有価証券報告書-第31期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/24 16:59
【資料】
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【項目】
122項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、国内外の高いアンメットメディカルニーズの存在する疾患の治療、患者様のための革新的な医薬品の発見、設計、開発に焦点を当て、臨床ステージへ移行した製品を有するバイオ医薬品開発企業です。
(2) 経営環境
医薬品開発は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等により激しい競争が行われている分野であり、開発には多額の先行投資と、長期に亘る開発期間が必要となりますが、成功確率は高くありません。しかしながら、世界には、アンメットメディカルニーズが存在し、患者様に価値をもたらす新薬が待ち望まれています。
(3) 経営戦略等
① 当社グループの事業
当社グループは、サイエンス及びテクノロジーに立脚した企業であり、創薬及び初期開発を専門としています。世界中の人々の生活の質と健康の向上に大きく貢献することをミッションとし、バイオ医薬品及び創薬に関する日本屈指の国際的なリーディング企業になることをビジョンに掲げています。
当社グループは特に、体内の細胞や組織に存在する内在性膜タンパク質のスーパーファミリーである、GPCRを標的とする新規の低分子、ペプチド並びに抗体医薬品の創薬に注力しています。GPCRは、幅広い生体内反応に影響を与えるシグナル伝達経路に関係し、さまざまな疾患や障害に関与する重要な医薬品標的となります。そのため、GPCRは現在市販されている医薬品の約34%(※)に関係しています。また、GPCRは約400個の非嗅覚受容体を有する最も大きなヒト膜タンパク質ファミリーを形成し、そのうち約75%は未だ探索されていないため、多くの創薬可能性を秘めています。
現代医学における最も重要な医薬品標的の一つであるにもかかわらず、GPCRを標的とする創薬は依然として困難なものとなっています。GPCRに関する入手可能な構造情報によると、低分子医薬品の開発が可能であると考えられています。しかし、抽出されると不安定になるという性質上、これまではGPCRを細胞膜から抽出・構造解析を行うことは難しく、しばしば構造特定は大変困難でした。また、このようにGPCRが不安定であるという性質は、抗体を得るために必要となる、安定した抗原を生成する妨げとなっていました。
(※) Hauser A. S., Attwood M. M., Rask-Andersen M., Schiöth H. B., Gloriam D. E. (2017). Trends in GPCR drug discovery: new agents, targets and indications. Nat. Rev. Drug Discov. 16, 829–842. 10.1038/nrd.2017.178
② 当社グループのソリューション
当社グループは独自のStaR®技術を用いて、GPCRの構造を高度に解析することにより、GPCRを「解き明かす」技術を開発しました。StaR®技術は、リガンド結合部の外側に少数の点変異を起こさせ、細胞膜からGPCRを抽出した後でも立体構造を保持できるようにするもので、効果的にGPCRを安定化させることができます。その結果得られる安定化されたタンパク質(StaR®タンパク質)は、同種の「天然型」タンパク質、つまり変異されていないタンパク質よりはるかに安定しています。これらのStaR®タンパク質は比較的容易に精製でき、さまざまなヒットディスカバリー及び生物物理学的アプローチに供することができます。例えば、これらのStaR®タンパク質は、詳細なX線または他の構造解析のための結晶化が可能であり、天然型タンパク質を用いた創薬に比べて、より安全性と有効性が高く前臨床及び臨床段階での開発中止率が低い革新的医薬品の設計の手助けとなります。また、StaR®技術による安定化タンパク質は、in vitroでのファージディスプレイを用いたスクリーニングやin vivoでの免疫化にも使用可能で、生物製剤の探索にも利用可能です。
③ 当社グループのGPCRパイプライン
