有価証券報告書-第114期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/12 9:48
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168項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)企業理念
当社グループは、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもとですべての役員および従業員が一丸となり、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足し、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業となることをめざしています。当社グループの使命は、患者様と生活者の皆様の満足の増大であり、他産業との連携によるhhcエコシステムを通じて、日常と医療の領域で生活する人々の「生ききるを支える」ことです。その結果として売上や利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考えています。
当社グループは、このhhc理念の実現に向けて、主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員との信頼関係の構築に努めるとともに、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々実践し、企業価値の向上に取り組んでいます。本企業理念は、定款に定め、株主の皆様と共有化をはかっています。
当社グループは、hhc理念に基づき、人々の「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現し、社会的インパクトを創出することで、長期的な企業価値の増大をめざします。
(2)エーザイの未来創造戦略
2025年3月、当社グループは、hhc理念に基づき、すべての人が自分らしく生ききる世界をつくるための「エーザイの未来創造戦略」を策定しました。本戦略を経営の根幹に据え、当社グループの医薬品事業等を通じた患者様や生活者の皆様への貢献と、これを支える基盤としてコーポレートガバナンス強化および地球環境保全や社会課題の解決に中長期的に取り組み、企業としての継続的成長と社会の持続的発展への寄与をめざします。当社グループは、本戦略の実現による中長期的な企業価値向上に向けて、優先的に取り組む重要な課題とその目標を中期経営計画に定め、取り組みを推進します。
(3)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
① 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」
当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」を2021年4月よりスタートしました。「EWAY Future & Beyond」では、当社グループが貢献すべき主役を「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に拡大しました。患者様と生活者の皆様の「生ききるを支える」という想いとともに、アンメット・メディカルニーズが極めて高く、当社グループが最も強みを持つ認知症を中心とする神経領域とがん領域に立脚したサイエンスとデータに基づくソリューションを創出し、他産業やグループとの連携によるエコシステムの構築を通じて、hhceco(hhc理念+エコシステム)企業へと進化することをめざしています。
当社グループは、認知症領域、がん領域、グローバルヘルス領域における社会善の実現に加え、人財価値の最大化を重要マテリアリティとして特定し、2030年度に向けた長期目標とKPIおよびリスクを設定・特定しました。これらのマテリアリティを羅針盤とし、社会善の効率的な実現に取り組んでいきます。
2026年度より、3カ年単位の数値・実行計画を策定し、ローリング方式で毎年見直しを行います。
② 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の主な進捗と取り組み
疾患を連続体(Disease Continuum)として捉え、複数のバイオマーカーなどのプロファイリングにより疾患病態生理学的に理解することによって社内に蓄積されるヒューマンバイオロジーエビデンスを最大限活用し創薬研究を実践するDeep Human Biology Learning(DHBL)研究開発体制のもと、当社グループが当該領域のヒューマンバイオロジーに最も早く深くアクセスすることが可能なアルツハイマー病(AD)に代表される認知症を中心とした神経領域、難治性がんを中心としたがん領域にフォーカスし、創薬仮説の構築・検証から承認取得までの創薬活動を推進しています。グローバルヘルス領域においても継続的な貢献を果たしていくことをめざしています。
