有価証券報告書-第122期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/27 13:09
【資料】
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【項目】
163項目

研究開発活動

当社グループは、ブランドスローガン「Color & Comfort」の下、光学・色彩、有機分子設計、高分子設計、分散などの基盤技術の深耕とそれらの複合化により、持続的成長につながる次世代製品・新技術の開発に積極的に取り組んでいます。
事業に直結した研究開発を担う技術統括本部、従来の基盤技術の深耕と新規の基盤技術の創製を担うR&D統括本部、戦略的な新事業創出と事業部門の次世代製品群の事業化を担う新事業統括本部が当社の研究開発組織として、さらにDICグラフィックス株式会社、海外ではサンケミカルグループの研究所(米国、英国及びドイツ)、青島迪愛生精細化学有限公司(中国)、主に中国、アジア・パシフィック地域における技術開発活動の拠点となる印刷インキ技術センター、ポリマ技術センター、ファインケミカル技術センター、藻類研究センター、ソリッドコンパウンド技術センター、顔料技術センターが一体となって、グローバルに製品・技術の開発を行っています。
一方、次世代技術領域の探索・基礎研究については、産官学連携などオープンイノベーションも積極的に活用しています。
当連結会計年度における研究開発費は、12,505百万円であり、このほか、当社及びDICグラフィックス株式会社における製品の改良・カスタマイズなどに関わる技術関連費用は、15,431百万円です。主な研究開発の進捗状況は以下のとおりです。
(1) パッケージング&グラフィック
グラビアインキは、裏刷り、表刷り、シュリンクフィルム等各種用途でバイオマス認証を取得し、広範なラインアップで市場展開しています。またオフセットインキも、従来型及びLED-UVランプ対応型のパッケージ印刷用途向けUVインキでバイオマス認証を取得しました。接着剤では、VOCやCO2の排出を削減し、エージング時間を半減できる速硬化型無溶剤接着剤とそれを用いた新規無溶剤ラミネーションシステムを開発しました。海外ではサンケミカルグループが、環境への意識がより高まっている市場ニーズに対応し、従来の水性インキよりも大幅にCO2発生量を抑制した新製品が実績を拡大しており、またプラスチック包装のリサイクル性を向上させる脱墨インキの開発なども進めています。
パッケージ分野では、包材使用量の削減を目標にフィルムの薄膜化を推進し、フィルムの強度と包装適性を維持しつつ環境負荷を低減したことが評価されパン包装用フィルムとして、またイージーピール型フィルムは容器のトップシール化により食品の賞味期間を延長できることによるフードロス対策などからコンビニ向けサラダ容器のフタ材として、各々実績を拡大しています。
(2) カラー&ディスプレイ
カラーマテリアルでは、ディスプレイのカラーフィルタ用顔料の新製品開発に注力しているほか、藍藻類スピルリナから抽出した天然青色色素について、これまでの食品用途に加え化粧品原料への展開にも取り組み、化粧品に関する欧州の統一基準である「COSMOS」認証を取得しました。海外ではサンケミカルグループが、種子コーティング用や芝生着色剤用、風船着色用などの顔料、また化粧品用の天然ワックス分散体など、各種新製品を市場に投入しました。
液晶材料では8Kディスプレイ向けに、高透過率、高速応答、高反応性のPSA(Polymer Sustained Alignment)液晶のサンプルワークを進めています。また、次世代ディスプレイ材料では、インクジェット印刷方式による量子ドットカラーフィルタ用インクの開発に注力しています。
(3) ファンクショナルプロダクツ
電気電子材料用途では、スマートフォンの基地局向けに誘電特性に優れたエポキシ硬化剤の実績が拡大しています。またパッケージレジスト用高耐熱・高速現像性ノボラック樹脂の開発にAI技術を活用し、開発開始からわずか1年での商業化生産を実現しました。工業用粘着テープでは、貼付作業性と接着性に優れる薄型粘着テープがスマートフォン向けに、テープを引伸ばして剥がせる易解体性粘着テープの厚手タイプがテレビ向けに実績を拡大しています。
自動車関連用途では、自動車部品用スーパータフPPSコンパウンド、カーボンブラック超高分散技術により成形品の表面平滑性と高漆黒性を両立した各種エンプラ用着色剤、自動車構造接着剤用の柔軟性エポキシ樹脂などを市場に展開しています。
サステナブルな新製品としては、再生可能資源である植物を原料とするポリエステル系可塑剤を開発し、業界初となるバイオマス度100%の認定を取得しました。
(4) その他
当社グループの配線用導電インキを用いた印刷方式と当社の再剥離性粘着テープなどを組み合わせて、柔らかく曲げることができ、貼る、剥がすといった設置・除去作業の簡便化を実現した無線タイプのセンシングデバイスを開発しました。温度や湿度、照度を計測するセンサーとして、ショッピングセンターでのIoT実証実験を開始しており、早期の製品化を図るとともに、センサーのラインナップ拡充も検討しています。
また、サステナブル関連の基盤技術創製への取り組みとして、バイオベンチャー企業であるGreen Earth Institute社と天然由来アスパラギン酸及びそれを活用した生分解性を有する高吸水性ポリマの共同研究を開始しました。再生可能資源を原料とし、生分解性を兼備するポリマの低コストプロセスを開発することにより、低炭素社会の実現とプラスチック廃棄問題の解決への貢献を目指しています。