有価証券報告書-第112期(2023/04/01-2024/03/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)企業理念
当社グループは、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもとですべての役員および従業員が一丸となり、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足し、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業となることをめざしています。当社グループの使命は、患者様と生活者の皆様の満足の増大であり、他産業との連携によるhhcエコシステムを通じて、日常と医療の領域で生活する人々の「生ききるを支える」ことです。その結果として売上や利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考えています。
当社グループは、このhhc理念の実現に向けて、主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員との信頼関係の構築に努めるとともに、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々実践し、企業価値の向上に取り組んでいます。本企業理念は、定款に定め、株主の皆様と共有化をはかっています。
当社グループは、hhc理念に基づき、人々の「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現し、社会的インパクトを創出することで、長期的な企業価値の増大をめざします。
(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」を2021年4月よりスタートしました。
① 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」
「EWAY Future & Beyond」では、2021年度からの5年間を「EWAY Future」、2026年度以降を「EWAY Beyond」とし、当社グループが貢献すべき主役を「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に拡大しました。患者様と生活者の皆様の「生ききるを支える」という想いとともに、アンメット・メディカルニーズが極めて高く、当社グループが最も強みを持つ認知症領域とがん領域に立脚したサイエンスとデータに基づくソリューションを創出し、他産業やグループとの連携によるエコシステムの構築を通じて、hhceco(hhc理念+エコシステム)企業へと進化することをめざしています。
2023年にはhhcエコシステムを通じて社会善を効率的に実現するための新たなマテリアリティを策定しました。認知症領域、がん領域、グローバルヘルス領域における社会善の実現に加え、人財価値の最大化、および財務戦略を重要マテリアリティとして特定し、2030年度に向けた長期目標とKPIおよびリスクを設定・特定しました。これらのマテリアリティを羅針盤とし、社会善の効率的な実現に取り組んでいきます。
② 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の主な進捗と取り組み
病態生理学に基づき疾患を連続体(Disease Continuum)として捉え、ヒューマンバイオロジーエビデンスに基づく創薬研究を実践するDeep Human Biology Learning(DHBL)研究開発体制のもと、当社グループが当該領域のヒューマンバイオロジーに最も早く深くアクセスすることが可能な5つの創薬領域(ドメイン)にフォーカスし、創薬仮説の構築・検証から承認取得までの創薬活動を推進しています。具体的には、「微小環境」、「タンパク質恒常性破綻」、「細胞系譜や細胞分化」、「細胞老化を伴う炎症、低酸素、酸化ストレス」、「顧みられない熱帯病やパンデミックの制圧」の創薬領域で構成され、アルツハイマー病(AD)に代表される神経変性疾患と難治性がんの分野でフロントランナーになるとともに、グローバルヘルスにおいても継続的な貢献を果たしていくことをめざしています。
また、人々の日常領域から医療領域までの全てのライフステージを支えるエコシステムを、アカデミア、企業、自治体などのパートナーと連携して構築することで、価値創造をめざします。
(a) 認知症領域
