有価証券報告書-第75期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/21 11:56
【資料】
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【項目】
124項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、それぞれの事業において、「即断、即決、即実行」の速く、強く、しなやかな経営を実践し、既成概念にとらわれない強靭な経営体制を築きます。
これを実現するために、適正な利益を確保し、変化を恐れず、常に前向きに挑戦し続ける経営で、ステークホルダーとともに「新しい時代に繁栄する企業」として、社会に貢献していきます。
(2) 中期経営計画
当社グループでは、平成29年3月期を初年度とする3か年のグループ中期経営計画を始動させています。
当社は平成28年2月に創業100周年を迎え、この3か年は、これからの100年を展望し、その永続的な繁栄に向け、より強固な基盤づくりを進めるための3か年と位置づけています。
これまで培ってきた強みを磨き、積極的に拡大させるとともに、さらなる飛躍に向けての準備を着実に進めてまいります。
本計画の全体骨子は、次のとおりです。
・高純度薬品事業・・・事業の柱として積極拡大
・運輸事業・・・着実な収益基盤の強化
・新規事業・・・メディカル事業の収益化に向けた最終準備
・持続的な成長を支える研究開発促進、経営基盤強化
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上を目指すにあたり、収益重視の観点から、売上高営業利益率を経営上の目標の達成状況を判断するための指標としています。
(4) 経営環境および対処すべき課題
当社グループの主力事業である高純度薬品事業において、その動向が影響を及ぼす市場として、半導体液晶部門に関わる半導体市場、電池部門に関わるリチウムイオン電池市場があげられます。
半導体市場においては、電子機器全般における半導体需要の拡大、特にメモリ市場の大幅な拡大を背景に、成長を持続しています。地域別では、はじめて韓国が最大市場となり台湾、中国がそれに続く見込みとの予測も見られます。市場の成長に伴い、当社グループの半導体用高純度薬液は、平成30年3月期において、過去最高の出荷量を達成いたしました。
NAND型フラッシュメモリーに目を向けますと、現在は64層が主流のところ、各メーカーでは120層まで視野に入れた開発を進めており、積層数が増えた場合、当社の高純度薬液による洗浄も増えるため、使用量がさらに増加することが期待されます。
また、半導体の世界では極限まで微細化が進み、その製造工程で使用される当社製品も、より高い品質を維持することが求められています。このような現状から、さらなる半導体素子の微細化に対応するため、より小さな粒径の粒子を保証すべく、技術開発を進めています。
リチウムイオン電池市場については、リチウムイオン二次電池の車載用途やインフラ用途への採用が拡大し、エネルギー消費削減、CO2排出量削減、大気汚染防止などを目的に、世界各国でその普及を後押しする政策が次々と打ち出されています。環境規制を先導してきた欧州各国では、一定の時期からガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止する方針が発表され、また、中国でも、2019年に一定量の電気自動車などの販売を義務づける規則を導入することが発表されるなど、リチウムイオン二次電池のさらなる需要の拡大が見込まれています。
以上の環境も踏まえ、当社グループは、持続的成長、中期経営計画目標達成を実現するために、次の課題に取り組み、さらなるグループ企業価値向上を目指してまいります。
① 主力事業の競争力維持・強化、収益力の向上
当社グループは、市場で高いシェアを占める半導体用高純度薬液において、品質面での競争力を維持・強化し、最先端の半導体メーカーの要求に応えてまいります。また、韓国、台湾、中国のアジア圏を中心に拡大する需要に応じた生産能力の増強を計画的に実行し、安定供給体制を強みに当社の販売量を増加させ、シェアの維持・拡大を図ります。
市場が急拡大している電池部門では、中国での電解質生産拠点の本格稼働により、ユーザー要望に応える体制を強化してまいります。電池の性能を向上させる添加剤についても、顧客ニーズにあわせた設備投資を進め、また新規添加剤の開発も継続し、さらなる収益拡大を目指します。
一方、主原料である無水フッ酸が中国市場における深刻な供給不足により市場価格が急騰し、調達価格が過去最高水準で推移している状況においては、製品価格転嫁等により、収益力を向上させていくことが重要な経営課題と認識しております。
運輸事業においては、これまで培ってきた危険物物流の強みをさらに磨き、また倉庫業の拡充にも取り組み、顧客満足度向上を第一に、着実に業績を伸ばすことに注力いたします。
② 新規事業・領域開発の推進
当社グループは、主力事業の成長拡大とともに新規事業への参入を図り、収益力の強化、多角化に取り組んでいます。従来のフッ素化学メーカーとしての枠組みを超えたメディカル事業では、ステラファーマ株式会社において、がんに対する新しい治療法として期待されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いるホウ素薬剤SPM-011の開発を進め、BNCT用加速器照射システムを用いた世界初の治験が、悪性度の高い再発脳腫瘍と頭頸部がんを対象として進行中です。悪性度の高い再発脳腫瘍の第Ⅱ相臨床試験では、予定している被験者数に対して95%を超える例数のBNCT照射を完了し(平成30年4月末時点)、頭頸部がんの第Ⅱ相臨床試験では、試験で予定している被験者数に対して全例数のBNCT照射を完了しています(平成30年2月末時点)。ホウ素薬剤SPM-011が医薬品として先駆け審査指定制度の対象品目に指定されたことも受け、引き続き、海外展開も視野に入れた早期事業化に取り組んでまいります。
③ 研究開発推進・経営基盤強化
高純度薬品事業における研究開発部門では、次世代パワー半導体デバイスに対応する薬液開発や、次世代エネルギーデバイスをターゲットとした材料の先駆的研究開発を継続し、事業ポジションの維持・向上を図ります。さらに、新規用途、新規技術分野の研究開発により、新たな領域を開拓いたします。
また、今後の持続的な成長に向けて、経営情報機能の強化、業務効率・処理精度の向上、システム関連リスクの低減等を目的に、販売・生産・原価システムの刷新を図っています。
事業の推進には優秀な人材の確保が不可欠であり、人材の獲得、育成を重要課題と捉え注力していく方針です。また、コーポレートガバナンス強化、保安管理強化、財務体質の強化等の課題に取り組み、より堅固な経営基盤を築いてまいります。