有価証券報告書-第144期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 14:30
【資料】
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【項目】
134項目
32 コミットメントおよび偶発負債
(1) 購入コミットメント
2021年3月31日現在の有形固定資産の取得に関するコミットメントは18,922百万円であります。
(2) マイルストン支払い
注記13に記載のとおり、2021年3月31日現在、当社グループは無形資産の取得に関して最大で1,259,011百万円の支払いを要する契約上の取決めを有しております。当該コミットメントは、研究開発中のパイプラインに関する開発、販売承認および上市にかかるマイルストンの最大支払額を含めております。コマーシャルマイルストンは、支払条件の達成が合理的に見込まれないとみなしており、上記コミットメント金額に含めておりません。なお、当社グループが今後研究開発活動に戦略的に注力することを契機として2021年3月31日のマイルストン支払いの開示範囲を見直した結果、販売承認および上市にかかるマイルストンを含め、コマーシャルマイルストンを除いております。
(3) アイルランド税務当局による税務評価
Shire社は、2018年11月28日に、アイルランド税務当局から398百万ユーロの課税に関する通知を受領しました。本通知は、2014年にShire社がAbbVie, Inc.からの買収の申し出の取下げに関する違約金として受領した1,635百万米ドルに対する潜在的な課税所得に関係するものです。当社グループは違約金に対する納税義務は発生していないと考え、本件に関して異議申し立ての手続を行っております。2020年11月下旬および12月上旬、アイルランド税務訴訟委員会においてヒアリングが行われました。当社グループは、ヒアリング後12カ月以内に裁定を受領することを見込んでおります。
(4) 訴訟
当社グループは、複数の訴訟および行政手続に当事者として関与しておりますが、最も重要な訴訟等は以下のとおりであります。
当社グループが関与する重要な訴訟等のなかには、それらの最終的な結果により財務上の影響があると見込まれる場合であっても、その額について信頼性のある見積りが不可能な場合があります。信頼性のある見積りが不可能な訴訟等については、以下で適切な情報の開示を行っておりますが、引当金の計上は行っておりません。以下に記載している訴訟等については、既に引当金を計上しているものを除き、現段階において財務上の影響額について信頼性のある見積りが不可能であります。これは、複数の要因(審理の進行段階、決定が行われた場合にこれを争う権利が当事者にあるか否か、訴訟における法的責任の根拠に係る明確性の欠如、当社グループの抗弁の根拠、損害の算定および回収可能性の見積りの困難性、ならびに準拠法を含むが、これらに限定されない。)を考慮する必要があるためです。なお、原告側の請求額に関する情報は、仮に入手できた場合でも、必ずしもそれ自体が訴訟等の最終的な賠償金額を判断する上で有用な情報ではないと考えております。訴訟等に関連して発生した法務関連費用および訴訟等に係る費用は、販売費及び一般管理費に計上しております。法律およびその他の専門家からの適切な助言をもとに、財産が社外に流出する可能性が高くかつ訴訟の帰結について信頼性のある見積りができる場合に、引当金を計上しております。一部の製造物責任に係る請求については、過去に請求および和解に関する十分な実績があり、未請求の損害賠償請求権に対する引当金について信頼性のある見積りをすることができる場合に、引当金を計上しております。引当金を算定する際には、該当する訴訟の請求内容や管轄、その他の類似した現在および過去の訴訟案件の性質および発生数、製品の性質、訴訟に関する科学的な事項の評価、和解の可能性ならびに現時点における和解にむけた進行状況等を勘案しております。2020年3月31日および2021年3月31日現在、当社グループの訴訟に係る引当金の合計はそれぞれ49,711百万円および73,395百万円であります。法的請求による最終的な負債の額は、訴訟手続、調査および和解交渉の帰結によって、引当額と異なる可能性があります。特段の記載のある場合を除き、当社グループは、現時点において、以下の各事案に関して訴訟が継続する期間や最終的な訴訟結果を見積ることはできません。