レカネマブ(ブランド名:「レケンビ」)について、早期ADを対象に、2023年7月に米国において、米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。2023年9月に日本、2024年1月に中国、2024年5月には韓国においても承認を取得しています。現在、欧州、英国(北アイルランドを除く)、カナダなど13の国と地域で申請中です。ADは、早期の診断と治療が必要な進行性の疾患であり、既に上市を果たしている米国、日本では、AD領域におけるパイオニアとして、認知機能検査、アミロイドβ(Aβ)検査(PET、CSF)、APOE4検査、投薬、ARIAモニタリングと続く、一連の診断・治療パスウェイの構築に取り組んでいます。また、血液によるAβテストの共同開発や血液バイオマーカーを用いた認知症診断ワークフロー構築に向けた共同研究を複数のパートナー企業と進め、診断・治療パスウェイの簡素化をめざしています。
AD Continuumに基づく他のプロジェクトの開発も進行中です。レカネマブについては、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とするAHEAD 3-45試験(フェーズⅢ試験)も進行中です。また、優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が実施し、抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体「E2814」の効果を評価するTau NexGen試験(フェーズⅡ/Ⅲ試験)が日本、米国、欧州において進行中です。同試験の基礎療法となる抗アミロイド療法にはレカネマブが選定されています。孤発性ADを対象としたフェーズⅡ試験についても計画中です。また、ダメージを受けたコリン作動性神経の機能を回復し、コリン作動性神経の変性を予防することが期待される選択的Tropomyosin receptor kinase A(TrkA)結合シナプス再生剤「E2511」については、フェーズⅠ試験が米国において進行中です。日本においては、慶應義塾大学と共同で設立した産医連携拠点「エーザイ・慶應義塾大学 認知症イノベーションラボ(EKID)」における、脳が本来備えている防御機構、堅牢性の維持・強化に関わる創薬ターゲットの探索研究や創薬研究も行っています。
(b) 認知症エコシステム
認知症エコシステムを通じて、認知症発症前の日常領域における健康状態の維持、疾患啓発、予防から、発症後の医療領域における正確な診断、治療(薬物・非薬物)効果の確認、QOL(Quality of Life)の向上に寄与する施策といったソリューションの提供をめざしています。2023年9月には、デジタル事業会社Theoria technologies株式会社を当社の完全子会社として設立し、事業活動を開始しました。認知症の診療における当事者様・医師・介護者間のコミュニケーション円滑化を支援するアプリ「ササエル」の開発・提供や、MCI・認知症の早期発見に向けた認知機能低下リスク予測AI等の開発を推進しています。
日本においては、保険、金融、自動車などの他産業や自治体と共に、デジタルツール「のうKNOW」(非医療機器)の活用を中心に、認知症エコシステム拡大に向けた様々な連携を進めています。中国においては、日常生活から医療までのワンストップオンライン健康プラットフォームである銀髪通(Yin Fa Tong)を通じてオンライン診療を提供し、デジタル技術を活用した医療較差の是正に取り組んでいます。アジア地域においても、他産業や非営利団体とのエコシステム構築を拡大し、認知症の疾患認知率向上、早期発見、早期診断に向けた取り組みを進めています。
(c) がん領域
抗がん剤「レンビマ」(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAと共同開発)については、単剤療法としての甲状腺がん、肝細胞がん、胸腺がん(日本)やペムブロリズマブとの併用療法による腎細胞がん、子宮内膜がん等の既存適応症における価値最大化に引き続き取り組む一方、肝動脈化学塞栓療法併用肝細胞がん、胃がん、食道がんなど、複数の適応追加に向けた臨床試験(LEAP試験)が進行中です。さらに、次世代オンコロジー製品の開発では、「レンビマ」や「キイトルーダ」に抵抗性を示す難治性がんに対するファーストインクラスの中分子治療薬「E7386」や、当社グループが強みを持つケミストリー力を具現化するモダリティーとしてエリブリン、スプライシングモジュレーター、タンパク質分解誘導剤をペイロードに有する独自の抗体薬物複合体(ADC)の創製に注力しています。エリブリンをペイロードとしたADCとして、「MORAb-202」および「BB-1701」について、外部パートナーと共同開発を進めています。
(d) グローバルヘルス領域
