有価証券報告書-第109期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものです。
(1)企業理念
当社グループは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもとですべての役員および従業員が一丸となり、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足し、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業となることをめざしています。当社グループの使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上や利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考えています。
当社グループは、このhhc理念の実現に向けて、主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員との信頼関係の構築につとめるとともに、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々実践し、企業価値の向上に取り組んでいます。
本企業理念は、定款に定め、株主の皆様と共有化をはかっています。
(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
超高齢化が先進国だけでなくグローバルに進展する中で、AIなどのデジタル、ネットワーク技術等の革新のもと、製薬を含むヘルスケア産業においては、従来の一貫したサプライチェーンモデルからスタートアップ企業をはじめとする様々なプレイヤーによる水平分業へとその産業構造が大きく変化しています。このような変化に対応すべく、当社グループは、2016年度にスタートした中期経営計画「EWAY Current」に続く、新たな中期経営計画として「EWAY Future & Beyond」を2021年4月よりスタートしました。
① 新中期経営計画「EWAY Future & Beyond」
「EWAY Future & Beyond」では、2021年度からの5年間を「EWAY Future」、2026年度以降を「EWAY Beyond」とし、視点を患者様から生活者一人ひとりであるThe Peopleに転換します。「The Peopleの“生ききる”を支える」をビジョンとして、当社グループが最も強みを持つニューロロジー領域とオンコロジー領域に立脚し、サイエンスに基づくソリューション創出を推進します。加えて、長年実践してきたhhc理念に基づく、顧客の憂慮を知り、取り除くための戦略を立案し、解決するというhhcプロセスを磨き、一人ひとりの人生に寄り添っていきます。その結果として、健康な状態から最期の時まで、その人らしく生ききることを叶え、支えるhhc理念+エコシステム (hhceco)へと進化することをめざします。

hhcecoを実現する上で、幹となるのがEisai Universal Platform(EUP)です。EUPは、当社グループが強みとして有するアセットからなるプラットフォームであり、様々な産業、地方自治体などとのエコシステムの構築により、The Peopleの多様な憂慮の取り除きを拡大していくことをめざします。EUPには、様々な外部パートナーの技術と自社の技術(R&D)とのシンクロにより、医薬品をはじめとするソリューションをパッケージ化し、そのパッケージをリアルあるいはバーチャルにお届けするところまでが含まれます。具体的には、外部の技術と、自社のデータサイエンス、遺伝子解析、データ解析等のデジタル技術および創薬技術を有機的に連携させ、新たなソリューションを生み出すことをめざします。
日常領域では健康状態の維持・支援、疾患啓発と予防・検査・病院検索、医療領域では正確な診断、治療(薬物・非薬物)の効果確認、QOL(quality of life)の向上に寄与する施策などのソリューションが想定されています。これらのソリューションを、日常領域ではアプリ、WEB、ソーシャルメディア等のデジタル(バーチャル)によりお届けする一方、医療領域ではオウンドメディア、デジタルプロモーションなどのオンラインサービスに加え、人対人のリアルコミュニケーションによりお届けし、The Peopleの憂慮を取り除くことをめざします。またエコシステムにおいては、保険産業における保険商品の開発、フィットネス産業における疾患予防に関する新たなプログラム開発、地方自治体による疾病予防事業の推進などを進めていきます。
「EWAY Future & Beyond」における研究開発では、バイオマーカーの進化により、症状や腫瘍ベースの診断から、病態生理学に基づく疾患連続体(Disease Continuum)解析へ転換し、プレシジョンメディシン(精密医療)の提供をめざします。具体的にはアルツハイマー病(AD)では、病態生理学バイオマーカーを定量的かつ継時的に測定する継続的ブレインヘルスパネル診断を実現させ、一人ひとりが疾患連続体のどのステージにあるか精密に診断し、薬剤を決定する最適な治療の実現をめざします。一方で、オンコロジー領域では、継続的な血中の循環腫瘍DNA解析と次世代シーケンス解析によりがんの進化を深く理解し、ゲノム情報に基づく早期診断、患者様ごとに最適な治療法の選択が可能となる個別化医療の実現をめざします。