当社グループの状況は時間の経過とともに変化する可能性があります。したがって、いずれの訴訟等についても結果的に生じる損失が当連結財務諸表に計上されている引当金の金額を大きく上回ることはないという保証はありません。判決、和解、当社グループの事業の変更またはその他の要因を踏まえて、当社グループの財務状況または経営成績にとって重要性はないと当社グループが判断したため、過年度まで開示されていた訴訟が当年度において開示されない場合があります。
製造物責任訴訟および関連する損害賠償請求
規制当局の承認後の製品の使用に係る人体への安全性および有効性を確認するため、製品開発中に前臨床試験および臨床試験が実施されております。しかしながら、医薬品およびワクチンの上市後に、予想されていなかった安全性に関する問題が明らかになる場合、または第三者からかかる問題を主張される場合があります。当社グループは、当社グループの製品に関連して多数の製造物責任訴訟を提起されております。製造物責任訴訟および関連する損害賠償請求について、当社グループは、引当金が計上されている事案を除き、現時点において予想される財務上の影響額について信頼性のある見積りをすることはできません。
当社の主要な係争中またはその他の訴訟は以下のとおりであります。これらの訴訟の結果は必ずしも予測可能ではなく、複数の要素により影響を受けます。発生していることが少なくとも合理的に見込まれる損失について、引当済の金額を超過する損失の金額が重要かつ見積可能である場合には、当社は損失発生額に係る見込額または見込額の範囲を開示しております。
① アクトス
(ⅰ) 製造物責任訴訟
当社グループは、米国の連邦裁判所および州裁判所において、2型糖尿病治療剤ピオグリタゾンを含有する製剤(米国製品名「アクトス」)に起因して膀胱がんまたはその他の傷病を発症したと主張する原告により訴訟を提訴されており、最初の訴訟は2011年に提起されました。また、一時期米国においてアクトスを共同販売していたEli Lilly and Company(以下、「イーライリリー社」)も、アクトスに関連する多くの訴訟において被告となっております。当社グループは、両社の共同販促(co-promotion)契約に基づき、米国内の訴訟等についてイーライリリー社のために防御活動を行うと共に同社に対して補償を行うことに同意しました。また、米国外においても、同様の傷病を主張する人々により訴訟が提起され、また、損害賠償が請求されております。
2015年4月、当社グループと主要な原告の代理人は和解契約を締結し、米国内における当社グループおよびイーライリリー社に対する、係争中のアクトス関連の製造物責任訴訟のうち95%以上について和解しました。当該和解は、和解が成立した日において米国の裁判所で係争中の膀胱がんに関する損害賠償請求のすべてを対象としております。また、米国内で未提訴の損害賠償請求者についても、和解が成立した日および和解が成立した日の翌日から3日以内に、代理人を通じて和解プログラムに参加する資格を有しておりました。和解の一環として、当社グループは、和解基金へ24億米ドル(約2,880億円)を支払っております。当社グループは、当社グループに対する製造物責任訴訟を補償範囲としている複数の保険契約により、約580億円の保険金を受領しております。当社グループは、依然として係争中のアクトス訴訟および損害賠償請求に関しては引当金を計上しております。その後、当社グループは、上記和解によって和解が成立しなかった原告より、新たに訴訟の提起を受けましたが、大多数について和解が成立しております。これらの新たな訴訟は当社グループにとって重要性はありません。
(ⅱ) 経済損失に係る訴訟
当社グループは、アクトスに関連して、幾つかの訴訟を提起されております。これらの訴訟の原告は、人身傷害に対する請求ではなく、アクトスに関して主張されている膀胱がんのリスクに関する追加情報を当社グループが提供していれば、処方されなかったであろうアクトスの処方せんに対する支払により経済損失を被ったと主張するものであります。米国カリフォルニア州中央地区地方裁判所において、第三者支払人および消費者から成る暫定的クラスが、当社グループに対して訴訟を提起しました。当該訴訟については、現在証拠開示手続きが行われております。2019年6月、米国ニューヨーク州南部地区地方裁判所において、別の第三者支払人集団により類似の請求を主張する訴訟が提起されました。当該訴訟の当社グループの請求棄却申し立ては審理中であります。
