有価証券報告書-第84期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

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2016/06/24 13:54
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82項目

業績等の概要

(1)業績
当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続くなか、緩やかな回復基調が続いております。内閣府の月例経済報告(平成28年1月~3月)に拠れば、消費者物価が緩やかに上昇し、消費者マインドに足踏みがみられるなか、日銀の物価安定目標2%を実現するためマイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入や個人消費と投資の拡大、一億総活躍関連の施策による名目国内総生産(GDP)600兆円の経済実現に向けた成長戦略の各政策に期待が寄せられております。国際情勢では一部に弱さが報告されており、中国を始めとするアジアの新興国や資源国等の景気の下振れリスク、またアメリカの金融政策正常化の影響、ヨーロッパ地域ユーロ圏における失業率や物価動向に留意が必要であり、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場への影響が懸念されている状況となっております。
当社は、経営方針として、「長期的に持続的成長をする企業」を掲げております。このビジョンの実現に向けて、2014年度を起点とする中期経営計画に基づき、既存事業の育成と新規事業推進による新たな価値の創出を目指しております。さらなる成長及び業績向上を推進すべく、「臨床診断薬」、「産業検査薬」、「医薬」、「化粧品」の各事業内の成長領域へ経営資源を配分するとともに、重要課題への取り組みを進めました。
<各事業における共通戦略の推進>・成長分野における新技術開発のための開発的投資(資本参加などのM&A・提携・委託)
・事業領域拡大のための戦略的投資(市場開拓・製品及びサービス開発)
・事業基盤強化のための積極的投資(業務品質向上への取り組み)
当社を取り巻く業界動向として、臨床診断薬及び産業検査薬業界では、政府の『日本再興戦略』において日本の医療関連産業は国際的に強みを持ち、グローバル市場で成長が期待できる戦略分野として位置づけられ、我が国の治験や薬事に関する理解度向上と国際整合性に向け国際規制調和・国際協力を戦略的に推進するため、医薬品、医療機器、再生医療等製品における「国際薬事規制調和戦略~レギュラトリーサイエンス イニシアティブ」が策定される等、日本の革新的医療技術のさらなる発展に向けた取り組みが推進されております。
一般用(OTC)医薬品業界では、市場全体は消費者の低価格志向等を背景に全体的に停滞があるものの、急速な少子高齢化の進展や生活習慣病の増加などの疾病構造の変化、QOL(Quality Of Life)の意識向上に伴い、消費者の健康に対する関心が高まっています。医師や薬剤師等の専門家による適切なアドバイスにより、自らの健康を管理しその増進を図る「セルフメディケーション」の実現手段として一般用(OTC)医薬品の有用性のあり方、また改正薬事法におけるネット販売解禁、平成27年4月から開始された機能性表示食品制度への準拠対応等、製薬企業各社は柔軟に対応することが求められております。
化粧品業界では、平成26年10月より化粧品が免税対象品目となり、近年増加傾向にある訪日外国人観光客のインバウンド消費の恩恵を受け活況の兆しをみせているものの、国内の市場規模は横ばいに推移しています。近年では、異業種からの市場参入が相次ぎ競争は激化するとともに、インターネットを活用した口コミサイトが普及し、SNS(Social Networking Service)による情報拡散のスピードアップも加わり、消費者の商品を見る目は、ますます厳しくなっています。こうした国内環境の厳しい動向を見据え、化粧品企業は海外市場へと活路を見出しはじめています。
このような状況のもと、当事業年度の売上高は前年同期に比べ1億52百万円(1.3%)増加し120億15百万円となりました。利益面におきましては、営業利益は前年同期に比べ81百万円(4.2%)増加し19億93百万円、経常利益は投資有価証券売却益の減少などにより前年同期に比べ8億32百万円(21.7%)減少し29億98百万円、当期純利益は前年同期に比べ4億29百万円(17.4%)減少し20億41百万円となりました。
当事業年度における各セグメント別の状況は、概ね次のとおりです。
事業売上高営業利益
(前年同期比増減率)
金額前年同期比増減率
臨床診断薬事業51億67百万円1.8%10億65百万円