当社グループは、「EWAY Future & Beyond」においても、日本発のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、顧みられない熱帯病(NTDs)に対する新薬開発の経験豊富なNPO/NGOとのパートナーシップのもと、新薬開発、エビデンスを創出し、NTDsの制圧に貢献していきます。
② ニューロロジー領域
ニューロロジー領域では、AD Continuumをターゲットとした新薬開発が進行中です。バイオジェン社と共同開発している抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブについては、米国においてアルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一の治療薬として迅速承認を取得しました。また、欧州、日本などにおいては規制当局により承認申請が審査中です。同じく、バイオジェン社と共同開発している抗アミロイドβプロトフィブリル抗体lecanemabについては、フェーズⅢ試験の患者様登録が完了し、2022年度第2四半期末までの主要評価項目の結果取得をめざしています。また、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とするフェーズⅢ試験(AHEAD 3-45試験)も進行中です。加えて、より簡便なAD診断に向けた、血液によるアミロイドβテストについてもシスメックス株式会社(兵庫県)との共同開発を進めています。
AD Continuumに基づく他のプロジェクトの開発も進行中です。抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体「E2814」は、2021年3月には、優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が実施する優性遺伝ADに対する臨床試験において抗タウ薬として最初の評価対象薬に選定されました。孤発性ADを対象としたフェーズⅡ試験についても計画中です。また、ダメージを受けたコリン作動性神経を機能性神経に回復し、コリン作動性神経の変性を予防することが期待される選択的Tropomyosin receptor kinase A(TrkA)結合シナプス再生剤「E2511」については、フェーズⅠ試験が進行中です。
③ オンコロジー領域
抗がん剤「レンビマ」については、グローバルで5つのがんについて承認を取得しています。現在、米メルク社の抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法により、14種類のがんで20を超える適応をめざして臨床試験(LEAP試験)が進行中です。本併用療法抵抗性の克服をめざす薬剤として、新規線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体選択的チロシンキナーゼ阻害剤「E7090」、発がんに関わるWntシグナル伝達を阻害することが期待されるCBP/β-カテニン阻害剤「E7386」の開発が進行中です。がん免疫療法への低感受性に対する治療薬として、エストロゲン受容体阻害剤「H3B-6545」、承認薬剤であるエリブリンをペイロードとする次世代の抗体薬物複合体(ADC)「MORAb-202」の開発を加速していきます。また、タンパク質分解誘導剤、ネオアンチゲン誘導剤など外部技術と融合した共同研究・開発による新世代のパイプライン構築を進めています。
④ 目標とする経営指標
当社グループは、持続的な株主価値創造に向けた取り組みのもと、中期経営計画「EWAY Current」における2020年度の中間目標として、売上収益・利益等の数値目標を設定していました。
2021年度からスタートした新中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においては、売上収益・利益に関しては、社会環境や開発品の承認状況に大きく左右されることから中長期での数値目標は設定していません。その代わりに、年次事業計画を精緻に策定しています。2021年度の業績予想は以下のとおりです。
*1 ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分
上記に加え、中長期の経営指標として平均ROEを掲げています。2021年度から2024年度は平均10%、2025年度は15%以上を目安としています。
⑤ 医薬品アクセス改善に向けた取り組み
当社グループは、グローバルな医薬品アクセスの課題解決への取り組みを、我々の責務であるとともに、将来への長期的な投資であると考え、政府や国際機関、非営利民間団体等との官民パートナーシップのもと、積極的に推進しています。当社グループは、開発途上国および新興国に蔓延する顧みられない熱帯病(NTDs)の一つであるリンパ系フィラリア症を制圧するため、その治療薬である「DEC(ジエチルカルバマジン)錠」を当社グループのインド・バイザッグ工場で製造し、本剤を必要とするすべての蔓延国において制圧が達成されるまで、世界保健機関(WHO)に「プライス・ゼロ(無償)」で提供しています。2021年3月末までに28カ国に20.1億錠を供給しました。さらに、マイセトーマ(菌腫)をはじめとするNTDs、結核、マラリアに対する新薬開発を推進するほか、認知症、がんといった非感染性疾患に対する啓発・早期発見支援や患者様が購入しやすい価格設定(アフォーダブルプライシング)、所得別段階的価格設定(ティアードプライシング)による製品提供など、各国で様々な医薬品アクセス改善に向けた活動に取り組んでいます。
⑥ 新型コロナウイルス感染症の影響
