有価証券報告書-第76期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/20 13:15
【資料】
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【項目】
166項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、それぞれの事業において、「即断、即決、即実行」の速く、強く、しなやかな経営を実践し、既成概念にとらわれない強靭な経営体制を築きます。
これを実現するために、適正な利益を確保し、変化を恐れず、常に前向きに挑戦し続ける経営で、ステークホルダーとともに「新しい時代に繁栄する企業」として、社会に貢献していきます。
(2) 中期経営計画
ア.第1次中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)
当社グループは、2017年3月期を初年度とする3か年の第1次中期経営計画を始動させ、永続的な繁栄に向け、より強固な基盤づくりを進めるための3か年と位置づけ、これまで培ってきた強みを磨き、積極的に拡大させるとともに、さらなる飛躍に向けての準備を着実に進めてまいりました。その結果、売上高・営業利益とも当初計画を大きく上回りました。
イ.第2次中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)
当社グループは、第1次中期経営計画の進捗も踏まえ、新しく2020年3月期を初年度とする3か年の第2次中期経営計画を策定しています。第2次中期経営計画では、成長市場への投資、独自技術を活かした新商品の開発等により事業拡大を図り、これを支える経営基盤の強化に取り組みます。また、将来にわたる持続的成長に向けて、当社の強みである技術力を軸に、研究開発と人材への投資を通じ、中核事業の競争力のさらなる強化、次世代事業の育成に取り組み、事業ポートフォリオの安定化、拡充化を図ってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上を目指すにあたり、収益重視の観点から、売上高・営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための指標としています。
(4) 経営環境および対処すべき課題
半導体液晶部門に関わる半導体市場については、幅広い電子機器向けに半導体需要が拡大し、当社グループの半導体用高純度薬液は、2019年3月期において、前連結会計年度の成績を超え、過去最高の出荷量を更新いたしました。今後の市場の見通しに関しましては、2019年は、世界経済に不透明要素が多いことから慎重な見方となり、成長の減速が見込まれるものの、2020年に向けて再び成長基調に戻るとの予測がみられます。長期的にも、自動車での1台あたり使用量増加、IoTの進展等を背景に、半導体素子使用量の増加は続き、当社薬液の需要も高まると見込まれます。あわせて、半導体の微細化に伴い、使用する薬液もより高い品質を維持することが求められ、品質保証技術開発の重要性も増してまいりました。
また、鉄道や電気自動車、燃料電池自動車等向けには、現在の半導体材料の主流であるシリコンよりも大きな電気が扱え、電力損失が少ない新しい半導体材料を用いたパワー半導体を製造する技術開発も進められています。
電池部門に関わるリチウムイオン電池市場については、その主要な用途である電気自動車向けが拡大基調にあり、欧州や中国での巨大電池工場建設に関する発表が相次いでいます。今後、各国の環境政策を基に、販売台数に占める電気自動車の割合は増加し、長期的な市場拡大が見込まれています。また、リチウムイオン電池の次を担う二次電池の開発も、近年活発化しています。
以上の経営環境も踏まえ、当社グループは、次の課題、施策に取り組み、さらなるグループ企業価値向上を目指してまいります。
① 成長市場への投資・収益力の強化
当社の半導体用高純度薬液は市場で高いシェアを有しており、アジア圏を中心に成長する市場の要求に応え、生産能力を段階的に増強し、高品質品の安定供給体制を強みに優位性を堅持してまいりました。引き続き、市場動向を見極めたうえでの地域別販売戦略を基に、大型設備投資も視野に入れた生産能力増強に取り組み、シェアの維持・拡大を図ります。原料調達の側面では、無水フッ酸の価格変動が大きい状況を踏まえ、製品価格転嫁、新規調達先の開拓等により、収益力の強化、調達の安定化に継続して取り組んでまいります。
電池材料については、付加価値が高く独自性の強い添加剤において、取引先の要求量に応じて必要な生産体制を整え、収益力維持・強化のため原価低減に取り組むことを重要課題と位置付けており、既にこれらの取り組みは開始しています。
また、当社グループの物流業務を一手に担う運輸事業では、安全性・確実性を高めることで競争力の強化に寄与するとともに、国際複合一貫サービスの付加価値を訴求し、利益重視の取引を推進いたします。
② 次世代事業の育成
高純度薬品事業における研究開発部門では、次世代の半導体、二次電池の開発動向を見極め、当社の独自技術を活かした新規材料開発を継続いたします。これら以外の分野におきましても、営業部門と研究開発部門の連携をさらに深め、新規製品、新規用途の開発に繋がるシーズ探索力を高める方針です。
また、研究開発部門の活性化を促進する環境整備として、新しく研究開発棟を建設し、拠点を一箇所に集約する計画です。最適かつ効率的な研究開発環境を整え、当社の技術力を軸に、事業ポートフォリオの拡充を目指してまいります。
メディカル事業では、がん治療法の一つであるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の実用化に向け、悪性度の高い再発脳腫瘍と、頭頸部がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験において、予定した被験者数に対して全例数のBNCT照射を完了いたしました。頭頸部がんにおいては、先駆け総合評価相談の手続きを開始しており、相談終了後、新規医薬品製造販売承認申請に移行する予定です。医薬品の安定供給に向けた国内事業体制の整備を進めるとともに、適用拡大、海外展開も視野に入れた事業展開を推進してまいります。
③ 経営基盤の強化
管理部門におきましては、急速な変化を続ける事業環境に即応すべく、組織運営・体制の整備、人材への投資、システム開発の推進と情報セキュリティ向上、財務戦略の強化などの課題に取り組みます。また、企業の持続的発展の基盤として注目が高まるESG(環境・社会・ガバナンス)に関連し、SDGs(持続的な開発目標)に対する取り組みにも着手し、更なる経営基盤強化を図ってまいります。