有価証券報告書-第149期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/17 15:34
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139項目
事業戦略
当社のサステナビリティは、経営の在り方そのものです。私たちの存在意義は、世界中の人々の健康と輝かしい未来に貢献することにあります。このため私たちは、消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、およびオンコロジーの重点疾患領域において、革新的な医薬品を創出し続けるというビジョンを追求するとともに、血漿分画製剤およびワクチンをお届けすることにも注力しています。私たちは、まず誠実であること、そして誠実:公正、正直、不屈というタケダの価値観に根ざし行動しています。私たちのビジネスへの取り組みは、私たちの存在意義・私たちが目指す未来・私たちの価値観を礎としています。これらは一体となって、私たちはどういう存在なのか、何をどう成し遂げていくか、そしてなぜそれが大切なのかを体現するものです。
当社は、革新的な新薬を連続的に上市していく取り組みを通じて、短期的に確かな成果を積み重ねるとともに、その実行の中で、成長の加速に向けた基盤を整え、患者さん、株主、社会に対して長期的な価値を創造していきます。革新的な新薬の創出とお届けを通じて、患者さんのよりすこやかな未来を継続的かつ持続可能な形で実現していくためには、最高水準の倫理とガバナンスを堅持するとともに、人材を支援、育成し、環境への影響を適切に管理し、財務規律を維持していく必要があります。
当社の「Patient すべての患者さんのために」、「People ともに働く仲間のために」、および「Planet いのちを育む地球のために」への取組みは、以下のとおりです。
Patient すべての患者さんのために
当社は、最先端のサイエンスから革新的な医薬品を創製し、患者さんに届けることで、より健康な世界の実現を目指しています。また、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても、患者さんのためにより良い標準治療を確立することにも取り組んでいます。研究開発においては、消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンスおよびオンコロジーの3つの重点疾患領域に注力しています。また、血漿分画製剤に対して戦略的な研究開発投資も継続しています。
当社は、スピードおよび効率性を重視した研究開発エンジンへの変革を進めてきました。これにより、複数のモダリティ(創薬手法)にわたる30以上の適応症において継続的なイノベーションを推進するとともに、高度に差別化された新規治療薬をより迅速に患者さんへ届けるべく、多様なパイプラインの構築を進めています。また、デジタル、データ、AIを活用した創薬基盤作りへの投資を通じて「Labs of Tomorrow(次世代の研究開発基盤)」の実現を目指すとともに、医薬品の創製、開発、提供のあり方そのものを根本から変革するために、取り組みを前進させています。
私たちは、患者さんに高品質な医薬品を途絶えることなく供給する責任があることを理解しています。この責任を果たすために、堅ろうなグローバルサプライチェーンシステムを構築しています。例えば、戦略上、重要な製品および原薬については、地政学的リスクや自然災害など外的要因によるリスクを軽減し、供給継続性を担保できる調達戦略を有しています。当社は製品の品質と患者さんの安全を守るために、製品のライフサイクル全体にわたり厳格な品質基準を適用しています。また、製造、品質および供給においても、デジタル技術やAIを活用することで、設備保全の予測や在庫の適正化、さらに逸脱発生時のサイクルタイム短縮など、様々な変革を進めています。当社は、外部規制やガイドライン、社内要件およびGxP基準を遵守するとともに、臨床試験から製造、販売に至るまでの各段階で、製品の品質、安全性、有効性を担保しています。また、市販後調査の実施や規制当局から求められる要件に準拠することで製品の安全性と有効性を担保するとともに、追加的な調査やモニタリングを実施することでさらなる臨床データの収集を行っています。
患者さん、社会および株主の皆様のために長期的価値を創造するためには、治療を必要とする患者さんに、当社の革新的な医薬品およびワクチンを持続可能な形でお届けする必要があります。そのため、当社では次のことに注力しています。
・アンメット・メディカル・ニーズ:研究開発から販売に至るまでの全てのプロセスを通じて、革新的な医薬品およびワクチンへの迅速かつグローバルなアクセスの実現に取り組んでいます。当社の製品は、特に希少疾患領域では、初めてで且つ唯一の治療薬である場合が多くあるためです。