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営成績の状況」に記載のとおり、2020年度の営業利益および当期利益に与える影響は軽微でした。将来の財政状態・経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性については、「2 事業等のリスク(4)その他 新型コロナウイルス感染症」に記載しています。
(3)資本政策の基本的な方針
当社グループの資本政策は、財務の健全性を担保した上で、株主価値向上に資する「中長期的なROE経営」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資採択基準」を軸に展開しています。
① 中長期的なROE経営
当社グループは、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と捉えています。「中長期的なROE経営」では、売上収益利益率(マージン)、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を常に改善し、中長期的に正のエクイティ・スプレッド*1を創出すべく資本コストを上回るROEを目指していきます。2025年度にはROE15%以上、エクイティ・スプレッド7%レベルの達成を意識しています。
*1 エクイティ・スプレッド=ROE-株主資本コスト
② 持続的・安定的な株主還元
当社グループは、健全なバランスシートのもと、連結業績、DOE*2およびフリー・キャッシュ・フローを総合的に勘案し、シグナリング効果も考慮して、株主の皆様への還元を継続的・安定的に実施します。DOEは、連結純資産に対する配当の比率を示すことから、バランスシート・マネジメント、ひいては資本政策を反映する指標の一つとして位置づけています。自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。なお、健全なバランスシートの尺度として、親会社所有者帰属持分比率、負債比率(Net DER)*3を指標に採用しています。
*2 DOE(親会社所有者帰属持分配当率)= 配当金総額÷親会社の所有者に帰属する持分
*3 負債比率(Net DER)= (有利子負債(借入金)-現金及び現金同等物-3カ月超預金等
-親会社保有投資有価証券等)÷親会社の所有者に帰属する持分
③ 成長のための投資採択基準
当社グループは、成長投資による価値創造を担保するために、戦略投資に対する投資採択基準を採用し、リスク調整後ハードルレートを用いた正味現在価値と内部収益率スプレッドにハードルを設定し、投資を厳選しています。

(4)ESGをはじめとする非財務価値向上と情報開示
企業の価値は、財務価値に、ESG(環境、社会、ガバナンス)をはじめとする非財務価値を加味したものと考えています。当社グループは、hhc理念を根幹として事業を展開する中、地球環境の負荷低減(環境)、医薬品アクセス向上、人権の尊重、社員の人材育成(社会)、経営の公平性と透明性の確保(ガバナンス)等、ESGへの取り組みを強化してきました。また、これらの取り組みは、国連サミットで採択された国際的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)と一貫したものと位置づけています。
環境については、2030年度に向けた科学的根拠にもとづく温室効果ガス削減目標を設定し、Science Based Targets(SBT)イニシアチブから承認を取得しました。加えて、再生可能エネルギーの導入率を計画的に高めるなど、当社グループ全体で、低炭素社会の形成に向け積極的に取り組んでいます。また、国内外での動向を鑑み、2030年にグループ全体で使用する電力をすべて再生可能エネルギーに切り替える中期目標と、2040年に温室効果ガスの排出量と吸収量をプラスマイナスゼロの状態にするカーボンニュートラルの達成をめざす長期目標を設定しました。さらに、気候変動が企業に与える影響についてリスクと機会を分析し情報開示を求める国際的なフレームワークTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)に賛同を表明し、気候戦略の強靭性を高めるべく検討を重ねています。
人権については、ガイドラインとして国際的に認知されている国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権方針の作成、デューデリジェンスの仕組み構築など、さらなる非財務価値の向上に取り組んでいます。なお、当社グループのESGをはじめとする非財務価値に関する情報は、IIRC(国際統合報告評議会)のフレームワークに基づき、統合報告書や環境報告などで開示しています。
(https://www.eisai.co.jp/ir/library/annual/index.html)
当社は、常に最良のコーポレートガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組んでいます。当社のコーポレートガバナンスに関する取り組みについては、「第4 提出会社の状況、4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しているほか、「コーポレートガバナンス報告書」をはじめとして、当社のホームページに掲載しています。
(https://www.eisai.co.jp/company/governance/index.html)
(1)企業理念