グローバルな医薬品アクセスの課題解決への取り組みを、当社グループの責務であるとともに、将来への長期的な投資であると考え、政府や国際機関、非営利民間団体等との官民パートナーシップのもと、積極的に推進しています。開発途上国および新興国に蔓延する顧みられない熱帯病(NTDs)の一つであるリンパ系フィラリア症を制圧するため、その治療薬である「DEC(一般名:ジエチルカルバマジン)錠」を当社グループのインド・バイザッグ工場で製造し、本剤を必要とするすべての蔓延国において制圧が達成されるまで、世界保健機関(WHO)に「プライス・ゼロ(無償)」で提供することにコミットしています。2024年3月末までに30カ国に22.8億錠を供給しました。さらに、日本発のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、NTDsに対する新薬開発の経験豊富な非営利団体/非政府組織とのパートナーシップのもと、マイセトーマ(菌腫)をはじめとするNTDs、結核、マラリアに対する新薬開発を推進しているほか、疾患啓発活動にも取り組んでいます。当社グループは、2022年6月、NTDs制圧に関する「キガリ宣言」に署名し、今後もNTDs制圧支援を継続することを表明しました。
(e) 人財価値の最大化
当社は、定款において社員を主要なステークホルダーの一つと定め、「安定的な雇用の確保」に加え、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」に努めることを明記するとともに、「統合人事戦略」を策定し、「社員の健康を含めたウェルビーイング」、「多様な働き方」、「社員の成長」、「組織、事業の成長」を柱とした、個と組織が共に成長するための人事施策を実行しています。DE&I(ダイバ―シティ、エクイティ、インクルージョン)は、当社のイノベーション創出の源泉であるとともに、企業理念の実現に向けた重要なアプローチであり、グローバルに推進体制を構築し、国籍・性別・年齢などを問わず多様な価値観を持つ人財が活躍できる風土づくりを進めています。さらにグローバルエンゲージメントサーベイを実施し、人事戦略の検証・強化に活用するなど、中長期的な人財価値の最大化を推進しています。2023年度からは「Human Capital Report」を発行し、人事戦略と連動する人的資本に関する取り組みやKPIを開示し、その改善に向けて継続的に取り組んでいます。
③ 目標とする経営指標
当社グループは、2021年度からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においては、売上収益・利益に関しては、社会環境や開発品の承認状況に大きく左右されることから中長期での数値目標は設定していません。その代わりに、年次事業計画を精緻に策定しています。2024年度の業績予想は以下のとおりです。
*1 ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分
上記に加え、中長期の経営指標として、2032年度にはROE25%レベル、10年平均ROE15%レベルを目標としています。
(3)資本政策の基本的な方針
当社グループの資本政策は、財務の健全性を担保した上で、株主価値向上に資する「中長期的なROE経営」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資採択基準」を軸に展開しています。
① 中長期的なROE経営
当社グループは、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と捉えています。「中長期的なROE経営」では、売上収益利益率(マージン)、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を常に改善し、中長期的に正のエクイティ・スプレッド*1を創出すべく、資本コストを上回るROEを目指していきます。2032年度にはROE25%、エクイティ・スプレッド17%レベルを目指します。
*1 エクイティ・スプレッド=ROE-株主資本コスト
② 持続的・安定的な株主還元
当社グループは、健全なバランスシートのもと、連結業績、DOE*2およびフリー・キャッシュ・フローを総合的に勘案し、シグナリング効果も考慮して、株主の皆様への還元を継続的・安定的に実施します。DOEは、連結純資産に対する配当の比率を示すことから、バランスシートマネジメント、ひいては資本政策を反映する指標の一つとして位置づけています。自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。なお、健全なバランスシートの尺度として、親会社所有者帰属持分比率、負債比率(Net DER)*3を指標に採用しています。
*2 DOE(親会社所有者帰属持分配当率)= 配当金総額÷親会社の所有者に帰属する持分
*3 負債比率(Net DER)= (有利子負債(借入金)-現金及び現金同等物-3カ月超預金等
-親会社保有投資有価証券等)÷親会社の所有者に帰属する持分
③ 成長のための投資採択基準
当社グループは、成長投資による価値創造を担保するために、戦略投資に対する投資採択基準を採用し、リスク調整後ハードルレートを用いた正味現在価値と内部収益率スプレッドにハードルを設定し、投資を厳選しています。

(1)企業理念