・医薬品のアクセスに関するスピード、対象範囲、価値および持続可能性のバランス:医薬品のアクセスおよび価格戦略において、スピード、対象範囲および持続可能性の最適なバランスの実現を目指しています。また、各医薬品の特性を踏まえ、保険者、医療システムおよび社会にもたらす価値が適切に反映されるよう取り組んでいます。
・医療システムの強化および支援を目的とした連携:多様なステークホルダーとの連携を通じて、医療システムに内在する当社の医薬品や関連する治療へのアクセスの障壁を特定し、対処しています。これら取組みにおいては、持続可能な方法で、各国それぞれの優先課題に沿い、地域社会と連携しながら医療システムの強化に努めています。
当社では、このように医薬品のアクセスを事業戦略に組み込むとともに、研究開発から販売にいたる当社の事業運営において取り組みを進めています。また、地域主導のアプローチを採用することで、当社の医薬品をお届けするにあたって、各地域における患者さんのニーズに応えるとともに、医療システムにおける特有のアクセス障壁に対処しています。さらに、医薬品および関連する治療へのアクセスを阻む、より広範な社会経済的課題への対応を通じて、地域社会における健康の向上を目指しています。加えて、各国の経済発展段階や医療制度の成熟度に応じた多様な価格設定およびアクセス施策を通じて、医薬品へのアクセスに関する経済的な障壁の解消にも取り組んでいます。
当社の患者さんに対する取り組みの詳細は、2026年6月24日に当社ウェブサイトに掲載を予定している2026年統合報告書「すべての患者さんのために」をご参照ください。
People ともに働く仲間のために
当社は、科学技術がどれほど進歩しても、知識を核とした「人」の力が会社を支えることを認識しています。この認識のもと、引き続き患者さんに寄り添い、互いを尊重して協働し、当社の価値観に基づいて行動します。同時に、将来を見据え、データ、デジタル、テクノロジーおよびAIへの投資を拡大しており、グローバル全体で、スピード、品質および効率性の向上を図っています。また、リーダーシップスキルおよびデジタルスキルを育成するともに、全ての従業員が必要な支援を受け、十分な情報を得るとともに、尊重され、成長の機会があると実感できる職場環境を整備することで、一人ひとりが能力を最大限に発揮することを後押しします。
企業文化の醸成と人材の育成
当社の企業文化は、誠実:公正、正直、不屈というタケダの価値観への揺るぎないコミットメントがその土台となっており、まず誠実であることを大切にしています。次の200年にわたり当社が発展し続けるためには、成長を後押しし、迅速かつ効果的な意思決定を行い、会社としての一体感を高める企業文化を醸成する必要があると考えています。これを実現するにあたり、以下の考え方に基づく企業文化へと進化させていきます。
・Patient-centricity(患者さん中心の考え方):あらゆる行動において患者さんを中心に考えます。日々の業務を通じて人々のより良い健康に貢献するとともに、将来に向けて事業をより強固にしていきます。
・People-mindedness(人を大切にする姿勢):誰もが必要な支援を受け、必要な情報を得て、患者さんや当社の価値観との結びつきを感じられる職場環境を育みます。
・Respect and collaboration(敬意と協働):信頼、オープンな考え方、敬意をもって他者と協働するとともに、新たな発想や活力を取り込むことで、相互に建設的な挑戦を促し、より良い成果を共に実現します。
・Performance culture(成果へのこだわり):志を高く掲げ、重点を明確化します。高い目標を設定するとともにパフォーマンス管理を徹底し、患者さんにとって意義のある成果と事業成長の実現に向けて、自らの結果に責任を持ちます。
・Decision effectiveness(効果的な意思決定):適切な役割分担、インプット、厳格さを踏まえつつ、常に当社の価値観に根ざしながら、より迅速かつ明確で、より確かな意思決定を行います。
・Enterprise orientation(全体を見渡す視座):全体の最善のために考え行動します。効果的な取組みを拡大させ、学びを共有することで、タケダを「個々の人材や組織の総和を超える存在」へと高めます。
当社は、革新的な医薬品を創出し患者さんにお届けするため、デジタルスキルを含め、生涯学習およびキャリア開発を促進する企業文化を醸成することにも取り組んでいます。データ、デジタル、テクノロジーおよびAIへの投資を拡大し、あらゆる部門およびプロセスにおいて、スピード、品質および効率性の向上を図ることで、将来の事業環境に対応可能な人材基盤の構築を進めています。