当社グループは、StaR®技術を活用したSBDDにより、低分子化合物及びペプチドの創薬やmAb探索のための抗原作成ができるようになりました。当社グループは、独自の技術と拡張性の高いSBDDを活用し、神経疾患、免疫疾患、消化器疾患、炎症性疾患等の疾患領域においてファーストインクラスまたはベストインクラスの医薬品になる可能性があると考えられる、GPCRを標的とした候補薬のパイプラインを創出してきました。
当社グループのビジネスモデルは、(ⅰ)大手グローバル製薬企業との既存の提携の推進、(ⅱ)革新的なテクノロジーを有する企業及びベンチャーファンドとの研究開発活動の推進、(ⅲ)実績がある当社グループ独自の創薬とその候補品の初期開発に基づく価値の高い新規提携の締結、という価値創造のための3つの重点分野に注力するものです。この戦略は、複数の提携を行うことによるリスクの分散と同時に、複数のプログラムからの収益創出につながるものであり、中期的には、新規提携に伴う一時金を創出する一方、引き続き、既存の提携先からのマイルストン及びロイヤリティに関する収益を受領する機会を提供すると考えています。
当社グループの提携パイプラインには、 Abbvie Inc.(以下「アッヴィ社」)、AstraZeneca UK Limited(以下「アストラゼネカ社」)、Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.(以下「バイオヘイブン社」)、Genentech Inc.、GlaxoSmithKline plc.(以下「GSK社」)、ノバルティス社、Pfizer Inc.(以下「ファイザー社」)および武田薬品工業株式会社等の大手グローバル製薬企業、ならびにその他の新興バイオ医薬品企業とのプログラムが含まれます。当社グループは、当社グループがSBDDを活用して発見したアデノシンA2aプログラム等の複数の候補薬を提携先が開発するプログラムや、複数のGPCRターゲットを対象とした創薬及び初期開発における提携を行っています。これらの戦略的な提携により、当社グループのGPCRに関する技術とSBDDの可能性が実証され、新規提携に伴う一時金及びマイルストンに関する収益を得られると考えています。
当社グループの自社開発パイプラインは、提携につながる新規候補物質創出のために当社グループ独自で行う創薬及び初期開発段階のプログラムで構成されており、今後、臨床開発及び商業化のために大手製薬・バイオ医薬品企業にライセンス供与を目指します。
④ その他の当社グループの事業活動
当社グループの中心となるGPCR関連の創薬・開発における活動に加えて、既存ビジネスとしてノバルティス社の呼吸器疾患製品シーブリ® ブリーズヘラー®、ウルティブロ® ブリーズヘラー®及びエナジア® ブリーズヘラー®のグローバルでの販売からのロイヤリティ収入を受領しております。ロイヤリティ収入は、当社グループの戦略的目標を支える希薄化を伴わない資本の源泉となっています。
⑤ 当社グループのCOVID-19への対応
2020年3月11日、世界保健機構(WHO)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック宣言を発表しました。当社グループは、COVID-19の流行とその当社グループの事業活動に与える影響を注視しています。グローバルなライフサイエンス業界で事業を展開する当社グループは、全てのステークホルダー及び社会の健康と安全を確保するための重要な役割を担っています。当社グループが優先すべきことは従業員、地域社会の皆様及び臨床試験中の患者様、被験者様、治験実施者の皆様の健康です。当社グループは、COVID-19の流行への対応として、以下のようないくつかの措置を講じています。
・ COVID-19の蔓延を抑えるため、従業員及び当社グループが事業活動を行う地域社会にとって安全な職場環境を確保する方針及び活動の実施。これには、多くの従業員の在宅勤務の実施が含まれるが、当社グループにとって不可欠な従業員、とりわけ研究施設に従事する研究者は、最適な輪番制により、またCOVID-19の流行に対する英国政府の安全衛生規制措置に従い業務を実施。また、英国の研究開発施設において、不可欠な従業員に対する週次でのSARS-CoV-2コロナウイルス(COVID-19の原因ウイルス)の検査を導入。
・ 英国の地元のホスピスへの個人用保護具の寄付。