当社グループは、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもとですべての役員および従業員が一丸となり、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足し、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業となることをめざしています。当社グループの使命は、患者様と生活者の皆様の満足の増大であり、他産業との連携によるhhcエコシステムを通じて、日常と医療の領域で生活する人々の「生ききるを支える」ことです。その結果として売上や利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考えています。
当社グループは、このhhc理念の実現に向けて、主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員との信頼関係の構築に努めるとともに、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々実践し、企業価値の向上に取り組んでいます。本企業理念は、定款に定め、株主の皆様と共有化をはかっています。
当社グループは、hhc理念に基づき、人々の「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現し、社会的インパクトを創出することで、長期的な企業価値の増大をめざします。
(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」を2021年4月よりスタートしました。
① 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」
「EWAY Future & Beyond」では、2021年度からの5年間を「EWAY Future」、2026年度以降を「EWAY Beyond」とし、当社グループが貢献すべき主役を「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に拡大しました。患者様と生活者の皆様の「生ききるを支える」という想いとともに、アンメット・メディカルニーズが極めて高く、当社グループが最も強みを持つ認知症領域とがん領域に立脚したサイエンスとデータに基づくソリューションを創出し、他産業やグループとの連携によるエコシステムの構築を通じて、hhceco(hhc理念+エコシステム)企業へと進化することをめざしています。
2023年にはhhcエコシステムを通じて社会善を効率的に実現するための新たなマテリアリティを策定しました。認知症領域、がん領域、グローバルヘルス領域における社会善の実現に加え、人財価値の最大化、および財務戦略を重要マテリアリティとして特定し、2030年度に向けた長期目標とKPIおよびリスクを設定・特定しました。これらのマテリアリティを羅針盤とし、社会善の効率的な実現に取り組んでいきます。
② 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の主な進捗と取り組み
病態生理学に基づき疾患を連続体(Disease Continuum)として捉え、ヒューマンバイオロジーエビデンスに基づく創薬研究を実践するDeep Human Biology Learning(DHBL)研究開発体制のもと、当社グループが当該領域のヒューマンバイオロジーに最も早く深くアクセスすることが可能な5つの創薬領域(ドメイン)にフォーカスし、創薬仮説の構築・検証から承認取得までの創薬活動を推進しています。具体的には、「微小環境」、「タンパク質恒常性破綻」、「細胞系譜や細胞分化」、「細胞老化を伴う炎症、低酸素、酸化ストレス」、「顧みられない熱帯病やパンデミックの制圧」の創薬領域で構成され、アルツハイマー病(AD)に代表される神経変性疾患と難治性がんの分野でフロントランナーになるとともに、グローバルヘルスにおいても継続的な貢献を果たしていくことをめざしています。
また、人々の日常領域から医療領域までの全てのライフステージを支えるエコシステムを、アカデミア、企業、自治体などのパートナーと連携して構築することで、価値創造をめざします。
(a) 認知症領域
レカネマブ(ブランド名:「レケンビ」)について、早期ADを対象に、2023年7月に米国において、米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。2023年9月に日本、2024年1月に中国、2024年5月には韓国においても承認を取得しています。現在、欧州、英国(北アイルランドを除く)、カナダなど13の国と地域で申請中です。ADは、早期の診断と治療が必要な進行性の疾患であり、既に上市を果たしている米国、日本では、AD領域におけるパイオニアとして、認知機能検査、アミロイドβ(Aβ)検査(PET、CSF)、APOE4検査、投薬、ARIAモニタリングと続く、一連の診断・治療パスウェイの構築に取り組んでいます。また、血液によるAβテストの共同開発や血液バイオマーカーを用いた認知症診断ワークフロー構築に向けた共同研究を複数のパートナー企業と進め、診断・治療パスウェイの簡素化をめざしています。