当社グループは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもとですべての役員および従業員が一丸となり、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足し、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業となることをめざしています。当社グループの使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上や利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考えています。
当社グループは、このhhc理念の実現に向けて、主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員との信頼関係の構築につとめるとともに、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々実践し、企業価値の向上に取り組んでいます。
本企業理念は、定款に定め、株主の皆様と共有化をはかっています。
(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
超高齢化が先進国だけでなくグローバルに進展する中で、AIなどのデジタル、ネットワーク技術等の革新のもと、製薬を含むヘルスケア産業においては、従来の一貫したサプライチェーンモデルからスタートアップ企業をはじめとする様々なプレイヤーによる水平分業へとその産業構造が大きく変化しています。このような変化に対応すべく、当社グループは、2016年度にスタートした中期経営計画「EWAY Current」に続く、新たな中期経営計画として「EWAY Future & Beyond」を2021年4月よりスタートしました。
① 新中期経営計画「EWAY Future & Beyond」
「EWAY Future & Beyond」では、2021年度からの5年間を「EWAY Future」、2026年度以降を「EWAY Beyond」とし、視点を患者様から生活者一人ひとりであるThe Peopleに転換します。「The Peopleの“生ききる”を支える」をビジョンとして、当社グループが最も強みを持つニューロロジー領域とオンコロジー領域に立脚し、サイエンスに基づくソリューション創出を推進します。加えて、長年実践してきたhhc理念に基づく、顧客の憂慮を知り、取り除くための戦略を立案し、解決するというhhcプロセスを磨き、一人ひとりの人生に寄り添っていきます。その結果として、健康な状態から最期の時まで、その人らしく生ききることを叶え、支えるhhc理念+エコシステム (hhceco)へと進化することをめざします。

hhcecoを実現する上で、幹となるのがEisai Universal Platform(EUP)です。EUPは、当社グループが強みとして有するアセットからなるプラットフォームであり、様々な産業、地方自治体などとのエコシステムの構築により、The Peopleの多様な憂慮の取り除きを拡大していくことをめざします。EUPには、様々な外部パートナーの技術と自社の技術(R&D)とのシンクロにより、医薬品をはじめとするソリューションをパッケージ化し、そのパッケージをリアルあるいはバーチャルにお届けするところまでが含まれます。具体的には、外部の技術と、自社のデータサイエンス、遺伝子解析、データ解析等のデジタル技術および創薬技術を有機的に連携させ、新たなソリューションを生み出すことをめざします。
日常領域では健康状態の維持・支援、疾患啓発と予防・検査・病院検索、医療領域では正確な診断、治療(薬物・非薬物)の効果確認、QOL(quality of life)の向上に寄与する施策などのソリューションが想定されています。これらのソリューションを、日常領域ではアプリ、WEB、ソーシャルメディア等のデジタル(バーチャル)によりお届けする一方、医療領域ではオウンドメディア、デジタルプロモーションなどのオンラインサービスに加え、人対人のリアルコミュニケーションによりお届けし、The Peopleの憂慮を取り除くことをめざします。またエコシステムにおいては、保険産業における保険商品の開発、フィットネス産業における疾患予防に関する新たなプログラム開発、地方自治体による疾病予防事業の推進などを進めていきます。
「EWAY Future & Beyond」における研究開発では、バイオマーカーの進化により、症状や腫瘍ベースの診断から、病態生理学に基づく疾患連続体(Disease Continuum)解析へ転換し、プレシジョンメディシン(精密医療)の提供をめざします。具体的にはアルツハイマー病(AD)では、病態生理学バイオマーカーを定量的かつ継時的に測定する継続的ブレインヘルスパネル診断を実現させ、一人ひとりが疾患連続体のどのステージにあるか精密に診断し、薬剤を決定する最適な治療の実現をめざします。一方で、オンコロジー領域では、継続的な血中の循環腫瘍DNA解析と次世代シーケンス解析によりがんの進化を深く理解し、ゲノム情報に基づく早期診断、患者様ごとに最適な治療法の選択が可能となる個別化医療の実現をめざします。当社グループは、「EWAY Future & Beyond」においても、日本発のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、顧みられない熱帯病(NTDs)に対する新薬開発の経験豊富なNPO/NGOとのパートナーシップのもと、新薬開発、エビデンスを創出し、NTDsの制圧に貢献していきます。
