な成長を続けるレジリエント(回復力に富む)な住友化学グループへの変革に向けて、事業ポートフォリオの高度化をはじめとする5つの基本方針に沿って取り組みました。
中期経営計画での3年間で累計6,500億円の設備投資・投融資を決定しましたが、そのうち3/4を、ライフサイエンスを中心とするスペシャリティケミカル分野へ振り向けることで、事業ポートフォリオの高度化を図りました。
最終年度である2018年度の業績は、為替レート110.92円/ドル、ナフサ価格49,500円/klなどの事業環境のなか、売上収益2兆3,186億円、コア営業利益2,043億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,180億円となりました。

(3) 2019年度~2021年度中期経営計画
今後の世界経済は、年率3%程度の成長を継続すると思われますが、一方で米中貿易摩擦などさまざまなリスク要因があり、ボラティリティと不確実性が増大していくことが懸念されます。
このような状況の下で、当社グループは、先般、2019年度を初年度とする新しい「中期経営計画」を策定いたしました。本計画では、「Change & Innovation 3.0 ~For a Sustainable Future~」をスローガンに掲げ、デジタル革新により生産性を飛躍的に向上させるとともに、イノベーションを加速させ、当社グループの持続的な成長とサステナブルな社会を実現してまいります。
この中期経営計画は、以下を基本方針としております。
① 次世代事業の創出加速
「ヘルスケア」「環境負荷低減」「食糧」「ICT」の4つを重点分野とし、アカデミアやスタートアップ企業とも連携しながら、サステナブルな社会の実現に向けた次世代技術の開発、新規事業の創出に取り組みます。
② デジタル革新による生産性の向上
デジタル技術(AI・IoT)の活用により、研究開発・製造・サプライチェーン・営業・間接部門における飛躍的な生産性の向上に取り組みます。
③ 事業ポートフォリオの高度化
持続的な市場の成長が予想され、かつ技術を競争力の源泉として展開可能な事業に対し、集中的に経営資源を投入することで、事業ポートフォリオのさらなる高度化を進めます。
④ 強靭な財務体質の実現
規律ある運営によるコストと資産の統制により、強靭な財務体質を実現いたします。
これら4点とともに、 ⑤持続的成長を支える人材の確保と育成・活用 ⑥コンプライアンスの徹底と安全・安定操業の継続に取り組みます。

各事業部門の戦略と取り組み
各事業部門における、前中期経営計画と本中期経営計画での主な取り組みは、以下のとおりであります。
(石油化学部門)
前中期経営計画では、ラービグ第2期計画の建設を完了し出荷を開始したほか、シンガポールなどで製品の高付加価値化が進展いたしました。
本中期経営計画においては、国内事業はグローバル展開の基盤として強化に取り組むほか、シンガポール事業はさらなる収益力強化を行います。また、ラービグ第1期計画の安定稼働の継続と、第2期計画の早期の収益貢献を図ります。
(エネルギー・機能材料部門)
前中期経営計画では、電気自動車用途で需要拡大が続くリチウムイオン二次電池用セパレータなどの生産能力を増強した一方、ディーゼルエンジン用すす除去フィルター(DPF)事業から撤退するなど、メリハリのある事業運営を行いました。
本中期経営計画においても、セパレータなどの電池部材やスーパーエンジニアリングプラスチックスなどの販売拡大、その他製品についても高付加価値製品へのシフトによる収益力強化に取り組みます。
(情報電子化学部門)
前中期経営計画では、自製部材を活用した偏光板の高付加価値化、半導体材料事業での生産体制整備などに取り組んでまいりました。
本中期経営計画においては、前中期経営計画で実施した先行投資からのリターン確保、既存事業の継続的な競争力強化、将来のコア事業・高収益製品となる製品群の育成を中心に取り組みます。
(健康・農業関連事業部門)
前中期経営計画では、インドの農薬会社を買収するなど海外販売拠点の強化が進展いたしました。また、創薬、イノベーション拠点として宝塚にケミストリーリサーチセンターを設立するなど研究・開発拠点の拡充も進み、次世代大型農薬の登録申請を開始いたしました。
本中期経営計画では、微生物農薬などのバイオラショナル事業の強化や新規農薬の上市に向けた開発を着実に進め、農薬事業を拡大してまいります。また生産能力を増強した飼料添加物メチオニンや、生活環境製品のグローバルな販売拡大に取り組みます。
(医薬品部門)
前中期経営計画では、引き続きラツーダ(非定型抗精神病薬)の販売拡大に努め、大幅な売上収益の伸長がありました。また、カナダのシナプサス社および米国のトレロ社を買収するなど、開発パイプラインの拡充にも取り組みました。
本中期経営計画では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域として、自社研究に加え、技術導入、アカデミアやスタートアップ企業との共同研究など、あらゆる方法で最先端の技術を取り入れ、研究開発活動に取り組みます。
2021年度経営目標
本中期経営計画では、最終年度である2021年度には、為替レート110 円/ドル、ナフサ価格51,000円/klを前提に、売上収益2兆9,500億円、コア営業利益2,800億円、親会社の所有者に帰属する当期利益1,500億円の達成を目指し、同年度のROEは13%、ROIは7%、D/Eレシオは0.7倍程度となる計画であります。本中期経営計画の取り組みを着実に進めることで、これらの経営目標を達成してまいります。