当社では、テクノロジーを業務に組み込み、未来のヘルスケアに対応できる組織にするため、従業員のデジタルスキルやデジタル活用意識の強化に向けた投資を継続しています。2024年にデジタル・デクステリティ(デジタル技術を高度に活用する能力・意欲)プログラムを開始して以来、全社で多様な学習モジュールおよび参加型の機会を提供することで、従業員がデジタル技術への理解を深め、実務への活用を促進できる環境を整備してきました。2025年には、同プログラムにおいて、コラボレーション、個人の生産性向上、データリテラシーおよびオートメーションの4つのテクノロジー活用スキルに関する学習内容を追加しました。また、デジタル分野の取組みとして、24時間にわたるバーチャルイベント「デジタル・デクステリティ・デイ」を開催しました。同イベントでは、アンバサダーによる対面形式の学習セッションを各地域で実施することで、参加者がアイデアの業務への活用方法を議論し、知見を共有するとともに、活用方法をリアルタイムで試行できる機会を提供しました。
当社はまた、従業員の成長を促し、良好な従業員体験を実現する上で重要な役割を担うリーダーの育成を重視しています。「People Leader Development」プログラムでは、当社のリーダーシップ行動に沿った能力の強化を目的として、厳選したオンライン学習コンテンツを提供するとともに、育成ウェビナーを毎月開催しています。2025年度は、採用に関するベストプラクティス、効果的なコミュニケーション、心理的安全性、デジタル・デクステリティ、評価プロセスの質の向上および従業員体験の向上に重点を置いてきました。当社では、3カ月間にわたるリーダーシップ育成プログラムである「Be a Great Coach」を構築していますが、本プログラムは外部アワードで表彰を受けています。この「Be a Great Coach」には、過去3年間において、約2,000名のリーダーが参加しました。
当社は、グローバルなバイオ医薬品企業として、敬意をもって他者と協働し、私たちの価値観を軸に行動することで、 優秀な人材をグローバルに惹きつけ、育成し、定着を図っています。当社では、従業員一人ひとりが支えられ、尊重され、成長に必要な環境が整っていると感じられることを重視しています。さらに、それぞれが能力を最大限に発揮できるよう、学びの機会やリソースに公平にアクセスできる環境を整備することで、従業員ひとり一人が目指す成長の実現を支援しています。
社内環境整備方針
「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」という当社の存在意義(パーパス)は従業員が安全で心身ともに健康であることを前提に実現されるものです。当社のウェルビーイングプログラムは、精神面、身体面、社会面、経済面の4つの分野から従業員の心身の健康に焦点を当てています。当社の従業員はThrive Globalにアクセスすることができます。Thrive Globalは、ストレスを軽減し、生産性を向上させながら、働き、生活することを支援する、行動変化を促す最新のプラットフォームです。睡眠、栄養、運動といった従業員の一人ひとりのウェルビーイング目標の達成を支援するためのリソースやプログラムを提供しています。
ライフ・ワーク・アライメントは従業員がフレキシブルな勤務形態に適応する上で最も考慮すべき点であり、顔を合わせて行う協働と在宅勤務を両方取り入れるなど、従業員の能力を最大限に引き出すために多様な働き方を尊重しています。具体的な勤務形態はチームによって異なりますが、イノベーションを促進するためにオフィスの空間デザインにも工夫を凝らし、従業員のウェルビーイング(心身の健康)とパフォーマンスを向上させ、柔軟性があり、対面でのコミュニケーションの価値を実感できるような環境づくりを行うなど、働き方改革を加速させています。また、レジリエンス(回復力)のスキルを強化するための学習プログラムを活用し、メンタルヘルスについて話すためのツールをマネージャーに提供しています。
当社は、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、バリューチェーンやタケダが貢献する地域社会を含む当社事業のあらゆる場面において、国際的に認められた人権の尊重と推進に力を入れて取り組んでいます。
当社の人材、人材の育成、企業文化の醸成、および社内環境整備にかかる方針のさらなる詳細は、2026年6月24日に当社ウェブサイトに掲載を予定している2026年統合報告書「ともに働く仲間のために」をご参照ください。
Planet いのちを育む地球のために
当社は、気候変動や環境悪化が患者さんや人々の健康に影響を及ぼすことを理解し、環境の分野において積極的に取り組んでいます。当社は、事業活動およびバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量の最小化、自然環境への影響の低減、ならびに持続可能性に配慮した製品設計および生産に重点を置いて、環境サステナビリティ活動に取り組んでいます。こうした自然環境および気候変動への継続的な取組みの一環として、当社は自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に沿った初の開示を実施する予定です。