また、人々の日常領域から医療領域までのすべてのライフステージを支えるエコシステムを、アカデミア、企業、自治体などのパートナーと連携して構築することで、価値創造をめざします。加えて、これらの価値創造を下支えするべく、効率性の追求と収益性の向上に向けた構造改革も推進しています。グローバル全体のオペレーションを最適化し、単なる費用削減ではなく、組織・プロセスを抜本から見直すことで、全社収益構造の変革をはかります。
(a) 認知症を中心とする神経領域
レカネマブ(ブランド名:「レケンビ」)について、早期ADを対象に、米国、日本、中国、欧州、アジア等において53の国と地域で承認を取得し、6カ国で申請中です。18カ月間の2週に1回投与による初期療法完了後に4週に1回の投与を可能とする点滴静注維持療法は、7カ国で承認を取得し、12の国と地域で申請中です。在宅・在所での投与が可能となる皮下注オートインジェクター製剤(SC-AI)について、維持療法として米国で承認を取得し、初期療法では米国、日本、中国などで申請中です。血液バイオマーカーを用いたアミロイドβ蓄積のプレスクリーニングテストの拡大と確定診断の実装に向けた動きも着実に進んでおり、引き続き、複数のパートナー企業との協働により推進をはかります。
ADのDisease Continuumに基づく他のプロジェクトの開発も進行中です。レカネマブについては、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とするAHEAD 3-45試験(フェーズⅢ試験)が2028年度中のトップライン取得に向け順調に進行しています。また、抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体「E2814」については、顕性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が顕性遺伝ADを対象としたTau NexGen試験(フェーズⅡ/Ⅲ試験)をレカネマブとの併用で実施中です。当社グループが実施している孤発性ADを対象としたフェーズⅡ試験も進行中です。さらに、ダメージを受けたコリン作動性神経の機能を回復し、コリン作動性神経の変性を予防することが期待される選択的Tropomyosin receptor kinase A(TrkA)結合シナプス再生剤「E2511」、およびアストロサイト経路を標的としてシナプス機能低下抑制が期待される抗Erythropoietin-producing hepatocellular receptor A4(EphA4)抗体「E2025」については、それぞれフェーズⅠ試験が米国において進行中です。自社創製の脳移行型バイスペシフィック抗体技術である「Evolpath」についても複数のプロジェクトで開発が進行しています。
不眠症治療剤「デエビゴ」の開発を通じて獲得した独自のオレキシンプラットフォームを活用し、創製したオレキシン2受容体アゴニスト「E2086」は、ナルコレプシータイプ1を対象としたフェーズⅠb試験において、患者様の日中の覚醒度を改善する可能性を示唆するデータを示し、現在、フェーズⅡ試験を実施中です。
(b) 認知症エコシステム
認知症エコシステムを通じて、認知症発症前の日常領域における健康状態の維持、疾患啓発、予防から、発症後の医療領域における正確な診断、治療(薬物・非薬物)効果の確認、QOL(Quality of Life)の向上に寄与するソリューションの提供をめざしています。日常領域段階では、子会社であるArteryex株式会社が健康管理サービス(パシャっとカルテ)を提供しています。また、デジタル事業子会社テオリア・テクノロジーズ株式会社が、認知症関連情報のポータルサイト「テヲトル」を運営し総合的な情報・サービスを提供するとともに、健康・高リスク段階から、認知機能低下段階、軽度認知障害(MCI)や認知症段階の各ステージに最適なサービス開発と提供を進めています。介護事業子会社であるエコナビスタ株式会社においても、SaaS型(クラウド型)の高齢者向け見守りシステム「ライフリズムナビ」により、MCIや認知症の早期検知や介護事業者の業務効率化への貢献をめざします。これら子会社との緊密な連携により、疾患啓発活動、介護施設、開業医、専門医の循環型医療連携体制の構築を進めていきます。
