有価証券報告書-第99期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/27 12:14
【資料】
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【項目】
155項目

研究開発活動

当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で300名であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,255百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
(1) 特殊鋼鋼材
主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,521百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・ホットスタンプ金型への鋼板めっき凝着抑制技術の確立
自動車部品の軽量化のため、超ハイテン部品の適用が増加しております。超ハイテン成形に適したホットスタンプ工法では、金型への鋼板めっきの凝着が品質や生産性に悪影響を及ぼします。当社で鋼板めっき凝着のメカニズム解明と対策の検討を進めた結果、金型に高熱伝導率材料DHATM-HS1と大同DMソリューション㈱製特殊窒化を適用することで、汎用鋼SKD61を使用した場合に比べ、めっき凝着量を90%低減※できる技術を確立しました。本技術は、ホットスタンプ部品メーカーで採用され高い評価を得ております。(※当社で比較)
(2) 機能材料・磁性材料
主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,604百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・リアクトル用金属磁性粉末が「新型プリウス」に採用
ハイブリッド自動車のバッテリー電圧を上げる部品(リアクトル)をトヨタ自動車㈱、㈱豊田中央研究所、㈱デンソー、㈱ファインシンターと共同開発し、当社の粉末が最新のハイブリッドシステムにも採用されております。使用される金属磁性粉末は、当社が持つアトマイズ技術と粉末加工技術を応用し、独自開発技術を取り入れることで実用化に至りました。目標とする材料特性と部品性能を達成したことで、リアクトル部品の小型化が可能となり、部品コスト削減に貢献しております。適用車種の拡大に伴う増産対応を推進しております。
・大型の金型造形に対応するダイス鋼系3Dプリンタ用金属粉末「LTXTM」
DAPTM-AMシリーズの第二弾として、ダイカスト金型やプラスチック射出成形金型に適したダイス鋼系粉末LTXを開発、販売を開始いたしました。LTXは金型に広く用いられているSKD61(JIS鋼)をSLM方式の造形に適した組成に調整し、従来のダイス鋼系粉末では困難であった150mm角以上の造形を可能にいたしました。SKD61の鋼材で製造した金型と同等の金型性能が得られる他、特定化学物質のコバルトを含有しておりません。また、一部の3Dプリンタメーカーで造形テストを実施し、良好な結果が得られております。
・日産自動車㈱より2022年「Nissan Global Supplier Award - Global Innovation Award」を受賞
本賞は、商品力向上やブランド力向上に繋がる、サプライヤー企業の革新的な取り組みを表彰するもので、「VC-Turboエンジン溶射シリンダーボア用ステンレス鋼の開発」が日産自動車の業績に顕著な貢献をしたことが評価されました。当社の溶射ワイヤは、溶射被膜特性の向上を目的に、成分組成を適正化しワイヤ表面に”銅めっき”を施すことで、高耐食シリンダーボア溶射膜を実現、VC-Turboエンジンの大幅な燃費向上に貢献しております。
(3) 自動車部品・産業機械部品
主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は964百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・超臨界型EGSで使用可能な熱安定性に優れる耐食合金の開発
より高効率の次世代型地熱発電方式である超臨界型EGSに用いられる高強度-超高耐食合金の開発を開始いたしました。本開発は(米)Damorphe社の地熱井シール技術開発とのジョイントプログラムとして日本財団 - DeepStar 連携技術開発助成プログラムに採択され、当社開発の超高耐食合金を用いたEGS型地熱発電用部材の開発・評価を進めております。2022年度はラボスケールにて合金開発を完了し、次年度以降は本合金を用いた地熱発電部材試作品を製造し、Damorphe社と共同で耐久性評価を実施してまいります。
(4) エンジニアリング
主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は163百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
・汚泥の高付加価値化と低炭素社会に貢献する超高温炭化技術に関する実証事業
当社と、㈱テツゲン、㈱グリーンテック、学校法人中央大学、および宮城県気仙沼市が共同で提案した表題の技術が、国土交通省の令和5年度下水汚泥革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)に採択されました。
本事業では、下水汚泥の活性炭利用等による高付加価値化の実現に向け、熱効率を高めた省エネ型超高温炭化システムによる活性炭代替材等の製造、および温室効果ガス排出量の削減効果、ならびにコスト削減効果の実証を行い、提案技術の普及拡大を図っていきます。
・ラジアントチューブ式水素燃焼バーナの開発
当社は、工業炉の脱炭素化に向け、水素を燃料とするラジアントチューブバーナを独自に開発し、水素混焼および専焼テストに成功いたしました。本バーナは、当社主力製品であるSTC炉などの熱処理炉への適用を目指して開発しております。今後、製品化に向けて実機相当レベルでの実証評価を推進してまいります。