・ SARS-CoV-2コロナウイルスを標的とする治療薬創出に関する世界的な研究活動に、独自のSBDDプラットフォームとその技術の応用とCOVID-19に関する新たな社内の研究開発プログラムの開始。全ての研究成果はCOVID-19及び将来の変異株による感染症の治療法開発に携わる世界の研究コミュニティが自由に利用可能。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業の進捗と戦略
当社グループは、高いアンメットメディカルニーズの存在する疾患に対する新規医薬品の創薬及び初期開発を推進する独自のテクノロジーとSBDDプラットフォームにおいてリーダーの立場にあるという競合優位性を拡大することに注力しています。
当社グループは、創薬及び初期開発活動から創製される新薬候補化合物及びプログラムを提携先へ導出あるいは共同投資することを明確な重点戦略と位置付けています。一方で、将来の新規導出あるいは共同投資による提携を継続的に行えるように、対象を絞って独自の創薬及び初期開発を行っています。現在、後期臨床開発プログラムは、提携先が開発費用とリスクを負担する場合に限って行っています。
当社グループは、創薬及び初期開発におけるリーダーの立場を維持するために、テクノロジー、プラットフォーム及び能力強化のための投資を継続して行ってまいります。当社グループの戦略目標は以下のとおりです。
・ 独自分野でのテクノロジーとプラットフォームにおけるリーダーの立場の維持及び新規カテゴリーへの創薬ターゲットの拡大
・ 創薬及び初期開発における製薬・バイオ医薬品企業との有望な新規提携の実現
・ 既存の提携における重要なマイルストンの達成
・ 将来の提携のための複数の新規創薬候補物質の当社グループ独自での創製
・ 厳選した当社グループ独自のプログラムの初期臨床開発への進捗
・ 提携先ベンチャーが過半の資金提供を行う長期共同投資企業の新設
・ 企業価値の創出及び拡大につながる計画を後押しするための企業買収を含む収益創出機会の追求
② 当社グループの認識するリスクへの対応
当社グループは、自らが事業を展開している製薬業界特有のさまざまなリスクを負っており、当社グループの
事業、財政状態及び業績は、これらのリスクにより悪影響を受ける可能性があります。当社グループは、「2.事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの財政状態及び経営成績に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を認識しており、これらのリスクに対する必要な対策を講じてまいります。
③ 価値創造
医薬品業界では、特許の失効、承認の負担増大、継続的なコストの増加など、大手企業は多くの困難に直面し、急速な変化が起こっています。これにより、医薬品開発における財務上・商業上のリスクを取って研究開発を目指す事業者の数が減少しています。業界全体を通じて、効率よく外部のイノベーションを確保することが新しい戦略として重視されています。さらに、多くの先進国での高齢化の進行により、差別化されたより良い治療法の必要性が高まっています。その結果、大手製薬・バイオ医薬品企業は、研究、創薬及び開発活動全体にわたり、技術に立脚した比較的小規模な企業との提携により、研究開発における課題への革新的ソリューションを見出そうとする傾向が強くなっており、当社グループは有利な立場にあります。
このように業界の状況が変化する中で、当社グループは、事業拡大と価値創造の機会を定期的に認識、評価し、持続的にビジネス機会を創出する資本効率の良いビジネスモデルを追求しています。
④ コーポレートガバナンス
当社グループは複数の地域において事業活動を行っており、コーポレートガバナンス体制の重要性を認識しています。各国の規制に厳密に対応するため、体制やプロセス強化の方策について継続的に検討しています。さらに、最高水準の透明性、完全性、説明責任にコミットする企業文化の強化に引き続き取り組みます。
当社の取締役会は、規範と説明責任を維持するために、経営の監督とリスク管理及びコンプライアンス活動に責任を有しており、取締役の過半数は独立社外取締役です。執行役は、当社の長期的かつ持続可能な成長を達成し、株主価値を創出するために、取締役会との緊密な連携のもとに会社の戦略と重要な業務執行について決定を行います。

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