有価証券報告書-第74期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/16 13:12
【資料】
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【項目】
126項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、それぞれの事業において、「即断、即決、即実行」の速く、強く、しなやかな経営を実践し、既成概念にとらわれない強靭な経営体制を築きます。
これを実現するために、適正な利益を確保し、変化を恐れず、常に前向きに挑戦し続ける経営で、ステークホルダーとともに「新しい時代に繁栄する企業」として、社会に貢献していきます。
(2) 中期経営計画
当社グループでは、平成29年3月期を初年度とする3か年のグループ中期経営計画を始動させています。
当社は平成28年2月に創業100周年を迎え、この3か年は、これからの100年を展望し、その永続的な繁栄に向け、より強固な基盤づくりを進めるための3か年と位置づけています。
これまで培ってきた強みを磨き、積極的に拡大させるとともに、さらなる飛躍に向けての準備を着実に進めてまいります。
本計画の全体骨子は、次のとおりです。
・高純度薬品事業・・・事業の柱として積極拡大
・運輸事業・・・着実な収益基盤の強化
・新規事業・・・メディカル事業の収益化に向けた最終準備
・持続的な成長を支える研究開発促進、経営基盤強化
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上を目指すにあたり、収益重視の観点から、売上高営業利益率を経営上の目標の達成状況を判断するための指標としています。
(4) 経営環境および対処すべき課題
当社グループの主力事業である高純度薬品事業において、その動向が影響を及ぼす市場として、半導体液晶部門に関わる半導体市場、電池部門に関わるリチウムイオン電池市場があげられます。
半導体はあらゆるエレクトロニクス製品に用いられ、中国を中心に新たな半導体工場および生産ライン建設着手が続々と発表されているように、その世界市場は今後も成長が見込まれています。これまでのスマートフォンやパソコン向けから、今後は自動車や産業機械向けが市場を牽引すると見られていますが、半導体の世界では極限まで微細化が進み、その製造工程で使用される当社製品も、より高い品質を維持することが求められています。またNAND型フラッシュメモリに目を向けますと、積層してメモリ容量を増やす3D-NANDの製造にシフトし始めており、これに伴い当社薬液の使用量も増加することが期待されます。
リチウムイオン電池市場は、車載用途やインフラ用途での大規模な普及が始まり、急拡大の様相を呈しています。エネルギー消費削減、CO2排出量削減、大気汚染防止などを目的に、米国や欧州、中国で規制が一層と強化され、自動車メーカー各社が電気自動車やプラグインハイブリッド車の開発・販売拡大に注力していることが、この背景にあると考えられます。
以上の環境も踏まえ、当社グループは、持続的成長、中期経営計画目標達成を実現するために、次の課題に取り組み、さらなるグループ企業価値向上を目指してまいります。
① 主力事業の競争力維持・強化
当社グループは、市場で高いシェアを占める半導体用高純度薬液において、品質面での競争力を維持・強化するため、粒子管理強化および金属不純物分析技術向上のための世界最高水準機器の導入などの投資、技術開発を進め、最先端の半導体メーカーの要求に応えてまいります。また当分野で需要の伸びが期待できる中国市場を中心に、流通形態も含めた有効な新規販路開拓を進めることに注力し、国内2工場、シンガポール1工場での安定供給体制を強みに、半導体市場の成長に合わせて当社の販売量を増加させ、シェアの維持を図ります。
また市場が急拡大している電池部門製品においては、現在世界トップ市場である中国での電解質生産拠点立上げにより、ユーザー要望に応える体制を強化してまいります。電池の性能を向上させる添加剤についても、顧客ニーズにあわせた設備投資を進め、また新規添加剤の開発も継続し、さらなる収益拡大を目指してまいります。
運輸事業においては、これまで培ってきた危険物物流の強みをさらに磨き、また倉庫業の拡充にも取り組み、顧客満足度向上を第一に、着実に業績を伸ばすことに注力いたします。
② 新規事業・領域開発の推進
当社グループは、主力事業の成長拡大とともに新規事業への参入を図り、収益力の強化、多角化に取り組んでいます。従来のフッ素化学メーカーとしての枠組みを超えたメディカル事業では、ステラファーマ株式会社において、がんに対する新しい治療法として期待されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いるホウ素薬剤SPM-011の開発を進めてまいりました。BNCT用加速器照射システムを用いた世界初の治験を、悪性度の高い脳腫瘍と頭頸部がんを対象として開始し、第二相試験が進行中です。ホウ素薬剤SPM-011が医薬品として先駆け審査指定制度の対象品目に指定されたことも受け(平成29年4月21日公表)、引き続き、海外展開も視野に入れた早期事業化に取り組んでまいります。
③ 研究開発推進・経営基盤強化
高純度薬品事業における研究開発部門では、次世代パワー半導体デバイスに対応する薬液開発や、次世代エネルギーデバイスをターゲットとした材料の先駆的研究開発を継続し、事業ポジションの維持・向上を図ります。さらに、新規用途、新規技術分野の研究開発により、新たな領域を開拓いたします。
また、今後の持続的な成長に向けて、経営情報機能の強化、業務効率・処理精度の向上、システム関連リスクの低減等を目的に、販売・生産・原価システムの刷新を図ります。また、人材育成強化、コーポレートガバナンス強化等の推進とともに、有利子負債の圧縮等により財務体質の強化に努め、より堅固な経営基盤を築いてまいります。