有価証券報告書-第111期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/21 14:49
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有報資料

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)企業理念
当社グループは、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもとですべての役員および従業員が一丸となり、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足し、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業となることをめざしています。当社グループの使命は、患者様と生活者の皆様の満足の増大であり、他産業との連携によるhhcエコシステムを通じて、日常と医療の領域で生活する人々の「生ききるを支える」ことです。その結果として売上や利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考えています。
当社グループは、このhhc理念の実現に向けて、主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員との信頼関係の構築に努めるとともに、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々実践し、企業価値の向上に取り組んでいます。本企業理念は、定款に定め、株主の皆様と共有化をはかっています。
当社グループは、hhc理念に基づき、人々の「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現し、社会的インパクトを創出することで、長期的な企業価値の増大をめざします。
(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
当社グループは、新たな中期経営計画として「EWAY Future & Beyond」を2021年4月よりスタートしました。
① 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」
「EWAY Future & Beyond」では、2021年度からの5年間を「EWAY Future」、2026年度以降を「EWAY Beyond」とし、当社グループが貢献すべき主役を「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に拡大しました。患者様と生活者の皆様の「生ききるを支える」という想いとともに、アンメット・メディカルニーズが極めて高く、当社グループが最も強みを持つニューロロジー領域とオンコロジー領域に立脚したサイエンスとデータ
に基づくソリューションを創出し、他産業やグループとの連携によるエコシステムの構築を通じて、hhceco
(hhc理念+エコシステム)企業へと進化することをめざしています。
hhcecoモデルを実現するベースは、当社グループだけが保有する臨床試験結果をはじめ、疾患に関わるゲノム、リアルワールドやPersonal Health Recordなどから得られるデータです。hhcecoモデルにおいて、研究開発がデータのインプットに基づいて価値を創造する主要な役割を果たします。疾患を連続体(Disease Continuum)として捉え、ヒューマンバイオロジーエビデンスに基づく創薬研究を実践するDeep Human Biology Learning(DHBL)体制のもと、医薬品やデジタルメディスン、疾患の予測モデルなどを創出し、日常領域から医療領域までのすべてのステージの人々に対するソリューションとして提供していくことをめざしています。さらに、他産業、自治体、アカデミア、スタートアップといった様々なパートナーズとの連携を通じ、データ創出とソリューション提供の相互作用によってhhcecoモデルを充実させ、主要なステークホルダーズに社会的インパクトをもたらします。
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② 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の主な進捗と取り組み
2022年10月、研究開発体制を刷新し、DHBL体制が本格稼働しました。DHBL体制ではバイオマーカーの進化を踏まえ、病態生理学に基づき疾患を連続体(Disease Continuum)として捉え、ヒューマンバイオロジーエビデンスに基づく創薬研究を実践していきます。当社グループが当該領域のヒューマンバイオロジーに最も早く深くアクセスすることが可能な5つの創薬領域(ドメイン)にフォーカスし、創薬仮説の構築・検証から承認取得までの研究を推進しています。具体的には、「微小環境」、「タンパク質恒常性破綻」、「細胞系譜や細胞分化」、「細胞老化を伴う炎症、低酸素、酸化ストレス」、「顧みられない熱帯病やパンデミックの制圧」の創薬領域で構成され、アルツハイマー病(AD)に代表される神経変性疾患と難治性がんの分野でフロントランナーになるとともに、グローバルヘルスにおいても継続的な貢献を果たしていくことをめざしています。
(a) レカネマブ(米国ブランド名:「Leqembi」)の価値最大化に向けた取り組みとAD領域の進展
AD治療剤レカネマブについては、2022年9月に早期ADを対象としたClarity AD試験(フェーズⅢ試験)は主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しました。米国においては、ADの特徴である脳内に蓄積したアミロイドβプラークの減少効果を示した201試験(フェーズⅡ試験)の結果に基づき、ADの治療を適応として、米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得しました。米国においては、フル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)も受理され、優先審査に指定されました。PDUFA(Prescription Drugs User Fee Act)アクションデート(審査終了目標日)は2023年7月6日に設定されました。日本、欧州、中国においてもそれぞれ申請が完了し、日本と中国においては優先審査に指定されています。また、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とするAHEAD 3-45試験(フェーズⅢ試験)も進行中です。加えて、日本において、血液によるアミロイドβテストの共同開発や血液バイオマーカーを用いた認知症診断ワークフロー構築に向けた共同研究を複数のパートナー企業と進めています。