ミシシッピ州およびルイジアナ州もまた、当社グループおよびイーライリリー社がアクトス服用による膀胱がんおよびその他のリスクに関する警告を怠ったと主張し、両社に対して訴訟を提起しております。当該訴訟においては、州がメディケイド等のプログラムを通じ患者のために負担したアクトスの薬剤費の払戻し、アクトスに起因する傷病の治療費、弁護士およびその他の費用の補償、ならびに懲罰的損害賠償が請求されておりました。当社グループおよびイーライリリー社は、ミシシッピ州およびルイジアナ州が提起した訴訟を解決する和解契約をそれぞれ2018年11月および2019年9月に締結しました。
② プロトンポンプ阻害薬製造物責任訴訟
当社グループは、2021年3月31日現在、米国連邦裁判所および州裁判所において、6,600件を上回るPREVACIDおよびDEXILANTの使用に関連した製造物責任訴訟を提起されております。米国連邦裁判所において、これらの訴訟の大多数が係争中であり、広域係属訴訟(MDL)制度に係る公判前整理手続がニュージャージー州の連邦裁判所に統合されております。当該訴訟の原告側は、PREVACIDおよび(または)DEXILANTの使用により腎臓障害、または一部の訴訟においては胃がんを発症し、当社グループが潜在的な危険性についての適切な警告を怠ったと主張しております。アストラゼネカ社、プロクター・アンド・ギャンブル社およびファイザー社等の、当社グループと同じくプロトンポンプ阻害薬クラスに属する製品を製造している他の製薬会社に対して、類似の訴訟が係争中となっております。米国外では、カナダのケベック州、オンタリオ州およびサスカチェワン州の3つの州において、3件の集団訴訟が提起されております。当該提訴には、当社グループ、アストラゼネカ社、ヤンセン・ファーマシューティカル社および複数の後発品製薬会社が被告として含まれております。
知的財産権
知的財産権に関する訴訟には、当社グループの様々な製品または製法に関する特許権の有効性および法的強制力に対する異議の申立て、ならびに当該特許権に対する非侵害の主張が含まれます。これらの訴訟に敗訴することにより、対象となった製品に係る特許権の保護の喪失につながる可能性があり、結果として該当製品の売上が大幅に減少し、当社グループの将来の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
① トリンテリックス
当社グループは、トリンテリックスの後発品の販売を求める後発医薬品製薬会社16社から、Paragraph IV証明を添付してANDAを申請したとの通知を受領しました。当社グループは、米国デラウェア州の連邦裁判所においてANDAを申請した当事者に対する特許侵害訴訟を提起しております。2019年5月29日に一回目のマークマンヒアリングが行われ、請求項の解釈に関する決定が同年7月16日に出されました。2019年12月18日に二回目のマークマンヒアリングが行われました。本訴訟の公判は2021年1月15日から1月28日に行われました。
② アディノベイト
2016年12月5日、現在は当社グループの子会社であるBaxalta IncorporatedおよびBaxalta US Inc.(以下、総称して「バクスアルタ社」)ならびにNektar Therapeutics(以下、「ネクター社」)は、米国デラウェア州の連邦地方裁判所(以下、「地方裁判所」)において、Bayer Healthcare LLC(以下、「バイエル社」)により訴訟を提起されました。当該訴訟は、アディノベイト [抗血友病因子(組み換え体)、PEG化]の販売に係る米国特許第9,364,520号の侵害を主張するものであり、2019年1月28日に開始した陪審において審理されました。陪審員は、特許侵害を主張する原告側の意見を支持し、特許が侵害されているとの判断を下すとともに1億5,520万ドルの損害賠償を認定しました。当社グループは2019年9月に米国連邦巡回区控訴裁判所(以下、「CAFC」)に上訴しました。CAFCは2021年3月1日に地方裁判所の判決を支持する判決を下し、2021年4月7日に執行命令が出されました。2021年5月14日、当社グループは両社間で係属中の本訴訟に関連する全ての訴訟及び係争を解決することに合意しました。この和解に基づき、バクスアルタ社およびバイエル社はそれぞれの製品の販売を継続します。また、当社グループはこれらの訴訟を解決するため和解金を支払いましたが、当社グループは2021年3月31日において当該訴訟に係る引当金を計上していたため、この支払は当社グループの連結純損益計算書に重大な影響を及ぼすものではありません。
③ ニンラーロ
