有価証券報告書-第117期(平成26年1月1日-平成26年12月31日)

【提出】
2015/03/27 13:27
【資料】
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【項目】
125項目

研究開発活動

当社グループは、経営ビジョン「Color & Comfort by Chemistry」の実現を目指し、光学・色彩、有機分子設計、高分子設計、分散等の基盤技術の深耕とそれらの複合化により、持続的成長につながる次世代製品・新技術の開発に積極的に取り組んでいる。
当社の研究開発組織は、事業に直結した研究開発を担う技術統括本部と、次世代事業の創出と基盤技術の強化・拡大を担うR&D本部、さらに技術統括本部とR&D本部の中間領域において技術複合型新製品やR&D本部開発品の早期事業化に取り組む製品化推進センターからなる。また、DICグラフィックス株式会社などの国内グループ会社、サンケミカルグループの研究所(米国、英国及びドイツ)、コーポレート研究部門である青島迪愛生精細化学有限公司(中国)との相互連携に加え、2014年には印刷インキ技術センターをアジア・パシフィック地区(タイ)と中国に、PPSの技術サービスセンターを中国に開設した。さらに、2015年1月にポリマ技術センターをアジア・パシフィック地区(タイ)に開設、グローバルな経営資源を活用した研究開発を進めている。一方、次世代技術領域の探索・基礎研究については、産官学連携等も活用し効率的な研究開発を進めている。
当連結会計年度における研究開発費は、10,945百万円であり、このほか、当社及びDICグラフィックス株式会社における製品の改良・カスタマイズなどに関わる技術関連費用は、14,382百万円である。主な研究開発の進捗状況は以下のとおりである。
(1) プリンティングインキ
印刷インキでは、UV硬化型オフセットインキや、食品パッケージ用のグラビアインキなど各種製品の性能向上に注力しているほか、従来のDICデジタルカラーガイドを大きく発展させたクラウドサービス「DIC COLORCLOUD」を開発した。本システムでは企画から印刷に至る各工程で印刷基材ごとの色彩データが共有されるため、各工程における色調整など、作業のスピードアップが期待できる。軟包装材用接着剤では、グローバル市場に対応し各種インキとの適合性に優れる無溶剤型や、低マイグレーション酸素バリア型の新製品を開発した。
海外ではサンケミカルグループが、各種用途において優れた光沢と高い透明性を発揮する新しい顔料分散プロセスを開発、各地のインキ生産拠点への導入を進めている。また、アジア地区向けオフセットインキや、ガスバリアなどの機能性コーティング材の開発について、DICとサンケミカルグループが各々の強みを活かした共同研究にも取り組んでおり、製品化の実績も上がっている。
(2) ファインケミカル
フラットパネルディスプレイ関連では、液晶パネルのカラーフィルタ用としてスーパーハイビジョンなどに代表される次世代高画質ディスプレイに対応し、高輝度と高着色力を両立した高色再現向け新規グリーン顔料を開発した。また、液晶テレビ等の大型パネル向けや次世代デバイス向け液晶材料の開発にも注力している。化粧品用顔料では、サンケミカルグループが豊富なカラーラインナップを取り揃え欧米を中心に実績を上げているが、グループの総合力を活かし日本への展開を推進している。
(3) ポリマ
コーティング用途では、耐薬品性に優れる自動車内装用アクリル樹脂を開発したほか、独自の無機-有機複合化技術により開発した高硬度などの特長をもつシリカハイブリッドUV硬化樹脂のフィルム用表面処理用途への展開を進めている。電子材料用途では、半導体封止材向けにリフロー性に優れる新タイプのエポキシ樹脂、高周波基板向けには低誘電特性などの特徴を有するエポキシ樹脂硬化剤を開発、実績を上げている。また、スマートフォンやタブレット端末などのタッチパネルの貼り合わせに使用される光学透明粘着シート(OCA)用として熱とUVによる2段硬化型の樹脂を開発した。インフラ関連分野では、社会課題として顕在化しつつある道路や橋脚などコンクリート製インフラの老朽化を見据え、降雨や河川など水に濡れた環境下でも優れた密着性を発揮する補修剤用樹脂を開発した。
(4) アプリケーションマテリアルズ
工業用粘着テープでは、スマートフォンやタブレット端末などの電子部品から発生する熱を放散するための放熱シート用に、従来品の半分の厚さとなる超薄型の粘着テープを開発し、市場に投入した。他に、スマートフォン向け飛散防止フィルム、防水テープ、遮光テープなどの開発にも注力しており、海外の顧客への採用が拡大中である。PPSコンパウンドは、国内及び中国や欧州の自動車、電気・電子業界に向けた製品開発に注力している。多層フィルムでは、スーパーやコンビニエンスストアなどの惣菜包装向けに、食品の賞味期限をより長くするための密封性と内容物をクリアに見せるための防曇性、及び易開封性を兼ね備えたポリプロピレン製容器対応の食品包装用共押出フィルムを開発した。自動車のシートや、インパネ(計器板)、ドアトリム用の表面処理剤では、水系の新製品を開発、特にインパネ、ドアトリム用は難接着であるオレフィン基材への密着性に優れ、非自動車用途への展開も検討している。