(△3.6%)
微生物学的診断用薬17億62百万円5.6%
免疫血清学的診断用薬27億66 〃0.2%
精度管理用血清他3億22 〃△3.4%
検査用機器および器材他3億15 〃1.6%
産業検査薬事業29億35百万円3.3%8億58百万円
(1.5%)
微生物学的検査薬24億27百万円4.1%
免疫血清学的検査薬3億92 〃△1.5%
検査用機器および器材他1億16 〃4.4%
医薬事業29億83百万円△2.0%6億58百万円
(52.5%)
医薬品18億82百万円△0.5%
健康食品他11億0 〃△4.6%
化粧品事業9億28百万円2.9%2億29百万円
(△2.5%)

(注) 上記の営業利益は、各事業に配賦できない支援に係る費用等8億18百万円が控除されておりません。
[臨床診断薬事業]
臨床診断薬事業の売上高は前年同期に比べ93百万円(1.8%)増加し51億67百万円、営業利益は前年同期に比べ39百万円(3.6%)減少し10億65百万円となりました。
分野別では、微生物学的診断用薬においては、β-Dグルカン試薬群や結核菌群 rRNA検出試薬 TRCReady® MTB(※東ソー株式会社)等が好調に推移し、売上高は前年同期に比べ93百万円(5.6%)増加し17億62百万円となりました。検査用機器および器材関連においては、自動遺伝子検査装置 TRCReady®-80(※東ソー株式会社)が堅調に伸び始め、売上高は前年同期に比べ5百万円(1.6%)増加し3億15百万円となりました。
当事業においては、「感染症管理や精度管理の水準向上に貢献すべく、基幹病院や検査センターで競合他社に勝る存在価値の向上を実現する」との戦略目標を掲げ、当社の強みを前面に押し出した戦略を推進いたしました。全国規模によるKAM(重要顧客管理:Key Account Management)の取り組みを展開し、ナショナルセンター・病院、大学機関、検査センターなどにおけるニーズを分析・精査し、CRM(顧客関係構築:Customer Relationship Management)に基づいた営業活動を行いました。平成28年1月の第27回日本臨床微生物学会総会・学術集会では、東京女子医科大学名誉教授、北多摩病院副院長 戸塚恭一氏、東京医療保健大学大学院医療保健学研究科教授 小栗豊子氏を招聘して1960年代からの微生物検査を主題とした共催セミナー、全自動細菌検査装置ライサスエニー「ニッスイ」に関する学術交流会の開催等、研究アプローチやカスタマーリレーション強化を目的した活動も実施いたしました。
[産業検査薬事業]
産業検査薬事業の売上高は前年同期に比べ94百万円(3.3%)増加し29億35百万円、営業利益は前年同期に比べ12百万円(1.5%)増加し8億58百万円となりました。
分野別では、微生物学的検査薬においては、菌数測定用乾式簡易培地コンパクトドライ®の着実な伸びと、当期より販売を開始した遺伝子検出装置 GVP-9600やノロウイルスG1&G2検出試薬キット等(※ともに株式会社島津製作所)が順調に推移し、売上高は前年同期に比べ95百万円(4.1%)増加し24億27百万円となりました。
当事業においては、「微生物検査や食品安全検査を実施する大手顧客企業の衛生管理上の問題を解決する提案活動を通じて、顧客企業の競争力の向上に貢献する企業との評価を確立する」との戦略目標を掲げ、微生物検査のパイオニアとしての存在価値の向上を図っております。DAC(国内大規模グループ企業:Domestic Affiliated Company)プロジェクトチームによる国内グループ形成企業への製品・検査法の導入提案は、日本水産株式会社グループにおいては菌数測定用乾式簡易培地コンパクトドライ®に続き、ATP(清浄度迅速検査法)測定装置を導入いたしました。また国内グループ形成企業においては、調理済食品の製造大手企業工場でも粉末培地の統一導入を採用頂くなど、食品衛生検査の向上に使用培地の統一化を推し進めてまいりました。環境微生物管理においては、食品企業、製薬企業、バイオクリーンルーム等に向けた空気中の浮遊微生物管理の検査提案を推進いたしました。
海外の事業展開においては、菌数測定用乾式簡易培地コンパクトドライ®を軸に、欧州地域では認証機関「MicroVal」、「NordVal」への細菌検査法の国際基準への準拠に取り組み強化もあり、前年同期比13%程度の売上増加となりました。また、インド・オセアニア地域では、新規販売代理店の契約締結をいたしました。NGLC(日本水産株式会社グループの重要戦略の審議・決議機関:Nissui Global Links Conference)では、北米の家庭用水産冷凍食品の販売会社ゴートンズ社(マサチューセッツ州グロスター)での採用決定等、実務協議を継続しております。