② ニューロロジー領域
ニューロロジー領域では、AD Continuumをターゲットとした新薬開発が進行中です。バイオジェン社と共同開発している抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブについては、米国においてアルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一の治療薬として迅速承認を取得しました。また、欧州、日本などにおいては規制当局により承認申請が審査中です。同じく、バイオジェン社と共同開発している抗アミロイドβプロトフィブリル抗体lecanemabについては、フェーズⅢ試験の患者様登録が完了し、2022年度第2四半期末までの主要評価項目の結果取得をめざしています。また、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とするフェーズⅢ試験(AHEAD 3-45試験)も進行中です。加えて、より簡便なAD診断に向けた、血液によるアミロイドβテストについてもシスメックス株式会社(兵庫県)との共同開発を進めています。
AD Continuumに基づく他のプロジェクトの開発も進行中です。抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体「E2814」は、2021年3月には、優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が実施する優性遺伝ADに対する臨床試験において抗タウ薬として最初の評価対象薬に選定されました。孤発性ADを対象としたフェーズⅡ試験についても計画中です。また、ダメージを受けたコリン作動性神経を機能性神経に回復し、コリン作動性神経の変性を予防することが期待される選択的Tropomyosin receptor kinase A(TrkA)結合シナプス再生剤「E2511」については、フェーズⅠ試験が進行中です。
③ オンコロジー領域
抗がん剤「レンビマ」については、グローバルで5つのがんについて承認を取得しています。現在、米メルク社の抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法により、14種類のがんで20を超える適応をめざして臨床試験(LEAP試験)が進行中です。本併用療法抵抗性の克服をめざす薬剤として、新規線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体選択的チロシンキナーゼ阻害剤「E7090」、発がんに関わるWntシグナル伝達を阻害することが期待されるCBP/β-カテニン阻害剤「E7386」の開発が進行中です。がん免疫療法への低感受性に対する治療薬として、エストロゲン受容体阻害剤「H3B-6545」、承認薬剤であるエリブリンをペイロードとする次世代の抗体薬物複合体(ADC)「MORAb-202」の開発を加速していきます。また、タンパク質分解誘導剤、ネオアンチゲン誘導剤など外部技術と融合した共同研究・開発による新世代のパイプライン構築を進めています。
④ 目標とする経営指標
当社グループは、持続的な株主価値創造に向けた取り組みのもと、中期経営計画「EWAY Current」における2020年度の中間目標として、売上収益・利益等の数値目標を設定していました。
2021年度からスタートした新中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においては、売上収益・利益に関しては、社会環境や開発品の承認状況に大きく左右されることから中長期での数値目標は設定していません。その代わりに、年次事業計画を精緻に策定しています。2021年度の業績予想は以下のとおりです。
| 2021年度業績予想 | |
| 売上収益 | 6,810億円 |
| 営業利益 | 580億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属持分) | 445億円 |
| ROE*1 | 6.7% |
*1 ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分
上記に加え、中長期の経営指標として平均ROEを掲げています。2021年度から2024年度は平均10%、2025年度は15%以上を目安としています。
⑤ 医薬品アクセス改善に向けた取り組み
当社グループは、グローバルな医薬品アクセスの課題解決への取り組みを、我々の責務であるとともに、将来への長期的な投資であると考え、政府や国際機関、非営利民間団体等との官民パートナーシップのもと、積極的に推進しています。当社グループは、開発途上国および新興国に蔓延する顧みられない熱帯病(NTDs)の一つであるリンパ系フィラリア症を制圧するため、その治療薬である「DEC(ジエチルカルバマジン)錠」を当社グループのインド・バイザッグ工場で製造し、本剤を必要とするすべての蔓延国において制圧が達成されるまで、世界保健機関(WHO)に「プライス・ゼロ(無償)」で提供しています。2021年3月末までに28カ国に20.1億錠を供給しました。さらに、マイセトーマ(菌腫)をはじめとするNTDs、結核、マラリアに対する新薬開発を推進するほか、認知症、がんといった非感染性疾患に対する啓発・早期発見支援や患者様が購入しやすい価格設定(アフォーダブルプライシング)、所得別段階的価格設定(ティアードプライシング)による製品提供など、各国で様々な医薬品アクセス改善に向けた活動に取り組んでいます。