また中国においては、日常生活から医療までのワンストップオンライン健康プラットフォームである銀髪通(Yin Fa Tong)を通じてオンライン診療を提供し、デジタル技術を活用した医療較差の是正に取り組んでいます。アジア地域では、他産業や非営利団体とのエコシステム構築を拡大し、認知症の疾患認知率向上、早期発見、早期診断に向けた取り組みを進めています。
(c) がん領域
抗がん剤「レンビマ」(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA (以下、米メルク社)と共同開発)については、単剤療法としての甲状腺がん、肝細胞がん、胸腺がん(日本)やペムブロリズマブとの併用療法による腎細胞がん、子宮内膜がん等の適応で承認を取得しています。最大市場である米国において2030年6月30日まで独占期間が継続する状況のもと、既存適応症における拡大と新規適応の取得による価値最大化に引き続き取り組みます。米メルク社の抗がん剤ベルズチファンとの併用による腎細胞がん(セカンドライン)については、米国、日本で申請を行いました。
エリブリンをペイロードとした抗体薬物複合体である「MORAb-202」、レンビマ薬剤耐性解除を期待するファーストインクラスの中分子治療薬「E7386」の開発や、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)選択的チロシンキナーゼ阻害剤「タスフィゴ」の適応拡大に向けた臨床試験も進行中です。
オンコロジーパイプラインの強化に向けて、欧州など向けには抗がん剤タレトレクチニブの権利を、日本向けには、抗PD-1抗体serplulimabの権利をそれぞれ取得しました。今後も導入および自社創薬による開発パイプライン強化を進めていきます。
(d) グローバルヘルス領域
グローバルな医薬品アクセスの課題解決への取り組みを、理念が導く当社グループのビジネスであるとともに、将来への長期的な投資であると考え、政府や国際機関、非営利民間団体等との官民パートナーシップのもと、積極的に推進しています。開発途上国および新興国に蔓延する顧みられない熱帯病(NTDs)の一つであるリンパ系フィラリア症を制圧するため、その治療薬である「DEC(一般名:ジエチルカルバマジン)錠」を当社グループのインド・バイザッグ工場で製造し、本剤を必要とするすべての蔓延国において制圧が達成されるまで、世界保健機関(WHO)に「プライス・ゼロ」で提供することにコミットしています。2026年3月末までに33カ国に28.1億錠を供給し、そのうち8カ国でリンパ系フィラリア症制圧が達成されました。さらに、日本発のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、NTDsに対する新薬開発の経験豊富な非営利団体/非政府組織、アカデミアとのパートナーシップのもと、マイセトーマ(菌腫)をはじめとするNTDsやマラリアに対する新薬開発を推進しているほか、疾患啓発活動にも取り組んでいます。マイセトーマについては、スーダンにて、抗真菌剤「E1224」(一般名:ホスラブコナゾール)によるフェーズⅡ試験がDNDiおよびスーダンのハルツーム大学菌腫研究センターにより実施され、スーダンにおける承認申請に向けた準備を進めています。マラリアについては、米国のブロード研究所と共同で創出した新規薬剤候補「E1018」のフェーズⅠ試験を当社が実施しています。
(e) 人財価値の最大化
当社は、hhc理念のもとで、人々の「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現するため、社員を主要なステークホルダーの一つと定め、「安定的な雇用の確保」に加え、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」に努めることを定款に明記しています。当社グループは、全社戦略と人事戦略を融合するべく、「社員一人ひとりのエナジーを解き放ち、組織のシナジーを生み出し、社会的インパクトの最大化に貢献する」という「グローバルHRパーパス」を定めました。当社グループにおけるすべてのリージョン・ファンクションは、このグローバルHRパーパスに基づき、組織・人財に関する課題解決に取り組んでいます。
グローバルHRパーパスを実現するために、人事的に重要な取り組みを「グローバルHRイニシアチブ」として設定し、推進しています。具体的には、グローバルに最適で公平なタレントマネジメントを行うべく、基盤となる人事制度・システムのグローバル統合に向けた取り組みを進めています。またhhc理念をはじめとする共通の価値観に基づく一体感ある組織文化を醸成しつつ、様々な異なる意見や価値観を尊重して、課題解決に取り組んでいくことは、当社のイノベーション創出の源泉であるとともに、企業理念の実現に向けた重要なアプローチであり、グローバルにおける組織力強化なども進めています。