環境サステナビリティに係る取り組みは、現在、様々な側面に専念した3つのプログラムで構成されています。
・気候変動対策プログラム
2035年度までに自社の事業活動に起因する温室効果ガス排出量(スコープ1および2)を、2040年度までにバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(スコープ3)をネットゼロにすることを目標に掲げています。これらの目標は、2024年にSBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)の認証を取得しました。
・製品サステナビリティプログラム
製品の設計や開発に、環境ライフサイクルの視点を取り入れることで、バリューチェーン全体で環境負荷を最小限に抑えることを目指します。
・自然環境保全プログラム
水の保全、責任ある廃棄物管理、生物多様性保全活動を通じて、環境負荷の低減を目指します。
当社は、気候変動に関連したリスクに対するレジリエンスの強化および機会の特定に積極的に取り組んでいます。コーポレートEHSS(環境、健康・衛生、安全およびサステナビリティ)のチームが主導する評価と管理は、組織全体のリスク管理フレームワークに組み込まれています。事業所に固有の気候変動による業務運営リスクは、事業所や施設レベルのリスク評価からボトムアップのアプローチにより特定しています。また、サプライチェーンにおけるリスクは、主に第三者リスク管理プログラム(TPRM)を利用したサプライヤーのスクリーニングを通じて特定しています。
当社は、気候変動によるリスクを軽減し、自社の事業活動に起因する温室効果ガス排出量をネットゼロにするため、製造拠点、バイオライフ(血漿収集施設)、オフィスにまたがる拠点において、事業所固有のロードマップを策定し、温室効果ガス排出量を削減するための様々な脱炭素施策を展開しています。これらの施策には、低炭素技術への投資(次世代ヒートポンプなど)および可能な場合は100%再生可能電力への移行が含まれます。また、サプライヤーと協力して科学的根拠に基づく排出量削減目標を設定し、製品開発に係る排出量を最小化し、航空輸送の代替として海上輸送を増やすことにより、バリューチェーン排出量の削減を目指すとともに、削減が困難な排出に対処するために、新たな外部連携にも戦略的な投資を行っています。
当社は、2024年度に、気候変動のリスクと機会についてシナリオ分析を刷新し、特定のサプライチェーンリスクを含め、移行リスクおよび物理的リスクに焦点を当てて評価を実施しました。
移行リスク評価では、2050年までの時間軸について、気候変動に対する世界の対応レベルの違いによって異なる3つの気候変動シナリオ(「迅速な気候変動対策」、「気候変動対策の遅延」、「中道的な気候変動対策」)を設定し、当社の規制、技術、市場および評判(レピュテーション)に関するリスクを評価しました。当該評価では、当社が現在計画しているネットゼロ達成のための施策を考慮した場合と、それらの施策がない場合に、移行リスクにどの程度晒されるかも考慮しました。
物理的リスク評価では、当社の事業運営および第三者である主要な医薬品製造受託機関(CMO)およびサプライヤーについて、気温、水、風および土地に関連する危険性を、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって設定された2つの共通社会経済経路シナリオ(SSP2-4.5とSSP5-8.5)に基づいて評価しました。物理的リスクは、グロスベースで評価しており、当社の事業運営またはCMOの事業運営に対して、現在実施中の緩和策あるいは現在計画中の緩和策の更新が及ぼす影響は考慮されていません。
このプロセスを通じて、当社に潜在的に該当するいくつかの気候関連リスクと機会を特定することができました。移行リスクに関しては、潜在的な国レベルおよび地域レベルの炭素税導入に伴って、サプライヤーからのコストが増加する可能性や、化石燃料由来のエネルギー源の価格上昇に起因する事業運営費の増加に晒される可能性があるものの、前述の脱炭素施策を引き続き実施すれば、そのようなコストは大幅に減少することが示唆されました。さらに、低炭素製品に関する市場トレンドの定性的な分析では、当社は製品プロファイルが差別化できており、比較可能な代替品がないことから、低炭素製品における競争リスクが比較的低いことが示されました。
物理的リスクに関して、モデル化されたシナリオでは、当社の直接的な事業運営あるいはCMOの事業運営に対する以下の潜在的な気候関連リスクと影響を特定しました。
リスクの種類リスクの
内容