AD Continuumに基づく他のプロジェクトの開発も進行中です。レカネマブについては、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とするAHEAD 3-45試験(フェーズⅢ試験)も進行中です。また、優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が実施し、抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体「E2814」の効果を評価するTau NexGen試験(フェーズⅡ/Ⅲ試験)が日本、米国、欧州において進行中です。同試験の基礎療法となる抗アミロイド療法にはレカネマブが選定されています。孤発性ADを対象としたフェーズⅡ試験についても計画中です。また、ダメージを受けたコリン作動性神経の機能を回復し、コリン作動性神経の変性を予防することが期待される選択的Tropomyosin receptor kinase A(TrkA)結合シナプス再生剤「E2511」については、フェーズⅠ試験が米国において進行中です。日本においては、慶應義塾大学と共同で設立した産医連携拠点「エーザイ・慶應義塾大学 認知症イノベーションラボ(EKID)」における、脳が本来備えている防御機構、堅牢性の維持・強化に関わる創薬ターゲットの探索研究や創薬研究も行っています。
(b) 認知症エコシステム
認知症エコシステムを通じて、認知症発症前の日常領域における健康状態の維持、疾患啓発、予防から、発症後の医療領域における正確な診断、治療(薬物・非薬物)効果の確認、QOL(Quality of Life)の向上に寄与する施策といったソリューションの提供をめざしています。2023年9月には、デジタル事業会社Theoria technologies株式会社を当社の完全子会社として設立し、事業活動を開始しました。認知症の診療における当事者様・医師・介護者間のコミュニケーション円滑化を支援するアプリ「ササエル」の開発・提供や、MCI・認知症の早期発見に向けた認知機能低下リスク予測AI等の開発を推進しています。
日本においては、保険、金融、自動車などの他産業や自治体と共に、デジタルツール「のうKNOW」(非医療機器)の活用を中心に、認知症エコシステム拡大に向けた様々な連携を進めています。中国においては、日常生活から医療までのワンストップオンライン健康プラットフォームである銀髪通(Yin Fa Tong)を通じてオンライン診療を提供し、デジタル技術を活用した医療較差の是正に取り組んでいます。アジア地域においても、他産業や非営利団体とのエコシステム構築を拡大し、認知症の疾患認知率向上、早期発見、早期診断に向けた取り組みを進めています。
(c) がん領域
抗がん剤「レンビマ」(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAと共同開発)については、単剤療法としての甲状腺がん、肝細胞がん、胸腺がん(日本)やペムブロリズマブとの併用療法による腎細胞がん、子宮内膜がん等の既存適応症における価値最大化に引き続き取り組む一方、肝動脈化学塞栓療法併用肝細胞がん、胃がん、食道がんなど、複数の適応追加に向けた臨床試験(LEAP試験)が進行中です。さらに、次世代オンコロジー製品の開発では、「レンビマ」や「キイトルーダ」に抵抗性を示す難治性がんに対するファーストインクラスの中分子治療薬「E7386」や、当社グループが強みを持つケミストリー力を具現化するモダリティーとしてエリブリン、スプライシングモジュレーター、タンパク質分解誘導剤をペイロードに有する独自の抗体薬物複合体(ADC)の創製に注力しています。エリブリンをペイロードとしたADCとして、「MORAb-202」および「BB-1701」について、外部パートナーと共同開発を進めています。
(d) グローバルヘルス領域
グローバルな医薬品アクセスの課題解決への取り組みを、当社グループの責務であるとともに、将来への長期的な投資であると考え、政府や国際機関、非営利民間団体等との官民パートナーシップのもと、積極的に推進しています。開発途上国および新興国に蔓延する顧みられない熱帯病(NTDs)の一つであるリンパ系フィラリア症を制圧するため、その治療薬である「DEC(一般名:ジエチルカルバマジン)錠」を当社グループのインド・バイザッグ工場で製造し、本剤を必要とするすべての蔓延国において制圧が達成されるまで、世界保健機関(WHO)に「プライス・ゼロ(無償)」で提供することにコミットしています。2024年3月末までに30カ国に22.8億錠を供給しました。さらに、日本発のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、NTDsに対する新薬開発の経験豊富な非営利団体/非政府組織とのパートナーシップのもと、マイセトーマ(菌腫)をはじめとするNTDs、結核、マラリアに対する新薬開発を推進しているほか、疾患啓発活動にも取り組んでいます。当社グループは、2022年6月、NTDs制圧に関する「キガリ宣言」に署名し、今後もNTDs制圧支援を継続することを表明しました。