2020年1月17日、当社グループはSun Pharmaceutical Industries Limited (以下、「Sun社」)からニンラーロに関するParagraph IV証明の通知を受領しました。Sun社は、当社グループが保有する米国特許第7,442,830号、第8,859,504号、及び第9,175,017号は無効であり、権利行使不能で、および/または侵害されないものと主張しています。これに対し、当社グループは2020年2月27日、米国デラウェア州の連邦地方裁判所にSun社に対する訴訟を提起しました。2021年6月18日、当社グループはSun社と和解契約を締結しました。この和解は当社グループの連結純損益計算書に重大な影響を及ぼすものではありません。
④ その他
上記の個別の特許訴訟に加えて、当社グループは、Alogliptinを含む当社グループの他の医薬品の後発品を販売する目的でParagraph IV証明を添付してANDA申請を行ったとの通知を他の製薬会社から受領した結果、多数の訴訟等の当事者となっております。当社グループは、このような事例において、関与する当事者に対して特許侵害訴訟を提起しております。
販売・営業および規制
当社グループは、当社グループの製品および営業活動に関連するその他の訴訟に関与しており、その中で最も重要なものは以下のとおりであります。
① アクトス
反トラスト訴訟
2013年12月、当社グループに対する2件の反トラスト集団訴訟のうち最初の集団訴訟が、米国ニューヨーク州南部地区地方裁判所において、アクトスの処方を受けた患者から成る暫定的クラスにより提起されました。2つ目の集団訴訟は、2015年4月、同地方裁判所において、当社グループからアクトスを購入した卸売業者からなる暫定的クラスにより提起されました。両訴訟において、原告は、特に、当社グループがFDAのオレンジブックに掲載されている当社グループのアクトスに関する特許を不適切に記載した結果、ANDAを提出した後発医薬品製薬会社に対して要件が課せられ、これにより、アクトス後発品の発売が遅れたと主張しております。2019年10月、同地方裁判所は、当社グループの請求棄却申し立てを却下しました。これを受け、当社グループは、同地方裁判所の決定に対して抗告を提起しており、依然として係争中であります。
② 患者支援プログラムに関する調査
2017年3月期に当社グループが買収したアリアド社は、買収に先立つ2016年11月、米国司法省ボストン地方検事局から、召喚状(subpoena)が発行され、2010年1月から現在に至るまでの間のアリアド社がメディケア・プログラム上の患者の自己負担にかかる財政支援を行う非営利団体(501(c)(3) co-payment foundations)に行った寄付、メディケア受益者向け財務支援プログラムおよび無償薬剤提供プログラム、ならびに上記の非営利団体と特定薬局、拠点または医療プログラムサービス提供機関との間の関係に関する情報の提出を求められております。当社グループは当該調査に協力しております。
2019年3月期に当社グループがShire社の買収により取得したシャイアー・ファーマシューティカルズLLC社に対して、2019年6月に、米国司法省ボストン地方検事局から召喚状(subpoena)が発行されました。当該召喚状において、遺伝性血管性浮腫の治療薬であるフィラジルやCINRYZEを含むShire社の医薬品を使用するメディケア・プログラム上の患者に対して財政支援を行う非営利団体(501(c)(3))とShire社の関係について情報の提出を求められております。当社グループは当該調査に協力しております。
③ 米国司法省からの民事調査要請
2020年2月19日、当社グループは、米国司法省ワシントンDC地方検事局から民事調査要請書を受領しました。当該民事調査要請書は、主にトリンテリックスの販売促進に関連して、オフラベル使用(適応外使用)の販売および反キックバック法に対する違反の可能性の調査の一環として、情報の提供を求めるものです。当社グループは、司法省による当該調査に協力しております。
2020年2月28日、当社グループは、米国司法省ワシントンDC地方検事局から民事調査要請書を受領しました。当該民事調査要請書は、IG皮下注射製剤であるCUVITRU、HYQVIAおよびGAMMAGARDの販売促進に関連して、フロリダ州のアレルギーセンターに対してキックバックを行った可能性の調査の一環として、情報の提供を求めるものです。当社グループは、司法省による当該調査に協力しております。