有価証券報告書-第120期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/03/30 9:04
【資料】
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【項目】
119項目

研究開発活動

当社グループは、ブランドスローガン「Color & Comfort」の下、光学・色彩、有機分子設計、高分子設計、分散などの基盤技術の深耕とそれらの複合化により、持続的成長につながる次世代製品・新技術の開発に積極的に取り組んでいます。
当社の研究開発組織は、事業に直結した研究開発を担う技術統括本部、次世代事業の創出と基盤技術の強化・拡大を担うR&D統括本部、さらに技術統括本部とR&D統括本部の中間領域において、技術複合型新製品やR&D統括本部開発品の早期事業化をプロジェクト形式で推進する製品化推進センターからなります。
また、国内のDICグラフィックス株式会社や、海外ではサンケミカルグループの研究所(米国、英国及びドイツ)や青島迪愛生精細化学有限公司(中国)、印刷インキ技術センター(中国、アジア・パシフィック(AP)地域)、ポリマ技術センター(中国、AP地域)、ファインケミカル技術センター(韓国)、ソリッドコンパウンド技術センター(中国、ドイツ、AP地域)、藻類研究センター(米国)などの技術拠点と一体となり、グローバルに製品・技術の開発を行っています。
一方、次世代技術領域の探索・基礎研究については、産官学連携などオープンイノベーションも積極的に活用しています。
当連結会計年度における研究開発費は、12,427百万円であり、このほか、当社及びDICグラフィックス株式会社における製品の改良・カスタマイズなどに関わる技術関連費用は、14,983百万円です。主な研究開発の進捗状況は以下のとおりです。
(1) プリンティングインキ
環境調和型製品の開発に注力し、米ぬか油の非食用部(廃棄成分)を原料とする食品の包装材料(以下、包材)に用いる表刷りグラビアインキや植物油インキマーク対応高感度UVインキ、また、詰替え包材用に高隠蔽性と物性を両立させたラミネート用白インキなどを開発、販売を開始しました。包材用接着剤においても植物由来原料を使用した新製品を開発しました。
海外ではサンケミカルグループが、植物由来原料を使用した新しい水性インキシステムや、カルトン、フィルムなどの包材用UV LEDインキなどを市場に投入し、また、シュリンクラベル用の自己脱離型接着剤などの開発を進めています。
(2) ファインケミカル
ディスプレイ関連の新製品開発に注力しています。カラーフィルタ用顔料では、ブルー顔料の性能向上に取り組み、市場での実績が拡大しました。液晶材料では、PSA(Polymer Sustained Alignment)液晶ディスプレイの製造工程短縮に有用な高反応性モノマーのサンプルワークを進めています。また、当社独自技術であるナノ相分離液晶ではPSA液晶と同等の透過率を保持したまま応答速度を大幅に改良しました。配向膜が不要な自発垂直配向型n型液晶では新材料のサンプル提供を開始しました。
一方、次世代ディスプレイ材料では、インクジェット印刷方式による量子ドットカラーフィルタ用インキの開発をNanosys社(米国)と共同で進めています。
(3) ポリマ
塗料用樹脂では、遮熱ガラス向けバインダーとして塗装作業性に優れ長期耐久性塗膜を形成するUV硬化型無機-有機複合コート剤や、塗装鋼板(プレコートメタル)用塗料向けに高機能・低VOCのグローバルスタンダード製品を開発したほか、防食塗料用水性エポキシ樹脂の改良を進め、環境規制強化の進む中国市場において実績を拡大しました。また、熱交換器の着霜防止用途や塗料用添加剤として高い滑水性を付与するフッ素系界面活性剤を開発しました。電子材料用途では半導体パッケージ基板材料としてナフタレン型エポキシ樹脂を開発、市場での採用が進みました。
(4) コンパウンド
プリンテッドエレクトロニクス材料では、金属めっき膜の下地となる銀ナノ粒子及び高分子密着層材料を商業化しました。エネルギー関連では、太陽電池バックシート用接着剤を中国、インド市場向けに展開し、また、リチウムイオン電池セパレーター用バインダーを市場に投入しました。PPSコンパウンドでは、米国FDAの規格に適合し食品接触部分に使用可能な新製品を開発、欧州でサンプルワークを開始し、また、高強度・高耐湿熱タイプの新製品を水廻り部品向けに販売開始するとともに、本命の自動車冷却部品用途に向けてサンプルワークを加速しました。繊維用カラーマスターバッチでは、台湾において調色体制を確立、染料代替テーマに取り組み、カラービジネスの拡大を目指しています。
(5) アプリケーションマテリアルズ
工業用粘着テープでは、モバイル機器用に導電性を有する薄型テープを開発、スマートフォン用に採用されました。建材関連では、太陽熱を有効に活用し室内の温度変化を抑える蓄熱シートが住宅メーカーに採用され、さらなる用途展開に取り組んでいます。液体中の溶存気体の除去に使用されている中空糸膜モジュールでは、純水・超純水製造工程におけるイオン交換樹脂の延命に寄与する脱炭酸タイプを開発、販売を開始しました。ヘルスケア関連では、合成着色料からの移行が急速に進む天然系色素市場をターゲットとして、食品用藻類天然色素の次世代製品についてFermentalg社(フランス)との共同開発を開始しました。