⑥ 新型コロナウイルス感染症の影響
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営成績の状況」に記載のとおり、2020年度の営業利益および当期利益に与える影響は軽微でした。将来の財政状態・経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性については、「2 事業等のリスク(4)その他 新型コロナウイルス感染症」に記載しています。
(3)資本政策の基本的な方針
当社グループの資本政策は、財務の健全性を担保した上で、株主価値向上に資する「中長期的なROE経営」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資採択基準」を軸に展開しています。
① 中長期的なROE経営
当社グループは、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と捉えています。「中長期的なROE経営」では、売上収益利益率(マージン)、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を常に改善し、中長期的に正のエクイティ・スプレッド*1を創出すべく資本コストを上回るROEを目指していきます。2025年度にはROE15%以上、エクイティ・スプレッド7%レベルの達成を意識しています。
*1 エクイティ・スプレッド=ROE-株主資本コスト
② 持続的・安定的な株主還元
当社グループは、健全なバランスシートのもと、連結業績、DOE*2およびフリー・キャッシュ・フローを総合的に勘案し、シグナリング効果も考慮して、株主の皆様への還元を継続的・安定的に実施します。DOEは、連結純資産に対する配当の比率を示すことから、バランスシート・マネジメント、ひいては資本政策を反映する指標の一つとして位置づけています。自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。なお、健全なバランスシートの尺度として、親会社所有者帰属持分比率、負債比率(Net DER)*3を指標に採用しています。
*2 DOE(親会社所有者帰属持分配当率)= 配当金総額÷親会社の所有者に帰属する持分
*3 負債比率(Net DER)= (有利子負債(借入金)-現金及び現金同等物-3カ月超預金等
-親会社保有投資有価証券等)÷親会社の所有者に帰属する持分
③ 成長のための投資採択基準
当社グループは、成長投資による価値創造を担保するために、戦略投資に対する投資採択基準を採用し、リスク調整後ハードルレートを用いた正味現在価値と内部収益率スプレッドにハードルを設定し、投資を厳選しています。

(4)ESGをはじめとする非財務価値向上と情報開示
企業の価値は、財務価値に、ESG(環境、社会、ガバナンス)をはじめとする非財務価値を加味したものと考えています。当社グループは、hhc理念を根幹として事業を展開する中、地球環境の負荷低減(環境)、医薬品アクセス向上、人権の尊重、社員の人材育成(社会)、経営の公平性と透明性の確保(ガバナンス)等、ESGへの取り組みを強化してきました。また、これらの取り組みは、国連サミットで採択された国際的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)と一貫したものと位置づけています。
環境については、2030年度に向けた科学的根拠にもとづく温室効果ガス削減目標を設定し、Science Based Targets(SBT)イニシアチブから承認を取得しました。加えて、再生可能エネルギーの導入率を計画的に高めるなど、当社グループ全体で、低炭素社会の形成に向け積極的に取り組んでいます。また、国内外での動向を鑑み、2030年にグループ全体で使用する電力をすべて再生可能エネルギーに切り替える中期目標と、2040年に温室効果ガスの排出量と吸収量をプラスマイナスゼロの状態にするカーボンニュートラルの達成をめざす長期目標を設定しました。さらに、気候変動が企業に与える影響についてリスクと機会を分析し情報開示を求める国際的なフレームワークTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)に賛同を表明し、気候戦略の強靭性を高めるべく検討を重ねています。
人権については、ガイドラインとして国際的に認知されている国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権方針の作成、デューデリジェンスの仕組み構築など、さらなる非財務価値の向上に取り組んでいます。なお、当社グループのESGをはじめとする非財務価値に関する情報は、IIRC(国際統合報告評議会)のフレームワークに基づき、統合報告書や環境報告などで開示しています。
(https://www.eisai.co.jp/ir/library/annual/index.html)
当社は、常に最良のコーポレートガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組んでいます。当社のコーポレートガバナンスに関する取り組みについては、「第4 提出会社の状況、4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しているほか、「コーポレートガバナンス報告書」をはじめとして、当社のホームページに掲載しています。
(https://www.eisai.co.jp/company/governance/index.html)