なお、本事業においては、1月よりレジオネラ属菌の非選択培地「ニッスイプレートBCYEα寒天培地」、サルモネラ増菌前培養用「EEM ブイヨン(顆粒)「ニッスイ」」、2月よりサルモネラ属菌および黄色ブドウ球菌試験用「緩衝ペプトン水(BPW ISO組成)「ニッスイ」(顆粒)」、菌数測定用乾式簡易培地酵母・カビ測定用(迅速タイプ)「コンパクトドライ®「ニッスイ」YMR」の販売を開始いたしました。
[医薬事業]
医薬事業の売上高は前年同期に比べ61百万円(2.0%)減少し29億83百万円、営業利益は前年同期に比べ2億26百万円(52.5%)増加し6億58百万円となりました。
当事業においては、直販営業部門の強化に向けて、専売品パッケージへの二次元バーコード対応を完了し製品ロット管理体制の強化による販売店の推売サポート、プロダクト別プロモーター制によるOTC医薬品・健康食品群の主力製品の販売を強化し、新規ルート開拓に向けて独自原料を活用した販売ルート開拓、また弊社の強みである肝臓加水分解物の科学的エビデンス取得に取り組みました。直販営業部門では健康未来創造研究会への新規入会店やエリア中核店舗の開拓を推進し通期にて約600店増になりました。健康未来創造研究会の正規会員店及び新規会員店は堅調な売上推移となったものの、一般店においては前年同期比約14%の売上の減少、また既存店舗への販促・マーケティング支援活動が停滞し「コンクレバン」、「日水清心丸」、「シーアルパ30」、「日水補腎片」等の主要製品が約3%以上の前年実績割れとなりました。医薬ソリューション営業部門では、新規販路の開拓を推し進めるとともに、肝臓加水分解物原料やEPA(エイコサペンタエン酸)等の原料ビジネスにおけるプライベートブランド開発の導入提案や、消費者庁による自主的かつ合理的な商品選択の機会の確保を主とした「機能性表示食品制度」に則した科学的根拠を有する機能性関与成分の調査、及びその成分を用いた機能性表示食品の製品化等を引き続き進めております。
なお、本事業においては、3月よりカルシウム補給液剤「シーエーアップ」(指定医薬部外品)の販売を開始いたしました。
[化粧品事業]
化粧品事業の売上高は前年同期に比べ25百万円(2.9%)増加し9億28百万円、営業利益は前年同期に比べ5百万円(2.5%)減少し2億29百万円となりました。
当事業においては、既存主力製品の立て直しを図るとともに、日本水産株式会社とのコラボレーションによる海洋資源由来の天然素材を用いたスキンケア製品等の開発を推進し、敏感肌向け化粧品としてのブランド再建を目指しております。その取り組みにおける海洋由来成分原料の「オレンジラフィー油」を配合した高保湿クリームの基礎化粧品「メールエクラ モイストハンドクリーム」、「リスブラン エンリッチモイストクリーム」の売上は堅調に推移いたしました。また、新製品である「リスブラン UVプロテクトジェル」は、初回生産ロットは完売となり好調な滑り出しとなりました。東京都化粧品協同組合からは、n-3系脂肪酸を主成分とした健康食品(EPA・DHA含有精製魚油加工食品)「ダーマサポート」及び植物発酵エキスを配合した健康食品「魔法の華 しずく」を推奨品として承諾を頂き、新規店舗に向けて積極的な営業活動を行いました。また今後に向けた取り組みとして、海洋由来成分原料の活用や新規販路の開拓等、日本水産株式会社グループシナジーの強化を推進いたしました。
なお、本事業においては、2月より国内最高レベルの紫外線対策効果(SPF50+・PA++++)で、しわやしみに影響を与えるUV-Aもブロックする日焼け止めジェルの基礎化粧品「リスブラン UVプロテクトジェル」の発売を開始いたしました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末の現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ19億45百万円(40.4%)減少し28億69百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、13億49百万円の収入(前年同期は11億30百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、25億11百万円の支出(前年同期は13億30百万円の収入)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、7億83百万円の支出(前年同期は8億52百万円の支出)となりました。
なお、キャッシュ・フローの詳細は、「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)資本の財源および資金の流動性についての分析 ① キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。