当社グループは、革新的医薬品の価格は、その薬剤がもたらす社会的価値に基づき設定され、その価値はすべてのステークホルダーズに還元されるべきであると考えています。米国におけるレカネマブの価格は、その社会的価値を当事者様、ご家族、介護者、医療従事者、支払者および政府からなるパブリック、ならびに株主および従業員からなるプライベートのすべてのステークホルダーズに還元するという考え方に基づいて設定しました。
AD Continuumに基づく他のプロジェクトの開発も進行中です。優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が実施し、抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体「E2814」の効果を評価するTau NexGen試験(フェーズⅡ/Ⅲ試験)が日本、米国、欧州において進行中です。「E2814」は、優性遺伝ADに対する臨床試験において抗タウ薬として最初の評価対象薬となっており、同試験の基礎療法となる抗アミロイド療法にはレカネマブが選定されています。孤発性ADを対象としたフェーズⅡ試験についても計画中です。また、ダメージを受けたコリン作動性神経を機能性神経に回復し、コリン作動性神経の変性を予防することが期待される選択的Tropomyosin receptor kinase A(TrkA)結合シナプス再生剤「E2511」については、フェーズⅠ試験が米国において進行中です。日本においては、慶應義塾大学と共同で設立した産医連携拠点「エーザイ・慶應義塾大学 認知症イノベーションラボ(EKID)」における、脳が本来備えている防御機構、堅牢性の維持・強化に関わる創薬ターゲットの探索研究も行っています。
(b) オンコロジー領域
抗がん剤「レンビマ」については、グローバルで甲状腺がん、肝細胞がん、腎細胞がん、子宮内膜がんなどに係る適応で承認を取得しています。このうち、腎細胞がんまたは子宮内膜がんに係る適応で、米メルク社の抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法について、日本、米国、欧州、アジア等で承認を取得するなど、「レンビマ」の価値最大化に向けた取り組みが順調に進展しています。現在、ペムブロリズマブとの併用療法により、10種類以上のがんで適応追加をめざして臨床試験(LEAP試験)が進行中です。さらに、本併用療法に対する抵抗性の克服をめざす薬剤として、発がんに関わるWntシグナル伝達を阻害することが期待されるCBP/β-カテニン阻害剤「E7386」を開発しています。本剤については、臨床におけるPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)を達成し、ペムブロリズマブとの併用療法によるフェーズⅠ/Ⅱ試験も進行中です。がん免疫療法への低感受性に対する治療薬として、承認薬剤であるエリブリンをペイロードとする次世代の抗体薬物複合体(ADC)「MORAb-202」について、BMS社と共同開発を進めており、2つのフェーズⅡ試験が進行中です。さらには、タンパク質分解誘導剤、ネオアンチゲン誘導剤など外部技術と融合した共同研究・開発による新世代のパイプライン構築を進めています。
(c) 認知症エコシステム
日常や医療領域で生活する人々の「生ききるを支える」ために、Disease Continuumに基づく様々なソリューションの創出を進めています。日常領域(発症前)では、健康状態の維持、疾患啓発と予防、さらには検査・病院検索、医療領域(疾患の発症時、治療期、予後)では、正確な診断、治療(薬物・非薬物)の効果確認、QOL(quality of life)の向上に寄与する施策などのソリューションを想定しています。
日本においては、デジタルツール「のうKNOW」(非医療機器)を搭載したスマートフォン端末による認知機能の把握を促進するなど、通信、食品、保険、金融、自動車、フィットネスなどの他産業と認知症エコシステム拡大に向けた様々な連携を進めています。中国においては、日常生活から医療までのワンストップオンライン健康プラットフォームである銀髪通(Yin Fa Tong)を通じてオンライン診療を提供し、デジタル技術を活用した医療較差の是正に取り組んでいます。アジア地域においても、他産業や非営利団体とのエコシステム構築を拡大し、認知症の疾患認知率向上、早期発見、早期診断、認知症治療薬へのアクセス拡大を進めています。
③ 目標とする経営指標
当社グループは、2021年度からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においては、売上収益・利益に関しては、社会環境や開発品の承認状況に大きく左右されることから中長期での数値目標は設定していません。その代わりに、年次事業計画を精緻に策定しています。2023年度の業績予想は以下のとおりです。
2023年度業績予想
売上収益7,120億円
営業利益500億円
親会社の所有者に帰属する当期利益380億円
ROE*14.9%

*1 ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分
上記に加え、中長期の経営指標として平均ROEを掲げています。中長期的に平均10%、2025年度は15%以上を目安としています。
④ 新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、2022年度の当社グループ連結業績への重大な影響はありません。将来の財政状態・経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性については、「3 事業等のリスク(4)その他 新型コロナウイルス感染症」に記載しています。
(3)資本政策の基本的な方針
当社グループの資本政策は、財務の健全性を担保した上で、株主価値向上に資する「中長期的なROE経営」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資採択基準」を軸に展開しています。
① 中長期的なROE経営
当社グループは、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と捉えています。「中長期的なROE経営」では、売上収益利益率(マージン)、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を常に改善し、中長期的に正のエクイティ・スプレッド*1を創出すべく、資本コストを上回るROEを目指していきます。2025年度にはROE15%以上、エクイティ・スプレッド7%レベルの達成を意識しています。