SSP2-4.5 (注)1およびSSP5-8.5 (注)2シナリオにおける潜在的影響主な影響地域

物理的
リスク(急性)
熱帯低気圧特定の事業所およびCMOの事業所において、重大な物的損害と事業活動中断による損失のリスクがシナリオ期間を通じて存在し、経時的な変化は限定的である日本
洪水特定の事業所において影響度と頻度の増加が予測され、事業所の1つでは2050年までに生産中断が13日発生する日本、欧州
地滑り特定の事業所およびCMOの事業所で、2050年までに地滑りのリスクが高まり、複数の事業所でリスクレベルが非常に高くなる米国、欧州
竜巻特定の事業所およびCMOの事業所において、重大な物的損害と事業活動中断による損失のリスクがシナリオ期間を通じて存在し、経時的な変化は限定的である米国
物理的
リスク(慢性)
熱ストレスシナリオ期間を通じて、特定の事業所およびCMOの事業所において、年間10日を超える日数にわたり、作業者の健康にとって危険なレベルの高温となる事業所が大幅に増加し、複数の拠点で高温による生産停止が発生する日本、欧州、米国
水不足特定の事業所およびCMOの事業所において、2050年までに水不足により6日を超える日数にわたり事業中断となる事業所が大幅に増加し、一部の事業所では生産停止が10日を超えるリスクがある日本、欧州、米国

(注)1 SSP2-4.5シナリオ: 温室効果ガス排出量が2050年まで現在のレベルで続き、その後減少するが、2100年までに地球の気温が2.1~3.5℃上昇すると推定される中程度の排出経路を示しています。
2 SSP5-8.5シナリオ: 現在のCO2排出量が2050年までに約2倍、2075年までに約3倍に増加し、2100年までに地球の気温が3.3~5.7℃上昇すると推定される、非常に高い温室効果ガス排出経路を示しています。
出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)政策決定者のための要約
上記の事業運営に対する物理的リスクの中で、水不足によるリスクは最も増加することが予測されており、熱ストレスによるリスクは分析されたリスクの中で最も影響度が大きいと予測されています。いずれも当社の事業全体に加え、現在提携しているCMOおよびサプライヤーに及ぶものです。2つのシナリオのいずれにおいても、影響の深刻度(Impact Severity)はほぼ同等であったものの、特に干ばつと熱ストレスによるリスクについては、SSP5-8.5シナリオにおける影響がやや大きくなっています。さらに、当社の日本の事業運営では、熱帯低気圧と地震のリスクがある一方、ヨーロッパに拠点を置くCMOは地滑りのリスクに晒されていますが、シナリオ評価においては、気候変動によるこれらの危険性の増加は予測されていません。
当社は、これらのリスク評価および得られた知見を組織全体のリスク管理プロセスに統合し、物理的リスク評価を考慮して各施設の気候変動適応戦略を精査しています。
さらに、2024年度には、生物多様性への影響や取水、水使用および廃棄物の潜在的な影響など、環境への影響に関する初期評価を実施し、環境への取組みや目標の検討に活用しました。当該評価を行うために、エネルギー使用、土地使用、水の消費、廃棄物発生など事業運営に関わる主要な指標を、確立された第三者の科学的データと比較してリスクスコアを算出し、潜在的なリスクエリアおよび対策を優先的に実施すべき事業所を特定しました。
この分析から、当社が環境に与える影響の中で、最も影響度が大きなものはエネルギー使用であることが特定されました。主に製造活動に関連する水および廃棄物関連の影響は、主要な自然関連の直接的な影響として特定されましたが、これらの影響に関連するリスクの財務的な重要性の評価は実施しませんでした。また、バリューチェーンの上流および下流における環境への潜在的な影響も評価しましたが、利用可能なデータが不足していることから、特に原材料調達に関して、分析は限定的なものとなりました。このような制約があったものの、トウモロコシ(細胞培養、エタノール)、パルプ由来の材料(二次紙パッケージ)、木材(パレット、オフィス用品)、ウシ由来血清(バイオ医薬品製造)、サトウキビ(エタノール、賦形剤)については、バリューチェーンの上流において依存していることが特定されましたが、これらの依存関係に関連するリスクの財務的な重要性の評価は実施しませんでした。
2025年度は、水不足に関するリスクが最も高い事業所における対策の優先順位付けに資することを目的として、グローバルでの水リスクの再評価を実施しました。本評価結果は、従前のリスク調査を裏付けるものであり、優先度の高い事業所における緩和策の検討に活用されています。
当社は、将来的に、環境への影響および依存関係に関連する財務リスクのさらなる分析を行う予定です。

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