(e) 人財価値の最大化
当社は、定款において社員を主要なステークホルダーの一つと定め、「安定的な雇用の確保」に加え、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」に努めることを明記するとともに、「統合人事戦略」を策定し、「社員の健康を含めたウェルビーイング」、「多様な働き方」、「社員の成長」、「組織、事業の成長」を柱とした、個と組織が共に成長するための人事施策を実行しています。DE&I(ダイバ―シティ、エクイティ、インクルージョン)は、当社のイノベーション創出の源泉であるとともに、企業理念の実現に向けた重要なアプローチであり、グローバルに推進体制を構築し、国籍・性別・年齢などを問わず多様な価値観を持つ人財が活躍できる風土づくりを進めています。さらにグローバルエンゲージメントサーベイを実施し、人事戦略の検証・強化に活用するなど、中長期的な人財価値の最大化を推進しています。2023年度からは「Human Capital Report」を発行し、人事戦略と連動する人的資本に関する取り組みやKPIを開示し、その改善に向けて継続的に取り組んでいます。
③ 目標とする経営指標
当社グループは、2021年度からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においては、売上収益・利益に関しては、社会環境や開発品の承認状況に大きく左右されることから中長期での数値目標は設定していません。その代わりに、年次事業計画を精緻に策定しています。2024年度の業績予想は以下のとおりです。
| 2024年度業績予想 | |
| 売上収益 | 7,540億円 |
| 営業利益 | 535億円 |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 430億円 |
| ROE*1 | 5.2% |
*1 ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)
= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分
上記に加え、中長期の経営指標として、2032年度にはROE25%レベル、10年平均ROE15%レベルを目標としています。
(3)資本政策の基本的な方針
当社グループの資本政策は、財務の健全性を担保した上で、株主価値向上に資する「中長期的なROE経営」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資採択基準」を軸に展開しています。
① 中長期的なROE経営
当社グループは、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と捉えています。「中長期的なROE経営」では、売上収益利益率(マージン)、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を常に改善し、中長期的に正のエクイティ・スプレッド*1を創出すべく、資本コストを上回るROEを目指していきます。2032年度にはROE25%、エクイティ・スプレッド17%レベルを目指します。
*1 エクイティ・スプレッド=ROE-株主資本コスト
② 持続的・安定的な株主還元
当社グループは、健全なバランスシートのもと、連結業績、DOE*2およびフリー・キャッシュ・フローを総合的に勘案し、シグナリング効果も考慮して、株主の皆様への還元を継続的・安定的に実施します。DOEは、連結純資産に対する配当の比率を示すことから、バランスシートマネジメント、ひいては資本政策を反映する指標の一つとして位置づけています。自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。なお、健全なバランスシートの尺度として、親会社所有者帰属持分比率、負債比率(Net DER)*3を指標に採用しています。
*2 DOE(親会社所有者帰属持分配当率)= 配当金総額÷親会社の所有者に帰属する持分
*3 負債比率(Net DER)= (有利子負債(借入金)-現金及び現金同等物-3カ月超預金等
-親会社保有投資有価証券等)÷親会社の所有者に帰属する持分
③ 成長のための投資採択基準
当社グループは、成長投資による価値創造を担保するために、戦略投資に対する投資採択基準を採用し、リスク調整後ハードルレートを用いた正味現在価値と内部収益率スプレッドにハードルを設定し、投資を厳選しています。