*1 エクイティ・スプレッド=ROE-株主資本コスト
② 持続的・安定的な株主還元
当社グループは、健全なバランスシートのもと、連結業績、DOE*2およびフリー・キャッシュ・フローを総合的に勘案し、シグナリング効果も考慮して、株主の皆様への還元を継続的・安定的に実施します。DOEは、連結純資産に対する配当の比率を示すことから、バランスシートマネジメント、ひいては資本政策を反映する指標の一つとして位置づけています。自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。なお、健全なバランスシートの尺度として、親会社所有者帰属持分比率、負債比率(Net DER)*3を指標に採用しています。
*2 DOE(親会社所有者帰属持分配当率)= 配当金総額÷親会社の所有者に帰属する持分
*3 負債比率(Net DER)= (有利子負債(借入金)-現金及び現金同等物-3カ月超預金等
-親会社保有投資有価証券等)÷親会社の所有者に帰属する持分
③ 成長のための投資採択基準
当社グループは、成長投資による価値創造を担保するために、戦略投資に対する投資採択基準を採用し、リスク調整後ハードルレートを用いた正味現在価値と内部収益率スプレッドにハードルを設定し、投資を厳選しています。
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(4)ESGをはじめとする非財務価値向上と情報開示
当社グループは、hhc理念を根幹として事業を展開する中、地球環境の負荷低減(環境)、医薬品アクセス向上、人権の尊重、社員の人財育成(社会)、経営の公平性と透明性の確保(ガバナンス)等、ESGへの取り組みを強化してきました。これらの取り組みは、国連サミットで採択された国際的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)と一貫したものと位置づけており、非財務の価値として当社グループの企業価値向上にもつながっていると考えています。
ESGの中でも特に、グローバルな医薬品アクセスの課題解決への取り組みを、当社グループの責務であるとともに、将来への長期的な投資であると考え、政府や国際機関、非営利民間団体等との官民パートナーシップのもと、積極的に推進しています。開発途上国および新興国に蔓延する顧みられない熱帯病(NTDs)の一つであるリンパ系フィラリア症を制圧するため、その治療薬である「DEC(ジエチルカルバマジン)錠」を当社グループのインド・バイザッグ工場で製造し、本剤を必要とするすべての蔓延国において制圧が達成されるまで、世界保健機関(WHO)に「プライス・ゼロ(無償)」で提供しています。2023年3月末までに29カ国に21.3億錠を供給しました。さらに、日本発のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、NTDsに対する新薬開発の経験豊富な非営利団体/非政府組織とのパートナーシップのもと、マイセトーマ(菌腫)をはじめとするNTDs、結核、マラリアに対する新薬開発やエビデンスの創出による制圧を推進しているほか、疾患啓発活動などにも取り組んでいます。当社グループは、2022年6月、ルワンダ共和国の首都キガリで開催された「マラリアとNTDsに関するキガリ・サミット」において発表された、NTDs制圧に関する「キガリ宣言」に署名し、今後もNTDs制圧支援を継続することを表明しました。
環境については、2022年4月に「エーザイ環境経営ビジョン」を策定しました。2040年度にカーボンニュートラル達成を目標とする気候変動対策に加え、水の効率的利用、資源の循環利用、生物多様性の保全、化学物質の適正管理等の環境課題に対する中長期目標を定めて取り組みを進めています。気候変動対策の一つとして、再生可能エネルギーの導入率を計画的に高めるなど、当社グループ全体で、低炭素社会の形成に向け積極的に取り組んでいます。また、水資源について、リサイクルを含む効率的な利用および水質保全に資する高質な排水処理によって持続可能な利用の実現をめざすとともに、廃棄物の適正処理と資源の有効利用に取り組んでいます。気候変動が企業に与える影響についてリスクと機会を分析し、情報開示を求める国際的なフレームワークTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)に沿った分析を行い、気候戦略の強靭性を高めるべく検討を重ねました。分析結果は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取り組み(2)サステナビリティに関する「戦略」と「指標と目標」③気候変動に関する取り組み」に記載しています。
人権については、ガイドラインとして国際的に認知されている国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権方針の作成、人権デューデリジェンスの実施など、さらなる非財務価値の向上に取り組んでいます。サプライチェーン全体で、人権、労働・安全、環境、倫理などのサステナビリティを重視した調達活動(サステナブル調達)を推進するため、製薬・ヘルスケアセクターの国際非営利団体であるPSCI(Pharmaceutical Supply Chain Initiative)に加盟しています。
なお、当社グループのESGをはじめとする非財務価値に関する情報は、IIRC(国際統合報告評議会)のフレームワークに基づき、価値創造レポート(旧統合報告書)や環境報告などでの開示に加え、当社ホームページに掲載しています。
(https://www.eisai.co.jp/ir/library/annual/index.html)
(https://www.eisai.co.jp/sustainability/index.html)
当社は、常に最良のコーポレートガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組んでいます。当社のコーポレートガバナンスに関する取り組みは、「コーポレートガバナンス報告書」をはじめとして、当社のホームページに掲載しています。
(https://www.eisai.co.jp/company/governance/index.html)

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