2023年度からは「Human Capital Report」を発行し、人事戦略と連動する人的資本に関する取り組みやKPIを開示しています。開示によって得られる社内外からの様々なフィードバックも踏まえ、企業価値を高める本質的資産への当社人財の転換に向けて人的資本経営に継続的に取り組んでいます。
③ コンプライアンス・リスク管理
当社グループは、コンプライアンスを「法令と倫理の遵守」と定義し、経営の根幹に据えています。また、内部統制を「企業活動を適正かつ効率的に遂行するために、社内に構築され運用されている体制およびプロセス」 と定義し、「ENW内部統制ポリシー」をグループの役員および全従業員で共有しています。
あわせてチーフコンプライアンスオフィサーおよび内部統制担当執行役を任命し、コンプライアンスとリスク管理を推進しています。また、第三者で構成されるコンプライアンス委員会より客観的な評価を受け、継続的な向上をめざしています。
④ 地政学リスクへの対応
米国をはじめとする各国通商政策の変更や中東情勢の不透明感などによる地政学的、経済的な不確実性の高まりが懸念されます。当社は米国および関係諸国の関税政策の動向を常に注視し、当社事業への影響を精査、最小化するための対応策を検討しています。また、原材料の複数購買体制および複数工場での製品の製造体制を構築するなど、柔軟なサプライチェーン体制の整備に取り組んでいます。中東情勢についても、原油などのエネルギー価格の高騰や原料調達・輸送手段への影響を踏まえ、当社事業への影響の最小化に向けた対応を検討しています。
⑤ 目標とする経営指標
中長期の企業価値向上に連動する指標として、当社グループの本質的な収益力を表す「コア営業利益」*1および、為替換算差額を控除した自己資本と純有利子負債をベースにした「調整ROIC」*2を新たに設定しました。中長期的に調整ROICは8%~10%を、ROE*3は8%を達成することを目標とし、資本効率性をモニタリングしています。
2026年度より、3カ年単位の数値・実行計画を策定し、ローリング方式で毎年見直しを行います。2026年度と2028年度の経営指標の目標は、以下のとおりです。
2026年度業績予想2028年度目標
売上収益8,835億円10,000億円
営業利益700億円900億円
コア営業利益700億円900億円
調整ROIC8.7%9.0%

*1 コア営業利益
営業利益から、将来の収益に直接紐づかない一過性の損益項目(①製品の導出・売却に関わる損益、②有形固定資産売却損益、③事業再編に伴う解雇給付費用、④のれんの減損損失、⑤訴訟等による多額の賠償または和解費用)を除外した指標
*2 調整ROIC(投下資本利益率)
= 税引後コア営業利益÷(親会社所有者帰属持分-為替換算差額+純有利子負債)
*3 ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分
(4)資本政策の基本的な方針
当社グループの資本政策は、中長期的な企業価値の向上を企図し、「成長投資」、「健全な財務基盤と効率的なバランスシート運営」、「株主還元」を軸に展開しています。
① 中長期企業価値向上に資する成長投資
当社グループは、研究開発投資、製品導入など、事業の持続的成長につながる投資に積極的に資金を投入します。投資判断にあたっては、収益性・投資回収性・事業リスクなどを総合的に評価し、短期的な指標に偏らず、中長期的な価値創出に資する案件を選定します。
これにより、将来の収益基盤を強化し、企業価値の持続的な向上を実現していきます。
② 健全な財務基盤と効率的なバランスシート運営
当社グループは、成長投資に必要な資金を安定的かつ機動的に確保するため、市場環境に応じた多様な調達手段を活用します。市場調達も含めて資金調達基盤を整備することで、財務の柔軟性と健全性を確保していきます。また、負債水準、フリー・キャッシュ・フロー、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)などの主要指標を適切にモニタリングし、
・財務健全性の維持
・資本効率の向上
・運転資本・在庫水準の最適化
などを通じて、バランスシートマネジメントに取り組みます。
③ 株主還元
当社グループは、積極的な成長投資と株主の皆様への還元の最適なバランスを追求します。連結業績、配当性向、およびフリー・キャッシュ・フローを総合的に勘案し、持続的・安定的な配当を実施します。また、財務状況、市場環境を踏まえ、総還元性向を勘案し、自己株式の取得についても検討していきます。

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